異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第68話「危険地帯でマヤちゃんは法力を明かします」

 

 小山の上に登ると、やっぱり頂上部は少し凹んでいて、アイポメアニールがびっしりと生えていた。火山の噴火口程ではないにしろ、形は火口のようではある。地質は溶岩ではなく砂なので、火山でないのは確かだ。あとの2つも同じ作りだった。

 

「これは地中から砂が湧き上がったのかな」

 

 わたしは現物を見た感想を言った。

 

「え、砂が? もりもり湧いて出てくるの?」

 

 驚いたサンドラちゃんが聞き返してくる。

 

「うん。正確には砂交じりの水が湧いたっていうのかな」

「どうしてそんな事が起こるの?」

「それは分かんないけど、大雨や地震の後に水が湧くとかは普通にある事だし、湧き出た後ってこんな火山みたいな恰好になるじゃん」

「なるかもだけど、大きさがハンパないよ?」

「うん。だから凄い出かただったんだろうね」

 

 サンドラちゃんとそんな話をしていると、リエラさんに感心された。

 

「マヤさん、そういうのよく思い付くわねえ。学者の家系かなんか?」

「えへへへ。わたし、学者に見えます?」

「見えないわね」

「ですよねえ」

 

 小山の様子を見終わって降りてくると、ニーシャがウルフから魔石を回収しつつ、一生懸命引きずって一か所に集めていた。

 

「ごめんねニーシャ。手伝うよ」

「ありがとうサンドラ姉。でも体が輪切りになってるから、魔石取り出すのは結構簡単だっただわよ」

 

 ウルフの輪切りとはいっても、ソーセージを輪切りにするようなのではなく水平にスライスしてるので、非常に変な見た目の輪切りが出来上がってる。脚の生えてる下の部分だけとか、逆に上の部分だけとか。元いた世界でこんな死体見たら、宇宙人の仕業とか思われるだろうな。

 

「これ、後ろ脚?」

 

 1本だけきちんと解体して外された脚が置いてあった。大きいので、ギガント・ウルフのみたいだ。

 

「そうだわね。魔物のウルフも美味しいっていうから、食べてみたいのだわね。せっかくマヤ姉が獲ってくれたんだし」

「別に狙って獲ったわけじゃないけど。明日アイポメアニール採るのに、ここに居座られたら邪魔だから排除しただけだよ」

「そのついでにやっちゃいました感が凄いだわね。歩く先の邪魔な小石をちょっとどけたみたいに、ギガント・ウルフとサンダー・ウルフをやっつけちゃうんだから。それも群れだわよ! さすが破壊し(ザ・デストロ…)…」

「わあああああ!」

 

 みなまで言われる前にかき消した。

 そうこうしているうちに、レオさんが枯れ木をたくさん集めてきて、魔石を取り終わったウルフの周りに積み上げた。

 

「マヤ、燃やすの得意だったよな?」

「は、はい。燃やすのっていうか、燃えるのを勢いづかせるのっていうか」

「どっちでもちゃんと燃えるならそれでいい。他の動物に食われないようにしっかり燃やせよ」

「わかりました。なるべく燃え残りが少なくなるようにやります」

 

 レオさんは腰から短剣を取り出し、法力で灼熱化させて枯れ木に火を点けた。短剣をライターのように使うなんて始めて見た。わたしはそこに酸素を吹きかけ、火勢を勢いづかせる。

 

「うお! 油もねえのに、何でこんなに勢いよく燃えるんだ?」

 

 わたしはついでだから、ここで酸素とわたしの法力について説明をすることにした。

 

「わたしの法力は、燃える時に必要な空気の一種を自由に扱えるというものなんです」

 

 わたしの法力と聞いて、レオさんとリエラさんの動きが止まり、真剣な眼差しをわたしへ向けた。ニーシャも興味のある目をし、既に知っているサンドラちゃんも改めて向き直る。

 

「酸素っていうんですけど、特別なものじゃなくてごくありふれたものです。普通の空気中にも2割くらい含まれています。だから火は燃えるんですよ。酸素の量を増やすと、こんなふうに激しく燃えるんです」

「あの冷たい水や氷はなんだ?」

「あれも酸素ですよ。水と同じで冷やすと氷みたいになるんです。水は100度以下で液体に、0度以下で固体になりますけど、酸素はマイナス183度以下で液体に、マイナス219度以下で固体になります」

「マイナスひゃく……!?」

「それじゃあれ触ったらやべえじゃんか。どうやってそこまで冷やすんだ?」

「そこが法力の凄いところで、冷やした状態の酸素をいきなり出せるんですよ」

「サンソってのなら何でもアリってことか。さすがは法力だ」

 

