異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第25話「マヤちゃんもテンプレ悪党に絡まれる」

 

 マヤ達がマンモスの牙を送り届けた翌日のこと。

 領主ヴェルディの執務室に宰相と外相、軍事部門のトップの将軍が入って来た。

 

「領主様、先程オルデンドルフ王国からの使いの者が来ました」

「おう、使節団が領都に到着したのか?」

「それが、街道途中の町『ハザレウス』に留まり続けているとのことです」

「なに!? 晩餐会は明日だぞ。ワリナとミリヤの大使館開設も同日に行うというのに、オルデンドルフが参列しないとなったら、彼らのオルデンドルフに対する心証が悪くなるだろうに」

「ところが、責任はヘキサリネにあると言うのです」

「なんだと?」

「原因は、昨日の東国街道でのブラウシュテルマー騒ぎです。使節団は領都への街道の通行に不安があり、安全を見極めるまでは動かぬと申しているとのことです」

「もう駆除したんだろ?」

「『領都の東4時間』からヘキサチカまでは駆除済みです。ですが、そこから東は行っていません。それに『領都の東4時間』駐屯隊から、ブラウシュテルマーは人為的に置かれた可能性があるとの報告書が来ました」

「人為的にだと?」

「はい。実際被害が出た場所の調査結果と、早朝に領都へやって来た商隊の証言からです。街道脇に一定間隔で置かれていたようだと言っています」

「一定間隔か。確かに自然ではないな。しかし使節団はどこでブラウシュテルマーの事を知ったんだ?」

「どうやら昨日『領都の東4時間』で野営中だったオルデンドルフへ戻る商隊が、未明に野営地でブラウシュテルマーが魔素瘴気を出したせいで叩き起こされて、野営地を強制的に退去させられたそうです。それに腹を立てて、帰路の途中で出会った使節団に不満を言ったらしいのです」

「それで使節団は安全のため、途中で移動を止めたというわけか。それと自国の商隊への扱いに対する抗議も含んでるな?」

「おそらく」

「『ハザレウス』にいるとなると、領都まで来るのに2日かかるな。……仕方ない。街道の安全確保は我々の責任に違いはない。将軍、至急街道の点検と、オルデンドルフ使節団の護衛部隊を編成せよ。護衛作戦は念入りに計画しろ。一度点検したところでも安心するな。直衛隊だけでなく、前衛隊も付けろ。先導して直近の進路の安全を確保させるのだ」

「承知」

「領主様、晩餐会はどうしましょう」

「仕方ない。延期だ。ワリナとミリヤには、大使館開設式典も待ってもらってくれ」

「分かりました」

「ところで、『領都の東4時間』からこっちへの東国街道のブラウシュテルマー駆除は、午前中いっぱいかかったはずだが、ミリヤ皇国の例の馬車は、午前中には領都に戻ってきてたぞ。影響なかったのか?」

「影響も何も、ブラウシュテルマーの大半を壊したのは彼ららしいですよ。後から来た商隊によると、彼らが来てから街道上の魔素瘴気も清浄化されたとか。何をやったんでしょう?」

「ふうむ」

 

 ヴェルディは顎に手をやって何かを考えた。

 

「またあのマヤとかいうトロの弟子を呼ばんといかんかな?」

「あの少女がやったと?」

「まあそれは後回しだ。オルデンドルフ使節団を連れてくる方を急げ」

 

 彼らは行動方針の確認を終え、それぞれの掌握部署へ具体的行動を指示しに戻っていった。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 マヤとサンドラとリネールは、朝の依頼受付で混んでるハンターギルドにやってきた。

 マヤはしょぼしょぼさせた目を擦ってぼやいていた。

 

「眠いよー」

「わたし達ずっとお留守番で、暇で暇で仕方なかったんだから。今日はたっぷり付き合ってもらうからね」

「頼んでた服取りに行かなきゃじゃない~?」

「そんなにすぐできないよ」

「それにマヤさん、弓矢練習したいって言ってたじゃん。俺が手ほどきするよ」

「今日でなくていいよぉ~」

「善は急げだって。依頼掲示板見てみよう。ついでになる良い依頼があれば、やる気も増すよ」

 

 朝の受付ラッシュでギルドは混んでいた。しかし優良物件を得るにはだいぶ出遅れた時間で、そろそろ一癖ある依頼ばかりが残り始める頃合い。依頼掲示板の前には、受けるかどうするか考えあぐねている人達が腕を組んで並んでいる。

