異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第156「一瞬の均衡」

 

 圧倒的な存在感を示すファイヤ・ドレイクに満足したアデマールは、再び笑みを浮かべた。

 

「ふははは。奇襲には驚かされたが、攻撃力が足りなかったな。ワイバーン、左右からシールドを迂回してこっちへ来い」

 

 クーノはシールドを張って正面から来るワイバーンとマンティコアを足止めしていた。しかしそこで止められる数には限りがある。それでも短時間であればそれで良かったのだ。

 もともとクーノ達の役割は、魔物を少しの間引き止めればよいというものだった。その間にレオナルドとマヤでファイヤ・ドレイクを無力化し、じっくり魔族を追い詰める、というのが描いていた筋書きだ。

 しかしファイヤ・ドレイクの転送が早まったことで思惑が外れ、状況が変わってしまった。二人がワイバーン3頭を食い止めてる間に、他の魔物達は道が開けるのを待たず、シールドを左右から回り込んできた。迂回してきた数頭がヴェルディに迫る。

 

「領主様、引いてください!」

 

 ワイバーンがドスンドスンとやって来る。ユスティニアス中隊長は攻撃をかいくぐってその足元に飛び込み、何とか脚に手を触れた。

 

「熱源発生!」

 

 するとワイバーンがビクッと首を持ち上げて固まった。目が白く濁り、次第に顔が膨れてくると、ついには頭が爆発した。

 

「俺は触ったものの任意の場所に熱源を発生させられる。触れられれば俺の勝ちだ!」

 

 だがそれは非常に危険な行為だ。猛スピードで動くものは触ろうとするだけでも怪我をする。それが巨大で表面がゴツゴツした龍種ともなればなおさらだ。

 

「ゲハッ!」

 

 案の定、振りぬいた前脚にわずかに触れただけで吹っ飛ばされた。

 

「ね、熱源……発生」

 

 ボンッ!

 

 2頭目のワイバーンの頭が吹っ飛ぶ。

 しかしワイバーン1頭と引き換えに、ユスティニアス中隊長は数メートル離れた木に全身を打ちつけて起きられなくなった。

 

「リネール!」

 

 ヴェルディが草むらに向かって大声を出す。すると、おうっとリネールとイレムが草むらから顔を出した。

 二人は隙を見てユスティニアスのところに飛んで行くと、ズルズルと草むらの中に引きずって行った。

 

 クーノのシールドを大回りしたワイバーンとマンティコア、オークは、魔族の下へ行き着いてしまった。そして魔族を取り囲むように陣形を組む。

 

「ふははは、やはりAAランクは違う。一頭いるだけで状況をひっくり返せる」

 

 余裕を取り戻したらしい魔族が高笑いをする。そして陣形を作った魔物をじりじりと動かし、反撃の機会をうかがった。

 

 一方、クーノとケンはシールドを迂回されてしまったので、もはや広場との境にいる意味がなくなり、魔族の陣形を避けてヴェルディの所まで下がってきた。

 

「申し訳ありませんヴェルディ様。ユスティニアス中隊長は大丈夫でしょうか?」

「心配いらんだろう。あのポーションがあるんだ。治ったらすぐ戦闘に戻らせる」

「……どこの国も家臣は辛いっすねえ」

 

 労災休暇なぞ認めてもらえそうにないユスティニアス中隊長に同情するケンだった。

 

 

 

 

 ヴェルディと200mほど距離をおいたところに、マヤとレオナルド、リエラ、フィリアがいた。

 

 マヤ達の後ろには、あと少しで転送が終わりそうなファイア・ドレイクが、口の中に炎の出来損ないをボフボフやって火を吐く練習中で、上半身の実体化が終わるのを待っている。

 つまりマヤ達とヴェルディ達は、魔法使いがいる集団とファイア・ドレイクに挟まれた形となっているのだ。

 なお転送装置とファイア・ドレイクを守っていたウルフは、マヤとレオナルドの奇襲、その後のフィリアの毒雨攻撃で全滅しており、転送装置の周りにはファイア・ドレイク以外の魔物はいない。

 

 そのファイア・ドレイクは、いよいよ下半身の実体化が終わったようで、ズシンと両の脚を台状の転送装置から地面に下ろした。向かってこられたら、火は吹けなくてもあの炎を纏った巨大な躰はそれだけで凶器だ。

 

「ひぃっ、近寄られただけで火傷しますぅ! リ、リエラ様、私の後ろに」

 

 そう言ってフィリアはリエラを自分の後ろに庇う。怖くても泣いてても、ご主人様を護ろうとするのはさすが護衛侍女と、マヤが感心していたら、フィリアはマヤを盾にするように前に引っ張ってきた。

 

「それはないんじゃないの、フィリアさん!?」

「マヤさんならきっと何かやってくれます」

「何もできないよ!」

 

 幸いにもファイア・ドレイクは台から一歩降りたところから動かなかった。胸から上がまだ少し透けているのだ。そして透けている上半身に向けて、台から光る粒子のようなのが流れ込んでいる。もしかすると、あまり転送装置から離れられないのかもしれない。そういえば、転送装置は二回りくらい小さくなったように見える。

 

「お、驚かさないでよね。まだ頭透けてるんだから、無理して動かないでほしいわ」

 

 レオナルドは、こっちに来る魔族集団との間合いを測っていた。

 

「魔族らとファイア・ドレイクを合流させたくないな」

「ファイア・ドレイクはまだ転移魔導具から離れられないようだし、皆で魔族を捕まえるのを先にやったらどうですかね?」

 

 マヤはレオナルドが言ってた臨機応変をする時だと思って進言する。でも魔族にはワイバーン10頭とマンティコアにオーク兵が護衛についている。

 やっぱり無理? とマヤが眉をへの字にすると、レオナルドは二ッと笑った。

 

「いいだろう。遠距離攻撃ができるフィリアとマヤで後ろから支援し、クーノ、ケン、ヴェルディに突っ込ませて魔族を捕まえよう」

 レオナルドはさっそくケンにパッパッパッとハンドサインを送る。ケンが了解を返してきた。こういう時、長い付き合いの幼馴染というのは強い。ケンとクーノを経由してヴェルディにもこっちの考えが伝えられる。

 

『それにしても遠慮なく他国の領主様に突撃を指示するとは、さすがレオさんだわ。しかもそれにヴェルディ様も親指を立てて了承するんだから、この人達どうかしてる。まあそれで物事がスムーズに進んでるからいいけど。やっぱりワリナの護衛騎兵の人達やヘキサリネ兵は、置いてきて正解だったかもしれないわね。』

 

 やり取りを見ていたマヤがそんなことを思っていると、レオナルドがフィリアの肩を叩いた。

 

「フィリア、何か景気のいいのを一発撃ち込んでくれないか?」

「ひえ!? さ、先程の毒雨弾とかでしょうか?」

「あれはもし魔族に当たったら、魔族が死んじまって尋問できなくなるから却下だ」

 

 リエラがそれならとフィリアに指示をする。

 

「確実にワイバーンを一頭仕留められるのにしましょう。火をつけるのは私がやるから、フィリアは発射台を支えているだけよ」

「ナントカ違反なんて無粋なこと言わねえから、派手にやってくれ」

「それでしたらこれで……」

 

 

 

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