異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第60話「危険地帯で冷え冷えのスイーツデザート」

 

 食事もだいたい終わった頃、おトイレ(お花摘み)に行ってた女の子達がニーシャのところにやってきて、見てほしい蔓があると言ってきた。

 

「レイヤがヤムの蔓じゃないかって」

「蔓? あたいそんなに植物詳しくないのだわよ。そうだ」

 

 ニーシャはサンドラちゃんのところに行く。

 

「サンドラ姉。この子達がヤムの蔓じゃないかっていうのを見つけたらしいのだわね。あたいじゃ自信ないから、一緒に来て欲しいのだわね」

「ヤム? いいわよ」

 

 お茶を啜っていたわたしは、立ち上がったサンドラちゃんを見上げた。

 

「ヤムってなあに?」

「あ、えっとね、ヤムってのは土の中にできる、ねっとり芋の総称なの。リトバレー村でマンモスのお肉と根菜で作った煮物があったでしょ? あの中に入ってたお芋はヤムの一種ね」

「マンモスのお肉の煮物! サンドラちゃんのお母さんが作ったお料理ね。あれ美味しかったなあ。あの時食べたお芋は里芋みたいだったっけ」

「じゃあ、ちょっと行ってくるね」

「わたしも付いていっていい? 護衛と称して野次馬したいわ」

「そこは護衛するって言おうよ」

 

 

 

 

 孤児院の女の子達と行った先には、地面からひょろひょろと出た蔓が藪に絡まっていた。

 葉っぱはハート形をしている。わたしは里芋のような大きな葉を連想していたので、予想してたのと違って少々戸惑った。そもそも里芋は蔓植物じゃない。これは山芋とかそっち系じゃないだろうか。山芋もネバネバなお芋ではあるし。

 

「ねえ、これってもしかして、ヤム・ラナトゥースじゃない!?」

 

 蔓を見たサンドラちゃんの声は弾んでいた。

 

「やっぱり!?」

 

 ニーシャ達の声も明るくなった。

 

「誰かスコップ持ってきて! 慎重に掘るだわよ」

「「わあい!」」

「レイヤ、お手柄だよ!」

 

 子供達のはしゃぐ様子に、わたしは疑問を投げる。

 

「これって山芋? そんなに嬉しいのかな」

「嬉しいよぉー。だってとっても甘くて美味しいの!」

「甘いの?」

 

 サツマイモなら熱を通せば糖化してとっても甘くなる。焼き芋にすると蜜が皮から滲みだしたりして、女の子なら誰でも好きなやつだ。あんな感じなのかな?

 

 スコップを持ってきた子達が、地雷でも掘り出すように、つるを辿って慎重に掘っていくと、芋の頭が出てきた。

 掘り進めると、それは異様に大きくてびっくりした。サツマイモと山芋が合体したようなものだろうと思って見てたら全然違う。球形をしている。

 

「ニーシャ、出たよ!」

「やっただわよ! すごい立派!」

「なにこれ!?」

 

 なんと直径90cmはあろうかという球だ。表面の土を払うと、なんというか、スイカみたいだ。

 子供達はハイタッチして喜んだ。

 

「ヤム・ラナトゥースだよ。ねっとり芋の中でもとびっきり甘いの!」

「いいデザートが見つかっただわね!」

「早く食べたい! 持ってこ、持ってこ!」

 

 

 

 

 野営地に戻ると、球体を見たとたんに皆から大喝采が上がった。

 洗って半分に割ると、中は赤くて、これまたまるで種なしのスイカ。でも山芋だからねばーっと糸を引く。

 

「どうぞ、マヤさん」

 

 フィリアさんが切ってくれたのをもらう。

 食べてみると、しゃくりとした食感はやっぱり山芋だった。だけど味は、飛び切り甘いスイカだった。

 

「おおー、美味しい!」

「でしょでしょ!?」

「これ冷やしてみていい?」

 

 わたしはちょっと思い付いて、固体酸素を出す。そこにスティック状に切られたヤム・ラナトゥースを置くと、すぐに冷凍される。そしてその冷たいお芋を食べてみた。

 カリッという音を立てて砕け、口の中で溶けてくると、またねっとり感が戻ってくる。シャーベットに近いけど、溶けてなくなるわけじゃない。バナナを凍らせたものの方が似てるかもしれない。

 

「マヤちゃん! なにこれ、おいしい~!」

「ええー、冷たくて甘くて、こんなの食べたことなーい」

 

 瞬く間にヤム・ラナトゥースのアイスバーが大人気になった。男の子達はむしろこっちの方が喜ばれた。

 

「あれ、リエラさんは?」

「リエラ姉様、まだ戻ってきてないの?」

 

 さっきレオさんのところへ、お夕食をデリバリーしに行ったっきりらしい。

 

「それじゃわたしがレオさんの分と一緒に持っていってあげよう」

 

 むふふふ。まさか危険地帯での野営で、甘くて冷たいスイーツが食べられるとは思うまい。

 

 

 

 

 二人の喜ぶ顔を想像してニヤニヤしながら岩の上に登ってみると、人影は一つしかなかった。

 

 あれ?

