異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第7話「大道芸 酸素の秘密」

 

 倒した巨大なマンモスも、解体して村へ持ち帰ることになった。

 

 毛は燃やしちゃったので利用不可。巨体だっだだけに取れたであろう量はすごかっただろうから、村の人達はちょっと残念そう。わたしの法力だと火を使う攻撃が多くなりそうだから、毛とか毛皮は取れそうにない。そう言えばサーベルタイガーの毛皮なんて高くついたろうになあ。もったいない。あっ、あれはお師匠様が()ったんだった。ふふっ、師弟の絆を感じるよ。

 でも、村が襲われたかもということを考えれば、それくらい気にならないよね? それ以上に、大量のお肉と、巨大な2本の立派な牙が手に入ったのだから。

 そしてこれらをどう扱うか、村長さんから話し掛けられた。

 

「仕留めたのはマヤさんですから、当然これらもマヤさんに権利があります」

「でも、どうみてもわたし1人じゃ倒せなかったのだから、少なくとも権利の半分は村の人達にあると思うわ。折半にしましょ」

「は、半分もいただけると? 流石にそれは多すぎじゃないですか?」

 

 ふう~っと一息ついた。

 

「相変わらず、欲のない」

「それはそちらも。その辺のハンターなら8割は取りますぞ」

 

 そうなんだ。ぼってるなあ。

 

「とにかく、わたしはまだ修行の身だから、一人前になったら8割取るから、今は折半よ。またお肉の加工とか、運ぶのとか、売るのとかも手伝ってもらわないとだし、その辺こみこみなんだから。それ考えたら半分じゃ足りないんじゃないですか?」

「はっはっは、分かりました。それでは、お手伝いする手間賃も含めて、ありがたく半分頂戴いたします」

 

 村長さんとの交渉だか商談だかが終わり、皆の方に向き直ると、両手を上にあげ、次にその手を下ろす勢いでお辞儀をした。

 

「皆さん、お疲れさまでした。そしてありがとうございました!」

 

 集まっている人たちから歓声でどよめき立った。

 

「お礼はこっちが言う方だ」

「村を救ってくれてありがとう!」

「マヤ様!」

「マヤ様ばんざーい!」

「だ、だからそれはやめて、ぶほっ!!」

 

 お腹に激しいタックルを受けた。

 

「マヤちゃん!」

「だ、誰かと思えば、サンドラちゃん……」

「さすがはサーベルタイガーを仕留めた人だね!」

「いや、あれはお師匠様だから」

「でも、マンモスも丸焦げだったよ?」

「同じ法力だからね。まだまだ使い方下手だけど」

「凄ぉい! もうずっと村にいて!」

 

 ちなみに、投げ捨てたサーベルタイガーのモモ肉は回収されました。少し土がついたくらいなので中は無事。表面きれいにすれば大丈夫だと。

 その後、村人総出でマンモスの解体が行われた。巨大なだけに大変だったけど、無事ばらばらにして、馬車も駆り出して村へ持ち帰ることができたよ。

 これらも日持ちするよう、村の人達に加工してもらって、領都へ卸すのだ。

 

 そのうちのほんの極一部を使って、今日も宴の準備が始まった。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 そして夜。

 村の広場で、村人総出でのお祭り騒ぎ2日目が始まった。

 

 メインはマンモスの肉の香草焼きと、大鍋で煮えたシチュー。

 スパイシーな香辛料は無いらしいのだが、肉の臭み消しに各種野草の香草が使われ、そして豆類を発酵させた醤、味噌のようなもので味付けされていた。

 

「うん。普通においしい」

 

 さすがにあの至高の食材、サーベルタイガーは別格だと言わざる得ないけど、あれは比べちゃいけないものだと思う。それに素材の組み合わせを生かしてのこの料理は、この世界の水準からしたら相当なことだと思う。

 そう言えば、お料理作りの中心には、いつもサンドラちゃんのお母さんの姿があった。

 

「サンドラちゃんのお母さんはお料理凄くお上手ね」

「そうでしょう、そうでしょう」

 

 サンドラちゃんのお父さんの方が自慢して胸を張った。

 

「いやだわマヤさん、そんなお世辞を……」

「いえいえ、ホントですよ?」

 

 そんなところへ、村長さんや昼の戦いに参加した人達がやってきた。

 

