異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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2022/10/10 サブタイトル変更しました。




第31話「隣国の王子と仲間達も狩りを楽しんでましたが…」

 

「こんなにでかくて力の強い一角兎(アルミラージ)は初めてです。普通の一角兎(アルミラージ)かと思ってたら、あやうく角に貫かれるかと思いましたよ」

 

 そうは言いつつも、しっかり突進を躱してカウンターを返したクーノは、言うほど慌てた様子はない。

 クーノの斬撃を受けて、自分の前まで飛んできた一角兎(アルミラージ)を拾い上げたケンは、クーノに笑った。

 

「クーノの障壁を貫いたウサギなら、大使館に飾ってもいいんじゃないか?」

「いや、マジで冗談じゃなかったって」

 

 クーノとケンのやり取りを面白そうに聞いていたレオナルドは、熱のこもった剣をヒュンヒュンと振って冷ましながら問いかけた。

「ヘキサリネは魔素が薄いんじゃなかったのか?」

 

 ケンは腰に付けた魔素計を見る。

 

「魔素計の色はレベル1だから、実際薄いですよ。ここはワリナの都市の中と変わんないです」

「俺が屋敷で飼ってみた魔ネズミは、確かにこれくらい大きく育ったが、動きも気性もだいぶ大人しくなったもんだがな」

 

 それは子供の時の話だが、思い出したケンは、くくくと笑った。

 

「御所に魔物を入れるだけでなく、飼うなんて言ったときの、近衛長官の顔は見ものでしたね」

「あの時の親父は、毎日腹がダボダボになるほど胃薬飲んでたぞ」

 

 近衛長官の息子であるクーノは、当時を思い浮かべて苦笑いする。

 

「王宮ならともかく、離れた俺の屋敷なのに、何の文句があるってんだ」

「でも王都内ですからねえ」

 

 ケンは苦笑を浮かべる。

 この人は、何事も疑念には目で見て、体で感じないと、納得しない性分だった。そのため王宮での勉学は危険すぎて早々に諦め、幼少のうちに王宮から追い出され、王都の端っこの別邸でほとんどを過ごした。

 だが現王はそれを喜んでいた。何しろその別邸は、殆ど似たような理由で、現王が幼少の時に建てられたものだったのだから。

 

 目の前で剣を冷ましている、次期ワリナ王国当主のレオナルドは、ヘキサリネの原野に仁王立ちして、好奇心で目を輝かせていた。

 

「魔物を魔素のないところで育てたらどうなるか、まさか実験せずとも、隣の国に実物があったとはな」

「もっと早く交流できていれば、クーノの親父さんの胃にも穴が開くことはなかったでしょうにねえ」

「先々代のご隠居と、ヘキサリネの先代領主が亡くなるまで、仲悪くて国交開けませんでしたもんね」

 

 クーノが言った通り、ヘキサリネとワリナ王国は仲が悪く、それでも当時ヘキサリネがミリヤ皇国と緩いなりにも同盟を結んでいた関係で、戦争にはならないで済んでいたのだ。

 それがヘキサリネにワリナの大使館を置ける程に関係が改善したのは、大変な快挙と言っていい。若き現ヘキサリネ領主ヴェルディの手腕である。

 

 おそらく現ワリナ王の寿命はそれほど長くはない。そうなると、近いうちにヴェルディと対峙しなければならないのは、次期当主レオナルドなのだ。まだ自由な身のうちに、この国をくまなく見ておこうと思うのは当然だった。

 ただそれが、なんでも屋の探検者(エクスプローラー)となって、本当の意味で隅々まで見てやうろとしてたとは、ヴェルディもまだ知らぬ事だった。

 

「この一角兎(アルミラージ)の気性と動きは、魔素が十分にあるときのものだ。何処かにホットスポットがあるんじゃないか? 魔素なしでデカく育った奴に魔素を供給すると、こんなになるんだな。この一角兎(アルミラージ)なら、成りたてCランクの奴には厳しそうだ。少しは面白くなってきたじゃねえか」

 

 ワリナ王国の次世代を担うレオナルド、ケン、クーノの3人は、もっと手ごたえのある獲物を期待して、さらに奥へと入っていく。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 ワリナのハンター3人が森の中を進んでいると、彼らの前に世紀末ハンターパーティーの『ゲルデポロン』が現れた。

 世紀末ハンターはお祭り騒ぎの様相だった。

 

「ゲハハハハ、これで20匹目だ!」

「親分、これで今夜は宴会出来ますぜ!」

 

 手にしているのはアオダイショウサイズのヘビだった。ケンはそれがアンフィスバエナだと分かると、慌てて声を掛けた。

 

「お前、それアンフィスバエナの幼生じゃないか!」

「はあ? なんだお前らあぁ。これはおれっちの獲物だあ。やらんぞお。この辺のは取り尽くしたかもしれねえがなああ、へひゃひゃひゃ」

「他にもいたのか!?」

「そおだあ。20匹捕まえたぞお」

「20匹だと!? 若、これはやっぱり、近くに魔素濃度が上がってるホットスポットがあるってことでは」

 

 レオナルドは頷いた。

 

「ああ。間違いねえな」

 

 手下の男が、捕まえたアンフィスバエナを麻袋にそのまま放り込もうとするのを見て、ケンは驚いて思わず大声を上げた。

 

「おいお前、トドメ刺してないないぞ!?」

「生け捕りすんだから、当たりめぇだろう」

「こいつは生き血に価値があんだ。お前ら知らねえな?」

「下級ランクのハンターなんだろおお。俺達はCランクパーティーだあ。引っ込んでろお」

 

