異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~ 作:RightWorld
「マヤちゃん、おっはよー」
「ん~……」
「マヤちゃん、おっはー!」
ばさあっ!
「さぶっ!」
朝早くクエストに出かける時のように、マヤはサンドラに掛け布団を全部はぎ取られて起こされた。
「リリーちゃんが様子を見に来てるの」
「……はっ、リリー?」
「ご主人様、おはようございます。」
部屋の入口のところで、少し申し訳なさそうに中を覗いているリリーがいた。
「えっ、今何時!?」
「8時なの」
「……よかった、10時とかじゃなくて。いきなりダメなご主人様を見せるところだったわ」
「いや8時でも遅いと思うの」
「はぐうっ」
お日様アジャストの体内時計で動いているこの世界の人々は、この季節だと6時には起きて活動を始めているのだ。宿の人など4時、5時起きだ。
「それじゃ、わたし薬師ギルドに行ってくるね」
「あ、ご出勤? ご苦労様ー。サンドラちゃん、あれのお願いも……」
「わかってるの。分けてもらえるか聞いてみるね」
「ありがとう~」
サンドラは今日も超回復ポーションを作りに行く。そして奴隷達の傷を治すために少し分けてもらえないか、頼んでもらうのだ。
マヤは顔を洗って着替えて、男性陣奴隷の部屋に行った。そこに女性陣も揃っていた。
「「「「「「おはようございます、ご主人様」」」」」」
「はわわわ……」
みんながマヤに向かって一斉に挨拶する。
いやあ、大勢に頭下げられるの慣れないなあ。
「お、おはよう、みんな。体調はどう?」
マルリーゼから聞いてみる。
「こんなに良いのはいつ以来でしょう。今日から働けそうです」
「さすがにもうちょっと様子見ましょうよ。今日は宿で過ごしてね」
「なんて慈悲深きお心遣い。この御恩はいつか必ず」
マルリーゼは真面目な
続いてノアナ。おでこに手を当ててみる。
「熱は下がったみたいね。調子はどう?」
「体が軽い。痛いのもないし、あたしも動ける」
「サンドラちゃんの薬が効きまくってるのかな。一応ノアナも今日は宿でゆっくりしてようね」
そしてノーバート。
「あなたは見るからに調子良さそうね。顔色がいいし、艶も出てきてる。一晩でこの回復はナニコレ」
「はいっ。力がみなぎってます。筋肉付けるためにも動きたいです」
「そう。じゃあノーバートには、今日は付き合ってもらおうかしら」
「ははっ!」
「カルラ、リリー、トムト。お世話係ご苦労様。疲れてない?」
「沢山寝たので大丈夫です!」
「元気いっぱいだよ、ご主人様!」
「腹が減ったのぉ~」
ぐううぅ~とトムトの腹の虫がなると、つられて幾つかの
「よぉーし、みんなで朝ごはん食べに食堂に行こうー」
食堂に降りたマヤ達は、隅っこの一角を占拠した。ここは簡易な衝立で区分けされてあって、多少のプライベートを保てるようになっている。
朝食を取りながらマヤは、サンドラとの関係やリトバレー村との関係、今回みんなを買うことにした経緯、最後にマヤの法力と酸素の特性を、改めてざっと説明した。酸素の説明には、前にリトバレー村でローソクを使って実演したのと同じのを見せた。酸素の特性を知ってもらうには、これが一番良いと思ったからだ。
「今日は粉炭をたくさん買って、それを酸素と混ぜて火を点ける実験をしてくるよ。ローソクが激しく燃えるのとは比較になんない燃焼、たぶん爆発が起こって、岩を砕けるんじゃないかって思うんだ」
「岩を砕く!?」
「そんなことができるの?」
「さっきローソクが見たこともない燃え方したのを見れば、ご主人様ならきっとできるんだよ!」
三姉妹は男の子のように期待で目を輝かせた。
いずれにしろみんな見たことも聞いたこともないものなので、マヤは理解してもらえるか心配だったが、頭の良い人ばかりでそんな心配はいらなかった。
「法力というのはえてして不思議なものですが、だとしてもご主人様のは非常に珍しく貴重なものに思います」
「さすがはご主人様だ」
「やばいご主人じゃのぉ」
マルリーゼとノーバートは手放しで感心し、トムトも髭の奥で面白そうに口角を上げている。
疑問なくそのまま受け入れてくれるのはありがたい。
カルラがわくわく顔で聞いてきた。
「それでその法力には何て名前がついてるんですか?」
「えっ!? と、特に無いかな。わたしは『オキシジェン・ビーナス』って呼んでるけど」
「さっきのローソクのように、魔物でも動物でも塵も残さず燃やし尽くせるって言ってましたよね。その凄まじい威力からしたら、もっと強そうな名前の方が畏れられて良いんじゃないでしょうか。例えば……『オキシジェン・デストロイヤー』なんてどうです?」
「んなっ!!」
ノーバートの野郎、言ってはいけない正解を一発で言い当てるとは!
「そ、そんな物騒な名前はダメぇ! その名称を口にすることは許しません。わたしは平和のために法力を役立てたいのっ!」
奴隷達は一様になんで? という顔をして止まったが。
「ご、ご主人様がビーナスって言ってるんだから、あたし達はそれに倣うだけだよね?」
「か、勝手に変えちゃいけないと思う」
「そ、そうだよね。オキシジェン・ビーナス、オキシジェン・ビーナス……」
カルラ、ノアナ、リリーは自分を洗脳するようにそう繰り返した。
そして今日のみんなの役割分担を決めた。
「ノーバートとトムトは、わたしに付き合ってもらう。買い物をして、それから倉庫建設予定地を見てもらって、どんなふうに建てたらいいか検討するのと、岩を取り除くか削るかするための方法を試してみるよ。ついでに孤児院にも寄って、トムトにラースを引き合わせておきましょう。
カルラとリリーは、マルリーゼとノアナの療養と看病のため、宿に残ってもらうわ」
「いいなぁ。リリーもご主人様と一緒にいたい」
リリーは口をとがらせた。
「あはは、連れていきたいのはやまやまなんだけどねえ。孤児院の子達はリリーと歳も近いから、お友達にもなれるだろうしね。でもマルリーゼとノアナをカルラ一人に任せるのは大変だと思うのよね」
「リリー。あたし達は奴隷よ。ご主人様の手足、分身となって、ご主人様のやりたいことの代わりをするのが役目。私情を挟んでご主人様の行動を妨げたり、余計な気遣いをさせてはいけないわ」
「はぁい……」
リリーにきっちり言い聞かせたのはマルリーゼだった。
「まあまあ、マルリーゼもそう厳しいこと言わないで。リリーもね、そのうち連れて行ってあげるから今日は我慢してね。
奴隷ってはいうけど、わたしにはあんまり馴染みのない制度なわけで、どっちかっていうとみんなは、わたしの会社で働いてもらってる従業員みたいに思っているの。できるだけわたしの意向に沿って動いてもらいたいのと、絶対に秘密厳守なこと、そこは命令させてもらうけど、それ以外は普通の人と同じでいいと思うよ」
「変わったご主人じゃ」
「ご主人様の意のままに。ご主人様の考えに付き従うのが奴隷ですから」
「ははは……」
マルリーゼはなかなか堅物そうだ。