異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~ 作:RightWorld
倒した巨大なマンモスも、解体して村へ持ち帰ることになった。
毛は燃やしちゃったので利用不可。巨体だっだだけに取れたであろう量はすごかっただろうから、村の人達はちょっと残念そう。わたしの法力だと火を使う攻撃が多くなりそうだから、毛とか毛皮は取れそうにない。そう言えばサーベルタイガーの毛皮なんて高くついたろうになあ。もったいない。あっ、あれはお師匠様が
でも、村が襲われたかもということを考えれば、それくらい気にならないよね? それ以上に、大量のお肉と、巨大な2本の立派な牙が手に入ったのだから。
そしてこれらをどう扱うか、村長さんから話し掛けられた。
「仕留めたのはマヤさんですから、当然これらもマヤさんに権利があります」
「でも、どうみてもわたし1人じゃ倒せなかったのだから、少なくとも権利の半分は村の人達にあると思うわ。折半にしましょ」
「は、半分もいただけると? 流石にそれは多すぎじゃないですか?」
ふう~っと一息ついた。
「相変わらず、欲のない」
「それはそちらも。その辺のハンターなら8割は取りますぞ」
そうなんだ。ぼってるなあ。
「とにかく、わたしはまだ修行の身だから、一人前になったら8割取るから、今は折半よ。またお肉の加工とか、運ぶのとか、売るのとかも手伝ってもらわないとだし、その辺こみこみなんだから。それ考えたら半分じゃ足りないんじゃないですか?」
「はっはっは、分かりました。それでは、お手伝いする手間賃も含めて、ありがたく半分頂戴いたします」
村長さんとの交渉だか商談だかが終わり、皆の方に向き直ると、両手を上にあげ、次にその手を下ろす勢いでお辞儀をした。
「皆さん、お疲れさまでした。そしてありがとうございました!」
集まっている人たちから歓声でどよめき立った。
「お礼はこっちが言う方だ」
「村を救ってくれてありがとう!」
「マヤ様!」
「マヤ様ばんざーい!」
「だ、だからそれはやめて、ぶほっ!!」
お腹に激しいタックルを受けた。
「マヤちゃん!」
「だ、誰かと思えば、サンドラちゃん……」
「さすがはサーベルタイガーを仕留めた人だね!」
「いや、あれはお師匠様だから」
「でも、マンモスも丸焦げだったよ?」
「同じ法力だからね。まだまだ使い方下手だけど」
「凄ぉい! もうずっと村にいて!」
ちなみに、投げ捨てたサーベルタイガーのモモ肉は回収されました。少し土がついたくらいなので中は無事。表面きれいにすれば大丈夫だと。
その後、村人総出でマンモスの解体が行われた。巨大なだけに大変だったけど、無事ばらばらにして、馬車も駆り出して村へ持ち帰ることができたよ。
これらも日持ちするよう、村の人達に加工してもらって、領都へ卸すのだ。
そのうちのほんの極一部を使って、今日も宴の準備が始まった。
◇◇◇
そして夜。
村の広場で、村人総出でのお祭り騒ぎ2日目が始まった。
メインはマンモスの肉の香草焼きと、大鍋で煮えたシチュー。
スパイシーな香辛料は無いらしいのだが、肉の臭み消しに各種野草の香草が使われ、そして豆類を発酵させた醤、味噌のようなもので味付けされていた。
「うん。普通においしい」
さすがにあの至高の食材、サーベルタイガーは別格だと言わざる得ないけど、あれは比べちゃいけないものだと思う。それに素材の組み合わせを生かしてのこの料理は、この世界の水準からしたら相当なことだと思う。
そう言えば、お料理作りの中心には、いつもサンドラちゃんのお母さんの姿があった。
「サンドラちゃんのお母さんはお料理凄くお上手ね」
「そうでしょう、そうでしょう」
サンドラちゃんのお父さんの方が自慢して胸を張った。
「いやだわマヤさん、そんなお世辞を……」
「いえいえ、ホントですよ?」
