異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第169話「マヤちゃん、依頼達成で畏れられる」

 

 服を着たら食堂に案内された。

 前食べてから何時間経ったのかな。おなかがとても減っている。

 食堂に行くと、リエラさんとフィリアさんがいた。

 

「はあい、待ってたわ」

 

 手を振るリエラさん。フィリアさんは椅子から立ち上がってお辞儀をした。

 

「おはようございます……って、これ朝食?」

「時間的にはお昼ご飯かな」

 

 8人くらい座れる長テーブルにティーポットとカップが置いてある。2人はお茶を入れて飲んでいた。

 

「ねえねえフィリア。マヤさんとサンドラさんがかわいい!」

「はい。とてもお似合いです。随分と印象が違うものです」

 

 リエラさん……というか、マリエラ姫がわたし達を指差して興奮している。

 

「そ、そんなことないの……」

「わたし、ボーイッシュな服の方が好きなんだけどな」

「何言ってるの、もったいないわ! 今度お二人に似合いそうな服、贈ってあげますね」

「ミリヤの皇女様から服をもらうなんて、畏れ多くて着れないの!」

 

 庶民も庶民のサンドラちゃんは卒倒しそうになる。

 

 そういえば、フィリアさんはいつも通りのメイド服。だけど全然汚れがない。

 リエラさんは装飾のない、袖やスカートのひだが大きい薄桃色のドレス。胴回りは紐で縛るようになっている。お姫様らしく細身だけど、まさかきゅうきゅう締め上げてないよね?

 

「リエラ……マリエラ姫は服どうされたんですか? ここで借りたの? フィリアさんはいつものメイド服だけど新品みたいだし」

「リエラでいいわよ」

「そういう格好されてると、マリエラ皇女様の印象の方が強くて」

「そんなかしこまった服じゃないのだけど。これはフィリアが持ってきてた服よ。ストレージに何着か入れてあるの。もちろんフィリアのは予備のね」

「はい。ドレスもありますので、たいていの場面には対応できます」

「そうか、フィリアさんがいるとそれができるのか」

「はわわわ、とても普通の探検者(エクスプローラー)の感覚じゃないの」

 

 まさか魔物討伐にフォーマルドレスを持ってきてるとは思わないよね。

 わたしも真似しよう。

 

 席に着くと、ただちにメイドさん達が料理を持ってきてくれた。

 食事をしながら、わたしは気になったことを聞いた。

 

「マリエラ姫もお風呂入ったの?」

「利用させてもらったわ」

「フィリアさんと一緒に?」

「そうよ」

「お風呂係の前で?」

「それは退出してもらったわ。フィリアがいるし、基本皇女だから他の国の世話にはならないわ」

「知らない世界だ」

 

 フィリアさんに体洗ってもらったのかな。

 

「フィリアの体はねぇ……わたくしが洗ってあげたのよ」

「し、しなくていいといつも言ってますのに!」

「し、知りたくない世界だ」

 

 仲良いのは知ってるけど。

 ところでと、サンドラちゃんがきょろきょろした。

 

「リネールさんは?」

「まだ起きないみたいね」

「「はあ!?」」

 

 わたしとサンドラちゃんが同時に首を、お部屋にいたメイドさんの方に向けた。

 

「叩き起こしてきてください!」

「無理やり起こしていいの!」

 

 異口同音で、ただちにリネールさんを連れてこいと言った。

 

 ふてぶてしくも、お風呂入ってこざっぱりしたリネールさんが現れたのは、それから30分も経ってからだった。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 女性陣は食事が終わって喫茶室へ移動した。リネールさんはまだ食堂でもりもり食べている。

 お茶を入れてもらっていると、新たなメイドさんがお辞儀して部屋に入ってきた。

 

「失礼します。探検者(エクスプローラー)ギルドの方がお見えになりました」

 

 メイドさんが一人の女性を連れてくる。それはギルドの受付予備嬢のレーナさんだった。

 きょろきょろと辺りを見回して挙動不審になっている。この人も庶民なんだろう。こういうところには慣れてないみたいだった。

 

「どうしたんですか?」

 

 わたしを見たレーナさんが目をぱちぱちした。

 

「え、マヤさん!?」

「その驚きようはなに?」

「あ、いえ、失礼しました。いつもと印象が全然違ったもので……。とっても素敵です」

「おおっ! ギルドの人にそんなこと言われたのは暫く記憶にないよ!」

「大人しく座っていれば、異国情緒漂う神秘的な女の子に見えるのに……」

「あ゛!?」

「ああ、ごめんなさい! デストロイしないでください!」

「しないよ! それでなに?」

 

 わたしの法力の実物を見たことがないレーナさんには、いったいどんなふうに伝わっているんだろうか。

 

「あ、あの、マヤさん達はお疲れで、こちらでお休みをしているからということで、依頼完了の手続きを出張処理しに来ました」

「あっそうか。わたし達、ギルドに帰ってないもんね。えっと探検者(エクスプローラー)タグはザックの中なんで……」

「こちらにございます」

 

 メイドさんが台車に乗せて、わたしとサンドラちゃんのザックを持ってきた。準備してあったとしか思えないタイミングだ。

 レーナさんが肩掛けカバンから、わたしが受注した依頼書を出す。依頼内容は大雑把に『ヘキサリネ軍および探検者(エクスプローラー)が魔物発生源を発見したら、そこを破壊しろ』だ。既にでっかく「依頼達成」の判がばーんと押してあった。

 

「報酬ですが、マヤさんの商業ギルドの口座に振り込んでおきます。現物でお渡しする額ではないので」

「そう言えば報酬がいくらか聞いてなかったわ。いくらなんです?」

「金貨800枚です」

「えっ、800枚!? 日本円に換算すると8千万円!?」

 

