異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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忙しくて全然更新できてませんでした。




第75話「危険地帯で狩りに行くらしいけど、問題児は止められました」

 

 わたし達が野営地に戻ったのはお昼前だった。

 お昼はディオネアの実の残りを食べて、その後は休息モードとなった。

 今朝未明の見張りだったリネールさんは一早く昼寝に入り、孤児院の子もお昼寝する子がほとんどだ。

 

 と思ったら、イレムと、イレムの1歳下のラースとニコの男子年長組はまだまだ元気一杯で、エネルギーが有り余っているらしく、狩り道具を持ってリネールさんのところへやってきた。

 

「リネール兄ちゃん寝ちゃってるぜ」

「どうしよう」

「しかたねえ、クーノ兄ちゃんに言ってみるか」

 

 例のポンチョタープの下でいびきかいているリネールさんを見下ろしていた男子年長組3人は、矛先をクーノさんに変えた。

 

 

 

 

 その頃わたしは、試したい事があって、みんなからディオネアの豆の皮を回収していた。

 

「食べ終わった後のディオネアの豆の皮を回収しまーす」

 

 クーノさんの所に行くと、クーノさんはマントをござ代わりに敷いて座っていた

 

「お、捨てといてくれるのか?」

「いいえ、再利用しようと思って」

「ディオネアの豆の皮をか? 何に使うんだい?」

「そこはうまくいったらってことで。後でのお楽しみです」

 

 そこへイレム達年長組3人がやって来た。

 

「クーノ兄ちゃん、狩りに連れて行ってくれよ」

「野営地に着いたら狩り行くって言ってたじゃんか」

 

 クーノさんは子供達を見上げると、やや呆れた表情を浮かべた。

 

「お前ら、夜中起きといて眠くないのか?」

「全然平気だい」

「いつもの事だい」

 

 男の子はほんと元気だな。それはいいとして、問題はイレムがそこにいることだ。

 

「イレム、あんたまた出かけるつもり? 絶対なにかやらかす未来しか見えないんだけど」

「なにい!?」

 

 するとそこへ後ろから手が伸びてきて、イレムの頭がガッと上から掴まれた。

 

「いてててて!」

「お前にそんなこと許されると思ってんのか?」

 

 振り向くとそれはレオさんだった。

 

「魔物見つけちゃあ、言う事聞かず単独で突貫していくお前に、誰がそんな自由行動を取っていいと? 檻に入れとこうかと思ってたとこなのに」

「そ、そりゃあねえよ!」

「ついさっきもディオネアの木に捕まって、身代わりにゴルゴノプスの肉を捧げてきたばっかだろ。まだ余計な出費させる気か?」

「え? あれはあれで解決したんじゃねえの?」

「ほう、お前の中では解決してたのか。まあいい。護衛組がハントして売るはずだったゴルゴノプスの肉は、お前が買ってディオネアに身代わりとして捧げた訳だから、帰ったらお前の報酬から差っ引くだけの事だ」

「ええ、俺が買った!? 俺、金なんてないぞ? 採取旅行の報酬だって孤児院のもんだし」

 

 イレムが買ったっていうより、フィリアさんが出す食事のイレム分を先に使っちゃったってことにしたから、今後イレムに食事が提供されないってだけだけど、まあいいか。

 話はレオさんの認識に基づいて進んでいく。

 

「なら孤児院の報酬から差っ引く。ゴルゴノプスの肉はいい値がするから、あの半身で4小金貨はするだろう」

「4小金貨!? それレオ兄ちゃんが持ってっちゃうのか!?」

「当然だろう。護衛のついでに狩った獲物をお前に取られちまったんだ。お前から回収して何が悪い。お前が払えないっていうから、お前の所属パーティーの孤児院の報酬から巻き上げるだけだ。こんなの繰り返してたら孤児院に持って帰れる報酬はいくらになるんだろうな?」

「孤児院の報酬が減る!?」

 

