異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第61話「危険地帯でイベント発生条件をクリアしちゃいました」

 

 朝早い野営地。

 

 日の出と共に起きて朝食の準備をしたフィリアさんに皆は起こされ、手早く朝食を済ませた。

 野営道具を片付けて、トイレ兼ゴミ捨て場の穴を埋め戻し、水を補充して装備を背負うと、手間を掛けて作った野営地を後にした。

 

 今日は目的地のアイポメアニールの群生地に到着しなければならないからね。明日はサンドラちゃんの予想によるとアイポメアニール開花予想日。明日の夜明け前に、咲く寸前の蕾を採取しないとなんだ。

 

 問題は魔物。どこにどれだけいるのかは全く分かってない。最悪は群生地が魔物だらけだったりすることだけど、だとしても、魔物を排除してでもアイポメアニールを持ち帰らないと、領都が疫病で大変なことになるんだ。

 

 幸いなことに、イレムに魔物を探知できる法力があることが分かったので、イレムをレオさんの傍に置いて早期警戒レーダーとしてパーティーの前後左右を監視させた。おかげでわたし達はハイペースで街道を進んでいる。いつ魔物が現れるかビクビク警戒しながらだと、どうしても進むペースは遅くなるからね。イレムレーダーの効果は抜群だった。

 イレムが人の役に立つ日が来ようとはねえ。あのイレムが。おかげでわたしとしては早い歩行ペースについて行くのが大変になったけど。

 

 途中で何回かイレムの探知に引っ掛かったのがいた。

 

 1つ目はタイガー・スパイダー。

 クモの巣にディキノドンの群れが捕まっていて、これからお食事というところだった。

 ディキノドンは体長1mくらいで、2本の牙が突き出た顔をしている草食動物。わたし達のいた世界ではペルム紀から三畳紀にかけて繁栄した絶滅種だ。

 さっさと巣の主をやっつけて、ディキノドンを解放した。

 スーパーボールくらいの魔石と、クモの脚8本が手に入った。

 

 2つ目はラトロ・アトレイタ2匹。

 ゴルゴノプスが5匹やられて、食べられてる最中だった。

 これも遠距離から固体酸素で覆って動けなくし、さくっとやっつけた。

 捕まってたゴルゴノプスは、わたし達のいた世界ではペルム紀に栄えた肉食獣。当時の最上位捕食者だけあって、鋭く長い2本の犬歯がいかにも凶暴そうだった。そんなゴルゴノプスも、Bランクのラトロ・アトレイタにはひとたまりもなかったようだ。なのでどのみち生かしてはおけなかったから、討伐する手間が省けたというものだ。

 

「ラトロ・アトレイタの魔石と脚を回収。ゴルゴノプスも肉や牙が売れるから持っていこう。フィリア、ストレージに入れられるか? ここに死体を残しておけないからな。かと言って埋めるのも時間が惜しい」

「1匹60kgくらいでしょうか。まだ入りますが、帰りにアイポメアニールを入れる容量が残るか心配です」

「野営地に着いたら解体しよう。解体すれば半分くらいになるし、もしそれでも花を持って帰るスペースが足りなくなれば捨てるだけだ」

「承知しました」

 

 フィリアはストレージを開けると、孤児院の子達に手伝ってもらって、空中にぽかっと開いた穴にゴルゴノプスを仕舞った。

 

「ゴルゴノプスって討伐依頼が出てなかった?」

 

 ふと最近聞いた名前だと思い出したわたしの問いに、ニーシャも手を止めた。

 

「そう言えばテオ兄ちゃんのパーティーが受けてただわよ」

 

 テオとは孤児院出身者のDランクハンターで、イレム達男の子からしたら目標のような15歳の少年(こちらでは成年)。凶暴な肉食獣のゴルゴノプスの討伐をパーティーで受注してて、近々出発する予定だった。

 

「仕事なくなっちゃったんじゃないかなあ」

 

 わたしが可哀想にと言うと、孤児院の子達は首を横に振った。

 

「ラトロ・アトレイタなんかが彷徨(うろつ)いてるんだったら、テオ達じゃ危なかっただわよ。まだ出発してなくてよかったと思うだわよ」

「そうだね。Dランクのテオのパーティーじゃ、餌になってたのはテオだったかもしれないね」

「え!? もしかして!」

 

 イレムが色めき立った。

 

「テオ兄ちゃん達も来れなかったところを、俺達はどんどん進んでいってるんか!?」

「ま、そういう事だわね。レオ兄様のAランクパーティー、リエラ姉様のBランクパーティーが護衛してくれてるから、あたい達はここまで来れてるわけだわね」

「すげえ! オレ帰ったら自慢しよう! そうだ!」

 

 いちいち言葉に力が入ってて、無駄にエネルギッシュなイレム。次言うことが何となく分かってきた。

 

「これってテオ兄ちゃんも手出せねえ高ランクの獲物をやっつけるチャン……」

 

 ゴツン!!

