異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

37 / 171
2022/10/10 サブタイトル変更しました。




第36話「絶滅したはずの魔術使いが現れました!ハンター達がピンチです!」

 

 その頃、マヤが弓の練習をした林入り口の泉の(ほとり)では、ハンターギルドマスターのジオニダスが、林から戻ってきたハンター達から猟場の話を聴取していた。

 それらを総合すると、一言で言えば異常事態だ。

 

 一角兎(アルミラージ)にやられたハンターが何人もいる。

 追っかけていた狼が巨大な蟲に食われる。

 カスモサウルスが怪鳥にさらわれる。

 魔犬の集団に囲まれて、命からがら逃げてきた。

 用足し中に魔猿に尻拭き紙を持ってかれた。

 etc……

 

「むう。明らかに魔物が活気付いているな。警備中隊長の言ってたことが、この北の猟場で起きているのに間違いない」

「ブラウシュテルマーが咲いてるってんですかい?」

「そうだ。しかも何者かが置いた可能性があるのだ。とにかく、ここにいるハンターは狩りを中止して町へ戻ってくれ。Cランク以上で志願してくれる者は、猟場の中のハンターに戻るよう伝えに行ってほしい。ギルドからの緊急依頼だ。それと町へ戻る者は、領都軍に事態を知らせてほしい」

「志願しよう」

「俺も志願する」

「私は領都軍への連絡に行くわ」

「ワシは怪我人を連れて戻る方に回るかのぉ」

「じいさんは戻るだけでいいよ」

「何言っとる。若いもんに負けるかい」

 

 やはり手伝ってくれるのは、地元ヘキサリネのハンター達だ。ここで生計を立てている者どうしで、普段からお互い助け合っている仲である。

 

「それじゃあ志願者は集まってくれ」

 

 マスターは北の林一帯の見取り図を広げて説明する。

 

「北の林の中は移動用の主要道が3本ある」

 

 主要道と言っても獣道の太いもの。整備された登山道程度のものだ。

 

「3パーティー編成して、それぞれの道へ行くことにする。どれもだいたい中間地点に休憩に使っている水場があるから、そこまででいい。声掛けをしながら水場まで行き、そこに狩りを中止するよう、立て看板を立てたら引き返す。戻ったらここに再集合だ」

「「「へい!」」」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 編成された3パーティーのうち、マスターのパーティーは川沿いの道を行った。

 

 この道は川に沿っているので水には困らないが、川の水はそのまま飲むには危険である。死がいが流れていることもあるし、ハンターが獲物を解体して洗ったり、水浴びをする者だっている。なので安全な飲料水ということでは、これから向かう沸き水が出ているところが、水の補給拠点兼休憩場所となっていた。

 

 狩りは道から横に分け入って行くので、主要道を歩いていてハンターに出会うことは稀だが、小休止を取るところはだいたい見当がつき、主要道に近いところを覗いてみると、案外人がいたりする。

 

「おーい、変わりないか」

「なんだ、マスターじゃないか。珍しい顔ぶれでパーティー組んでるな」

「臨時のパーティーだ。どこかにブラウシュテルマーが置かれてるようで、魔素濃度が急に高くなって魔物が活性化して、怪我人が続出している。狩りを中止して、君達も戻ってくれ」

「そういや、魔鼠のラタトスクがやたら喧嘩売りに来てたな。あれ魔素のせいか」

一角兎(アルミラージ)がヤバいそうだぞ」

「本当か。ウサギもよく見かけたぞ。分かった、片付けて引き上げよう」

「そうしてくれ」

 

 そうやって数組に声を掛けながら奥へと進んでいく。

 

「この上の高台にもいるかもしれん。俺はちょっと見てくる」

「分かりました。あっしらはゆっくり進んでます」

 

 マスターは1人を連れて高台へと向かい、残る3人は主要道を先へと進んだ。

 

 

 

 

 暫く行くと、主要道をこっちへやってくる大きな男が見えた。

 

「おーい、ギルドからの命令を伝えに来た。狩りを中止して町へ戻ってくれ」

 

 男に声を掛けたとたん、その背後に、ずおおおおっと黒く長いものが、湧き出るように上へと伸びた。

 

「げはははは、これはおれっちの獲物だああ。誰にもやらんぞおおお! 行けええ!」

 

 男は世紀末ハンターのゲルデだった。

 ゲルデの後ろに持ち上がった、黒く長いものの先端がくわっと口開いた。

 

「だ、大蛇!?」

「なんて大きさだ! 魔物のヘビだ!」

 

 さらに下からもう1つ頭が出てきて、こっちもガバッと口を開ける。

 

「あれはアンフィスバエナじゃないか!? 毒ヘビだ、みんな逃げろ!」

「ぐぇはははは、逃がさんぞおお、追いかけろお!」

 

 ぞぞぞぞぞぞ

 

 不気味な音を立てて巨大なヘビがゲルデを追い抜いて迫ってくる。

 

「なぜあの男は襲われない!?」

「それどころか操ってるみたいじゃないか!」

「くそっ、どういうことだ!」

 

 逃げるパーティーの面々。だがその先に、馬が立ちはだかっていた。それも単なる馬ではなかった。頭に角が2本生えている魔獣であった。

 