 クエストの報酬から差っ引くとレオさんに言われて、イレムは顔色を変えた。それも真っ青。

 

「ま、待ってくれ。報酬持って帰れなかったら、院長先生にどんな事されるか……」

「院長先生に?」

 

 なんだかイレムのただならぬ様子にわたしは聞き返してしまった。

 院長先生、採取旅行前に会った時はお淑やかなおばちゃんって感じだったけど、実は裏の顔があって、折檻とか虐待とかしてるんだろうか。

 

「お金の事になると、院長先生人が変るからね」

「お金が足りなくなると、ご飯の材料は悪くなるし、味付は変になるし、庭に生えてるよく分かんない草煮たのが出るし」

 

 ラースとニコもイレムの言に頷いた。

 

「酷いと飯は1日1回になって、量も減らされて、しかもなぜか俺のところには硬い根っことかが来るんだよな。でもって仕事は増えて……」

 

 ええ? なにそれなんの嫌がらせ? イレムには辛く当たるなんて、院長先生なかなかに陰湿だな。普段からイレムには引っ掻き回されてるからなのかもしれないけど、本当に嫌がらせでしてるんだったら、わたしのいた世界ならNG事案だよ。

 でもまあ報酬の話がやけにイレムに効いてると思ったら、そういうことか。孤児院の生活待遇にモロに影響出るんだ。んなもんだから報酬減らされることが怖いんだ。

 これまで何を注意しても全く反省の色がなかったのに、こんなところに攻略ポイントがあったのね。

 

「そうなるのも当然だわよ」

 

 そこへ話に割って入ってきたのはニーシャ。腰に手を据えてイレムの後ろに立っていた。

 

「お金払えないと、子供を奴隷商に売ることになるのだわよ」

「え? 孤児院の子、売られちゃうの!?」

 

 またまた新事実。定番の孤児院にまつわる闇の部分が次々に出てきた。

 わたしがびっくりしていると、ニーシャは頷いた。

 

「だから院長先生はなんとかあたいらを護ろうとして、ご飯減らしてでもお金を工面するのだわね。庭の草で空腹を紛らわした方が、奴隷になるよりマシなのだわよ」

「うわあ」

 

 そんな切羽詰まった経営してるんだ。院長先生の髪が真っ白になるわけだよ。

 

「次売られるとしたら、ニーシャなんだよね?」

 

 ニコが言った。

 

「ええ! ニーシャ売られそうなの!?」

 

 わたしはさらにびっくりしてニーシャを見る。

 

「たぶん。歳が一番上だし女だから」

「女の子っていってもニーシャまだ12歳でしょ!?」

「外国の奴隷商人に付きまとわられたことがあるだわよ。貴族の家が引き取ってくれるぞって言ってたけど、後で聞いたら有名な変態貴族らしかったのだわよ」

「いるんだ、これまた定番の変態貴族!」

「マヤ姉も気を付けた方がいいだわよ」

「わたし17歳だよ? 大人だし」

「でも見た目あたいくらいだし」

「……あう、ニーシャまでその認識!? この世界、こっわ~」

「イレム兄も法力のこと知られたらヤバイんじゃね?」

 

 ラースが言うとニコも同意した。

 

「そうだね。魔物探知法力持ってるって知ったら、買う奴いそうだよね」

「げええ!?」

「こないだ皆の服を一斉に新しくした代金がまだ払いきってないだわよ。少しでも稼ぐか、獲物持って帰って食費を節約しないと、また庭の草のスープ間違いなしだわね。それもあってアイポメアニールの採取頑張ってたんだわよ」

「皆の服新しくしたの? それにしてはイレムの服、かなり擦り切れてたわよ?」

「あ、新しくしたって言っても、それも古着だわね。でもイレムのは買わなかっただわよ」

「イレム兄ちゃんはいらないって言って、新しくしなかったんだ」

「イレム兄はいつも自分の分は後回しにするんだよね」

「へぇー」

 

