異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~ 作:RightWorld
外が騒がしい。
いや、今わたしは外にいるんだっけか。
背中側にポンチョタープのペラペラの壁があるだけで、わたしは吹きさらしのところでブランケットに包まって寝ていたんだった。
首を出すと、喧騒は街道の方から聞こえてくる。
マントを被っていたクーノさんが起き上がり、そっちへ歩いていった。レオさんとリエラさん、フィリアさんも起きる。さすがは護衛担当を請け負った人達。王子皇女という身分でありながらも、きっちり役目を果たそうとするなんて、これでは家臣の人達がいたら従わないわけにはいかないわね。
サンドラちゃんも首だけ出して様子を窺い、そしてこっちへ心配そうな顔で見てきた。リネールさんは全く動くことなく寝ている。
わたしとサンドラちゃんは寝床から出て、水場で顔を軽く洗い、ちょっとおトイレ。
戻って来ると、ちょうどクーノさんも帰ってきたところだった。レオさんのところに集まるので、わたしとサンドラちゃんもそこに混ざって報告を聞くことにした。
「ここから街道を半日くらい行った先で魔物が出たそうです。馬車が何組か襲われて、馬は食われるし、何人か犠牲になったとか」
「ええー、人が襲われた!? 馬が食べられちゃうって、そうとうでっかいてことよね!?」
わたしが悲鳴を上げると、サンドラちゃんも恐怖でわたしの服を掴む。
「先に進めないので、付近にいたハンターや西へ向かっていた人達とコンボイを組んで引き返し、今ここに着いたということです。30分後にハンターギルド職員も参加して、再度打ち合わせします」
「魔物って、何が出たんだ?」
「クモです。樹上営巣系のタイガー・スパイダーと、地グモ系のラトロ・アトレイタ」
「そこを何とかしないと西に行けないって事か」
「ええ!?」
サンドラちゃんは驚いて声を上げる。
「薬草摘み行けないの!? アイポメアニールの摘み取り日は決まってるのに!」
わたしもサンドラちゃんを援護した。
「そうだよ。1日だって遅れるわけいかないんでしょ?」
「一番足が遅くて、間に合うかわ危ぶませているお前が言うか」
「はうっ!」
レオさんの容赦ない指摘に胸を押さえる。
「な、なら尚更早く始末して、先を急がないとでしょっ。タイガー・スパイダーならこないだリネールさんでも相手できたDランクの魔物だし、さっさとやっつけて先進みましょうよ」
そのリネールさんはピクリとも動くことなく寝ている。
「もう一方が問題だ。ラトロ・アトレイタはBランクだ」
「Bランク!?」
サンドラちゃんが青ざめる。Bランクといえば、こないだのアンフィスバエナが巨大化した奴か、4つ頭にまで覚醒したのがそうだった。リトバレーを襲った凶暴マンモスや、サーベルタイガーもだ。
「とにかく、ギルド職員も含めた会議で詳しい話を聞こう。俺とクーノで行って来る」
「私も行くわ」
リエラさんも立ち上がった。
サンドラちゃんはわたしに心配な顔を向けて袖を引っ張った。
「マヤちゃん、わたしもどんな風に決まるのか見たい」
「分かった。わたし達も行こう」
殆どの人が会議に行こうとしたので、レオさんはフィリアさんの方に向いた。
「そうしたらフィリアには残ってもらおう。子供達が勝手に動かないよう見張っといてくれ」
「承知しました」
フィリアさんを残し、Sランクのレオさんがわたし達を纏め、皆で道の駅の建物へと向かった。
なおリネールさんはむにゃむにゃと寝言をいいつつ寝ている。
道の駅建屋の食堂の一角で会議が行われた。
集まっているのはギルド職員と、ギルドから派遣されてるハンター、西街道から逃げてきた商隊とハンターの代表者、そしてこれから西街道を西に行きたい人達だ。
ギルド職員が司会をして会議は始まった。
「ご存知の通り、この先でBランクの魔物が現れたため、立ち入りが制限されます。エリア討伐ランクはB。ここに入るには、Bランク以上のハンターか、Bランク以上がメンバーにいる、Cランク以上のパーティである必要があります。現時点、魔物の数と分布は不明なままな事に留意ください。どこまで魔物が広がっているかはまったく分かっていません」
「魔物が討伐されるまで、商隊の馬車は入れないのか!?」
「先程の条件を満たした護衛が付いていれば入れます」
「BランクのいるCンクパーティーだぞ。ハードルが高い」
「ハンターギルドは魔物討伐してくれるのか!?」
