異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第52話「ならず者にはさっさと無双して出発しますよっ」

 

 野営地に戻るとみんな起き出しており、顔を洗ったり、毛布を干したりしていた。フィリアさんは、また大型ダッチオーブンで調理をしている。わたし達を見ると笑みをこぼして迎えた。

 

「お帰りなさいませ。さあ朝食にいたしましょう」

「「「「わぁーーい」」」」

 

 暫くすると、ずらりと並ぶ子供達の行列ができた。その後ろに一際背の高い人が2人並んだ。子供達に対して棒のようで、なんだか妙だ。表情はどことなく緊張気味で固い。いや、恥ずかしいのかもしれない。

 

「あらレオさん、クーノさん。今朝は食堂ではなくて?」

 

 棒のような2人はレオさんとクーノさんだった。リエラさんがニヤニヤして言う。

 

「だ、だってよ、ガキ共がすんげぇうめえって、なんで食わなかったんだって、繰り返し言って手を引くもんだからよ」

 

 戻って来たレオさんとクーノさんのところに、子供達が入れ代わり立ち代わりやって来ては、そう言って連れて行こうとするので、食堂へ行くつもりだったのを断念したのだった。

 

「ミリヤのメイドが作るものだから、ワリナの人には口に合わないかもしれないわよ?」

「俺やクーノやケンは、好き嫌い言ってられるほどデキよくねえから、安心しろ」

「仲良くなれそうでよかったわ」

 

 リエラさんはニコニコと笑うと、フィリアさんのところへ戻り、よそる方を手伝った。

 

「リネールさん、パンが柔らかくなるまでは食べちゃダメよ」

 

 レオさん達の後ろにはサンドラちゃんとリネールさんとわたしが並んでいる。行列に並んでいる間、わたしはリネールさんをからかった。

 

「昨日は腹減ってたから耐えらんなかっただけだよ。マヤさんこそ危ねえんじゃねえの?」

「わたしはケモノじゃないもん。ちゃんと我慢できるもん」

 

 そんなことを言っている時期がわたしにもありました。

 数分後、わたしとリネールさんはケモノになっていた。

 ちなみにレオさんとクーノさんもケモノになっていた。

 

 

 

 

 食器を洗い、寝床も撤収して、サンドラちゃんと出発前にもう一度おトイレに行った。

 道中は野でしないとになるから、ちゃんとした施設があるうちに出すものは出しておきたいところなんです。

 ちなみに道の駅のおトイレは、わたし達の世界で言うところのバイオマストイレみたいだった。分解細菌が住んでるんだろう、おがくずみたいのが穴の中にあって、臭いはない。豚さんやスライムとかが、上を向いて待ち構えている穴でなくてよかった。

 

 用をはたして出てくると、そこには目つきの悪い男の人が3人と、商人らしき人が立っていた。商人はさっきの打ち合わせの途中で、怒って出ていった人だ。

 

「何? 感じ悪~。女性のおトイレの前でたむろってるなんて。変態?」

 

 男の人2人がすすっと背後に回った。逃げられないように囲ったってことは、穏やかな事態じゃなさそうね。

 わたしはサンドラちゃんを引き寄せて、側に来させる。サンドラちゃんも怯えてわたしの服を掴んだ。

 

「本当にこんなガキに、討伐ランクBのエリアに護衛として入る許可出たんですかい?」

「どう見てもおかしいだろう? しかもワシの商隊より優先して、冒険者なりたてのガキばかりの薬草採取パーティーを立ち入らせると言うんだ。この国はどうかしている」

 

 ふうむ。冒険者って言ったり、この国はどうのとか言ってるところを見ると、この人達は他の国から来てるんだな?

 ミリヤやワリナの人なら、リエラさんやレオさんにどうにかしてもらいたいとこだけど、今いないし、それに顔つきがミリヤやワリナの人とは違う。西洋人の顔なんか見分けられない日本人だけど、それでも違うと分かる。

 

 わたしは臨戦態勢に入り、無言で法力を発動した。

 

「それで何の用?」

「SやAランクがいるパーティーだ。たかがFランクが1人くらい減っても何とかなるだろう。キミ、腕1本くらいで許してあげたまえ」

 

 商人はそう言って横の目つきの悪い男に目配せした。

 

「へえ。善処しますが、失敗は見逃してくだせえ」

「ひい!」

 

 サンドラちゃんが声を引きつらせる。

 

「ちょっと、ここで暴力沙汰!? わたし達が訴えたら、あんたらここから出らんないよ!?」

「ふははは。3日くらい酩酊状態になって口もきけなくなる秘薬があるから心配は無用だよ。喋れるようになった頃にはもう我々は遠くへ移動した後さ」

「子供相手にそこまでやる!?」

「さっき自分で、私は大人だと言ってたではないか。キミ、大人の女性としてそっちの方でも相手してやったらどうだ?」

「さすがに見栄をはった自称大人では、興味わきませんな」

 

 目つきの悪い男は、さらに目つきを悪くして見下し、そう言った。

 

「むわあ! 怒りたいけど、興味持たれなくて一安心だわ!」

「さて時間が惜しい。そろそろ済ませてしまいなさい」

「ふっ。特殊なライセンス持ちなら、せいぜい頑張って抵抗してみるんだな」

 

 男達は拳をポキポキ鳴らしながらゆっくりと包囲の輪を狭めてきた。

 

 まったく。暴力が正義な世は、こういうのをのさばらせるんだから。ならわたしがコイツラを上回って正義になるしかないね。

 

「マヤちゃん!」

 

 サンドラちゃんの目に恐怖が浮かび、わたしにしがみついた。

 

