異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~ 作:RightWorld
続いてマヤは、簡単に倉庫構想を紙に書いて封書を作り、領都邸に向かった。
門の衛兵に、「マヤが手紙を持ってきた。話をしたがっている」と領主様に伝えてくれと言って、持ってきた手紙を渡した。
門の横でぼうっと突っ立って待ってようとしたら、前に領都邸に泊まった時に世話をしてくれたメイドさんが気付いて、中へ入れてくれた。
接見の間へ連れてこうとしたので、普通の待合室でいいと断った。病院の待合室を思い描いていたのだが、案内されたのは本当に待合室だろうか? 貴賓室って書いてあった気がする。お世話するメイドさんが1人付き、お茶やらお菓子やらを次々と出してくれた。
待ってる間、他のメイドさんが何人もやってきては、こないだマヤが教えた店の
そしてお菓子でお腹が膨れたころ、
「面白ろそうな話じゃねえか」
なんの前触れもなく領主ヴェルディがやってきたので、口に入れたケーキがのどに詰まって、どんどんと胸を叩く。いつもは「領主様、おなーりー」とか衛兵が言ってから現れなかったっけ?
「冷凍冷蔵倉庫か。氷法力者に定期的に氷を作ってもらって、倉庫内を保冷するというんだな? しかし冬場はいいが、夏はすぐ溶けちまうぞ。簡単に溶けない程巨大な氷は普通の法力者には出せねえだろ」
「デッカーさんは氷砲弾とかいって、直径50cmくらいある大きな氷とか、高さ2mの氷の壁とか出してましたよ?」
「デッカーがAランクプラスの
「あの人すごいのかあ」
マヤの中ではデッカーの評価は低い。スタンピードの時デッカーに挑まれて、やりたくもない魔物狩り競争をするはめになったからだ。もっとも競争の結果の方は、マヤがAAランクという災害級の魔物の『ファイヤ・ドレイク』を仕留めて圧勝し、リトルウィングメンバーに一生スイーツを奢る羽目になったので、デッカーの方がマヤに対して圧倒的に悪い心象を持っているのだが。というかトラウマになるほど恐怖を抱いている。
「ちょっと話は逸れますが、ヴェルディ様はディオネアの枯れた葉っぱってどういう使い方を知ってます?」
「魔物の木のディオネアか? 縦2m、横1m、厚さ50cmくらいのでっかい葉っぱだろ? 枯れると硬くなり、物凄く軽くなって水に浮くから、子供のころあれに乗って船のようにして遊んだな。良く燃えるって性質もある。水に濡らしても水分をまったく吸わないから、火床用に持っていく探検者もいるな」
「レオナルド王子から聞いたのもそんな感じでしたね。領都邸には置いてないですか? ちょっとお見せしたいことがあるんです」
「持ってこさせよう」
しばらくして、葉っぱとは思えない、マットレスのようなものが運ばれてきた。
「少し切り取ってもいいですか?」
「構わんぞ」
マヤはティッシュボックスくらいの大きさに四角く切り取って、上下二つに割り、中をくりぬいて箱のようなのを作った。そして青い色の固体酸素を出すとその中に入れて、蓋をした。
「これ、レオナルド王子やマリエラ姫にもやってみせたことがあるんですけど」
マヤはディオネアの葉で作った箱をヴェルディに差し出した。
「持ってみてください」
「お前の出す氷はマイナス200度以下なんだろ? 触れるのか?」
「触れるんですよ」
持ってみてヴェルディは驚いた。
「驚いた。まったく冷たくねえ」
「そうなんですよ。これ、断熱効果が凄いんです」
箱を開けると、中からはちゃんと冷気と靄が出てくる。
孤児院でも種を植えたディオネアであるが、もともと動物を捕まえて栄養にする魔物の捕食植物だ。葉っぱは普段、がま口を開けたように開いており、中は柔らかいマットレスのようになっている。蔓が獲物を捕らえて葉っぱの中に放り込むと、葉っぱは貝のように閉じて獲物を閉じ込め、寝心地の良いマットレスに包みこみながらゆっくりと溶かしていくという、なかなかに恐ろしい魔物だ。
この葉っぱは枯れると硬くなり、マットレス部分が発泡スチロールそっくりになるのだ。それは見た目だけではなく特性もなのだ。
「これで倉庫の壁や床、天井の内側を覆えば、夏でも安心の保冷庫ができます。穴を掘って地下に作れば、地下は温度が一定ですから、さらに省エネ。少ない氷でも低温を保てるでしょう」
「面白れーな。それで俺のところに話を持ってきたのはなんでだ?」
「ディオネアの枯れ葉の特性が知られてない現状、わたしこの保冷の仕組みはなるたけ秘匿した方がいいと思ってまして。ヴェルディ様はヘキサチカを物流ハブ拠点にしたいんですよね? ということは集まる物資を保管する倉庫もたくさん必要なはず。中には保冷保存したいものもあるはずです。
わたしにはお金はまあまああるけど、まだ人脈が無いんで、これの秘密を守りながら建設、運営できる知り合いがいないんです。そこでアイディアをヴェルディ様に開示して、ヴェルディ様が国営倉庫にしたらどうかなと思って」
「ふうむ」
ヴェルディは片肘を突いて考えるような仕草をする。しばらく考えてから、ヴェルディは口を開いた。
「俺のヘキサチカ物流ハブ構想では、商売は基本的に商人達に任せ、安全な輸送路と場の提供を保証する代わりに、税金で上前を撥ねる方式で国庫を稼ぐというのが方針だ」
「うわ、元締めのみかじめ料ですか? いかにも地域豪族らしい。税率が高いと他の所に逃げちゃうんじゃないです?」
「そこの加減が難しいところだな。今は税率を低くして、物流量を増やすことで儲ける方針だ。東の国々との交易ルートを独占しているから、高くしてもいいんだがな。とにかくそういうわけで、俺のところで国営ってのはやらない」
「ええっ!」
「マヤが経営すればいい。秘密を守れる人材がないっていうなら、奴隷なんかどうだ? 主従関係が徹底しているから簡単には裏切らない」
「ど、奴隷!? この国には奴隷がいるんですか?」
「奴隷ギルドが取り仕切って、国をまたいで世界中に展開している商売の一つだ。戦争で国が亡ぶと、大量に奴隷が出回るから、優秀な人材を求めて取り合いになることもある」
「うわあ、野蛮! でも人材バンク的なところもあるのかな」
「昼飯食ったら奴隷商に行ってみるか? 案内してやる」
「えっ、領主様が自ら案内するの!? そ、そんな暇、領主様にないでしょ!? また宰相様とか財務大臣とかに怒られますよ!」