 わたしは感心してイレムの方へ目を向けたが、そっぽを向かれた。

 

「意外。そういう気を遣うようなことできるんだ」

「う、うっせえ! 」

 

 明らかに照れてるんだけど、そこはつんつんしてしまう男子小学生だ。

 

「とにかくそんなだから見逃してくれよ。それか後で俺が払えばいいんだろ。孤児院の報酬には手を付けないでくれ!」

 

 懇願するイレムだが、しかしレオさんはイレムの頭を掴んだまま、非常な返答を返した。

 

「どっちもだめだな」

「な、なんでだよ!」

「これまでさんざん見逃してきたが、一向に改まる気配がない。俺らが助けてなけりゃお前は何度死んだか分かんねえんだ。そんな奴に後で払うからなんて言われても、信用できるか?」

「うぐ……」

「今までさんざんやってきた事のツケはいつか払わなきゃならん。お前の素行を見る限り、もうツケはできねえって事だ。これが盗賊やチンピラだったら、ただちに奴隷として売払って金にするか、武器の試し斬りの標的にしてるとこだ」

 

 もう奴隷扱いはしてたけどね。魔石の粉運ばせたりとか。

 

「そんな訳だから、お前を狩りに行かせることは許可できねえ。孤児院の報酬から差っ引くかは今後のお前の素行見て判断する」

「うう、分かった」

 

 そうは言っても、レオさんは孤児院の報酬に手を付ける気はないでしょうけどね。イレムを脅してるだけだろう、たぶん。

 

「クーノ、周囲のパトロールってことで、ラースとニコを連れてちょっと回ってこい。それでもし手頃な奴がいれば狩ってくればいい」

「そうっすね。そうします」

「イレムは俺の横にいて、魔物の反応があったら教えろ。今お前が役に立つ方法はそれ以外ねえ」

「ううう……」

 

 イレムは下を向いて唸ってしまった。

 仕方ない。自業自得だよ。

 俯いてるイレムにわたしは諭す。

 

「ねえ、やっぱり地道にFランクの仕事をこなして、経験と実力をつけていくのが一番な気がするけどな。階級差違反して獲物捕まえても、買取価格も割り引かれるし、ペナルティが課せられてランクアップはできなくなるしで、何も良いことないよ」

「やりたい放題にサイハンしてるガキババアがナニ言ってやがる」

「け、経験してるからこそ、身に沁みてそう感じてるんじゃない!」

「買取額が下がるったって、それ差し引いてもFランクができる依頼の報酬より、Bランクくらいの魔物捕まえて売った方がずっと高いんだろ? んならサイハンした方が金もらえるじゃんか」

「階級、差、違反ね。Bランクの魔物なんて狙ったって、実力差ありすぎてあんた歯が立たなかったじゃない。馬車が襲われてたところにいたクモ相手にした時だって、あんた一人だったら、もうあの時点で食べられてんだからねっ」

 

 イレムはわたしから目をそらしたまま、ずっとぶすうっとしていた。

 

「……もしかして、沢山お金欲しくて、階級差違反しようとしてたの?」

 

 ぴくりとイレムは反応した。ほう?

 

「孤児院にお金入れるために?」

 

 イレムはガバッと立ち上がった。

 

「けっ、ダッセー」

 

 そんな捨て台詞を吐いて、イレムは見張り場へと歩いて行った。

 

「はあ~。男ってのはホント素直じゃなくて面倒なんだから」

 

 あんな態度を取ってはいるけど、あれでも孤児院の危機を感じ取って、彼なりにどうにかしなきゃって考えて行動していたんだな。できることとできないことの判別が間違っているけど。

 

「マヤちゃん、ディオネアの豆の皮集めてきたよ」

 

 サンドラちゃんが豆の皮を持ってやって来た。

 あっそうだ。集めて回ってたのすっかり忘れてた。

 

 

 

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