「大丈夫。サンドラちゃんには指一本触れさせないよ」

 

 しかし威勢の良かった用心棒らしき男達だが、足を一歩踏み出す度に息を荒げて、頭を振ったり、目を瞬かせたりしている。

 

「くっ、なんだ、この体の重さは」

「目が霞んで……」

「ゼエ、ゼエ」

 

 様子のおかしい用心棒に、商人がいらついて声を上げる。

 

「何じゃおまえら! しっかりせん……か。うう? どうしたのだ? この眠気、なんだか頭痛が……」

 

 サンドラちゃんは急に用心棒や商人の動きがおかしくなったので、頭の上にハテナを飛ばす。

 わたしはゆっくりと正面の用心棒に歩み寄った。その男はガクッと膝を折り、地面に膝をついていた。

 

「伊達にアンリミテッド・パーティーの資格をもらっちゃあいないわよ。特にサンドラちゃんのような美少女に手を出そうとするような輩には手加減しないから」

 

 腕を組んで上から見おろすと、用心棒の男は恐怖の目で見上げた。手を上げようとするが、力が入らないようだ。

 

「マヤちゃんストンピング!」

 

 げしっと男を蹴り飛ばす。大の男が抵抗もできず後ろに転がった。

 振り返って背後に回った男にも歩み寄る。

 

「く、くそう、体が……」

「マヤちゃんストンピング!」

 

 そしてもう一人にも同じように指導を加えた。

 

「マヤちゃんストンピング!」

「どあっ!」

 

 用心棒3人を転がすと、最後に首謀者の商人のところへ。

 商人は既に立つ事もできず、膝と両手をついてゼエゼエ言っている。

 

「や、やめろお」

 

 か細い声で言うが、冷たくあしらった。

 

「わたし達がそう言ったら、やめてくれたのかしら?」

「わ、悪かった、謝るから……」

「マヤちゃんストンピング!」

 

 みなまで聞く気にもならず、反省を促すケリを入れる。

 4人の男がろくな抵抗もできず地面に倒れているのをジロっと見おろすと、パチンと指を鳴らした。

 

酸素除去(オキシジェン・リムーブメント)、解除」

「「「「ぶはあっ!」」」」

 

 商人と用心棒達は急においしそうに呼吸をし始めた。

 そう、わたしは彼らの周りの酸素量を、通常の3分の1にまで減らしていたのだ。

 

「次、こんなことしてるの見つけたら、死んでも知らないから」

「ば、バケモノだあ!」

 

 用心棒が駆け出して逃げていく。置いてかれた商人は腰が抜けたのか、酸素が体に回るのが遅いのか、「ま、待ってくれ! 置いていかないでくれー」と四つん這いのまま用心棒を追いかけて行った。

 

「ふう。これで手出ししてこないでしょ」

「マ、マヤちゃん、何したの?」

「あの人達の周囲で、火を消すのと同じことしたのよ。火が燃えるために必要な3つ目のものを少なくしたの。火が消える程じゃないけどね。すごく高い山の上に登るとあんなふうになるのよ。長時間あの状態に晒されると死んじゃうかもだけど、短時間なら問題ないわ」

「高い山って、どれくらい?」

「9千とか1万メートルくらい?」

「はあ~、はるか西の方にそんな山があるって聞いたけど、それ聞いたら登りたくなくなったの」

 

 

 

 

 野営地に戻ったわたしとサンドラちゃんは、レオさんにならず者商人の事を報告したが、驚かれることもなかった。

 

「撃退できたんだな?」

「ええ。一方的に」

「なら問題ねえ。そういう世の中だ。ある程度は自分で対処できねえと生きていけねえ。マヤなら心配いらねえよ」

「そういうもんスか」

 

 あっさりしたもんだ。まあわたしも最初に盗賊に襲われた時から、必要あらばこっちの流儀で迎え撃つと覚悟を決めていたし、それができる法力だ。

 でもいつかはわたしを女神と呼ばせる夢は捨てないよ。え? 無理? デストロイヤーだから?

 

 そんなわけで野営地の片付けも終わり、わたし達は野営地を出た。

 

 道の駅から街道に出ると、西に向かう方へは行けないよう柵がしてあって、ギルド職員と、ギルドから派遣されてるハンターが立っていた。

 レオさん、クーノさんのAランク護衛パーティーに率いられて、孤児院の子達が歩いていく。その後ろにはリエラさんとわたしを護衛に従えた、サンドラちゃん、リネールさん、フィリアさんの改造薬草採取パーティー『リトルウィング』が続く。

 ギルド職員は心配そうな顔をして出迎えた。

 

「ご無理はなさらず。お気を付けて」

「ああ、行ってくる」

 

 ハンターが柵をずらして通り道を作り、わたし達がそこから出ていこうとすると、後ろからどこかの商人が往生際悪くギルド職員に詰め寄ってきた。

 

「あのパーティーの後ろをついて行っちゃダメか? Aランクパーティーだぞ。すぐ後ろなら危険も取り払われた後だから、安全にいけるんじゃないか?」

 

 だがそんなことでギルド職員が首を縦に振るわけはなかった。

 

「駄目です。彼らの護衛対象は決まってるんです。あなた達が襲われても、助けてはくれませんよ。よしんば助けてくれるとしても、一番後回しにされます」

 

 商人は悔しそうにわたし達の集団を見送る。

 孤児院の男の子が、べーっと舌を出して商人を小馬鹿にしたが、すぐ女の子にひっぱたかれた。どこの世界に行っても、男子と女子の関係は同じなんだなあ。

 

 

 

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