「うおっ、バイコーンが突っ立ってやがる!」

「慌てるな! バイコーンなら大人しいから、ちょっと煽れば逃げ出すはずだ。怒らせない程度に……」

 

 しかしバイコーンはその2つの角を振りかざして、近付こうとすると突っ込むようなしぐさを見せてくる。

 

「なんかもう怒ってますぜ!」

「くそう、これも魔素のせいか!?」

 

 バイコーンとアンフィスバエナに挟まれた形のパーティー。やむなく剣を抜き、戦闘態勢に入る。

 

「バイコーンは怒ったところで、せいぜいCランクだ。バイコーンを退けて逃げよう」

「足を狙え。追ってこれなくすればいい」

「俺はBランクハンターだ。アンフィスバエナの方は、俺がなんとか足止めをする」

 

 話の決まったパーティーは前後に分かれて、それぞれに対峙した。

 

「げははははは! やる気になったかああ。行けえええ!」

 

 ずぞぞぞぞと迫ってくるアンフィスバエナ。まだ距離があるうちから、上の頭がブシャアアっと毒液を噴射した。

 

「旋風!!」

 

 アンフィスバエナに立ちはだかったBランクの男が法力を発動した。

 

 ひゅおおおおお

 

 目の前に竜巻が発生した。毒液は竜巻に巻き取られ、上空へと吹き飛ばされる。

 

「こっち落とすんじゃねえぞ!」

「分かってる! 向こうへ傾けた!」

 

 上空へ舞い上がった毒液はいずれ落ちてくる。竜巻をゲルデの方へ傾け動かしていったことで、毒液はゲルデの頭上へ雨のように降り注いだ。

 

「ぬおおおお!?」

 

 落ちてくるものが何か感付いたゲルデは、上を見上げたまま硬直した。

 

 だがその時……

 

「氷の精霊よ。我らが頭上に集まりて、薄く覆うように壁を生成せよ」

 

 ゲルデとは違う声がすると、ゲルデの頭の上に透明な板が出現した。

 ざあっと降り注ぐ毒液は、その透明な板によって防がれた。氷の板である。

 役目を終えると氷板は消え、辺りはひんやりとした冷気が漂う。

 

 ゲルデの後ろから現れたのは、黒のローブに身を包み、右手に杖を持つ、男と思われる者だった。

 

「くっ、氷法力使いか!?」

 

 毒液を防いだ透明板が氷であったため、その者は氷を扱う法力持ちと思われた。しかし……

 

「火の精霊よ。我が手に集まりて、火球となれ」

 

 その男が上げた杖の先に魔法陣が展開し、ひゅんひゅんと小さな火が手の平の上に集まりだして、ぼぼぼぼっと燃える火の玉へと成長した。

 

「火の精霊よ。火の玉を以って、忌まわしきあの男を包み燃やせ!」

 

 男が火の玉を投げる。咄嗟の事に唖然としたBランクハンターは、旋風を出す暇もなく、飛んできた火球に包まれた。

 

「ぐわあああ!」

 

  バシャアア!

 

 だがすぐに別のハンターが水をかけて火を消した。水噴射の法力を持っていたのだ。

 火の玉を投げた男は、不機嫌に眉間を寄せた。

 

「さっき空中にできた透明板は氷じゃないか?」

「ば、ばかな! ならなぜあいつは火を投げられたんだ!?」

 

 火に焙られてダメージを受けたBランクハンターが、少し焦げた頭を振って起き上がろうとして、はっと気付いた。

 

「ま、まさか、魔術師か?」

 

 他のハンターの目が見開かれた。

 

「魔術師……」

「魔法使いだというのか! そ、そう言えば、術を発動させるのに魔法陣が出て、何か唱えていた」

 

 それは淘汰されたはずだった。

 200年前、魔術を扱う魔族と、法力を持つ人間の間で最後の戦いがあり、魔術を扱う魔族は敗れ、魔法は潰えたのだ。

 

 魔術は一人で様々な術を行使できる。一方、法力持ちは基本的に1つの力しかない。術や力の強さは個人の技量や資質によるところは同じだ。

 だが根本的な違いがある。

 魔術が詠唱を唱えて魔力を元に精霊に呼びかけて術を生成し、魔力量に応じ強さや使用回数があるのに対し、法力は体に備わった体の一部そのもの。腕や足を動かすのと同じように力を行使できる。なので行使限界は体力に比例しており、行使回数を気にすることはない。無論呪文詠唱など必要ないので、法力の発生は反射神経の速度で可能だ。

 最上位魔術師がようやく行使できる無詠唱での魔法を、末端の兵士どころか、発現したばがりの子供までがやってのける、というのが法力だ。

 その差が魔術を駆逐したのだ。

 

 しかし潰えたはずの魔術使いが、今目の前にいる。

 法力が魔術に勝ったとはいえ、その抗争があったのはもうずっと昔の事。魔術師との戦い方など、現在のハンターに心得などないのだ。

 

「ゲルデ、やれ」

「げはははは、おれっちの獲物の餌になれえええ!」

 

 アンフィスバエナがずぞぞぞぞぞと動き出した。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。