異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第27話「マヤちゃんは城壁の秘密を解き明かす」

 

 ギルドを後にしたわたしとサンドラちゃん、リネールさんは、最初領都の門に向かって歩いていた。

 

 ヘキサチカは、わたしのいた世界でも大陸などで見られる、城郭都市だった。

 日本の場合、お城を中心に比較的狭い範囲が籠城エリアになってるけど、ヨーロッパや中国は、都市市民も含めてがっちり城壁で囲って守っている。これは文化や民族交流の差の違いなんだろうけど、戦闘に負けた場合、戦闘員以外がどう扱われるかに掛かっていると思う。

 戦争に負けても、非戦闘員は主が変わるだけですむ日本と違い、城郭都市を築くようなところは非戦闘員も奴隷として連れ去られたり、略奪の限りを尽くされて根こそぎ持ってかれてしまうという恐怖が待っている。だから全ての財産を壁で囲って守らないとなのだ。

 

 裏を返せば、この世界は後者ということになる。

 嬉しくないことに気付いてしまい、ちょっとショック。

 

 それより、ここに来た時から気になってたことは、ヘキサチカの城壁についてだ。

 城門の方を正面にして思うのは、やっぱり領都を城壁のように囲む土壁、というか、盛り土というか、山というか。

 

 町を囲む壁は石垣やレンガなどではなく、土でできている。人工的に盛ったものか、もともとあった山を使ったのか。

 もともとあったとしたら、ここは噴火口だろうか。いやでもそれは領都に使うには危険すぎるよね。噴気とか出てるところはないとはいえ。

 

「リネールさん。この山みたいな土壁って、やっぱり町をぐるりって囲ってるんですよね?」

「そうだよ。展望できる所があるから行ってみるかい?」 

「展望台!? あるんだそんなの! 行ってみたい! 山の上に登れるの?」

「尾根には普通の人は登れないんだ。登っていいのは領都軍だけなんだよね。勝手に登っても警ら隊が巡回してるから、すぐ見つかっちゃうし」

「ああそっか。高い所は軍事的に重要なのか」

 

 領都を一望できる所って、偵察や監視は勿論、戦闘になれば状況把握するにも必要だし、領都の外に向かってだって、攻めてくる敵を見つけたり監視したりできる。この世界に鉄砲や大砲があるか分からないけど、射撃するにも高い所は有利だから、一般開放してないのは分かる。

 

「どこまで登っていいの?」

「真ん中より少し高いくらいの所に見晴台があるんだ」

「行きましょ行きましょ。サンドラちゃん」

「ふふふ、マヤちゃん、子供みたいだね」

「だって子供だもん。あ、違うのか、ここでは」

 

 ということで、わたし達は観光モードになって、展望台とやらへ登ることになったのだ。

 

 

 

 

 城門へ向かう道から逸れて、わたし達は見晴台へと登った。

 自然石を敷いて作った、細くてきっつい階段を登り詰めると、テラス状になったところに行き着いた。

 

「わあ!」

 

 町を一望するには少し高さが物足りないけど、街の建物の屋根が連なっているのが見える。

 あの辺が領主様の居城だろうか。こないだ謁見した時は平屋の建物と、見張り用の塔くらいしか見えなかったけど、奥に城壁っぽいのと、3階建てくらいの建造物も見える。日本やヨーロッパのいかにもお城然とした感じのものじゃない。何と言うか、籠城する要塞とか?

 そして町を囲む土壁。なんとそれは本当に円を描いてぐるりと町を囲っていた。これは人工物じゃない。

 

「これクレーターだ」

「え?」

「なに?」

 

 わたしがぽそっと呟いた一言に、2人は振り向いた。

 

「これ、隕石衝突でできたインパクト・クレーターだ」

「いんせきしょうとつ?」

「いんぱくとくれーたー?」

 

 その単語は2人には通じないみたいだった。

 

「町を囲っている山は、人が盛ったんじゃなくて、自然が作ったものだよ。クレーターっていう、空から落ちてきた大きな岩塊が衝突してできた穴。そこに町を作ったんだ。自然を活かした城郭都市だったんだ」

「なんだそりゃ。空から岩が落ちただけで、こんな大きな穴、っていうか丸く囲むような山なんてできるのかい?」

 

 展望テラスの山側に柔らかい土だか砂だかが溜まっている所があったので、そこで実演してみることにした。

 つまむ程度の石を1つ拾って砂溜まりへと移動する。

 

「この石を高いところから落とすと……」

 

 頭の上に伸ばした手から石を落とし、ぽすんと石は弾むこともなく砂の上に鎮座する。

 

「まあこんなもんですよね」

 

 わけのわからない顔をするリネールさん。一方、サンドラちゃんはまた例の科学実験、たぶんサンドラちゃん的には大道芸が始まったと思って、目を輝かせる。

 石を拾い上げると、今度は地面に向かって投げつけた。石は、ぼすっと鈍い音を立てて少しの砂を周りに飛ばし、めり込んだ。

 

「リネールさん、わたしがやったように、石を思いっ切りここに投げつけてください」

「投げればいいの?」

 