 レオさんは感心した。リエラさんと法力の有無を言わさぬパワーに頷き合っている。

 レオさんの手で触れれば鉄をも溶かす灼熱とか、リエラさんのどんな毒でも瞬間解毒する体液とかだって、現代科学では説明つかない理屈を通り越した存在という事で、オキシジェン・デストロイヤーと同類だ。法力ってそういう無茶苦茶な力なんだ。

 

「魔素を魔石にしたりっていうのは何なの?」

 

 今度はリエラさんが質問してきた。

 

「魔石って、魔素と酸素が結合してできたものなんですよ。物質っていろんな元素、物を作ってる元となるものですけど、それが集まってできていて、ほかの元素とくっつきあうと違う物質になったりします。酸素は結構いろんなものとくっつきやすい性質で、例えば鉄とくっつくと酸化鉄、赤さびになったり、炭とくっつくと二酸化炭素っていう空気の一種になったりします。今燃えてるウルフの体にも炭素っていう炭が含まれてるんで、それと酸素が結びついた時に燃えるってことが起きてるんですよ」

「髪の毛に火がついたりするけど、あれも髪の毛に“たんそ”っていうのがあるからってこと?」

「そうですよ」

「炭みたいに黒くないけどねえ。マヤさんの髪は黒いけど、炭には見えないわ」

「炭そのものじゃなくて蛋白質ですけどね。あと、わたし達生物は呼吸をしてますけど、実は呼吸で空気中の酸素を体に取り入れてるんです。酸素がないとわたし達は動けなくなります。数分で死んじゃいますよ。わたしが狩った動物で、凄い苦しそうな顔して死んでるのってあったでしょう? あれってそうやって酸素を取れなくして仕留めたものです」

「人間もそうなるのか?」

「人間も同じですよ」

 

 レオさんとリエラさんの視線が冷たかった。

 

「お前、相当ヤバい奴だな」

「のほほんとその辺歩いてちゃ、まずい人なんじゃない?」

「んな! せっかく秘密教えたのに、そういう扱いですか!?」

「敵にしちゃいけないってことがよく分かった」

「ねえねえ、大爆発はなんなの?」

「ああ、それはですね、水素っていう元素があって、それと酸素が結びつくときに燃えるんですよ。燃え方が激しすぎて大爆発になるんです」

「本当に火山噴火かと思ったわ。そのスイソはどうしたの?」

「水から作ったんです。水って酸素と水素が結合してできてるんですよ。わたしが水から酸素を取ると、水素だけが残るってわけです。そこへまた酸素を戻してあげて、火を点ければ爆発の完成です」

「水が? あんな爆発物になるの?」

「水素と酸素に分けちゃうと危なくなるってだけですよ」

「トロ様もそれをやったの?」

「たぶんそうだと思うんですよねえ」

「でもガリ様と2人でやったっておっしゃられたそうよ?」

「わたしの想像ですけど、ガリ様は水素を出す法力を持ってたんじゃないかと思うんです。よく風船を飛ばしてられたと言ってましたよね」

「ええ。すごい勢いで、とっても高く上がるのよ」

「水素って、気体……ええと空気の中で一番軽い物資なんです。この辺にある空気は殆どが窒素と酸素、二酸化炭素なんで、水素はどれよりも軽いから浮いてっちゃうんですよ」

「だからガリ様の出すのはスイソっていうものだと思ったのね。もしその通りなら、トロ様と組めばスイソ爆発を起こせられると」

「はい。わたしは水のある所でしか起こせませんが、ガリ様とトロ様が組んでいれば、どこででも水素爆発を起こせられたはずです」

 

 なる程すげえコンビだと、レオさんとリエラさんは頷き合った。

 そんな話をしているうちに、酸素をドバドバと注いで燃やしていたサンダーウルフの体は焦げて炭のようになり、その炭も赤々と燃えると、跡には焦げ跡以外何も残らなかった。

 

「なんてこった。50匹の群れが跡形もねえ」

「……マヤさんには驚かされてばかりだわ。サンソっていうのにも」

「ええ!? ウルフがなくなっちゃっただわね! なんでどうして!?」

「ニーシャ、破壊神(ザ・デストロイヤー)の事を迂闊に喋ると、こうやって跡形もなく消されちゃうのよ。マヤちゃんを怒らせちゃだめなの」

「わ、分かっただわ。絶対怒らせないだわよ」

 

 プルプルと怯えながらわたしを覗き見るようにするニーシャ。もうこの娘にはすっかり破壊神(ザ・デストロイヤー)として定着されちゃってるみたいだ。

 

「ああ、女神が遠のいていく!」

 

 アイポメアニール採取地の偵察と、ウルフの後始末を終えたわたし達は、来た道を引き返し野営地へと戻って行ったのだった。

 

 

 

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