 

 影が大きかったので、わたしはレオさんだと思って声をかけた。

 

「あれえ? レオさーん。リエラさん来なかった? もう戻っちゃった?」

「ひゃぁっ!」

 

 そこから飛び出たのは甲高い女性の声。レオさんだと思ってた影が二つに割れた。

 

 うーむ、レオさんとリエラさんはぴっとりとくっついて、いちゃいちゃの最中だったみたいだ。魔石ランタンに照らされた二人の顔が赤い色をしてたのは、ランタンの灯りの色のせいじゃないと思う。

 

「あ……ごめんなさい。お邪魔、でしたね?」

「なななななんだマヤか、どうした?」

「あらあマヤさん! お邪魔なんて、なんのこと?」

「いえ、いいんですよ。もっと仲良くなってくれて。じゃ、わたしはこれで、お楽しみを続けてください」

「ま、待て待て! なんか用があったんじゃねえのか?」

「別に今でなくてもいいです」

「マヤさん、今がいいわ! 今暇で暇でしょうがなかったところなの!」

 

 妙に慌てまくる二人。

 

「またまたぁ。まあそれじゃ、これでも食べて、その火照りまくった顔でも冷やして下さい」

 

 わたしはサイコロ状に切って深皿に入れられたヤム・ラナトゥースを差し出した。

 

「これはイモか」

「この甘い匂いは、ヤム・ラナトゥースね」

「ニーシャ達が見つけたんです」

「それはお手柄ね。……って何ですこれは! どうしてこんなに冷えてるの?」

「わたしの法力で凍らしてみたんですよ」

「わあ、氷菓子でも食べてるみたい! レオさん、凄く美味しいですよ。お口開けて?」

「お、おう?」

「はい」

「冷てっ。うおお、こりゃ旨えな!」

「もう一ついかが?」

 

 目の前で繰り広げられるバカップルぶりに、もう目を覆ってしまう。

 

「うわあ、こりゃ見てられないわ」

「はっ! ち、違うのマヤさん!」

「ち、違うんだ! お、俺は見張りをだな!」

 

 動揺する二人。何をいまさら。

 

 ちょうどそこに空気を読まない悪ガキの声が響いてきた。

 

「魔物が接近してきた! もうすぐ林から出てくる!」

 

 この旅のさ中に探知法力が見つかったイレムだ。どうしようもない悪ガキだけど、早期警戒レーダーとしては優秀だ。自分自ら迎撃ミサイルになろうとするのさえなけりゃいいんだけど。

 

「よしきた! ここは俺がだな!」

 

 立ち上がろうとするレオさんに先んじて、わたしは林の方を見る。

 案の定イレムが「俺が仕留める」とか大騒ぎしつつ垣根の所へ行って、魔石ライトで林を指さしていた。あの辺に現れるらしい。

 

「イレムもだけど、せっかくいい雰囲気なのに、魔物ももっと空気読みなさいよねっ」

 

 がさりと草むらが揺れて、草が刈られて草原になったところとの境に、ラトロ・アトレイタが顔を出した。

 

酸素切断(オキシジェン・カッター)!」

 

 ぴぴぴっ、どばっしゃーー!!

 

 顔を出したとたんにクモは顔から縦に切られ、粘液袋が破裂して体が爆散した。

 

「あ、片付けたんで、お二人はどうぞお続けください」

 

 わたしはミリヤとワリナの将来のため、こんなことでお二人を煩わせまいと気を利かせておじゃま虫を瞬殺し、そそくさとその場を退散したのだった。

 

「ガキババアてめえ、オレの獲物を!」

「あんたアレやっつけちゃダメだって言ってるでしょ!」

 

 イレムの怒声に毎度の返しをするマヤへ、目が点なお隣の国の王子様と皇女様。

 

「……まあ、せっかくだから、もう少しのんびりしていけよ」

「マヤさん、グッジョブ! だけど、ちょっとあの娘、危なすぎない?」

 

 

 

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