 わたしから石を受け取ると、リネールさんはどりゃっと投げつける、ドスッと重い音をして同じ様に砂を周りに飛ばし、砂にめり込んだ。

 

「同じ石だけど、単に落としたのと、わたしが投げたの、リネールさんが投げたのでは、様子が違うの分かる? 投げたのは周りに砂を飛ばして穴をあけたでしょう? 飛ばした砂は穴の周りに積もって、少し山になってるよね」

「それがどうかした?」

 

 さも当たり前の事とリネールさんは言うが、サンドラちゃんは違った。

 

「分かった! リネールさんが投げたのが一番強く地面に当たったけど、それが一番穴も山も大きいよね。ってことは、石をもっともっと、もっともぉーっと凄い勢いで投げれば、もっと大きな穴をあけて、もっと砂を飛ばして周りに高い山を作るんだ。

 これと同じ事をもっと大きな規模でやったら、この領都囲ってる山みたいになるんだ!」

「ええ? こんな大きくて高い山なんか作れるか? 信じらんないな」

「だって同じ大きさの石でも、早くぶつけるだけで、作る山も穴も大きくなったよ?」

「それだって領都のこの大きさだぜ?」

「サンドラちゃん、さすがだね。サンドラちゃんが正解です」

 

 ぱちぱちぱちとわたしは手を叩くと、リネールさんが、ええーっ!? と納得いかない顔をする。

 

「手で投げるのの何百倍っていうスピードで落ちてくるんだよ。そんなスピードになると、小石だったとしても大変なことになる。じゃあ家よりも大きな岩だったら? もしこの領都くらい大きな岩だったりしたらどうなると思う? それはもう大陸が吹っ飛ぶようなことになるんだよ。これはお伽噺なんかじゃないからね」

「なんだそりゃ。魔王の大暴れか?」

 

 わたしは鼻で笑う。

 

「魔王? そんなのがちょっと暴れたところで、地球の地表の町が1つ2つ消える程度でしょ? 宇宙規模の力を舐めちゃいけないよ。星そのものが2つ3つ消えるくらいは、なんてことない世界なんだからね」

 

 へっへっへと笑うわたしを見る2人の目は、マッドサイエンティストが妄想を語るのを眺める目と同じだった。

 

「だいたいそんな大きな岩、空に浮いてたら分かるだろう?」

「何言ってるの。リネールさん、ここからリトバレー村が見える? リトバレー村と同じ大きさの岩があったって、領都とリトバレー程の距離が離れていれば見えないんだよ。空に浮いてたってせいぜい点にしか見えないってことよ」

「うーん」

 

 リネールさんは分かったような、分からないような、どっちつかずな顔をする。

 

「言ってる事は分かるけど、信じ難いなあ」

「でもさあマヤちゃん。石を凄いスピードで落とすと、穴ができてるよね。領都は山の内側と外側で、地面の高さはほとんど同じだよ? それと落ちてきた岩はどこへ行っちゃんたんだろう」

「当たる衝撃の大きさがある程度を越えると、クレーターの中は平らになるんだよ。それに領都入り口を作るのに山を削ってあったじゃん。排土を低いところ埋めるのに使ってるかもよ?

 あとぶつかった岩は、砕けちゃったり溶けちゃったりして、元の形では残ってないと思うよ」

「溶けちゃうんだ」

「物凄い規模の衝突っていうのは、想像を絶する凄さなんだよ。宇宙規模の力は人智を超えてるんだから。ところで、地球とか星ってどういうのか知ってる?」

「もちろんだよー」

 

 サンドラちゃんには、わたし達の住んでるこの星の事を「地球」と呼んで問題なく通じた。ただこれはもしかすると転生特典の自動翻訳のせいかもしれない。

 それでサンドラちゃんから聞いたこの世界の常識によると、地球は丸いということは分かっているみたいだったけど、地球とその他の星との関係は天動説の考えだった。

 この今世界にガリレオはいないらしい。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 領都の北には、草原と点在する林で構成された広い原野がある。

 その中央を1本の川が流れ、幾つもの支流を束ねていた。

 そんな支流の1本が、林の切れた少し開けた先で、大きくSの字を書いて流れていた

 

 その川が運んだ砂が堆積した河原の隅に、丸太ほどもある大蛇が八の字を描くように巻いている。

 2つの頭が周囲を気にして警戒し、その太い胴の下にはハンドボールの球ほどの大きさの卵が、砂地に掘った窪みに幾つも生み落とされていた。

 

 すると卵の横に、人の手が、先の尖った大きな紫水晶の結晶のような塊を置いた。

 その者はマントと一体となった黒いフードを被り直すと、フードの影から目を赤く光らせた。

 そして何事か呟くと、紫の結晶の花は光り輝く。

 

 まるで閉じた傘のような先端は、硬質の結晶のように見えるにもかかわらず、くるくると回転して螺旋の口を開け、開花する。

 そしてそこから紫色の霧のようなのを吐き出した。

 霧を浴びた大蛇は喜びで震えた。

 卵もまた、霧に包まれると、黒と赤紫の明滅を繰り返す。

 

 

 

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