そんなところへ、村長さんや昼の戦いに参加した人達がやってきた。
「マヤさん、おひとつどうぞ」
持ち上げ法力のチトレイさんがお酒を勧めてきた。
「だめだろ、マヤさんはまだ飲めないよ」
止めに入ったのは弓矢のリネールさん。この人は火を出す法力を持っていた。
「何言ってる。マヤさんは17歳だそうだぞ。とっくに成人してる」
「そ、そうなのか? 17!?」
「何ですかその驚きよう! 失礼ですね。そういえば昼にも同じやり取りを……」
「ああ、いえいえいえ! 立派にご成長されたお嬢様で! の、飲みます?」
うーん。日本じゃお酒は二十歳になってから。お正月にお
「ありがとう。でも控えておくわ」
「(ぼそぼそ)やっぱりまだ未成年じゃないか?」
「(ぼそぼそ)そ、そうだな。女の子が見栄を張ってるってやつ?」
「言っとくけど、体に合わないからだからね!」
いまいち信用してなさそうな2人を睨み付ける。
「ところで、マヤさんの法力、あれは何でございますか?」
質問したのは村長さんである。
「ああ、うん。説明難しいな。火がつくのに必要な3つの要素のうちの1つを操れるんです」
「3つ?」
「ええ。燃える物、燃えるための高い温度、そしてもう1つ。最後の1つがわたしが操れるもの」
「それは何なんですか?」
「秘密です」
ってことにしとこう。空気は理解できるかもだけど、そのうちの酸素は酸化剤という事まで分かってもらえるか怪しい。知られてないものなら無理に教える必要はないし、秘匿しといた方が何かの時有利になるかもしれないし。
「マヤちゃんのケチ」
うおっと!
横から口をはさんだのはサンドラちゃんだ。
くっ、その好奇心旺盛な目は反則だよ! 子供の向上心を妨げるのは、将来の芽を摘むよ! し、しかたない。
「そ、それじゃあ、サンドラちゃんに免じて、少しだけ教えてあげます」
急に周りに人だかりができた。みんな好奇心あるのね。
サンドラちゃんの目は特にきらきらしている。
「ロウソクと空瓶を貸してください」
村長さんがロウソクを、チトレイさんが手にしていたお酒を全部飲み干して、空瓶を作った。
「ロウソクは火を点けてほしいんですが」
「それじゃ俺が」
弓矢のリネールさんだ。人差し指を差し出すと、先からライターのようにポッと炎が出た。
「火の法力?」
「そうです」
「可燃物はどこからでてるのかしら……ガス?」
「が……なんですかそれ?」
「法力は分かりませんが、さっきも言った通り、物が燃えるには燃える物と、燃えるだけの高い温度と、秘密のものの3つ要素が揃わないと火が点きません。ロウソクの蝋が燃える物。あなたの指の先から出ている炎は触れられないほど熱いですね? 2つ目の要素の高い温度です」
ロウソクを彼の指に近付ける。ロウソクに火が点く。
「では最後のものは……」
ロウソクを斜めにした空瓶の口から中に入れる。濃い緑色のガラス瓶の中でろうそくの炎が見える。しかししばらくすると、炎は消えた。
「消えましたね。これは瓶の中にあった3つ目のものを使い果たしたからです」
おおおーっと歓声が上がる。みんなやったことないのかな。
「もう1回火を点けてください」
取り出したロウソクにまた火を点けてもらう。そして瓶の中に入れる。今度は入れたとたんに火が消える。
「ね? もう瓶の中には3つ目のものがないから、最初から火は点きません」
「わああ、その瓶見せて!」
くれといったサンドラちゃんに瓶を渡す。サンドラちゃんは瓶の中を覗いたり、回したりしている。中は白い煙が充満していた。サンドラちゃんはふーッと息を吹き込んで、その煙を追い出した。
「マヤちゃん、もう1回やって」
む、なかなか鋭いね。
火の点いたロウソクを瓶の中に入れると、火は消えなかった。
「点いたままだ!」
ほおーうっと感心した声があちこちから上がった。
「この白い煙がいけないんでしょ!」
