異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第74話「危険地帯で二度目の身代わり交換です」

 

「とまあ、こんな状況よ」

 

 リエラさんはイレムが閉じ込められてるディオネアの葉の前に立って、隙間からみえるマットレスに埋もれた顔を手で指し示した。フィリアさんはメイドのよそ行きの顔を崩して、あからさまに呆れ顔になったが、すぐ元に戻り、ストレージを開けた。

 

「仕方ありません。ゴルゴノプスを出しましょう」

「え? ゴルゴノプス出しちゃうんですか? あんなに美味しかったのに。イレムはそんなに美味しくないと思うんですよねー」

「……てめえガキババア、俺がゴルゴノプス以下だってのか!」

 

 ええい、相変わらず口の悪い男子小学生め。まだ自分の立場を分かってないようね。

 

「どうやらゴルゴノプスより俺の方が旨いから、このままでいいそうです」

 

 とたんに青い顔になった。

 

「……悪かった。すみません。俺の方が不味いから、とっても旨いゴルゴノプスと交換してやってくれ」

「まったく。あんたに選択権は一切ないんだからねっ」

「それでイレムさんの体重と引き換えだと、どれくらいでしょうか」

 

 ストレージの中を手探りするフィリアさん。ゴルゴノプスは解体して調理に使いやすいよう、部位ごとに分けてしまってあった。ごそごそと引っ掻き回して、そのうちの一つを取り出した。

 

「このあばら付きの上半身の半身ではどうでしょう」

 

 お肉専門店にぶら下がってそうな立派な肉塊だった。

 

「このお腹の辺りは脂がのってて美味しかったよねー。肩の肉も味がしっかりしてて、酸味のあるソースとよくマッチしてたなあ。イレムは絶対こんなに美味しくないよね」

 

 かたや栄養が十分行き渡ってない孤児院の子供。お肉としての価値は比較にならなそうだ。

 口を開けて獲物を待っている別の葉にゴルゴノプスの半身を押し込むと、センサーになってる突起を突っついた。パクンと葉っぱが閉じて、ゴルゴノプスの半身が柔らかなマットレス状の葉の内側に包み込まれた。

 わたしはディオネアの木に手を置いて語りかけた。

 

「度々ごめんなさい。この子は仲間なので返してください。替わりにもっと美味しいお肉を差し上げました。どうかそれと交換ってことでお願いします」

 

 そう声を掛けると、木の方から葉っぱをぱくんと開けて、イレムを放してくれた。蔓に縛られたイレムがコロンと地面に転がる。

 

「もう完全に意思疎通できてますね」

「きっと舐めてみて、イレムよりゴルゴノプスの方がおいしかったから、即決だったんじゃない?」

「そうだよねえ。こんな痩せた子供じゃ比較にもならないよね」

 

 フィリアさんとリエラさんとわたしで好き放題言ってると、蔓でぐるぐる巻きのイレムが、顔だけこっちへ向いて叫んだ。

 

「ちきしょう、言うだけいいように言いやがって!」

「じゃ、葉っぱに戻る?」

「……い、いや、いいです。俺マズイから、戻さなくていいです」

 

 さすがに2回も捕食植物の葉っぱに挟まれたのは堪えたようだ。体に巻き付いていた蔓を解いてやると、心底ホッとした顔をした。

 

「早速だけど、この魔石の粉を持って帰るわよ。袋に入れてくれる?」

「え、これ全部魔石か!? すげえ、どんだけあるんだよ!」

「これ元はあの踏み台の石よ。単なる石かと思ったら実は魔導具だったみたいなのよね」

「俺、それに魔法かなんかで弾き飛ばされたんだよな。魔石になったのか。ざまあみやがれ、孤児院の台所の魔石コンロで使い潰してやる」

 

 イレムは荷物入れから麻袋を取り出す。わたしとフィリアさんも手伝って、魔石の粉を全部すくって袋に入れた。

 

「それじゃフィリアさん、ストレージで運ぶのお願いしまーす」

「承知しました。あ、あれ? 入りません。もう重量オーバーみたいです」

 

 とうとうフィリアさんのストレージも容量一杯になってしまったみたいだ。

 

「申し訳ありません。少し野営地に置いてくるべきでした」

「それは仕方ないよ。何でもかんでもフィリアさんに持ってもらってるんだもん。そしたらこれはイレムが運んでね」

「え!? すげえ重たかったぞ!」

「引きずってやっと動かせるくらいだったもんね。酸素と結合してさらに重くなったかも。たぶん50kgは下らないくらいと思う」

「俺よりずっと重いじゃんかよ!」

「でもここに放っておけないでしょ。なんでも普通の魔石より10倍高い買い取り金額になるそうよ」

「10倍!? ……つうと、これいくらになるんだ?」

「自分で計算しなさい。計算できないと買い取り金額ごまかされても気付けないよ」

「ぐぬぬ……」

 

 イレムは悔しそうにするが、実際その通りなのだ。反論できず諦めて、自分の体重の倍もある袋を掛け声を上げて担ぎ上げた。

 

「くそっ、まるで水を含んだ砂袋みてえだ」

「へえ、でも持ち上げられるんだ。凄いね!」

 

 小学生なのになんて力持ち。大人一人を背負ってるようなもんだ。まったくこの世界の子供のパワーには驚かされてばかりだよ。

 えらいえらいとイレムを褒めると、てやんでえみたいな拒否反応を見せながらも、実は照れているのを見逃さなかった。ふふん、所詮は男子小学生よ。

 でもすぐに重たくて余裕のない顔になって、褒めるより手伝えって睨まれたけど。でも残ねーん、わたしはディオネアの枯れた葉っぱから取った天然発泡スチロールを運んでて手が空いてないのよ。

 最後は現代社会なら児童強制労働や、虐待のような絵面になってたけど、わたし達は無事、砂の大地のてっぺんの昨日と同じ野営地に戻ってくることができた。

 

 

 

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