異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第56話「危険地帯では危険な地グモも食料になります」

 

 わたし達アイポメアニール採取パーティーは、さらに街道を先へ進む。

 林を抜け、草原に出た。

 視界が開けた途端にイレムが叫んだ。

 

「あっちとこっちから、3匹やってくるのがいる!」

 

 イレムが草原の彼方を指差した。腰から胸くらいある草は風に揺らいでおり、その下を動く者が揺らしているのと区別つかない。

 

「見えないが、こんな所にいるのは間違いなくラトロ・アトレイタだろうな。イレムいいぞ、その調子だ」

「これなら、奴らの得意な奇襲攻撃を食らう心配ないわね」

 

 リエラさんも剣を抜いて、迎撃の態勢に入る。

 リネールさんは弓を構えた。

 

「どの辺だって?」

「あそこいらに1匹いる」

「ふん」

 

 リネールさんは目を細めて観察した。

 

「接近戦が得意な魔物なら、接近する前にやっつければいいってことさ」

 

 そして揺れる草から当たりをつける。

 

「ここか!?」

 

 ビュッと弓を放った。弓矢は30m程を勢い良く飛び、草の中に消えた途端、そこから黒い体に赤い斑点を持ったクモが、変な叫び声のようなのを発して立ち上がった。

 

「いた!」

「ひええ! 何あの模様、気持ち悪ぅい!」

 

 わたしは背筋に寒気が走った。基本女の子は虫系は嫌いなのだ。それに加え、大きさが人より大きいときた。タイガー・スパイダーより一回り大きい。関わり合いたくない。

 

「マヤさん、凍らせ攻撃できるか!?」

「ええ?! あんなの相手にしたくないよう」

「マヤちゃん、近くに来たらもっと気持ち悪いと思うよ? 脚とか体とかに毛がいっぱい生えてそうだし、目とかもいっぱいありそうだし」

 

 サンドラちゃんに諭されて、我に返った。

 

「そ、そうだよね。わたし護衛役だし」

 

 わたしは狙いをつける。

 わたしの攻撃範囲、というか酸素を出現させられる範囲は、目で見える範囲とイコールだ。距離感さえ間違えなければ数キロ先にだって攻撃できちゃう。30mなんて手が届く距離も同然だ。

 

液化酸素(オキシジェン・リクエファイ)!」

 

 鎌のような前足を振り上げて怒るクモの上から、マイナス190度の液体酸素をバッシャアっとぶっかけた。モウモウと白い煙が立ち上る。

 

「動きが止まった。トドメは後にして、残りの2匹をやるぞ!」

 

 1匹がやられたのを感じ取ったか、2匹は横に旋回しながら急速に接近してきた。

 

「2匹が動き出した! は、速い!」

 

 そのスピードこそ、ラトロ・アトレイタがBランクである所以だ。

 スピードがありながらも、真っ直ぐ来ないところがいやらしい。草むらのざわめぎが四方八方から起こり、どこから来るのか、どれが本物なのか全く分からない。

 だが、その動きもイレムの探知法力には見えている。よってお見通しだ。

 

「こっちに回ってきた! もう1匹はあそこ!」

「リネール、マヤ! 遠い方をさっきの要領でやれ! クーノ、近いのやるぞ!」

「了解!」

 

 クーノさんとレオさんが、イレムに指差された、近くに来ている草むらのざわめきへダッシュした。クモがバッと姿を現す。そして糸の網を投げてきた。が、クーノさんのシールドに防がれる。そしてシールドを盾にして接近した2人は、あっけなくクモの頭を切り落とした。

 

「レオ兄さまカッコイイ!」

「クーノ兄さん、さっすがー!」

 

 孤児院の子たちの歓声が上がる。

 一方のわたし達。

 

「マヤさん、火矢でいくぞ!」

「あ、はい!」

「兄ちゃん、あれだ!」

 

 イレムが横へジグザグに動きながら揺れる草むらを指差す。

 

「うりゃ!」

 

 リネールさんがクモの動きを見切ってバヒュッと火矢を放つ。草むらから覗いていたクモの黒い体に突き刺さった。

 

酸素充填(オキシジェン・フィリング)!」

 

 すかさずわたしはクモの周りの酸素濃度を一気に上げる。途端に火矢は激しく燃え上がり、クモの体に燃え移る。さらに酸素を追加していくと、周りの草と共にクモは火球に包まれた。クモは勢いがついているので、火の玉になったまま草むらを転げた。

 

「リネールさん! これ、草原燃えちゃうよ!」

「ちっ。火の攻撃は派手で好きなんだけどな。マヤさん、消せる!?」

「はいはい。酸素除去(オキシジェン・リムーブメント)!」

 

 わたしは火のついた草むら一帯から酸素を抜き取る。火は酸素を失って、ただちに窒息消化された。火で焼かれたクモは、ぎぎぎっと苦しそうにして動きを止めている。

 そこへなんと!