「マヤさん、おひとつどうぞ」

 

 持ち上げ法力のチトレイさんがお酒を勧めてきた。

 

「だめだろ、マヤさんはまだ飲めないよ」

 

 止めに入ったのは弓矢のリネールさん。この人は火を出す法力を持っていた。

 

「何言ってる。マヤさんは17歳だそうだぞ。とっくに成人してる」

「そ、そうなのか? 17!?」

「何ですかその驚きよう! 失礼ですね。そういえば昼にも同じやり取りを……」

「ああ、いえいえいえ! 立派にご成長されたお嬢様で! の、飲みます?」

 

 うーん。日本じゃお酒は二十歳になってから。お正月にお屠蘇(とそ)飲んで、頭痛くなって寝込んだからな。止めといたほうがいいな。

 

「ありがとう。でも控えておくわ」

「(ぼそぼそ)やっぱりまだ未成年じゃないか?」

「(ぼそぼそ)そ、そうだな。女の子が見栄を張ってるってやつ?」

「言っとくけど、体に合わないからだからね!」

 

 いまいち信用してなさそうな2人を睨み付ける。

 

「ところで、マヤさんの法力、あれは何でございますか?」

 

 質問したのは村長さんである。

 

「ああ、うん。説明難しいな。火がつくのに必要な3つの要素のうちの1つを操れるんです」

「3つ?」

「ええ。燃える物、燃えるための高い温度、そしてもう1つ。最後の1つがわたしが操れるもの」

「それは何なんですか?」

「秘密です」

 

 ってことにしとこう。空気は理解できるかもだけど、そのうちの酸素は酸化剤という事まで分かってもらえるか怪しい。知られてないものなら無理に教える必要はないし、秘匿しといた方が何かの時有利になるかもしれないし。

 

「マヤちゃんのケチ」

 

 うおっと!

 横から口をはさんだのはサンドラちゃんだ。

 くっ、その好奇心旺盛な目は反則だよ! 子供の向上心を妨げるのは、将来の芽を摘むよ! し、しかたない。

 

「そ、それじゃあ、サンドラちゃんに免じて、少しだけ教えてあげます」

 

 急に周りに人だかりができた。みんな好奇心あるのね。

 サンドラちゃんの目は特にきらきらしている。

 

「ロウソクと空瓶を貸してください」

 

 村長さんがロウソクを、チトレイさんが手にしていたお酒を全部飲み干して、空瓶を作った。

 

「ロウソクは火を点けてほしいんですが」

「それじゃ俺が」

 

 弓矢のリネールさんだ。人差し指を差し出すと、先からライターのようにポッと炎が出た。

 

「火の法力?」

「そうです」

「可燃物はどこからでてるのかしら……ガス?」

「が……なんですかそれ?」

「法力は分かりませんが、さっきも言った通り、物が燃えるには燃える物と、燃えるだけの高い温度と、秘密のものの3つ要素が揃わないと火が点きません。ロウソクの蝋が燃える物。あなたの指の先から出ている炎は触れられないほど熱いですね? 2つ目の要素の高い温度です」

 

 ロウソクを彼の指に近付ける。ロウソクに火が点く。

 

「では最後のものは……」

 

 ロウソクを斜めにした空瓶の口から中に入れる。濃い緑色のガラス瓶の中でろうそくの炎が見える。しかししばらくすると、炎は消えた。

 

「消えましたね。これは瓶の中にあった3つ目のものを使い果たしたからです」

 

 おおおーっと歓声が上がる。みんなやったことないのかな。

 

「もう1回火を点けてください」

 

 取り出したロウソクにまた火を点けてもらう。そして瓶の中に入れる。今度は入れたとたんに火が消える。

 

「ね? もう瓶の中には3つ目のものがないから、最初から火は点きません」

「わああ、その瓶見せて!」

 

 くれといったサンドラちゃんに瓶を渡す。サンドラちゃんは瓶の中を覗いたり、回したりしている。中は白い煙が充満していた。サンドラちゃんはふーッと息を吹き込んで、その煙を追い出した。

 

「マヤちゃん、もう1回やって」

 

 む、なかなか鋭いね。

 火の点いたロウソクを瓶の中に入れると、火は消えなかった。

 

「点いたままだ!」

 

 ほおーうっと感心した声があちこちから上がった。

 

