異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

162 / 171
第161話「事後処理」

 

 生き残っていたワイバーンなどの魔物達は、統率する魔族がやられてしまったことで恐慌状態になり、白い山を駆け下って逃げていった。

 しかしワイバーンの一頭は、山を下ったところで待ち構えていたアロサウルスの群れに捕まり、魔素がないので飛ぶこともブレスを吐くこともできず、囲まれてあっさりと捕食されてしまった。

 

 山の縁まで追いかけて行って、一部始終を見とどけたイレムがリネールを見上げて言った。

 

「ワイバーンってAランクじゃなかったっけか?」

「あんなもやしみたいなひ弱な体じゃ、たとえAランクでもヘキサリネの森では生きていくのは至難の業ってことだな」

 

 魔素の少ないヘキサリネでは、魔物は魔素に頼ることができず、動物たちと同様に体を大きくして対抗しないと、生存競争で生き残れないのだ。それ故にヘキサリネの魔物は、他の地域の魔物より筋骨隆々で大型なのである。

 

「他の逃げた魔物はどうします? 領都軍で追いますか?」

 

 ポーションで回復したユスティニアス中隊長がヴェルディ領主に尋ねた。

 

「いや、魔族がいなければ組織だった行動はできまい。ハンターギルドで探検者(エクスプローラー)に討伐依頼を出して始末してもらおう。探検者(エクスプローラー)の稼ぎにもなるし、そもそもあの様子じゃ、どれくらい生き残るかもわからん」

「魔物達には厳しい土地なんですね、ヘキサリネって」

 

 マヤは連れてこられてしまった魔物達に同情すると、両手を胸の前で合わせた。

 

「ところでフィリアさん」

 

 振り返るとマヤはフィリアに向き合った。

 

「はい」

「さっきはよくもわたしを盾にしてくれましたねぇ~?」

 

 フィリアは真っ青になると、ずざざーっと後ずさりして、ひれ伏して土下座した。

 

「た、大変申し訳ございません! いえ、あの状況を打破できるのはマヤさんしかないと、もう反射的に本能的に無意識に!」

「実際打破しちゃったものねえ」

 

 リエラまでそんなことを言う。そんなリエラも頭を下げた。

 

「うちの護衛侍女が失礼しました。お恥ずかしいことですけど、私もあの場ではマヤさんの後ろに隠れちゃったわ。トロ様のお弟子様であるマヤさんならなんとかしてくれるって、そう祈りながら、ね」

 

 祈るというところでは拝むような仕草をした。ちらっと顔を上げて、お茶目に片目を瞑ってではあるが。

 サンドラが、わあああっと両手を口に当てて驚く。

 

「皇女様がマヤちゃんに頭を下げてるの! 拝まれちゃってるの!」

「おおおっ、とうとう皇族方にも信者が?」

 

 リネールは違った喜び方をする。

 

「うああああ、リエラ……マリエラ様にまで頭を下げてもらうつもりはないんですよ!」

「だって助けてもらったわけだし」

「そ、そこはお互い様ですから!」

「やっぱリトバレーを危機から救った英雄は違うよねえ」

「国も救っちゃうかもなの」

 

 マヤはちらりとサンドラ達の方を見る。

 

「そ、そろそろ女神と呼んでいただいてもよろしくて、よ?」

「……」

 

 動きが止まるサンドラとリネール。

 

「め、めぐぁm……げほごほぐほ!」

 

 何か言おうとしてフィリアが盛大に咳き込んだ。

 

「そんなに言いたくなければいいですよ!」

「ち、違うんですマヤさん! 言おうとしたら何かに阻まれて……!」

「もういいです。それよりフィリアさんには、お詫びついでに戦闘の副産物でできた魔石の粉を回収してもらいます」

 

