異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~ 作:RightWorld
三国トップの世間話に、わたしが入って場を乱しすぎちゃったせいで、下手するとへそ曲げたレオナルド王子がヘキサリネに宣戦布告しちゃうかもしれなくなってきた。取り返し付かないことになる前に、なんとか元に戻さないと。
「さ、さあ、わたしごとき愚民の言うことなんか忘れて、本来の国を総べる方の雑談に戻ってくださいな。
なんでしたっけ、カミワ領がワリナ王国に急に仲良くなろうって態度を変えて、レオさんとしては怪しさがぬぐえないって感じ? ワリナからしたら、緩衝地帯か、出城になるような所ができるうえに、お金持ちな国が味方になって、良い話のように見えますよね」
「……お前、たまたま耳に入っただけじゃなくて、しっかり内容理解してるじゃねえか。ただの平民とは思えん!」
「いやあ、わたしの育ったところって教育水準が高いから、平民もみんなこれくらい考えられる知見があるんですよ」
「そんな国あってたまるか。そんな平民でいっぱいな国があったら、王や貴族なんかすぐ淘汰されちまうだろ」
「それでも平民は支配され続けるんですよねえ。政治家とか金持ちとかに支配者が変わるだけなんですよねぇ。って、それはどうでもよくて、カミワ領がワリナと同盟することは、何か悪いことがあるんですか?」
「……いや、何も。願ったりかなったりだ」
「それじゃレオさんは何を心配してるんですか?」
なんとか話を元に戻せたみたいで、わたしは一安心する。
「俺の分析では、カミワ領は中立的ではあったが、どちらかというとシーガル帝国寄りだった。もともとシーガルにいた貴族の分家が立ち上げた国だしな。シーガルがその血筋を利用して干渉してくるのは当然あるだろう。ただあまりにも莫大な富を自我生産できるから、対抗する力をつけることができて、突っぱねてきたってだけだ」
「ふうむ。でも独立国を築いちゃうのはさすがに反感を買ったでしょうねえ。シーガル帝国からの嫌がらせが我慢の限界に達したってことはないんですか?」
「嫌気がさすほどの圧力はむしろワリナの方がさんざんやってきた。二代前のワリナ国王の時代には、カミワ領を占領しようと侵攻したことがある。すぐ撃退されて、逆侵攻をされそうになったから、外交で解決した。カミワが塩を外国に売る際、ワリナ王国を通過する時の通行税を20年間無税にしたんだ。この通行税と国境でのにらみ合いはその後も引きずって、今でもずっと続いている。その時だってカミワはシーガルに助けを求めなかった。そんなだから、ワリナに擦り寄る気がしれんのだ」
レオさんの話を聞く限りは、わたしでもカミワの心変わりは不思議に思えた。
「ふうむ。確かに自国で解決できる力も実績もあるのに、急な態度変換は怪しいですね。ワリナの王女様があまりにも美女だから、娶りたくて自国の独占利益を削ってでも手に入れたくなったってことはないんですか?」
「なんなんだその発想は。マヤの頭の中はいったいどうなってんだ」
「ラノベの悪徳貴族では、ありがちなシナリオなんですけどねえ」
ヴェルディ様がまともな方に修正した。
「さっきの仲介した辺境貴族だが、様子はどんなだった?」
「熱心に王女が嫁ぎに行くべきだと説得してきたと聞いている。ケンの親父は、まるでカミワの回し者のようだったとの印象を持っていたらしいが」
「カミワの方から援助を乞うてきてるなら、普通なら足元を見てワリナの利益を多く取ろうと強気で交渉すると思うのだがな。その貴族、仲介を引き受けるにあたって、どんな利得を得たんだろうか。自分達に相当な見返りを得る算段があるか。本当にカミワの考えに賛同したのか」
「分からん。ヴェルディに尋問してもらいたいぜ」
「今のワリナには行きたくねえなあ。その地方貴族の忠誠心はどうなんだ?」
「悪くはなかったと思う。ただ……あそこは第二王子派なんだ」
「第二王子派?」
おっと、ありがちな派閥争い? 権力闘争?