「この白い煙がいけないんでしょ!」

「なかなか良い発想だね。でもその白いのは蝋の煙だと思うよ。残念ながらそうではない」

「えー?」

「では証拠に」

 

 再び炎が消えて煙だらけになった瓶を布で覆った手に持ち替えた。そろそろ熱でガラスが割れるかもしれない。

 

「リネールさん、もう1回」

 

 リネールさんに再びロウソクを灯してもらう。そして下に向けられた瓶の口にそのロウソクを近付け、炎の先が瓶の口に着こうかというところで、わたしは酸素を瓶の中に向けて供給した。すると炎は急に大きくなり、炎は酸素と蝋の蒸気で満たされた瓶の中に着火する。瓶の中で白い煙、つまり蝋が燃え、ぱあっと明るくなる。

 

「おおおおー」と驚く声があがった。

「燃えた!」

 

 そして熱膨張に負けたガラス瓶はパリンと割れた。

 

「割れる前に燃えたのわかりました? なぜ燃えたのか。それはわたしがその3つ目のものを法力で入れたからです」

 

 ぱちぱちぱちと拍手が起こる。

 

「じゃあ、なんでわたしが煙を追い出した時も火が点いたの?」

「そこがサンドラちゃんの良い発想ってところ。煙を追い出したということは、瓶の中は追い出された煙の代わりに別のものが入ったからです」

「もしかして、わたしにもマヤちゃんと同じ、3つ目の何かを出せたから? わたし、瓶の中に息を吹いたよ」

「とてもいい気付きです。マヤちゃんの吹いた息、いえ、マヤちゃんに限らず、誰もが吹く息には3つ目のものが入っています」

「そういえば、かまどで火を焚くときも、ふいごとかで息をフーフーやると火が大きくなるよね」

 

 周りの人からも声が上がる。

 

「そうです。3つ目のものはごく普通にあるんです。気付かないだけで。ただ、わたしの法力は、3つ目のものだけ(・・)を出せるんです」

 

 そう言って、テーブルの上で灯っている燭台のロウソクへ手を向けた。火は急激に大きくなり、ロウソクはすごい勢いで短くなっていく。

 周囲から驚きと歓声が上がった。

 

「はい、こんなところです」

 

 半分ほどにロウソクが短くなったところでぱっと手を戻した。

 再び周りからは盛大な拍手が起こる。

 村長さんが頭を下げた。

 

「貴重な法力を見せていただき、ありがとうございました。私も初めてで驚きました」

「いえいえ」

 

 集まっていた群衆が解け、再び元の宴に戻っていった。

 ひと段落してマンモスのお肉を頬張っていると、リネールさんの疑問に満ちた声が聞こえた。

 

「消えないねえ」

 

 口からお肉が生えた状態で振り向くと、リネールさんは空瓶に火の点いた指を入れていた。そして言ってた通り、いつまでたっても火は消えなかった。

 

「へーっ。法力の火は、3要素全部揃ってるんですね」

「どういうことですか?」

「火が点き続けるに必要な、3つ目のものもリネールさんの指先から出てるんですよ、きっと」

「そうかあ。それじゃ俺もマヤさんみたいなことできるのかなあ」

「3つ目のものの出る量を増やせられればそうですね。燃える元となる燃料が増えても火は大きくなりますけど。ちなみに炎はどこまで大きくできるんですか?」

「俺はこれくらい」

 

 指を瓶から出して水平にすると、ボボーーッと1メートルほどの火焔を噴き出した。

 

「び、びっくりした! 凄いじゃないですか!」

 

 リネールさんは自慢げに胸を張った。

 

「この法力で、村では1,2番を争うくらいですからね!」

 

 そこへ話を差し込んだのはサンドラちゃんだった。

 

「隣村の人はもっと凄かったね。背丈よりも大きな火の玉を出せて」

 

 リネールさんは少し寂し気にした。

 

「うん。あの人は凄かったね」

「へえ。そんな人が隣村にいるんですか」

「もういないけどね」

「どうして?」

「盗賊団に行っちまった」

「え!?」

「あまり大きな法力を持っている人は、道を外すとそういうところへ流れてしまう人が少なくないんです」

 

 成程……ね。お師匠様が「良いことに使え」って、亡くなる間際に無理してでも伝えたのは、そういうこともあったんだね。

 

 

 

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