「なかなか良い発想だね。でもその白いのは蝋の煙だと思うよ。残念ながらそうではない」
「えー?」
「では証拠に」
再び炎が消えて煙だらけになった瓶を布で覆った手に持ち替えた。そろそろ熱でガラスが割れるかもしれない。
「リネールさん、もう1回」
リネールさんに再びロウソクを灯してもらう。そして下に向けられた瓶の口にそのロウソクを近付け、炎の先が瓶の口に着こうかというところで、わたしは酸素を瓶の中に向けて供給した。すると炎は急に大きくなり、炎は酸素と蝋の蒸気で満たされた瓶の中に着火する。瓶の中で白い煙、つまり蝋が燃え、ぱあっと明るくなる。
「おおおおー」と驚く声があがった。
「燃えた!」
そして熱膨張に負けたガラス瓶はパリンと割れた。
「割れる前に燃えたのわかりました? なぜ燃えたのか。それはわたしがその3つ目のものを法力で入れたからです」
ぱちぱちぱちと拍手が起こる。
「じゃあ、なんでわたしが煙を追い出した時も火が点いたの?」
「そこがサンドラちゃんの良い発想ってところ。煙を追い出したということは、瓶の中は追い出された煙の代わりに別のものが入ったからです」
「もしかして、わたしにもマヤちゃんと同じ、3つ目の何かを出せたから? わたし、瓶の中に息を吹いたよ」
「とてもいい気付きです。マヤちゃんの吹いた息、いえ、マヤちゃんに限らず、誰もが吹く息には3つ目のものが入っています」
「そういえば、かまどで火を焚くときも、ふいごとかで息をフーフーやると火が大きくなるよね」
周りの人からも声が上がる。
「そうです。3つ目のものはごく普通にあるんです。気付かないだけで。ただ、わたしの法力は、3つ目のもの
そう言って、テーブルの上で灯っている燭台のロウソクへ手を向けた。火は急激に大きくなり、ロウソクはすごい勢いで短くなっていく。
周囲から驚きと歓声が上がった。
「はい、こんなところです」
半分ほどにロウソクが短くなったところでぱっと手を戻した。
再び周りからは盛大な拍手が起こる。
村長さんが頭を下げた。
「貴重な法力を見せていただき、ありがとうございました。私も初めてで驚きました」
「いえいえ」
集まっていた群衆が解け、再び元の宴に戻っていった。
ひと段落してマンモスのお肉を頬張っていると、リネールさんの疑問に満ちた声が聞こえた。
「消えないねえ」
口からお肉が生えた状態で振り向くと、リネールさんは空瓶に火の点いた指を入れていた。そして言ってた通り、いつまでたっても火は消えなかった。
「へーっ。法力の火は、3要素全部揃ってるんですね」
「どういうことですか?」
「火が点き続けるに必要な、3つ目のものもリネールさんの指先から出てるんですよ、きっと」
「そうかあ。それじゃ俺もマヤさんみたいなことできるのかなあ」
「3つ目のものの出る量を増やせられればそうですね。燃える元となる燃料が増えても火は大きくなりますけど。ちなみに炎はどこまで大きくできるんですか?」
「俺はこれくらい」
指を瓶から出して水平にすると、ボボーーッと1メートルほどの火焔を噴き出した。
「び、びっくりした! 凄いじゃないですか!」
リネールさんは自慢げに胸を張った。
「この法力で、村では1,2番を争うくらいですからね!」
そこへ話を差し込んだのはサンドラちゃんだった。
「隣村の人はもっと凄かったね。背丈よりも大きな火の玉を出せて」
リネールさんは少し寂し気にした。
「うん。あの人は凄かったね」
「へえ。そんな人が隣村にいるんですか」
「もういないけどね」
「どうして?」
「盗賊団に行っちまった」
「え!?」
「あまり大きな法力を持っている人は、道を外すとそういうところへ流れてしまう人が少なくないんです」
成程……ね。お師匠様が「良いことに使え」って、亡くなる間際に無理してでも伝えたのは、そういうこともあったんだね。