異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第29話「世紀末ハンターの今後がヤバそうな件」

 

 お昼の携帯食を食べたわたし達。

 午後はサンドラちゃんの薬草摘みを手伝いつつ、狩りを続けていた。

 

「マヤちゃん、これがハイコウ草っていうの。食べ過ぎてお腹がもたれた時に効くんだよ」

 

 サンドラちゃんが葉を揉んで匂いを嗅がしてくれた。

 

「ああ、スーッとする匂いがして、胃腸薬にありそう」

「領都ではお酒出す店が多いからか、食べ過ぎる人多いんだよね~」

「食べ過ぎ腹もたれの薬なんて、領都以外では売れないよな。普通そんなに食料余ってなんかないし。うわ、苦」

 

 リネールさんは葉っぱをかじって、まずそうな顔をしていた。

 

「まあそのおかげで、領都のギルドだと高く買い取ってくれるんだけど。わたしこれ摘み取って、それからあっちの草地の方をちょっと見てくるね」

「分かった。俺達はこの先の丘で獲物探してるよ」

「気を付けてね」

「はーい」

 

 サンドラちゃんは手際よく草を刈って籠に入れると、向こうの木の周りに草が生い茂っているところへ向かっていった。

 わたしとリネールさんは草原となっている丘の方へ、ウサギを狙いに行った。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 サンドラが向かった先もまた薬草の宝庫だった

 

「いいもん見っけ。チドメグサだ。止血だけじゃなくて、虫刺されの毒を消す薬の原料になる薬草なの。森に入るハンターは持ってて損はないお薬が作れるよ」

 

 鼻歌交じりに薬草を摘み取りながら進んでいくと、藪をかき分けた向こう側で、座り込んで両手に持った草を見つめている女の人に出会った。

 その人の服装は、こんな野外で出会うにはいささか場違いな姿だったので、サンドラは誰かの敷地にでも潜り込んじゃったかと思った。なんとメイド服を着ていたのだ。

 その女の人はサンドラを見て一瞬飛び上がった。

 

「びっくりした! 獣が現れたかと思いました!」

「メイドさん!? こんなところで何してるの?」

「はい。実は薬草摘みをしてたのですけど、さっき摘んだのと微妙に違うようなのがここに生えてまして、あら、どちらがハイコウ草でしょうと思って、悩んでおりました」

「ハイコウ草は、ここに生えてるのがそうだね。あなたがさっき摘んだのってどれ?」

「これです」

 

 メイドさんが持っていた植物を受け取ると、顔を近付ける。

 

「ふむふむ。ああ、ドクミドリだ。確かによく似てるの。けど、これは毒草だよ」

「ええ!?」

「茎を切ってみると分かるよ。ほら、茎の断面がドクミドリは丸いでしょ。ハイコウ草は四角いの。あと、ハイコウ草は葉っぱに産毛が生えているの。ドクミドリは生えてないよ」

「本当だ! これはよく見ないと分かりませんね。葉の形にも違いありませんから、特徴知らなければ間違えそうです」

「初心者の人がよく間違えて、ギルドの買取カウンターで言われて、初めて気付くってのがお決まりのパターンね。良かったじゃない、ここで分かって」

「そうでしたか。大変助かりました」

 

 メイドさんは優雅なお辞儀をした。

 

「薬草にお詳しいのですね。薬師さんですか?」

「一応目指してるんだけど、まだ修行中なの」

「素晴らしいわ」

 

 と、そこへ騒がしい声が近付いてきた。

 

「そっち行ったぞ! 逃がすな、全部生け捕りだ!」

 

 大男3人のパーティーのようだった。

 

「捕まえやしたぜ、親分!」

「よしよし。よくやったあ。こいつは生き血が重要なんだあ。生け捕りすりゃあ新鮮な血が手に入る。薬屋どもも高く買い取るぞおお」

 

 びゅるんびゅるんとのたくり回るのは小型のヘビだった。大きさはアオダイショウよりさらに小さい。ところがよく見ると、男の左右の手が掴んでいる蛇の両端にはどっちにも頭がついている。それは両頭のヘビ、アンフィスバエナだった。

 

「ひいいい、ヘビ!」

 

 メイドさんは、さっきの落ち着いた雰囲気から一挙に変わって、黄色い声で叫ぶ。ヘビが嫌いらしい。まあ好きという女性はあんまりいないだろうけど。

 

