異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第154話「防がれた奇襲」

 

 広場のワイバーンはクーノさんとケンさんが止めている。

 魔法使いの前にはヴェルディ様やリエラさん達が立ちはだかった。

 そしてわたしとレオさんは、転送装置に向かって走っていた。

 そのレオさんが、前方を見て驚きの声を上げた。

 

「んだと、ファイア・ドレイクの転送が早まった!?」

 

 転送装置である台形状台座から登り立つ光の柱が黄色っぽいものに変わったとたん、ファイア・ドレイクの体の実体化が急速に進行したのだ。それに伴って、浮かんでいた魔石が体の中に埋まってどんどん見えなくなっていく。

 レオさんは魔石が見えているうちに叩き割ろうとしていたので、顔から余裕がなくなった。

 さらに、魔導具を守っていたギガント・ウルフが10頭ほど、こっちへ向かって飛び出してきた。背中のトゲトゲを光らせ、バチバチと電撃を撃とうとする。

 

 キシャアーーッ!

 

 が、魔素がないから何も起こらない。仕方ないから物理的に叩きのめそうと牙をむいて突っ込んでくる。サイくらいの大きさがあるので、ぶつかっただけでも致命傷になるに違いない。

 

「レオさん、頭伏せて下さい!」

 

 わたしは1mくらいの高さに酸素噴出点をずらっと並べた。

 

酸素切断(オキシジェン・カッター)!」

 

 迫るギガント・ウルフへ向けて酸素の噴出点がぶわっと飛んだ。するとこっちへ向かってきていたウルフの先頭4匹の体がスパっと上下に切断された。それを見た後ろのウルフ達は、幅跳びのハードルを飛び越えるかのようにして酸素の刃を避けた。

 

「あっ、飛び越えた! もう一発!」

 

 着地地点に向けて再び酸素切断(オキシジェン・カッター)を飛ばす。着地のタイミングにピッタリ合ってしまった3頭のウルフがまた水平にスライスされる。それでも残りの3頭はなおも突っ込んでくる。

 

酸素防護網(オキシジェン・ネット・バリヤー)!」

 

 今度は酸素噴出点を、ウルフの目の前の縦横3mにネット状に並べて出現させた。

 酸素噴出ネットにかかった、というかそこを通過しようとしたギガント・ウルフは、ネットに切られて網の目のサイズに裁断され、トコロテンのように棒状の肉片となってばら撒かれた。

 

「うわっ、気持ち悪う!」

「ガオオオオ!」

「あんたにも酸素防護網(オキシジェン・ネット・バリヤー)!」

 

 飛びかかろうとする最後の1頭の眼前にネットを張った。そのウルフも同じようにトコロテンになった。

 

「気持ち悪う!」

「まったく頼りになるデストロイヤーだぜ!」

「そ、その呼び名は断固拒否します!」

 

 わたしがギガント・ウルフを食い止めたので、レオさんは転送装置の所まで取り付くことができた。

 アイポメアニール採取の時、西の森にあった転送装置は、近寄ったり切りかかったりすると弾かれたが、ここのは動きが違うのか邪魔されることなく傍まで行けた。そんなことより早く転送させたいというように見える。

 黄色い光の柱の中に立つファイヤ・ドレイクは、まだうっすらと魔石の輪郭が見えている。

 魔石が見えているうちに始末してやると、台の上にジャンプしたレオさんが魔石へ向けて熱でオレンジ色に輝いた灼熱剣を振り下ろした。

 

「てええええい!」

 

 ガキャーン! ガギギギギギ!

 

 だが剣は魔石に到達する前に巨大な爪によって防がれた。ファイア・ドレイクの左前脚が一足先に転送を完成させ、魔石を庇ったのだ。

 

「こいつ、灼熱剣の温度に耐えられるのか!?」

 

 後ろの方から魔族の高らかな笑い声が聞こえた。

 

「ふはははは。火を纏うファイア・ドレイクに火炎や高温は効かぬぞ!」

 

 わたしはファイア・ドレイクに向けて酸素の刃を飛ばす。

 

酸素切断(オキシジェン・カッター)!」

 

 しかしファイア・ドレイクを覆う炎に当たったところで、酸素の刃はゴウッと炎を派手に大きくしただけで消え、ダメージにはならなかった。

 

「ええ!? 初めて酸素切断(オキシジェン・カッター)が効かない相手が現れました!」

 

 ファイア・ドレイクの表面を覆う炎は何らかの可燃物が燃えているようだ。酸素切断(オキシジェン・カッター)の実態は酸素なわけで、触れたとたんに可燃物と化学反応してしまい、燃焼を促進させたものの、熱に強いファイア・ドレイクには何の効果もなかった、ということのようだ。

 驚いて突っ立っていたら、ぶおんっと左前脚が振られた。慌ててわたしとレオさんは飛び避ける。地面に人の胴体くらいありそうな鋭い爪がドスッと突き刺さった。

 

「ひいいいい、あんな爪、掠っただけでも死にます!」

「マヤ、下がっていろ!」

 

 レオさんがわたしの前に出て、ファイア・ドレイクに剣を向ける。

 だけどいつもなら灼熱剣で攻撃を受け、ついでにその熱でもって相手も斬ってしまうレオさんも、灼熱剣が効かないとなるとそうそう攻撃に行けない。

 その間に右前脚も実体化が進んできていた。

 

 これじゃ転送装置を壊すどころじゃない。近寄れないじゃん!

 

 ガサガサと周辺の草むらから次々とギガント・ウルフが出てくる。周囲警戒で散らばっていたのが集まってきているようだった。

 

「ふふふふ。やはりAAランクの魔物を転移させたのは正解だ。できれば転移の最中に来るのはやめてもらいたかったがな」

 

 形勢を逆転したと思った魔族の魔法使いが余裕を取り戻した。

 

 

 

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