異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~ 作:RightWorld
サンドラちゃんが豆の皮を持ってやって来た。
「マヤちゃん、ディオネアの豆の皮集めてきたよ」
あっそうだ。集めて回ってたのすっかり忘れてた。
「ごめん。イレム達の相手してる間に、サンドラちゃんにやってもらっちゃった」
「うん、ぜんぜんいいの。それでこれ、どうするの?」
「まずはきれいに洗うよ」
ディオネアの豆の皮は、天然素材とは思えないほどに非常に丈夫な袋なんだ。
サンドラちゃんと、水が湧いてるところでディオネアの豆の皮を外と中ともきれいに洗った。
ついでに酸素もそれとなく補充しちゃうのは癖のようなもの。別に残量が少ないとかじゃないんだけど、水のある所では水素爆発起こさない程度に補充するようにしてる。最近は特に、広範囲に撒くような使い方が多いしね。
戻ってくるとリエラさんが待っていた。
「マヤさん、何を始めるの?」
興味津々に聞いてくるこのお方は、ここのパーティーではもう知れ渡っちゃってるけど、実は身分を偽ってハンターしてるミリヤ皇国のお姫様。
彼女はとても好奇心旺盛な人だ。レオさんはわたしがやることを奇行とみてるフシがあるけど、リエラさんはまず観察して、それから奇行なのか。意味あることをしてるのかを判断する。
あとそれとは関係なく、わたしが時たま見せる未知の知識、わたしのいた現代地球の知識だけど、それに関心を寄せているように見える。
「袋になってるこの豆の皮が、レトルトパウチにならないかなーって思って」
「れとる……とぱ……ってなあに?」
「調理済みの食べ物を腐らせずに保存、持ち運べるようにする方法、ですかね」
「調理済みの? それができたら凄い事ね」
「フィリアさん。今夜のスープは少し多めに作ってもらえますか? 試してみたいんで」
「スープをその豆の袋に入れるのですか?」
フィリアさんは怪訝な顔をする。
「うん。硬パンと一緒に入れて、いつでも好きな時に食べれるようにしようと思って」
「おそらく次の日の早いうちには食べないと、傷んでお腹壊すと思いますが」
食材を無駄にしないでほしいですと顔が訴えている。まあこの世界の常識なら、日持ちしないからそうでしょうよ。
「そこはひと手間加えるんですよ。その前に、この豆の袋の開けちゃった口を、ぴったり中漏れないように塞ぐ方法ってないですか?」
「食べかけのディオネアの豆を持っていく時は、口のところを折りたたんでおくけど、あれじゃダメなの?」
サンドラちゃんが一つ案を返すけど、それだと気密性がイマイチなのよね。
「ただ折りたたむのではなく、空気を抜いて木の棒などで挟んでしっかり閉じておけば、逆さにしても漏れることはないでしょう」
サンドラちゃん案をさらに発展させたフィリアさんの案は、たしかポテチの袋なんかを割り箸使って閉じとく方法だ。あれならしっかり密閉できて良さそうね。
「うんうん。それでやってみましょうか」
ピッタリ密閉することさえできれば、絶対うまくいくと思うんだ。なにしろディオネアの豆の皮は、中身がまったく染み出でない気密性の高さなうえ、熱にも強くて、簡単には破れないというのだから。
「ではさっそく調理を始めます」
フィリアさんが立ち上がって前掛けの紐を結び直した。
「え、もう作るの?」
「今夜はゴルゴノプスのスネなどの硬めのところを使おうと思っていまして。お腹周りの良いところはイレムさんを助けるのに使ったので、少々手間のかかるところが沢山残っています。今日は時間ありますし、今から煮ればとても柔らかくなりますし、味もよく出ますので」
「わあ、いいですね。すね肉のシチュー? コラーゲンたっぷりで、なんかもう涎が出そう……おっとっと」
出そうじゃなくて、出でしまった。
「ふふ、マヤさんも食いしん坊ねえ」
恥ずかしい。リエラさんに笑われてしまった。
さてそれじゃあ、フィリアさんの料理ができるまで昼寝でもしますか。
と思いきや、例の声によってまたも阻まれた。
「魔物の反応だ!」
げっ。