 

 みなまで言う前にレオさんのゲンコツがイレムの脳天に落ちた。

 

「お前ぇは護衛される側だっつってんだろうが」

 

 そんなやり取りもあった道中で、サンドラちゃんが左手の方を指差した。

 指し示す方を見ると、木々の向こうにきれいな泉が見えた。

 

「あそこが西の街道そばのアイポメアニール採取地なの」

「ああ、西方面の依頼番号3番、片道2日の行程のところか」

 

 サンドラちゃんから群生地の聞き取りをしたリネールさんはすぐ分かったみたいだ。

 明日の朝蕾を採取するには、今日ここに到着してないとだけど、これまでそのようなパーティーは見ていない。

 

「ここへ採取に来るパーティーとは会ってないよね。わたし達の翌日に出発したのかな。っていうか、街道封鎖されちゃったの大丈夫だったかな」

 

 わたしは気になって懸念を投げてみると、リエラさんは大丈夫じゃないと思うわ、と言った。

 

「護衛パーティーのランクが低かったら、入れてもらえてないんじゃないかしら」

「アイポメアニールの採取パーティーの護衛にCランク以上が必要なんて、普通思わないもんねえ」

「そ、そうしたらどうするの?」

「引き返して、もっと高いランクの護衛パーティーと再契約して翌日出直し、かな」

 

 わたしは指折り考える。

 

「となると出発が1日遅れるから、着くのは明日かあ。サンドラちゃんの開花予想日には間に合わないね」

「薬師協会指定日には採取できるから、そっちで頑張ってもらうしかないよ」

「そうだね。わたし達はわたし達の担当のところに全力を注がなきゃだね」

 

 そういうわけで、わたし達は泉を横目に見ながら先を急ぐ。

 

 

 

 

 太陽の日差しが少し暑く感じる頃、昼食の代わりになるお昼のお茶休憩になった。

 朝焼いておいたクモの脚が配られ、お茶休憩というよりは結構しっかりとした食事となった。

 

 その後ここまでは何事もなく、とっても順調。このペースなら、日のあるうちに十分目的地に着けそう。イレムレーダーのおかげで、パーティーはすっかり安心しきっていた。

 クモの脚のお肉を頬張るクーノさんとレオさんの会話からも、拍子抜けという感じが伝わってくる。

 

「魔物いないっすね」

「ああ。俺達がやっつけたので全部だったんじゃねえか? 案外もういないかもしれねえぞ?」

 

 そんなフラグを立てるような事言わないでほしいなあと思っていると、サンドラちゃんがレオさんのところにやって来た。

 

「レオ兄様。街道の横に小さな湖があるんだけど、ちょっと手に入り難い薬草があるの。寄れないでしょうか?」

「どれくらい街道から離れてるんだ?」

「数百メートル。ええと、街道から湖に向かう山道に入って、10分くらい」

「てえと7、800mくらいか? 1kmはないな。皆で行っちゃまずいのか?」

「道が凄く細くて、子供達が長い列になっちゃうから、護衛しづらいだろうってリネールさんが」

「ふむ。列の真ん中を狙われると、助けに行くのにも子供の列が邪魔になって到着が遅れるか。今のイレムは魔物しか探知できないから、普通の動物だと近付かれても気付かないかもしれないからな」

 

 レオさんの分析にクーノさんも肯定した。

 

「その点リトルウィングなら、護衛はリエラさんとマヤさんにリネール君も入れりゃ3人いるところ、守る対象はサンドラとフィリアの2人だけと少ないですからね。いいんじゃないですか」

「えー? 行かない方がいいと思うな」

 

 これはフラグに違いない。わたしは一応止めておく。

 

「湖沿いに進むと、また街道に戻る道があるの。その道は最初に湖に曲がる道から3kmくらい行ったところに出てくるの。だから孤児院のパーティーはそのまま街道を進んでもらって、そこで合流すればいいと思うの」

「俺達もお前らが戻ってくるのを待たなきゃいけないっていうような、無駄な時間は発生しないってことか」

「えっ、別行動ってこと!? わたし達が分断されちゃうじゃん。そんなフラグまで立てようと!?」

「街道から湖は見えるのか?」

「森が間にあるから見えないよ」

「お前達の様子が全く見えなくなるのは気になるところだな」

「だよね、だよね。やめた方がいいよ」

「それで何の薬草が採れるんだ?」

「マルタイサンっていう、お腹の不快感とか吐き気とかに抜群に効くお薬の原料なの。特に大人の人がお酒飲みすぎた時に、凄く効くの」

「なにその大手薬品メーカーの商品みたいな名前。それにこないだハイコウソウって、似たような効能の薬草取ったじゃん。それでよくない?」

「ハイコウソウは他の薬草と混ぜないとだけど、マルタイサンは一つで完璧なの。効き目も段違いなの」

 

 レオさんはサンドラちゃんの肩をがしっと掴んだ。

 

「是非採ってきてくれ! それで、あとで薬にしたら売ってくれ!」

「勿論いいよ」

「ちょ、ちょっとお! レオさんの暴飲暴食の薬の為に命かけるの!?」

「心配するなマヤ。俺達にはイレムがいる。イレムの法力は半径1kmくらいを探知できるみたいだから、街道からでも湖近辺に魔物がいるかどうか分かる。

 もし湖への分岐まで行って、何も探知に引っ掛からなかったら、行ってよしとしよう」

「ありがとう、レオさん」

「うー、なんか条件がどんどん揃ってく気がするんですけど」

 

 そして神に導かれるように、わたし達はその時を迎えた。

 

「レオ兄ちゃん。俺の法力には何も引っ掛かってないぞ」

 

 イレムの探知法力(早期警戒レーダー)からは、この辺に魔物はいないことが確認された。

 

「うむ。ではサンドラのパーティーは、別行動で湖に俺の胃腸薬を採りに行くことを許可する!」

「分かったの。でもお薬じゃなくて原料だからね。それとレオ兄様だけのお薬でもないから」

「ふふふ、分かってる。その薬、クーノとケンにも買わせるからな」

「わー、許可出しちゃったよ!」

 

 わたしの忠告はことごとく無視され、別行動が決定されてしまった。

 こりゃもう何か起こるに違いないわ。

 

 

 

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