 

「チャンスだーっ!」

 

 イレムがタガーナイフを振り上げてクモに飛びかかって行った。

 

「まずい! 弱ってるからイレムでも倒せちまうかもしれない!」

「ええ!?」

 

 もしイレムがトドメを差したら、Bランクの魔物を倒したってことで4階級差違反だ。

 

「あの悪ガキ、油断も隙きもあったもんじゃないわ!」

 

 ところが、まる焼けで弱ったと思ったクモだけど、最後の力を振り絞って糸を出している。すぐにそれは網のようになっていく。ラトロ・アトレイタの糸には毒があると言っていた。イレムは毒入りの糸で絡み取られるに違いない。クモの攻撃が失敗に終わったとしても、イレムにトドメを刺させるわけにはいかない。

 

「あんたらめんどくさいのよ! 酸素切断(オキシジェン・カッター)!」

 

 先にやっつけるしかない。酸素のカッターでクモの頭を切り落としちゃえ!

 

 どばっしゃー!

 

「あれ?」

 

 クモの体がイレムの目の前で木っ端微塵になった。

 切れ味良すぎだ。頭だけ切るつもりが、頭突き抜けて体にまで達しちゃったみたいだ。それで粘液袋まで切ったらしい。

 粘液袋を破ると、破裂した水風船のようになるところも、タイガー・スパイダーと同じだ。ラトロ・アトレイタも体の作りは同じらしい。

 

「てめえ、俺の獲物をーっ!」

 

 イレムはあとちょっとのところでクモを破裂させられたので、お冠の様子。

 

「マ、マヤちゃん、容赦ないねえ」

 

 サンドラちゃんには思いっ切り呆れられた。

 

「ああ、あ、あの、べ、別にバラバラに切り刻もうとか、思ってやったんじゃないよ! だいたいイレムが悪いのよ! 格上倒しにいこうとかするから、ちょっと慌てちゃったんじゃん!」

 

 他の孤児院の子達からも、すげー、容赦ねー、慌てると手加減できないみたいだよと囁かれる。集まってくる視線が痛い。

 

「こっちもトドメ刺したわよー」

 

 最初に液体酸素を頭からかけて動きを止めといたクモのところから、リエラさんが剣を振って合図してきた。

 もう1匹弱ってたクモがいた事を思い出したイレムは、またも地団駄を踏んだ。

 

「あー、ちきしょう、そっちにもカモがいたんだった!」

「率先して階級差違反しようとするなー! だいいちあんた、結構危なかったんだから!」

 

 ともかく、これで戦闘は終了となった。

 

「イレムの探知のおかげで楽勝だったな」

「ええ。居場所が分かるって便利っすね」

 

 戻って来たレオさんとクーノさんに褒められて、イレムはへへっとなんとか機嫌を取り戻す。

 

「これも素材回収していいだわよね?」

 

 ニーシャが動かなくなっったラトロ・アトレイタを指差した。

 

「勿論だ。俺達が狩ったもんだからな」

「ラトロ・アトレイタも食えるのは脚しかないけど、味はこっちの方が断然上だよ」

 

 リネールさんがそう言うと、子供達はどよめき立った。

 

「「本当!?」」

「買い取りも高いの!?」

「ああ。タイガー・スパイダーより断然高い」

「やった! 院長先生喜ぶよ!」

「でもボク、食ってみたいなあ」

「どうする?」

 

 子供達は悩んでガヤガヤと話し始めた。

 

「薬草取ったら持ってけねえかもしれねえんだ。食っとけ」

 

 レオさんがそう言うと、わあっと歓声が上がった。

 

「それじゃ今日の夕飯は食べ比べだ!」

「えーっ!?」

 

 喜ぶ子供達を信じられない目で見るわたし。なにせあの体液どばっしゃーってなるクモなのだ。わたしのいた日本に昆虫食の文化は多少あれど、クモを食べるというのは聞いたことない。

 

「そう言わず、いっぺん食ってみなって。見かけじゃ分かんない食い物って、いっぱいあるじゃん」

 

 リネールさんがまた誘ってくる。

 

「だってクモだよクモ。サンドラちゃーん」

「わたしも食べたことないの。だから楽しみ~」

「ええーっ?」

 

 どうやらこの世界の人達とは相いれないものがあるみたいだ。

 

 

 

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