異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第199話「大工の弟子と、ノアナの法力」

 

 翌日はノーバートが木材にどんどんと線を引いていった。

 その線に沿ってノコギリで切っていき、さらに「ほぞ」や「ほぞ穴」を作っていく。ノーバートは釘を使わずに柱を組み立てていく技術があるようだ。

 

 マヤは三姉妹を連れて石山に来ていた。ノアナとリリーは、石山が削り取られてから来たのは初めてである。ノアナはノーバートの「ほぞ継ぎ」の技術に感心していた。

 

「ノーバート、木を切るの、わたしやってあげようか?」

「ご主人様が? ノコギリを引くのは力もいるし、疲れますよ?」

「ノコギリは使わないよ。線に沿って切ればいいんだよね?」

「はい……」

「ふっふっふ、草刈りついでに木を切り倒してきたわたしには(意図せずだったけど)、切断は得意中の得意なのよ。酸素切断(オキシジェン・カッター)!」

 

 マヤは人差し指の先に極細の酸素噴出点を出す。そこから酸素を勢いよく吹き出して動かすと、対象はきれいに切れる。石でも金属でも切れる。

 とりあえず、単純に切断する部分をあっという間にやり遂げた。

 

「うわあ、ご主人様はやーい!」

「凄おい! さすがご主人様!」

「お見事、ご主人様」

 

 リリー、カルラ、ノアナがパチパチと拍手した。

 

「ご主人様が得意なのは、物を壊すことだけじゃないんだ」

「と、当然よ。何を言ってるのノアナ」

「切るのも壊すことの一種じゃない?」

「リリー、絶対違うから!」

「も、もう終えられたんですか!?」

 

 驚いたノーバート。どれほど適当にやったのかと思って点検するが、その結果にも驚いた。

 

「いやいや、位置はぴったり、切り口もきれいです」

「ほらリリー。この通り壊すのと適切に切るのは違うのよ」

「本当だ! さすがご主人様!」

「それじゃあ、このようなのはできますか?」

 

 ノーバートに見せられたのは「ほぞ」の部分だった。

 

「うーん、わたしの法力だと貫通しちゃう切り方しかできないし、あまり細かい細工は練習してこなかったから、できるのは一方向から見てのだいたいな形を作るくらいかな」

 試しに1つやってみて、ノーバートに見てもらった。

 

「ここまでやってもらえるなら十分助かります。これ以降の部分や、正確な形成だけに俺は集中できますんで、作業効率は圧倒的に上がります」

 

 こんなでも役に立つようだ。

 

「あたし、これやってみたい」

 

 「ほぞ継ぎ」に強い関心を持ったノアナが志願した。

 

「練習してみるか? ノミとトンカチを貸そう」

 

 廃材を使ってノーバートはノアナにほぞ穴の開け方を教え始めた。

 

 

 

 

 トムトと一緒に孤児院の男の子達が建設現場にやって来た。トムトじいさんはラースに氷法力を教えているだけでなく、他の法力発現者も指導していた。法力は違っても、法力を洗練させる鍛え方は共通するところがあるようなのだ。

 

「何やってんの?」

 

 ニコが、片隅にしゃがんでコツコツと作業しているノアナを覗き込む。

 

「ほぞ穴を掘ってる。釘を使わなくても、ほぞ先をここに入れて木と木を繋ぐことができる」

 

 ノーバートが作った見本を見せた。

 

「へえ、すげえ。釘いらないんだ」

「これなら釘買わなくても小屋を作れるね」

「孤児院の壊れたところ直すのにも使えるんじゃない?」

「僕もやってみたいな」

 

 ニコが言った。

 

「ニコがやるんだったら、ボクもやりたい」

「ボクも」

 

 ニコ達に迫られたノアナは困った顔をする。

 

「……ご主人様に聞いてみる」

 

 ノアナは座って作業するのに義足を外していた。手と片足だけでひょいと立ち上がると、義足をはめるためスカートを捲り上げたので、ニコは「わあっ」と真っ赤になって目隠しをした。ノアナは気にすることもなくスカートを口に咥えて義足を装着すると、カッコンカッコンと音を立ててマヤのもとへ行く。