 クーノが呆れ返った。

 

「普通のヘビじゃねえぞ! Cランクのくせに、その程度の知識か、バカが! 血抜きして、その血をすぐ持っていけばいいんだ。それより幼生がいるってことは、この辺で孵化したって事だろ。ここの魔素濃度がそれ程に高いって事だ!」

「さっきの女と同じ事言ってらあぁ」

「それが何だってんだ!」

「ダメだこいつら、全然分かってねえ!」

 

 そこで、男がまだ手に持っていたアンフィスバエナが急に暴れ出した。さらにその体を黒い霧のようなものが覆った。

 レオナルドが咄嗟にクーノの腰のベルトを掴んで、自分の方に引っ張った。同時に剣も抜き放った。

 

「覚醒を始めたぞ! お前それ放り投げろ!」

「なにぃ!? 馬鹿言うな、俺達の獲物だ! やらねえぞ!」

「馬鹿はお前だ、ど阿呆!」

 

 体を覆った黒い霧がアンフィスバエナの体に吸い込まれると、その体は急にグググッと片手では握れない程の太さに膨らんだ。当然頭もその大きさに合わせて大きくなる。

 猫の頭ほどの大きさになったヘビが口を大きく開け、ためるようにぐぐっと少し頭を下げると、続いて前に突き出すようにして口から液体を噴射した。驚愕する男の腕にその液体がかかった。

 

「ギャアアアア! あ、熱! 熱い! 焼けるように熱いー!」

 

 さらにゲルデが持っていた麻袋が、ボコボコボコとうごめいて膨らみ、中身が暴れ出した。

 

「ぬおおお!? なんだああ!?」

 

 膨らんだ麻袋がビリビリバリッと裂け、中から大量のアンフィスバエナがぶわああっと湧き出した。ゲルデは慌てて麻袋を投げ捨てる。

 

「うわ! このど阿呆野郎、こんなに生きたままのアンフィスバエナを! 全部覚醒したじゃねぇか! 引けっ! 囲まれる前に脱出だ!」

 

 レオナルドはケンとクーノの肩を叩いて、ダッシュしてその場から駆け出した。

 

「ま、待てええ!」

 

 ゲルデとパーティーの1人もその後を追う。

 

「お、親分! 待ってくれ!」

 

 毒液をかけられたゲルデの仲間は、痛みで膝を落として動けず、置いてかれるとなって悲嘆な叫びを上げた。そこへ5匹のアンフィスバエナが次々と噛みついた。

 

 ガブガブガブガブ!

 

「あがああああああ!」

 

 5匹で頭は10個もあるので、全身を余すところなく噛みつかれている。逃げ去る仲間の後ろ姿へ伸ばしていた手は、一瞬にしてへにゃっと崩れ落ちた。そして1匹が頭から、他の頭はそれぞれ手足にかじりつき、飲み込み始めた。体の末端を取れなかった他の頭は、胴体に噛みつく。飲み込めるのだろうか。

 ゲルデの仲間にかじり付けなかった15匹のうちの半数は、レオナルド達を捕食しようと追いかけていき、残りは林の中へと消えていった。

 

「若、追っ手は8匹のようです!」

 

 追いかけてきたアンフィスバエナを数えたケンの報告を聞いて、レオナルドが指示を出す。

 

「いっぺんに相手したくねぇな。一度散ってみよう。釣られてヘビ共もバラけたら、各個で撃破! バラけなかったら再集合!」

「「了解!」」

 

 レオナルド達はサッと左右に分かれた。驚いたのは、後ろに付いてきてたゲルデともう一人。

 

「ど、ど、どこへ行くうう!?」

 

 一瞬戸惑うが、ゲルデは一番後ろにいたクーノの後を追った。もう一人もそれに倣う。

 

「散れ、馬鹿野郎! 付いてくんじゃねえ!」

 

 ヘビの方も6匹がクーノとゲルデ達を追ってきた。あとの2匹はそれぞれレオナルドとケンを追っていった。

 

 クーノはどうするかと走りつつ思案しようとしたら、急にゲルデ達が別の方へ向きを変えたので、やれやれ、こっちの意図を汲んだか、と思った。

 が、向かう先を見てギョッとした。向かった先の草原に、少女の姿が3人見えたからだ。

 

「あの馬鹿者共! 散らすどころか、女を盾代わりにする気か!」

 

 慌てて止まるが、クーノにも1匹が迫って来ていた。

 

「にゃろ、一対一なら!」

 

 クーノはその場で剣を構える。そして右手を突き出した。

 手の先に、青白い縦長の透明な板のようなのが空中に浮かぶ。

 

 横に並んだアンフィスバエナの2つの頭、その両方が大口を開け、毒液を噴射してきた。

 クーノは縦長の板をそれに向けた。毒液は透明板に当たると、まさに板に当たったようにバシャアっとそこで防がれた。クーノの法力『障壁(シールド)』である。

 

「2つ同時に吐いてくれるたぁ、都合いいぜ!」

 

 アンフィスバエナは一度毒を吐くと、次の毒を吐くまで少し時間がかかる。その間に仕留めるのが定石だ。

 たんなるヘビと同じになったアンフィスバエナなど、Aランクのクーノにはわけなかった。

 

 

 

 

 ゲルデが向かった先にいたのは、リエラとフィリア、そしてサンドラだった。

 サンドラと向き合って話をしているリエラとフィリア。

 そこへ毒腺を発達させたアンフィスバエナを5匹連れて、ひひひひと笑うゲルデが走って行く。

 

 

 

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