 サンドラちゃんも、横でひゃあと驚いている。

 

「正規軍を動かすとなった場合にかかる費用をもとに算出しているそうです。これでも正規軍よりずっと安く済んでるそうですが。もっとも1日で終わるとは思ってなかったでしょうけど」

「転移魔導具の破壊の依頼? 確かにレオさんの剣でも切れなかったし、どうやれば壊れるのか、どれくらい時間がかかるのか、何人投入すれば壊せるのか分からないあれを、確実にすぐ壊せるマヤさんに任せれば安上りよね。妥当じゃない?」

 

 リエラさんが事もなげに言う。

 

「それが国家元首級に目を付けられる、なんとかデストロイヤーの価値ということです」

「あうっ!」

 

 フィリアさんに止めを刺された。

 サンドラちゃんは、まだひゃあーっと言ってわたしを見ている。

 

「わたしのお姉さんはやっぱりすごいの」

 

 そのお姉さんと認識した過程を思い出すと喜べない。

 するとレーナさんがリエラさんをじーっと見て固まっていた。

 

「リ、リエラさん……ですか? 声を聴くまで分かりませんでした。……でいいんですか!? え、お姫様みたい!」

「馬子にも衣裳? うふふ、マヤさんみたいに変身した?」

「そんなもんじゃないです! 次元が違います!」

 

 何気にディスられた気がする。まあわたしも次元が違うには同意だけど。

 

「リエラさん、なんとなくマリエラ様に似ているような……」

 

 レーナさんは、横に立つ護衛侍女(エスコートメイド)のフィリアさんを並べて見て、顔を青くする。

 

「ま、まさか、ほ、本当にマリエラ姫なんじゃ……」

「マリエラ姫が探検者(エクスプローラー)なんてする人に見える?」

 

 多くのごろつき探検者(エクスプローラー)を日々相手にしているレーナさんは、少し考えると首を横に振った。

 

「……いえ、あんな野蛮人集団とマリエラ姫が同一などと、一瞬でも思ったあたしがどうかしてました」

 

 レーナさんの探検者(エクスプローラー)への印象って……。

 

 わたしって野蛮人なの? っと寄ってきたサンドラちゃんにレーナさんは、「サンドラさんは別ですよー、なんてかわいいの!」と抱きついていた。

 

「私達討伐増援隊の報酬はどうなの?」

 

 リエラさんが聞く。

 

「あ、皆さんも依頼は既に達成になってます」

 

 レーナさんはリエラさんパーティーと、リトルウィングの受注した依頼書を出した。どちらも「依頼達成」の判が押してあった。

 

「討伐増援隊のパーティー報酬は、参加メンバーで山分けということになってます。まだ討伐した魔物や回収した素材の集計ができてないので、金額確定は後日になります。聞くところによるとマヤさんが倒した魔物の数が莫大らしいので、そちらも凄い額になると思います。確定次第、皆さんにお支払いします」

「あー、数が多いのは、デッカーさんと競争することになったせいだよ。でも皆に山分けしたら、たいしたことなくない? サンドラちゃん達リトルウィングも山分け対象にはいってるんだよね?」

「リトルウィングも対象です。討伐したオーガ兵が200体とも聞いたんですけど、それだけでも20人で割って、一人当たり金貨120枚行くと思います」

「ひゃああーーっ」

 

 サンドラちゃんがまた悲鳴を上げている。

 

「ワイバーンもかなりの数になったと聞いてますが。それもマヤさんが大部分をやったみたいなことも。……本当に?」

「あー、いやさすがにそれはないでしょ。わたし女神ですから、そんな破壊神みたいなことするわけないし」

「本当なんだ」

 

 なぜに聞き入れられない!?

 

「あと、マヤさんが保管している魔物は、後ほどギルドに持ってきてください。魔石、装備素材、お肉など、解体処理しないとなので。……あのぉ、ファイヤ・ドレイクも。本当に持ってるんですか?」

「ファイヤ・ドレイク? あれ実体の体は手足くらいしか残ってないけど。それでいいのかな」

「ひいいっ! 本当なんだ!」

 

 ものすごい勢いでレーナさんが後ずさりしていった。もしかしてわたしが引きちぎって木っ端みじんにしたと思われてる!? 他の部位は魔素で作られてたから、そうなっただけなんだけど。

 

「ち、違うよ。あれはまだ転送しきれてなくて、無い部分を魔素で補ってたから実体がそれしかないってだけで……」

「天災級を引き割いて手足バラバラにい!」

 

 だめだ、ぜんぜん信用してもらえてない。

 

「と、ところで、わたしが空気中の魔素とかから回収した魔石は、渡さなくていいんでしたよね?」

 

 息を整えてからレーナさんは答えた。

 

「は、はい。それはマヤさんだけができる、いわば加工素材ですので、他の探検者(エクスプローラー)では採取できないものですから、討伐隊の戦果対象外です。個別に売りに出して下さい。ギルドでも買取します」

「はーい。それじゃ当面は換金できる資産として取っておくかな」

 

 魔石は金塊や宝石みたいな資産ともいえる。どこの町へ行っても換金できるし、ランプやコンロの燃料にもなる。そのまま持っていてもいいだろう。

 

 サンドラちゃんとリトルウィングの依頼と、リエラさんのパーティーの事務処理も、報酬額の確定と支払を残して済ませると、レーナさんはギルドに帰っていった。

 

 

 

 

 今回のクエストで、お金も相当稼いだ。魔石も大量にゲットした。今まで貯めた分も合わせれば、東京でマンション買ってもお釣りがくるくらいある。

 

「これだけあれば、お師匠様の後を継ぐ旅に出られるかな」

 

 

 

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