「今日、領都のギルドで討伐依頼が掲示されるでしょう。そうすれば午後には受注したハンターが来て、偵察が始まるでしょう。偵察結果によっては一度戻って、翌日討伐隊を増やして出直すという可能性もあります」
「そうすると、最低でも今日は動けそうにないな」
「勘弁してくれ! 積み荷が痛んじまう!」
「護衛を雇うしかない」
「しかしBランク以上のハンターでないとだぞ? そんな高ランク、ここに野営してるか?」
そこでレオさんがギルド職員に質問をした。
「護衛さえいれば、護衛対象はランク関係なく、馬車でも子供でも入っていいんだな?」
「入ってもいいですが、護衛のランクは先程言った通り、Bランク以上のハンターか、Bランク以上がメンバーにいる、Cランク以上のパーティである必要がありますよ」
「ならうちは問題ない。孤児院のガキ共を連れて入れるぞ」
「あんた、Bランク以上のハンターなのか!?」
商人の一人がレオさんに問いかけた。
「俺のパーティーはAランクだ」
「Aランク!?」
「う、うちの護衛についてくれ! 金なら出す!」
「いや、うちだ!」
商人の間から次々にオファーが入ってきたので、サンドラちゃんが慌ててレオさんの前に立ちはだかった。
「だめなの! もうこの人達は、わたし達の護衛依頼を受けてるんだから!」
「うちがもっと金を出すぞ」
多数の引き合いを前に、レオさんは肩をすくめた。
「金を積まれてもなあ。それで乗り換えたとなるとパーティーにとっては信用問題だ。それに受けた依頼を途中でほっぽって未達にしちゃあ、評価も下がっちまう」
レオさんはきっぱり断った。いやあ筋を通すってカッコいいね。わたしも将来キチンと断れるようメモメモ。やっぱり美少女からの依頼が優先よね。あれ?
「それより」と、レオさんはリエラさんの方を向く
「リエラのパーティーは大丈夫か?」
「うちのパーティーはCランク。フィリアがFランクだけど、私がBランクだから入れるはずよ」
それを聞いたギルド職員は割って入った。
「ちょっと待って下さい。護衛担当のパーティーメンバーはその2名だけですか?」
「そうよ」
「魔物の数が分かってないんです。それにもうひと方はFランクとなると、魔物を倒すわけにはいきません。実質Bランクのあなたが1人で護衛するようなものです。条件は満たしてますが、ハンターギルドとしては勧めかねます」
ギルド職員が難色を示す。
しばし睨み合っていると、レオさんはわたし達リトルウィングの方に目をやってから、リエラさんに提案を出した。
「メンバー入れ替えをしたらどうだ?」
「メンバー入れ替え?」
「フィリアとマヤを入れ替えるのはどうだ? マヤもFランクだが、変な但し書き持ってたろう?」
変なって何よ、変なって。わたしは聞き返す。
「アンリミテッド・パーティーのこと言ってます?」
「それだ。パーティーランクの格付けにも影響あるんじゃないか? マヤ、ギルドカード出してやれ」
わたしはレオさんに言われた通り、ギルドカードをギルド職員に手渡す。ギルドカードを見た職員はぎょっとしたような顔をして、「ちょっと待っててください」と言って事務室へ駆けていった。
暫くしてマニュアルらしきものを持って戻って来た。マニュアルをパラパラ捲りながら、職員は独り言のように何やら呟く。
「アンリミテッド・パーティーのライセンス持ってる人なんて初めて見たよ。それもFランクの子供が持ってるなんて。もしかして偽造? いやしかしこのカード、領都のギルドで発行されてるから、ジオニダスさん了承ってことだよな? 信じられん」
よく聞き取れなかったけど、なんか失礼な事言われた気がする。
「あ、あったあった。えーと、アンリミテッド・パーティー保持者は、実ランクに関係なく所属パーティーの討伐ランクで活動することが出来ます。つまり貴女のパーティーに入ればBランクまで狩ることが出来るという事ですね」
リエラさんやサンドラちゃんも安堵の色を見せる。
「2人でラトロ・アトレイタを倒せるって事ね」
「パーティーのランクを決めるのに使ってもいい、とも書いてあります。パーティーを組んだ時のパーティーのランクの算出にアンリミテッド・パーティーを適用させる事が出来るんです。その場合は、実ランクではなくAランクプラス者の換算ポイントで計算する、となってます」
「Aランクプラス!?」
「Aランクプラスだって!?」
周り中から驚きの声が上がった。わたしも初耳だ。なにそのランク?