 

「もう遅いから、ろくなの残ってないんじゃない?」

 

 そんな人垣を縫ってサンドラが前に行こうとすると、

 

「ああ? なんだあ、足元をこそこそとおー」

 

 脇を抜けようとしたら、大きな男がわざとらしく足を突き出して通せんぼをした。

 

「ちょっと足どけてよ」

「メスガキの冒険者かあ。てめえがやるような依頼なんざ、ここにゃあねえぞぉ。常時依頼の草摘みでもやってろやあ」

 

 ヘキサリネでは使うなと言われている冒険者という言葉を発するあたり、国外のハンターだろう。体つきだけはご立派で、頭は中央部分を前から後ろまで剃り上げ、両脇のみ短く刈って残しているという、これまた典型的な世紀末悪党風情の奴。それは昨日リエラに絡んでいた、ガラの悪いハンターだった。

 

「依頼をやるかどうか決めるのはわたしなの! 掲示板見せてよ!」

「Fランクがやるようなのはねえって言ってんだあ」

「わたしFランクじゃないの。Eランクだもん!」

 

 ゲハハハハと大男は下品に笑い、その仲間らしい似たようなごろつきも同調した。

 

「EもFもおれっちにとっちゃあ変わりねえぇ。なんせおれっちはCランクだからなあ! ゲハハハ!」

 

 何というテンプレ悪党。マヤはすっかり呆れ返る。女子が見せちゃいけないような顔をしてリネールに質問した。

 

「ねー、Cランクって、そんな威張れるほど凄いの?」

「そうだね。仕事の種別はほぼ制限なくなるし、自立して何でもこなせられる一人前という証ではある。ただ成りたてとB昇格直前では、相当差があるけどね。Cランクの中を更に3段階に分けようかって話もあったくらいさ」

「そういえばリネールさんもCランクになれてないんだっけか」

「グサグサ!」

 

 思わぬ精神攻撃にダメージを受けて、リネールは胸を抑えてふらふらと脇にへたる。マヤはそんなの気にも留めず、ガラの悪い連中に目を戻した。

 

 そうか。あんなでも一応、胸張って威勢よく出られるくらいには実力あるってことか。

 

 とにかく救いに行かなきゃと人混みに割って入り、サンドラの手を掴んだ。そして上を見上げる。

 

「Cランク程の人が、小さい子相手にかえってみっともないわよ。その辺にしときなさい」

「なんだあテメエは!」

 

 仲間の1人が思い切り見下した目で、下顎を突き出して威嚇してきた。

 

「わたしこそFランクハンターよ」

 

 ガラの悪いハンターがお互いを見合って、馬鹿にした笑みを浮かべる。どうやら世紀末ハンターは3人で組んでるらしい。3人が同時に下品に笑い出した。

 

「F? ゲハハハハ! ええいFランクごときが頭が高けえぞ」

「そう? でもあんたは、獲っていい獲物はCランクまで、パーティーに加わってもBランクまでなんでしょ? わたし制限ないから」

「ああん?」

「わたし何獲ってもいいってことよ。パーティーに入ればだけど」

 

 すると別の人がわたしを指さして問いかけてきた。

 

「あんた、こないだ登録に来た、大物狩りハンターか?」

 

 どうやらわたしがハンター登録に来たとき、あの場にいた人のようだ。

 

「Bランクの猛獣を仕留められるらしいぞ」

「マジか、こんな子供なのに?」

 

 ガヤガヤざわめく外野の囁きに、世紀末ハンターは気を悪くする。

 

「なんだあそりゃあ! じゃあおれっちと勝負しやがれ! 強力な大物狩った方が勝ちだあ!」

 

 マヤはため息をついた。

 

「あんたバカ? わたしパーティじゃなきゃ大物獲れないって言ってるでしょ」

「さっき何獲ってもいいって言ったじゃねえかあ!」

「だからそれはアンリミテッド・パーティの但し書きがあるからだって」

「どおゆうことだあ!」

「どうにかしてください、このおつむの程度がアレな人」

 

 これでCランクって、どんな等級認定基準なのさ、ハンターって。筋肉量か?

