異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~ 作:RightWorld
次の部屋なる所へ案内されると、そこはなんと謁見の間だった。
白い柱と壁、金色の装飾、赤い垂れ幕に赤い絨毯が敷かれ、左右に騎士がそれぞれ3人並んでいる。その先には高くなっているひな壇があり、5段ほどの階段で上がると玉座のようなのがある。
「ええええ!?」
いかにも外国の王様的な部屋に、サンドラちゃんがさらに青くなる。
ひな壇の前に並ばされ、左右を騎士に囲まれて震えていると、程なくしてマリエラ皇女様、駐ヘキサリネ大使のシフュース公爵と第一近衛師団副団長のチェスター中佐、護衛侍女長が現れた。チェスター中佐は、前にリトバレー村まで来て、今大使館の玄関にあるマンモスの頭骨を買っていった人だ。
マヤとサンドラに相対するように立つと、ラッパが響き、騎士が乱れのない所作で捧げ剣をした。
『うわぁ、これってかなり格式高い儀礼なんじゃないのかな……』
いわゆる栄誉礼だ。国家元首や大臣でもないのにと、冷や汗をかくマヤ。招かれたとはいえ、村娘とFランク
剣の音が静まると、ゆっくりと玉座にマリエラ様が座った。護衛侍女長は椅子の斜め後ろに目立たぬように控える。前にいる大使が口を開いた。
「薬師見習いのサンドラ・リトバレー殿。」
「ひゃ、ひゃい!」
ガクガク震えながらカーテシーをするサンドラ。
「そなたの活躍はこの大使館にも伝え及んでいる。マリエラ第一皇女殿下はそなたの功績を讃えるとともに、有望なる将来を見込んで、ミリヤの皇立薬学学校への留学を推薦されたのだ。ここに入学推薦状を進呈する。前へ来られよ」
「「えええーっ!」」
サンドラとマヤの素っ頓狂な声が格式高い部屋にもかかわらず声高に驚く。慌てて二人して口を塞ぐが、大使は柔和に笑みを浮かべたままでいてくれた。護衛侍女長のみ射殺しそうな視線で睨んでくる。
前に来るようにと促され、サンドラがオロオロと階段の前まで行くと、マリエラ皇女様は護衛侍女長が差し出した盆の上に乗っていた丸めた書状を大使に渡した。大使はうやうやしく受け取ると、サンドラの前に立ち、それを差し出した。
「受け取り給え」
「あ、ありがとうございます」
サンドラは両手で大きな書状を受け取ると、胸の前に抱えた。
マリエラ姫が座ったままで口を開く。
「それを持ってミリヤ皇国の皇都ブライアのラクラ・サト薬学学校へいらしてください。サンドラ様の3年間の留学と、希望があれば研究のため留まることもできます。留学の学費と生活費はわたくしの側で負担しますので、身一つでいらしてくださればよいのです。関所でもそれを見せれば通してくれます」
「薬学学校へ留学……」
サンドラは頬を染める。
薬学先進国ミリヤの権威であるラクラ・サト薬学学校。そこでは最先端の薬の研究が行われている。そこで学んだとなれば、その辺の薬師に師事するのとはまるで格が違ったものとなる。
「留学って、成人してないととかはないんですか?」
「年齢に制限はありません。優秀でミリヤに敵対しない人であればいつでも入学できます」
マヤはサンドラに顔を向けた。
「領都邸の薬師局は成人しないと師事できないんだから、こっちの方が早く薬師になれるよ。それに薬師になった後でも就職できるんでしょ?」
「たぶん……。それに権威はラクラ・サト薬学学校の方がずっと上なの……」
「じゃあ、迷うことないね」
サンドラはマリエラを見上げた。
「本当に、いいんですか? マリエラ様」
「勿論です。わたくしがお見受けしたところ、リトバレー村の薬知識はミリヤの知識体形とも違うと思いました。きっと双方の発展に繋がるでしょう」
目をキラキラさせたサンドラは、ブルルっと身震いさせた。
「よかったねサンドラちゃん。旅に出る理由ができたじゃない」
はっとするサンドラ。そうなのだ。マヤの旅に同行したかったのだが、村から許可が出るか心配でいたのだ。これはうってつけの口実になる。
「もし行けるってなったら、連れてってくれる? マヤちゃん」
「もちろんだよ」
マリエラは二人のやり取りを微笑ましく眺めて、続いてもう一つお盆から取り上げ、大使に渡した。
「勇士トロの弟子、マヤ殿」
「は、はいぇ?」
呼ばれると思わずマヤはびっくりし、慌ててカーテシーをした。
「どうぞ前へ」
カチコチと油の切れたロボットになって大使の前に着く。
「ミリヤ皇国への招待状です。こちらは国境を越える時、ミリヤ国内での各関所や都市への入城、皇宮へ参られた時にご提示ください」
「招待状!?」
ミリヤ皇室の紋章が刷られた書状と木箱を渡された。マリエラ姫がにこやかな笑顔で声をかけられた。
「マヤ様の来国もお待ちしておりますよ。トロ様のお弟子様の訪問となれば、皇帝陛下もお喜びなさるでしょう」
「うええ、とうとうこの日が来てしまったかあ」
「わたくしも帰っているでしょうから、向こうでお会いするのを楽しみにしています」
「は、はい。ご招待大変ありがとうございます」
『マリエラ様はいいけど、その他のお偉い様はご勘弁なんだけどなあ』
と心の中は大いに冷や汗をかいていた。
「この後ですが、昼食を用意してあります。30分後に食堂へおいで下さい。そちらでは畏まらなくてよろしいですわ」
「お昼ごはん!?」
もう一度ラッパが奏でられ、騎士による礼が行われると、マリエラ様と大使、近衛師団長が退出。続いてサンドラとマヤもフィリアに案内されて控室へと退出した。
控室に戻ったマヤ達は、気疲れでどっとソファーに倒れ込んだ。
「サンドラさん。これ書状入れです。大事に持っていてくださいね」
フィリアが賞状を入れるような筒をくれた。
「わ、ありがとうなの」
「ねえフィリアさん。むっちゃ格式高そうなお出迎えだったけど、いいのあれ?」
「はい。騎士も配して、国家元首級でもおかしくなさそうな儀仗でしたね」
「やっぱり」
「なんで!?」
村娘は声がひっくり返った。
「マリエラ様はマヤさんとサンドラさんをあのように扱うことで箔を付け、ミリヤ国内向けにその地位を確立させたんです」
「ここミリヤ国内じゃないですよ?」
「大使館の中はミリヤ国内と同じ扱いです。ここで行われたことは本国にも伝えられ共有されます」
「いち探検者と村娘なのに……」
フィリアはしゃがんでサンドラの手を取った。
「もちろんどうしてこの人達がって思われることは多々あると思いますが、とくにかくミリヤでの扱われ方が良くなりますし、安全面でも良いことだと思います」
「ふえええ」
「マリエラ姫がわたし達をおもんばかってくれたってことなんだよ、きっと」