異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~ 作:RightWorld
リエラさんとフィリアさんのロケット弾発射でにらみ合いは終わり、バトルが再開された。
そのロケット弾は凄まじい爆音をたてて飛んで行き、一番外側で壁を作っていたワイバーンのうちの一頭に命中した。それは花火のように弾けて7色の大火炎を起こし、胴体に穴が開いて、ワイバーンは白目をむいて倒れた。文字通りの派手さに一瞬あっけにとられたが、それを合図にして、ヴェルディ様達とわたし達は魔族に向かって同時に駆け出した。
魔族もこっちが仕掛てくると予想していたようで、ロケット弾を発射したとほぼ同時に行動を開始した。ファイヤ・ドレイクに向かって一斉に動き出したのだ。
魔族を追いかけようとするヴェルディ様達に、ワイバーン2頭とマンティコア1頭が邪魔すべく立ちはだかる。魔族を含む残りは全力でファイヤ・ドレイクに向かってくる。途中いるわたし達は踏みつぶして越えていく勢いだ。
「マヤ、遠慮なくぶった斬れ!」
「はい!
前衛のオークとワイバーン2頭をたくあんの薄切りのようにスパスパと斬り刻んだところで、後ろの方の1頭のワイバーンがばさあっと翼を羽ばたかせた。
「えっ、まさか!」
って飛んだ!?
足には魔族を掴んでいる。
「なにい!?」
「魔素が無いはずなのに、なんで飛べるの!?」
大ジャンプのようではあるが確かに飛んだ。わたし達の頭上を飛び越えたワイバーンは、ファイヤ・ドレイクの近くまでひとっ飛びした。
「ちきしょう、やられた!」
ワイバーンの足から降り立った魔族が杖をかざすと、杖の先に魔法陣が現れ回りだす。そして詠唱を始めた。
「火の精霊よ、我が前に怒りの焔を集めたまえ。杖に蓄えてある魔素を存分に使え!」
その言葉の通り杖から魔素が噴出し、何かほわほわしたものが嬉しそうに近寄ってきた。
あれが精霊?
魔法陣の前で火がボッと灯り、ぐるぐる回転しながら大きくなっていく。
「リエラ様、あの魔法使い、火の玉を生成してますよ!」
リエラさんは怯えることなく剣をスラリと抜くと構えた。
「こっちへ投げてくる気ね。大丈夫、剣で受け流すわよ。ファイヤーボールは浅い角度で当てると軌道がそれて、直撃せずに横へ逸らすことができるわ。護衛侍女の短剣でもできるからやってみなさい」
「リリリリエラ様、あの大きさでも逸らせられるのでしょうか?」
「え?」
火の玉はどんどん大きくなり、大玉ころがしの玉くらいになっていく。それでも魔族はやめようとしない。
「ちょっと、どこまで大きくする気!?」
大玉ころがしの玉の倍くらいになったところで魔族は腕を引いた。投げてくる動作に間違いなかった。
「どう見ても無理ですぅ! マヤさんお願いします!」
「え!? ちょっ、わたしを前に持ってこないでえ!」
魔族は引いた腕を勢いよく押し出した。
「ファイアボール!」
ドンと巨大な火炎の玉が投げられた。
「いやああ、リエラさまああ!」
涙目で叫びながらもリエラさんを庇おうとするフィリアさん。わたしの陰に入ってだが。
「ぎゃーっ!」
矢面に立たされたわたしはたまったものではない。
とたんに体が青白く輝く。自分でもオキシジェン・デストロイヤーがわたしを動かそうとするのが分かった。右手が火の玉の方に突き出される。
「
火炎の玉は、魔族とわたし達の中間でバシャアっと青い酸素の壁に当たって止まった。そこでキラキラと光って下に沢山の青白い砂を落としながら削れるように擦り減り、最終的に火の玉は消滅した。
「「「なにぃ!?」」」
驚いたのは魔族だけでなく、味方からもだった。
「ひえええぇ! リエラ様、火の玉が消えました!」
「マヤさん、どういうこと!?」
魔法の火の玉は魔素で作られたもの。だからわたしの出した酸素と強制的に反応させられて魔石の粉に変わったんだ。
「火は相性が悪いか。ならば」
魔族は再び杖を突き出した。
「大いなる水は敵を洗い流し、邪魔なる勢力を一掃せしめん。水の精霊よ、我にその大いなる水を与えたまえ!」
魔族の前で回転する魔法陣の先に、水が轟々と音を立てて集まりだした。魔族は精霊に魔力を食われて汗をかきつつもニヤリと笑った。
「前大戦を生き残った宮廷魔導師がこの杖を作った訳がよく分かる。魔素が無い戦場を想定していたのだな」
「魔素は取っ払ってあるのに、なんでまだ魔法が使えんの!?」
わたしは首をひねる。そして魔族の動きを注意深く見た時気付いた。
杖の先にほわほわとしたものが多数集まって、そこから吸い出されるように水が発生している。
その水はどんどんと量を増し、空中に蓄積されていく。解き放てば鉄砲水のように押し寄せてくるのは間違いない。
「ひゃああ! リエラ様、今度は私達を水で押し流す気ですう!」
「こ、これも躱すとか逸らすとか、そういうレベルのものじゃなさそうね!」
リエラさんを背に庇って真っ青になるフィリアさんは、わたしの服の背中を掴んで、やっぱりわたしを盾にした。
「あのねえ、わたしの華奢な体なんか盾にしたところで、フィリアさんもリエラさんも隠れられませんから!」
「でもきっと、
「わ、わたしをその名で呼ばないで!」
魔族は、機は来たりと目をカッと開き、杖を前へ突き出すと同時に叫んだ。
「ウォーター・フォール!」
どじゃああああー
「水洗トイレかぁ!」
「うひゃあああ、マヤさあん!」
「うあああ、だめだったときは一緒に流されてねっ!
2人の前に立つわたしは青白く輝き、やってくる洪水に向けて、振動させた大量の酸素分子を押し寄せる波のようにいくつも放った。
どばっしゃあーっ
酸素の波が空中の水塊に衝突した。するとぶつかったところからまぶしく輝いて、青白い砂のような魔結晶が堤防に当たった波のようにドーンと打ち上げられ、地面にどさあっと落ちていった。酸素の波がぶつかる度に空中の水塊が減っていく。
数波の酸素の波が水の塊に当たり、ついには水は無くなって、下にはうず高く積もった魔結晶の砂山があるのみとなった。
「
狼狽える魔族。
「魔素がなくなったのにまだ魔法が使えるなんて、なんかその杖怪しいんですけど!
魔族の持つ杖の辺りの酸素濃度が急激に上昇した。
「
酸素が酸化反応するものを求めて急激に振動する。杖が光瞬き、パラパラと魔石粉が落ちる。色は赤紫だ。
「ほー、ずいぶん材質良さそうね。酸素足りないかしら?
杖を持っている魔族の手ごと青い固体酸素で固められた。
「ぬおおおっ!!?」
「
固体酸素が激しく振動し、魔族の杖が、目が潰れんばかりに光った。
「おおあああっ!!?」
ぱああん!
杖は赤紫の砂となって地表に散らばった。
「そ、そんな、ばかな……」
ズシン
「!?」
その時、いきなり地面が震えた。
目線を上げると、魔族の後ろはもうもうと土煙が舞っている。
ズシン
なおも地面が振動する。
ズシン
「ぎゃああーーっ!」
「ひいいぃぃーっ!」
わたしとフィリアさんが同時に悲鳴を上げた。
魔族の後ろで舞う土埃の中から、ファイヤ・ドレイクの巨体が、ぬおっと現れた。