「何だてめえらはあ」

「ひいいいいいい!」

 

 メイドさんは大男にも悲鳴を上げる。

 振り向いた大男は、頭の両脇に刈り込んだ髪を残して、てっぺんは剃り上げた筋肉マッチョな世紀末ハンターだった。今朝フィリアにギルドのドアを開けてくれた方ではなく、マヤに絡んでた方の世紀末ハンターだ。

 

「なんだあ、こんな小せえヘビが怖いってのかあ?」

「だらしねえ奴っすね。ほれえ」

 

 メイドにヘビの頭を突きつける仲間の男。

 

「きゃあああああー!」

「ちょっと、それアンフィスバエナでしょ!? 毒持ってるヘビじゃない! 人に向けるなんて、なんて非常識なの!?」

 

 サンドラがメイドさんを引き寄せて庇った。

 

「はああ? 毒なんて吐かねえぞお。小せえからじゃねえのかあ? お前、さっきギルドにいた生意気なメスガキの仲間だなあ? 俺達はCランクパーティの『ゲルデポロン』だぞおお」

 

 大男がサンドラを睨みつける。そいつらは確かにギルドでマヤに言い負けてた、頭の悪そうなハンターだった。

 パーティーリーダーのゲルデは、サンドラが持っている籠に薬草が詰まっているのを見ると、にやあっと笑った。

 

「低ランクらしく草摘みかあ。よしよし、それでいいんだあ。そうやってせいぜい小銭でも稼でなああ」

 

 いやらしくひねくれた笑い顔を濃くすると、足を踏み上げて、足元一帯をぐりぐりと踏みにじった。

 

「何するの! ああ、毒消しの薬草が!!」

「草摘みがいつも安全と思ったら間違いだぞおお。でかい動物の通り道ってこともあるからなああ。ゲハハハ!」

「ここはゲルデ様の通り道だ、どきやがれ!」

「いつも何の危険もない草摘みばっかやってんだろ。少しは苦労も覚えた方がいいぜ。ヒャヒャヒャ!」

 

 手下の2人も加わって辺り一帯の草を踏みつける。

 

「何てことするの!? 薬草摘みだって重要な仕事なの! あなた達だって狩りに出る時、薬くらい持っていくでしょ!?」

「このヘビの生き血の方が効くんじゃねえか? 何しろお高い回復薬の原料だ。ゲハハハハ!」

 

 そう言ってまたヘビの頭を持って、嫌がるメイドを追いかける。

 

「いやあああ、やめてえええ!」

「フィリア、何の悲鳴!? 大丈夫!?」

 

 声を聞いて駆けって来る人がいた。女ハンターのリエラだ。

 

「マリエ! …げふっごふっ、リ、リエラさ……ん!!」

 

 何だか喉に物が詰まったようにつっかえながらも、嬉しそうに涙を浮かべるメイドことフィリア。

 

「また女かああ」

「あっ! あんた達は悪者商会の!」

「わるものしょうかいぃ? なんだそりゃあ。俺ぁCランクパーティ『ゲルデポロン』リーダーのゲルデ様だああ」

「なんだ、全国組織じゃないの?」

「いったい何のことだあ!」

 

 リエラはこの男が、悪者商会とういうギルドに必ず1名はテンプレ悪党を派遣する、全国組織の者と期待してたので、がっかりした。

 

「リエラさ~ん、この人達がヘビで脅して、私達を捕まえて、女郎屋に売るとか言うんですぅ~」

「何ですって!?」

「んなこと、言ってねえぞおお」

「もうちょっとしたら言うんですよね?」

「お前らがちっぽけなヘビに腰抜かしてただけだろうがあああ」

 

 そう言ってまたヘビの頭を突きつけてきた。

 サンドラが手で必死に振り払おうとする。

 

「やめてなの! 危ないって言ってるでしょ!」

「毒なんて吐かねえってんだろ!」

 

 リエラは男が手にしているヘビをガン見してしまった。それはこの辺にないはずのものだったからだ。

 

「アンフィスバエナの幼生!?」

 

 リエラは仲間の男の手をひっつかんで、持っているヘビを頭から尻尾……ならぬもう一つの頭までを目で追っていった。

 