 マヤが闘った跡地には、魔族の放った魔法や、ファイヤ・ドレイクの体から生じた魔石結晶の砂が大量に積み上がっていた。水色から赤紫まで様々な質の魔石が、またも大型ダンプカーが必要なほどにある。

 

「こ、これ持って帰るんですか……?」

「残しておいても探検者(ハイエナ)達のためにならないです」

 

 青ざめるフィリアの肩をリエラがパンッと叩いた。

 

「やるわよフィリア! 私も手伝うから。めぐぁm……ケホケホケホざまに救ってもらった恩返しをしなきゃ!」

「俺もやるよ、リトバレーのめぐぁm……げへっげへっげへっのためなら!」

「わたしもやるの! 咳き込みそうだから言わないの!」

「何がわたしを阻んでるのっ!?」

 

 こうして奇襲部隊は、第一目標の転移魔導具の破壊を達成し、第二目標の魔族捕縛には失敗したが、ヴェルディの法力でそれなりの情報を引き出せたので、無事作戦を終えたと評価。魔石と魔物をマヤのストレージにしまうと、最前線基地まで戻ることにした。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 魔族領の某所では、パパンドレウに続いて二人の武装兵を送ろうとしたが、武装兵が転移門に乗って転送を開始したところで、いきなり光の柱がパアンと弾け、乗っていた武装兵が放り出された。

 老年の魔族が転移門に駆け寄って、魔導具を操作する魔法陣を開いて色々操作をしていたが、やがて顔を上げた。

 

「向こう側の転移門の応答がなくなった。地脈が通じん」

「なんだと!?」

「どういうことだ!」

「転移先と通じなくなって転移が中断されたようじゃ。向こう側が壊れたか、無くなってしまったか」

「なにい!?」

「ヘキサチカの西に設置した転移門の時と同じか!」

「あの時は転移が3分の1ほど進んだところでいきなりギガント・ウルフの魔石が割れて、その後まったくこちらの転移門と通じなくなった。結局転移先が無くなったことによるエラーだったのじゃが」

「もしかして刻まれている魔法陣に欠陥があるのでは?」

「そんなはずはない。いにしえの時代に、盛んに使われていた装置じゃ。転移門は魔法陣も魔導回路も含めて結晶化して作られておる。たとえ鋼鉄の塊で叩いても簡単に壊れるようなものでもない。ミスリル製の剣にでも切られない限りはのお」

「魔法鉱石のミスリルは、魔族との交易が途絶えている今、人間には手に入らないはずだ」

 

 軍団参謀(トリプヌス)達はあれやこれやと想像を掻き立て、話し合っていたが、しばらくして意見の集約がされた。

 

「とにかく、ヘキサリネ方面に投入した大規模魔物集団(ケントゥリア)軍団参謀(トリプヌス)師団長(ケントゥリオ)の全てと連絡が取れなくなった。これでヘキサリネの領都方面の作戦継続は難しくなったぞ」

「作戦がとん挫している可能性もある。至急調査隊を送り込むべきだ」

「レジストラジオネ・ロッサの回収もだ」

「自決したとすればだがな。観測班からレジストラジオネ・ロッサの打ち上げは確認されてはいないのだな?」

「もともとヘキサリネ方面は魔素が少なく、あまり高くは打ち上がらないだろうと予想されていた。打ち上がっても観測できない可能性はある」

「現地に潜入して探すしかないということか」

「魔王様にはどう報告する?」

 

 しばし沈黙が走る。

 

「……周囲の国への作戦は順調に進んでいる。もともとヘキサリネは、人間どもの世界では弱小国。周囲の国との国力差は大きく、なんとか生きながらえていただけの国だ。我々ではなく、人間どものパワーバランスに基づいて人間どもに潰させればいい」

「それが賢明ですな。確か国境を接している国はワリナとミリヤ。双方から攻めさせればよい。できますかな?」

「お任せください。どちらもまもなく我らの傀儡が国を掌握するでしょう」

「ではそのように報告を」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。