「さっきのマヤの例えじゃねえが、俺はかなり自由にやりたい事をやってきた。それが気に食わない連中が国内には多くいる。というか大半だ。俺が王太子を名乗っていられるのは、
「レオナルド王子から見て第二王子ってのはどうなんだ?」
「小物だな。地方領主なら良いかもしれんが、このご時世と、国内でさえ一枚岩でないワリナを率いるには足りねえ」
「ふうむ」
ヴェルディ様は顎を撫でて考え込んだ。
「国内が一枚岩じゃないってバラしちゃって大丈夫なんですか?」
わたしが聞くと、レオさんは、あっマズったという顔をした。
「ヴェルディ、法力を?」
「いや、使ってない。ただ俺の周りの親しい連中は、いつもこんな感じに胸襟を開いている」
「ちっ、ちょっと油断して気を許しすぎちまったみたいだな」
「わたしの目指す三国同盟には良い傾向です」
ニコニコとわたしは笑顔を振りまく。
リエラさんが欲しい情報を整理した。
「カミワ領との同盟を進めたがるワリナ国内の勢力が誰なのかと、カミワ領とシーガル帝国の間に何があったかを、もう少し詳しく知りたいですね」
するとヴェルディ様が助け舟を出した。
「カミワ領とヘキサリネは塩取引以外にも関係がある。シーガル帝国との事はこっちでも探ってみよう」
「本当か?」
「連絡はレオナルド王子に直接の方がいいな?」
「それで頼む。助かる」
「気にするな。独自の人脈は築いておいた方がいい。俺を使いたい時は遠慮せず言ってこい」
ヴェルディ様の言葉に、レオさんは表情を和らげた。
「マジですか、ヴェルディお兄様! 俺、すげえ頼りにしてます!」
わたしは、二人が理想的な連携をしてくれたのに喜んで、思わずレオさんの声色を真似てそんなふうに代わりに答えてあげた。
「マヤてめえ、その口、縫い結んでやる!」
「レオさんの心の代弁ですよー」
「待ちやがれー!」
◇◇◇
最前線基地の南門が見えてきた。
ユスティニアス中隊長が任務達成とサインを送ると、門の所の兵士が大喜びして基地内にすっ飛んでいった。
わたしはレオさんに捕まえられて、さんざん頭をぐりぐりされたけど、なんでだか痛みもそんなになくて(もしやエナジ草ドリンクのせい?)、やけに楽しい帰り道だった。
「わたしにしては珍しく口も軽くって、なんだか気がおおらかになった感じがするね。ヴェルディ様、本当に何もしてないの?」
「してねえぞ。本当だ」
ヴェルディ様は両手を上げて、嘘偽りはないとアピールした。するとサンドラちゃん。
「もしかするとエナジ草ドリンクの効果かな。ハイな気分になるの。あとわたしの薬効アップ法力で、楽観的で大胆になる作用が強く出ることがあるの」
わたしはサンドラちゃんの方に向いて笑顔で固まった。
「ねえ、あのドリンク大丈夫なの? 痛みがなくなってハイになってって、覚醒しちゃうおクスリじゃないよね? ヤバイものじゃないよね?」
「使用方法を守って常用しなければ大丈夫なの。でも疲労を感じなくてハイになってる分、帰ったら猛烈に疲れが来るから、ゆっくり休む時間取ることが大事なのね」
「ちなみに常用したらとうなるの?」
「興奮しっぱなしになって、眠れなくなるらしいの。人間って眠らないと体に色んな悪い事起こるそうだから、そっちの症状で大変なことになると思うの」
「……」
眠らないとたしか人間って死んじゃうんだよね?
やっぱあれ、ヤバい薬だったわ!