異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~ 作:RightWorld
マヤは宿に飛んで帰ると、サンドラとリネールにギルドであった話をした。
「そういうことなら、リトルウィングでパーティー組んで行こっか。ちょうどリトバレー村で薬用のキノコを欲しがってるの。アイポメアニールの元群生地に行った時、途中にキノコ場があったでしょ? あそこで採れるものだから、行きたかったの」
「ライナーさんに馬車を借りようよ。そうすれば往復が楽になるよ。キノコも運べるしね」
「わあ、馬車は助かるわ。ありがとう、サンドラちゃん、リネールさん」
そういうことで、リトバレー村の商業担当のライナーさんから馬車を1台と御者を借りて、荷物を放り込むと、リトルウィングは北の森へ向け、さっそく出発した。
◇◇◇
北の森は魔物討伐も終わり、運輸ギルドの馬車も行きかってるので、最前線基地までの旅程はいたって平和だった。
1時間ほど馬車に揺られ、まずは北の森の入口にあるキャンプスプリングに寄る。
ここは最前線基地への補給拠点でもあり、スタンピードの時には一時魔物に占領されたところだ。補給拠点の隊長に保管されている魔物があるか聞いたところ、輸送ギルドによって全て領都へ運ばれたとのこと。近いから真っ先に持って行ったらしい。
ということでここでは休憩だけしてすぐに出発。
夕方には最前線基地に到着した。
リトルウィングが来たと伝わるや、駐屯兵に総出で出迎えられた。
なにしろマヤ達は、先日ここで一大戦闘が行われた時の戦友でもあるのだ。特に負傷兵を治しまくったサンドラは女神様とまで言われたし、現在中央広場に山積みされた大部分の魔物を一切戦闘することなく討伐してしまったマヤは、
「
「「「バンザーイ、バンザーイ!」」」
「やめてえええ、わたしのことも女神って呼んでよお」
「分かりました。ではこれからは
「なんだそれ、いやああああー!」
今日も今日とて戦闘がなければ叫んでるだけのマヤと違って、サンドラは救護所に寄って、「ちょっと腹の具合が悪いんだが」とか「作業中に怪我をしちまって」とかいう兵士を、即席の薬を作って治療してしまい、本物の女神っぷりを発揮していた。
「また負けた……」
「人には向き不向きってのがあるんだよ。」
「リネールさん、それってわたしに女神は向いてないって言ってます?」
リネールは何も言わず、いい笑顔だけを返してきた。
「それよりマヤさんは、日が暮れる前に魔物を片付けた方がいいんじゃない?」
「うう、そうですね。リネールさんの言う通りです。わたしに向いてるのは死体処理ってことですね」
「そこまでは言わないけど」
中央広場へ行くと、広場全部を使って針葉樹の葉を被せた山があった。葉は腐敗防止と防臭対策なんだそうだ。穴を掘って、氷を出せる法力者が氷と藁を敷き詰め、そこへ魔物を入れて針葉樹の葉を被せてあるのだという。
兵士が枝付きの葉をどけると、文字にするのを躊躇うような凄まじい光景が現れた。なにせ千頭以上の魔物の死体である。そしてマヤが酸欠死させたものは、苦しみの極致を味わされたような表情で死んでいるのである。
物言わなくなった全ての魔物が、恨み殺さんと睨み返していた。
「ひいいいいいっ!」
処した張本人が一番びびっていた。
一応種別ごとに分けて魔物は入れてあった。兵士達はよくここまで運んできて整理したものである。
葉をどけた途端に、どこからともなく虫が羽音を立てて飛んでくる。腐敗してなくてもそれなりに臭いがするし、死骸には目ざとい連中だ。
「あわわ、虫がわいちゃう。早くしまわないと。みなさんどいてください!
種別ごとの山をひとまとめに固体酸素で覆って、どんどんストレージにしまっていこう、と思ったところで、地面がずずずずっと揺れた。
「な、なに? 地震?」
そしたら魔物の山の横の地面が盛り上がり、どばあーっと土管が突き出てきた。
ブゴオオオオォォォォーッ!
筒の奥から響くような、妙な咆哮が響く。土管が叫ぶなんてことないわけで。
「「「ワームだ!」」」
兵士達が叫ぶ。
「口が割けてる! ポイズン・ワームに進化してるぞ!」
ぎえええっ! レオナルド王子が毒をかけられちゃって大変だった毒持ちミミズのお化けじゃん!
ワームは魔物の死体を狙ってたようで、まだ蓋をしてない魔物の山から大きなオークを咥えようと首を振り降ろしてきた。
「ああっ、泥棒ー!
ワームの頭の上から液体酸素をぶっかける。
ザバーーッと大量の液体酸素をを被ったワームとその下のオークの山が、マイナス190度の低温によって瞬く間に霜が降りて凍っていく。
コイツの倒し方は経験済みだ。魔石器官のある部位を切り離せば動かなくなるのである。動きが鈍くなったところで輪切りにいった。
「
手の指に合わせて飛んだ5本の酸素の刃は、地上部に出ている土管のような胴体を6個に分断した。崩れたダルマ落としのようになったワームの体が地面に散らばった。ちょうど上から3つ目の部位に魔石器官があり、体から魔石を取り除かれてしまったワームは、地面の中の部分も含め動かなくなった。
「おおお、
「さすがは
「「「バンザーイ、バンザーイ!」」」
「やめてーっ! ワームの姿焼き食わせるわよ!」
人を物騒な神様扱いした兵士達にワームの土に埋まっている部分も掘り起こさせている間に、種別ごとの魔物の山を固体酸素で覆って、どんどんストレージにしまっていった。格納作業はあっという間に終わった。
「えっ、もう終わりか!?」
「1ヵ月かけて運んでいくはずだったのに!」
「さすがは
もうこの死体の相手をしなくてよいとなって、それはそれは兵士達が拝んだり、頭を下げたり、拝んだり、崇めたり、拝んだりと、大変な喜ばれようだった。
掘り起こしたワームは、輪切りにしたところも含め、重さ300kgと推定された。身はひき肉にするとおいしいそうである。
都市伝説にあったミミズバーク……。
マヤは顔を引きつらせた。
ワームもしまうと、魔物の格納作業は終わった。
「マヤちゃん、お疲れ様。ワーム退治もおつかれーなの」
「ね、やっぱり向き不向きだよ」
「リネールさん、もうそれ褒めてないからね!」