 

「とにかくEやFランクの格下相手にいきがってないで、Cランクハンターなら……」

 

 目に入ったCランク依頼をむしり取って、その男に押し付ける。

 

「これでもやって、さっさと報酬貰って酒盛りでもしてなさいな」

「ああ? あ、これはちょっとだなあ」

「はあ? あれだけ息巻いておいて、Cランク依頼でできないのがあるなんて言わないでしょうね?」

「し、しかしだなあ、これはアンフィスバエナっていう猛毒を出す蛇で……」

「でもCランクの依頼よ? なんだ、口先だけの単なるいじめっ子だったのか」

 

 わたしは肩をすぼめて残念がる。

 

「いじめっ子じゃあねええ!」

「いじめてたじゃない。ねえサンドラちゃん」

「しくしくしく。わたし依頼掲示板に近寄らせてもらえなかったの」

 

 サンドラはわざとらしい泣きまねをしてマヤに合わせる。

 周囲からも悪者呼ばわりするひそひそ声が囁かれてきた。

 

「ほぉらあ」

「うおおお、しかたねえ、その依頼やってやるう! それなら文句ねえなああ! それでおれっちが依頼達成したらてめえ、何してくれんだあ!」

「は? 何もする必要ないでしょ」

「ぬわんだとおー!? じゃあおれっちもそんな依頼やる必要ねえぞおおー!」

「そうね、やる必要ないわね。その代わり、俺は「泣く子も黙るCランクだ」って息巻いて少女を脅しておきながら、Cランクの依頼を怖がって受けられなかったヒトって、見かけた度にわたし言うようになるから、覚悟しときなよ」

「ぬおおお、冗談じゃねええ! やってやろうじゃねえかああ! その依頼よこせええ!」

「頑張ってね~」

「うおおお、受付の女ぁー! これ受注だああ!」

「あら、アンフィスバエナの依頼、他にもあったんだ。受けて大丈夫なの?」

「当然だあ、おれっちはCランク冒険者だあぁ!」

 

 男が冒険者と名乗ったとたん、ケイトは目をきつくして、バンっとカウンターを叩いた。

 

「うちにバクチ打ちの冒険者はいりません! きちんと勝つ算段を整えた探検者(エクスプローラー)、もしくはハンターと名乗らないと、ギルドの出入りも許しませんよ?」

「うごっ。し、しかたねえ。Cランクハンターだあ。パーティーで受ける。受注処理してくれやぁ」

 

 パーティーメンバーのタグを受け取り、手際よく事務処理を済ませるケイト。

 

「無理っぽそうだったら、すぐキャンセルするのよ。依頼未達の違約金は発生するけど、勇気ある撤退をヘキサリネは馬鹿にしたりはしません。名誉とか意地を張らないで下さい」

「心配ねえ、おれっちはCランクパーティ『ゲルデポロン』のリーダーのゲルデ様だ! いくぞお、手下共!」

 

「「ヘイ!!」」

 

 ゲルデ様とかいう世紀末ハンターは、手下2名を連れて、速足で出ていった。

 

 

 

 

 さて、そうやってテンプレごろつきを追い出し、わたし達はようやく依頼掲示板をじっくりと見る事ができた。

 リネールさんは依頼カードに指を這わせて中身を一つひとつ見ていくが……

 

「Fランクの依頼はないねえ。こりゃ本当に常時買取してる薬草と、ウサギ類、メソヒップスなんかを狙うしかないなあ」

「メソヒップスって何? 怖くない?」

「馬の小さいのだよ」

「小さい馬? ポニーみたいのかな。うう。あんなに可愛いのに、なんて残酷な」

「それ言ってたらハンターやってらんないよ」

 

 リネールさんは笑う。

 

「まずは弓矢の練習からだね」

「わたしが薬草を教えてあげるの」

「はーい。お願いしまーす」

 

 依頼カードを取ることなく戻ってきたわたし達に、ケイトさんはカウンターに肘をついて声を掛けてきた。

 

「今日はどうするの? 新人Fランク」

 

 わたしは少し逡巡する。獲物を獲らなきゃっていう切羽詰まった状況でもないし、これを狩るんだという目標もない。今はとにかく、色々と歩き出向いて、旅に出られるだけの知識や技術を身につける時だ。

 

「散歩、かなあ」

 

 それを散歩とは、自分でもどうかと思うが。

 

 マヤ達がどっちへ行こうかと領都周辺の地図を見ているハンターギルドに、リエラもまた歩を向けていた。メイドを従えて。

 

 

 

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