 

 マヤはほぞ先の大枠をオキシジェン・カッターで作っているところだった。義足の音を聞いて、マヤは顔を上げた。

 

「あら、どうしたの?」

「ご主人様。この人達が、ほぞ作りをやってみたいって」

「ほー。ニコも興味持ったの」

「だってこれ凄くねえ? 釘いらないんでしょ? 法力も関係ないし」

「……そっか。運ぶのとかで建築には携わってもらおうと思ってたけど、もっとこういう技術的なところから教えて加わってもらっても良かったんだ。将来的にも役立つ技能になるし」

 

 ポンと手を打ったマヤは、ノーバートに相談に行く。

 

「とうわけで、この子らにも教えてあげられないかな。建設期間が多少伸びたってかまわないから」

「しかし、素人の精度では、歪んだり傾いたりしかねませんよ?」

「ノーバートだって最初から上手だったわけじゃないでしょ? 精度が悪くてもそんなに支障ない所とか、後から直すつもりで割り切れるところとか選んであげてさ。どうせこの子達が使う建物よ。技術が身に着けば、自分達で修繕もできるじゃん」

「ご主人様がそうおっしゃるなら」

 

 ノーバートはマヤに頭を下げると、ニコ達に振り向いた。

 

「おいお前達。俺は厳しいぞ。それでもいいなら教えてやる」

 

 急に職人親方のようになった。

 

「望むところだ!」

「孤児院を出てからも役立つっしょ」

「ボク、みんなの家建ててあげたいんだぁ」

 

 生きるのに必死な孤児院の子達はメンタルも強い。沢山怒られてもめげることなく、きっと上手になるだろう。

 

「厳しいのはいいけど、いじめちゃダメよノーバート」

「ははっ! よーし、お前達は俺の一番弟子だ。ビシビシ鍛えてやるからな!」

 

 言ってるそばから不安になる勢いである。

 

「っとその前にご主人様。そうなると道具が足りません」

「ああ、ノーバートが使うのと予備しか買ってないもんね。ホーム商会に頼みに行ってくるよ」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 ホーム商会に大工道具10セットを注文したら、翌日には揃えて、アンキロサウルスが引く荷車で持ってきてくれた。

 

「毎度どうも~。ご注文の大工道具をお持ちしましたー」

「頼りになるなあ、ホームセンター・アデラ」

「ん? ホーム商会ですよ?」

 

 出迎えたマヤにハテナを飛ばすアデラ。

 

「わあい、ボクのこれぇ」

「こらこら、勝手に取っちゃだめだよ。まずは師匠が点検するんだ」

 

 ニコが年下の2人を制止する。

 

「えっ? この子達が使うんですか?」

 

 アデラはびっくりした。

 

「うん。ノーバートに弟子入りしたの」

「なるほど……。これも孤児院の子供達の自律のためですね。さすがはマヤさんです!」

 

 どんどんマヤ信者になっていくアデラである。

 

「これだけあると、道具をしまう小屋があってもいいな。いい練習だ。設計図書いてやるから、お前達で作ってみろ」

「「「やるやる!」」」

 

 一方ノアナの方は、やたらと複雑な継ぎ方に挑戦していた。

 

「な、なにこの積み木みたいなのは。これも『ほぞ』?」

「……加工が難しい。形は分かってるんだけど」

 

 思うように削れなくていらいらしている。ノーバートが苦笑いした。

 

「いや、ノアナには驚きました。これは俺が教わった継ぎ手でも複雑で、横方向にも縦方向にも、木を繋げられるっていう冗談みたいなやつなんですが、ノアナはその形をすっかり覚えてしまったんです。ただその形に彫る技術がまだないんですけどね」

「そういえばノアナって、いろんな服の型紙を覚えてるんだよね。もしかして細かい図形なんかを覚えられる才能か、法力なのかな」

「あり得ますね」

 

 またまた身内に優れた才能を持つ者が現れた。

 

 

 

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