「これはまだ生まれてから幾らも経ってない幼生、子供です。まだ毒腺が発達してないから毒は吐かない」

「おら見ろ、毒なんてねえんだ」

「そんなことより、幼生がいるってことの方が問題でしょ! アンフィスバエナは魔素の濃いところでしか卵を産まない。この辺で卵産んで、孵ったってことよ。意味わかってますか!?」

「毒吐かない子供がうじゃうじゃいるってことだあ」

「つまり、あっしらがそれを捕まえて、がっぽがっぽ儲けるってことっすね!?」

「ちがーう! 卵産むほど魔素の濃いところがこの近くにあるってことよ! 親は危険なほど強くなってる可能性があるわ!」

「へっ、こんなヒョロいヘビの親ごときに、俺達が驚くかってんだ!」

「よおおし、次はその親ヘビをやるぞおお」

「「へい!」」

 

 げははげはは、と下品な笑いを上げながら、世紀末ハンター共は森の奥へと入っていった。

 

「ばか! 親は下手するとBランクに……って行っちゃいましたよ、あのノータリンども!」

 

 リエラは地面を蹴り上げて、話が通じないことに腹を立てる。

 おっかない大男もヘビも立ち去って、フィリアはリエラに駆け寄って抱き付いた。

 

「うえええーん、リエラ様ぁ~」

「いきなり洗礼を受けちゃったわねぇ。怪我はない? そちらのあなたも大丈夫だった?」

 

 声を掛けられたサンドラは、改めてリエラを眺めると、背中に板が入ったように気を付けをして、目をキラキラさせせて返事した。

 

「はい、綺麗なお姉さま!」

「平民ごときがふがぐがげが」

 

 リエラは素早い動きでフィリアの口を塞ぎ、笑顔を返す。

 

「無事で何よりだわ。あなたはヘキサリネの人?」

「はい、綺麗なお姉さま! わたしサンドラって言います!」

「……えっと、ふ、普通にお話しましょ?」

「わたし、普通じゃないですか!?」

「今、普通じゃないと思うわよ……。リエラです。こちらは知り合いのフィリア」

「フィリアさんのご主人様ですか!?」

「いえ、そうゆうんじゃないの。お友達ってとこかな」

 

 凄い嬉しそうに目を輝かせるフィリア。

 

 お嬢様が私のことをお友達と……

 とうとう私達は主従の関係を越えてしまうのね?

 

 なんて思ってるんだろうなと、横目で目が星になってるフィリアをチラ見するリエラ。

 事実その通りだった。

 後で矯正しないとと思うも、今は目の前の事に専念する。

 

「それで、この辺って、極端に魔素の濃いところってあるのかしら?」

「ヘキサリネは、西の一部を除いて、どこも魔素は薄いはずなの」

「そう。そしたら異常なことが起こってるのかもしれないわね。気を付けた方がいいわ。あなたは1人?」

「いいえ。連れがあと2人いるの」

「なら連れの方にも注意してあげてください。魔素濃度が高いと、他の魔物も活性化してるかもしれない」

「えー? 鹿角兎(ジャッカロープ)を獲りに行ってるんだけど、あれも危険ですか?」

鹿角兎(ジャッカロープ)ならもともと気性が荒くないからいいけど、一角兎(アルミラージ)だったら危ないわ」

「あわわわ、す、すぐ伝えに行った方がよさそうなの! ありがとうございました!」

「こちらこそ、フィリアを助けてくれて、ありがとう」

「はい! それじゃまた、綺麗なお姉さま!」

 

 サンドラは手を振って駆けて行った。

 片手を上げて答えるリエラ。

 そんなリエラに涙声で甘えようとするフィリア。

 

「こ、怖かったです、綺麗なお姉さま~」

 

 ペチンとフィリアは頭をひっぱたかれた。

 

「痛ぁ!」

「何がお姉様よ。あなたの方が年上じゃない。それに護衛侍女が私に助けられてどうするの」

「でも、でもお、ホント怖かったんですよぉ~」

 

 すがるフィリアに、仕方なしに頭をなでるリエラ。

 まあハンター登録させて、ここまで引っ張ってきたのも自分だし。

 

 それはそうと、世紀末ハンターが行った方へと目線を戻した。

 

「あのゲルデとかいうアホ。アンフィスバエナの幼生を生かしたまま持っていったわよね。ヤバいんじゃないの?」

 

 

 

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