異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第168話「マヤちゃん、お風呂に入る」

 

「マヤちゃん、マヤちゃん」

「ふわっ!!」

 

 サンドラちゃんに激しく揺さぶられて、わたしは目を覚ました。

 

「マヤちゃん、ここどこ?」

「え?」

 

 サンドラちゃんが不安そうな顔をして、今いる部屋の中を指差す。

 ヘキサチカの宿屋街にある、リトバレー村が借りている町宿の部屋じゃない。豪華すぎる。天蓋付きのベッドだし。わたしのいた世界の知識でいうと、洋風ホテルのスイートルームくらい広くて天井も高い寝室だ。泊ったことないから知らないけど。

 

 二人で窓に駆け寄ってカーテンを開けると、遠くに町を囲むインパクトクレーターによる外輪山が見えた。ってことは領都ヘキサチカの中だ。

 

「ここはヘキサチカだね。領都に帰ってきてたんだ」

 

 コンコンとドアがノックされた。

 

「ご起床でしょうか?」

「あ、はい!」

 

 反射的に返事してしまった。

 

「失礼します。開けてもよろしいでしょうか?」

 

 サンドラちゃんと顔を見合わせる。相変わらず不安そうな顔をしている。

 

「ど、どうぞ」

 

 ドアが開くと、メイドさんが二人、お辞儀をして現れた。

 

 このメイドさんの制服は知っている。わたしもサンドラちゃんも持っている。領都邸のだ。なんで持ってるのかといえば、ミリヤ、ワリナの大使館開設を記念する式典の晩餐会で、給仕をやらされたからだ。

 

「ここってもしかして、ヴェルディ様の領都邸ですか?」

 

 左様でございますとメイドさんは答えると、服と思われる物とタオルを乗せたトレイを、台の上に置いた。

 

「大変お疲れのようでしたので、領主様のご命令で、勝手ながら起こさずにお部屋に運ばさせていただきました」

 

 ここでわたしは、昨夜の領都到着時の顛末を聞いたのだった。

 うあーっ、どんな顔して寝てたんだろう。恥ずかしい。

 

「一時的なお着替えを用意しましたので、湯あみをされませんか? ご着衣はこちらで洗濯してお返しします」

 

 再びサンドラちゃんと顔を見合わせる。そして自分とサンドラちゃんの身なりを見た。

 上着とか探検者(エクスプローラー)で出かけるときの服は脱がされていて、頭からすっぽりかぶる薄手のワンピースになっている。部屋着というよりパジャマみたいなものだろうか。下着はそのままだった。さすがに下着をはぎ取ることはしなかったようだ。顔や手足の汚れは拭いたみたいで、土汚れも残ってない。身体本体はベタついたままだ。これで隅々まで綺麗に拭き取られていたら恐怖だったろう。

 その前に、それだけの事されても起きなかった自分の方が恐怖だ。いや、エナジ草ドリンクが恐怖だ。

 

「臭ってたらいやだし、行こうか」

「そ、そうね」

「ご案内します」

 

 わたしとサンドラちゃんはメイドさんの一人に連れられて、掃除の行き届いた廊下を歩いて、お風呂場に向かった。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 お風呂場は大理石らしきもので床や壁が作られた8畳ほどの部屋だった。手前に脱衣場がある。

 大きな壺にお湯がたっぷり入っていた。壺に入って浸かるのかと思ったら、壺のお湯をすくって掛けるんだって。残念なことに、湯船に浸かる文化はヘキサリネにはないのだ。お湯は好きなだけお使いくださいと言われた。

 石鹸も渡された。珍しい、香料が添加されてるじゃん。何かの花の香りだろうか。色は濁った緑がかったもので、素朴な感じなのがこの世界っぽい。

 

「そ、それじゃ入ろうか」

「う、うん」

「サンドラちゃんと一緒に入るのって、初めてだね」

「そ、そうね。そもそも一緒に入れるほど広い湯あみ部屋がないの」

 

 そういやそうか。リトバレー村で借りてる宿だって、部屋の隅に身体を拭くだけの場所があるだけだ。お湯をざあざあかぶるような所はないのだ。わたしはたらいのようなのを買って、狭いところで無理して行水みたいなことをしてるけど。

 

 服を脱ごうと思うが、お風呂係らしきメイドさんが二人、ずっとついている。

 

「えっと、お二人はそこにずっとお控えなさるの?」

 

 表情を変えることなく、はいと答えられた。お湯が減ったらただちに補充するのだという。

 

「お身体もお洗いしますが?」

「だ、大丈夫、自分で洗います!」

 

 偉い人ってそういうもの!? うーん、見られながら服脱ぐのって嫌だなあ。

 いや、いっそのこと、高位貴族の入浴を体験した方がいいのでは。

 

 サンドラちゃんと恥じらいながらすっぽんぽんになった。

 脱衣籠に入れた下着は、ただちに持ち去られた。洗濯するんだよね?

 

「サンドラちゃん、洗ってあげようか」

「そ、それはさっき、マヤちゃん断ってたじゃん。断った意味ないの」

「むう、友達どうしの洗いっこはいい気がするのに。でも女中さんに洗ってもらうのは遠慮したいのはなんでだろう」

「い、いくよマヤちゃん」

 

 わたしの手を引こうとしたサンドラちゃんだけど。

 

「……わぁ」

 

 サンドラちゃんが小さく驚きの声を出した。

 

「マヤちゃんって、本当に大人なの」

「? そうでしょう? 前から言ってるでしょ」

「うん。お姉さんなの」

 

 17歳だもん。サンドラちゃんと4つも違うのよ。

 とはいえ、生まれたままの姿になったサンドラちゃんを改めて見れば、お胸は本当に遜色ない、というか負けてるかも。民族的なものか、体のラインもあっちの方が大人びてる気がしないでもない。

 どこを見てお姉さんだと思われたのかしら。

 

 わたしはサンドラちゃんの目線をよっく観察した。んで、分かった。

 わたしは真っ赤っかになった。

 

 毛か! 黒いから、目立つのか! いっぱい生えてるように見えるのか!

 あなたは金髪だから産毛のようで、一見無いように見えるけど!

 それを差し引いても量や範囲がわたしの方が勝ってるってか!

 

 ……。

 ちなみにお風呂係のメイドさんは、頭を洗う時お湯を掛けてくれたのでありがたかった。

 シャワーを発明しよう。一人でゆっくり入るために。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 お風呂から上がって、メイドさんが用意した服を見た。

 

「これ着るの!?」

「はい。滞在中の一時的なお召し物としてお使いください」

「ええ~~っ」

 

 またまたサンドラちゃんと顔を見合わせた。

 漫画なんかでお貴族様がよくお召しになる、スカートがぶわっと開いたきらびやかなドレスではないんだけど、ふりふりしたワンピースが準備してあった。わたしのは黄色っぽいので、サンドラちゃんは紺色の。

 

 で、その前にまずは下着。着てたのはどこかへ洗濯に出されてしまったので、領都邸の方で用意してくれていた。なんだか領主様から渡されたような気がしちゃってヘンな気持ちだ。

 紐で結ぶショーツと、ブラはなくて、膝下まで丈のあるスリップみたいなの。これにメイドさんがコルセットを巻こうとしたので、お断りした。寛げなくなるよ。

 そしたらドレス風ワンピースを着て、パンプスみたいな靴履いて完成。

 

 なんだか着せ替え人形になった気分だわ。

 

 

 

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