「Aランクプラスって?」
レオさんか解説してくれた。
「Aランクプラスってのは、Sランクには進まず、Aランクを行き着くところまで上り詰めた人のことだ。
Sランクを取得するには、
「この嬢ちゃんがAランクプラス扱いだってえのか!?」
「なんだそりゃ!」
「そんなことして大丈夫なのか!?」
周りの人達のざわめきが一段と大きくなった。
「Aランクプラスって、俺より上って事?」
クーノさんがぼやいた。
「え? そ、それはちょっと、おかし過ぎますよねえ」
確かにクーノさんという実例を出されると、わたしもおかしいって実感がわいてくる。
いくらパーティー限定とはいえ、わたしがクーノさんより上の扱いになるというのは、どう見てもおかしいよね。周りの人の反応にも納得がいくわ。
これがごっつい筋肉もりもりの人だったらこんなこと言われないんだろうけど、わたしはか弱い可憐な女の子。わたしの姿見たらそう思うよねえ。
周りのハンターがわたしを指差して次々に大声を上げた。
「それくらいアンリミテッドパーティーってのは破格で特殊なライセンスなんだぞ!」
「それをハンターになっていいかどうかも怪しい年齢のガキが持ってるって、どうみてもおかしいだろ!」
え!? か弱い乙女が、ってんじゃなくて、子供が持ってるのがおかしいって言ってる!? それもハンターになっていいか怪しい年齢って、わたし10歳以下に見られたってこと!?
「ちょっと待ちなさい、わたし成人してんですけど! 17歳なんですけど!」
「なにい!?」
「「「「それはもっとおかしい」」」」
「むがーっ! なんで声揃えて言うかな!」
同じように思ってた人が複数いた事にショックを受ける。
リネールさんがいたら、また喜ばれていたところだった。
しかしレオさんは、そんなわたしを援護してくれた。
「信じがたいとは思うが、マヤはこの変なライセンスを持てるだけの実力があるのは間違いない。俺も目にしてるからな」
また変なって言ったよ。そんなにおかしいですか?
「Sランクが認めたぞ」
「本当なのか?」
するとギルド職員がハンター達の方に向いて一言付け加えた。
「事実なんでしょうね。ギルドカードに4階級差違反制裁中ってありますし」
「4階級差違反!?」
「最近そんな噂を聞いたが、嬢ちゃんの事だったのか!」
ざわざわとさっきとはまた違った驚きが聞こえてきた。
「信じらんねえが、どうやら本当のようだな」
ギルド職員の一言でハンター達は騒いでいたが、概ね納得したようだった。ただ一部の商人は、「あんな小娘がおかしいだろ! Fランクで護衛ができるのもおかしい。あれが護衛で行けるなら、なぜうちの用心棒じゃダメなんだ!」とギルド職員に詰め寄っていた。
「それだけ特殊なライセンスを持ってるんです」
ギルド職員が説明するが、納得できないようで、その商人は憤慨して出ていってしまった。
「それで、フィリアと入れ替えると、リエラのパーティーのランクはどうなるんだ?」
騒ぎが落ち着いてきたところで、レオさんがギルド職員に質問する。
「メンバーを入れ替えますと、入れ替わった人は元のパーティーでの依頼報酬を受けられなくなりますが、大丈夫ですか?」
わたしは了承した。
「わたしは薬草採取の報酬がなくなって、護衛の報酬を受けるようになるのね。わたしは構わないけど、フィリアさんはどうかな」
フィリアさんに変わってリエラさんが答えた。
「フィリアには
「わかりました。そうしますと、Bランクとアンリミテッド・パーティーのメンバーでパーティーを組みますと……」
ギルド職員は紙の脇で何やら計算をする。
「パーティーランクはAです」
「「「A!?」」」
リエラさんも含めて驚かれた。
「災害級のモンスターだろうが何でも狩れるぞ」
「それ何でも狩っていいってことだよな。すげぇ」
レオさんがにやりと笑った。
「全く問題ねえな。俺達は予定通り出発するぞ」
その場にいた他の人達は、ただただぽかんと見守るしかなかった。
パーティーランクはメンバーのランクポイントの平均で決めます。こんな感じです。
都合のいいランクポイントを探して色々やってみて、ひとまずこれで行ってみます。
ランク :S A+ A B C D E F
ポイント:128 100 64 32 16 8 4 1
例)アイポメアニール採取護衛パーティー「レオ+クーノ」の場合
クーノ:A 64
レオ:S 128
合計 192、平均 96 →パーティーランク A(討伐範囲S)
例)アイポメアニール採取護衛パーティー「リエラ+フィリア」の場合
フィリア:F 1
リエラ:B 32
合計 33、平均 16.5 →パーティーランク C(討伐範囲B)
例)アイポメアニール採取護衛パーティー「リエラ+マヤ」の場合
マヤ:F 1(実際はアンリミテッドパーティーでA+相当 100)
リエラ:B 32
合計 132、平均 66 →パーティーランク A(討伐範囲A)