異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

83 / 171
第82話「危険地帯で他のパーティーに追いついた」

 

 収穫したアイポメアニールも、途中で獲った獲物も、全てフィリアさんのストレージにしまってあり、皆は個人装備だけなので装いは軽い。

 さらには毎食の豪勢な食事に快適な野営のおかげで、体力の消耗も低く抑えられ、子供達も余力十分。わたしでさえ、寝れば疲労を翌日に持ち越すこともなく回復するくらいなのだから、いかに快適な旅をしているか想像できるというものだ。

 荷がないので帰路の歩行速度は往路と変わらずだ。イレムの魔物探知法力のおかげで、魔物に不意打ちされる事もなく、安心して順調に距離を稼げる。ただイレムの探知は今のところ魔物限定なので、肉食動物と出会い頭に鉢合わせした時だけはびっくりした。

 

 そして領都から2日のところにある、街道の横の湖まで来た。西の採取依頼地3番だ。

 

「大勢の足跡が湖の方から来てるね。この感じだと、ここでのアイポメアニール採取は終わって、もう引き返したみたいだね」

 

 パーティーの姿はないので、既に領都への帰路についたのだろう。

 

「しかしこの足跡の数は多くないか?」

 

 足跡を見渡していたレオさんが言った。

 湖へ降りていく小道には、まだ新しい靴の跡がかなりたくさんある。

 意外な事にフィリアさんが足跡を詳しく調べてくれた。

 

「14人から15人。おそらくは14人と思われます」

「へえ、分かっちゃうの?」

護衛侍女(エスコート・メイド)ですから。護衛の対象を追ってくる者が何者かとか、何人かとか、どんな装いをしているかなどを推察するために必要なスキルです」

「スキル!」

「スキルだって!」

 

 わたしとリネールさんはスキルと聞いて目を輝かせた。レベルはいくつかななどと会話してると、私で遊ばないで下さいと嫌な顔をされた。

 

「それって護衛侍女(エスコート・メイド)になると身に付くの!?」

「ええ。みっちり練習させられましたから」

 

 フィリアさんの答えは、護衛侍女(エスコート・メイド)になる為に訓練に励んで身につけたというものだ。残念ながら小説のように、そのジョブに就いて一定レベルに達すれば勝手に手に入るというものではないらしい。

 リネールさんはその辺の事は分かってないけど、スキルにレベル値をつけて客観的に比較するという考えを知ってから、人を値踏みして楽しんでる。

 

「マヤさん、これはなんてスキルだろうね?」

「何ですかねえ。分析とか?」

「分析だと広すぎるね。逃げる時に役立つんだから逃亡者のスキルとか?」

「悪いことをして逃げてるみたいじゃないですか。やめてください」

 

 私で遊ばないでと言ってるのにと、迷惑そうな表情をわたし達に向けるフィリアさん。

 

「他にも何か分かります?」

「……ええとですね、少なくとも足跡の2つは小さいので子供か女子のようです。大人の女性も2名ほどいます」

「ここの採取地の依頼取ったの、Eランクパーティーの『ブルーライン』だっただわよね?」

「『ブルーライン』は4人のパーティーだね」

「女の子が2人いたね」

 

 聞くとブルーラインは薬草採取に精を出しているパーティーで、最近めでたくEランクに昇格したのだそうだ。女の子はサンドラちゃんと同い歳。あとの2人の男の人は15歳で、市場の商店の次男坊、三男坊とのこと。お店を継げるか分かんないから、小さい頃から探検者(エクスプローラー)をしており、Dランクの実力者だそうだ。

 幼馴染の女の子が探検者(エクスプローラー)をやるようになったので、パーティーを組んであげたらしい。

 なんかリア充のようにも聞こえて、素直に聞けなくなってきた。

 

 とにかく女子が2人いるというフィリアさんの見立ては正しいということだ。護衛侍女(エスコート・メイド)の厳しい訓練を受けてきただけのことはある。

 

「それじゃ、あとの10人は全部護衛ってこと? 多くない?」

「護衛費用はギルドが持つって言っても、10人は多すぎだよねえ」

「わかんないよ。討伐ランクBの危険地帯になっちゃったんだもん」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 あれこれ憶測しつつ歩みを進めていくと、わたし達は2日目に野営したところまで一気に戻ってきた。大岩を背後に置いた草原だったところで、自分達で草刈りをして作った野営地だ。

 

「あ、先客がいる」

 

 きれいに芝刈りされた野営地には十数人が既にいて、焚火を熾しているところだった。まだ荷を下ろしたばかりという感じだ。

 わたし達を見た先客達は、驚いてどよめいた。

 

「リトルウィングか!?」

「孤児院のパーティーだわ!」

 

 若い男女4人が駆けてきた。中高生くらいの見た目。皆腰のベルトが晴天のような青い色をしているので、この人達がきっとブルーラインなんだろう。

 さらに数人の男の人も一緒にやってきた。こちらはみんないい体格の大人で、鎧や武器などを身に着けた立派な探検者(エクスプローラー)ばかり。とても薬草採取パーティーには見えないので、護衛の人達だろう。ただどの人も何らかの怪我をしていた。

 高校成り立てくらいの男の子が真っ先にサンドラちゃんへ声を掛けてきた。

 

「サンドラよく無事だったな! 目的地までは行けたのか? いや、荷物がないところをみると、魔物に立ち塞がれて行けなかったんだな?」

 

 ああそっか。みんな行きと同じ装備のままで、収穫物のいっさいはフィリアさんのストレージの中だから、傍目からは何の収穫もなく戻ってきたように見えちゃうのか。

 

「そんなことないよ。ちゃんとアイポメアニールは採ってきたの」

「え? でも荷物は?」

「フィリアさん」

「はい」

 

 サンドラちゃんに促されてフィリアさんが前に出てくると、ストレージを開けてドサドサとぱんぱんに詰まった麻袋を取り出した。

 

「ええー!?」

「なっ!?」

「収納法力だと!?」

 

 ストレージには護衛の人達の方が大いに驚いていた。

 

「こ、こんなにアイポメアニール採ったの!?」

「孤児院のパーティーと合わせて、2日で350kg採れたの」

「350kg!?」

 

 そう言って胸を張るサンドラちゃん。

 目を丸くするとはこの事だろう。ブルーラインの4人は、文字通り大きく開けた目をまん丸にして、麻袋の山に見入っていた。

 

「そっちはどうだったの?」

「4袋。40kgちょっとだ」

「今朝だけよね? 4人でそれだけ取れれば凄いの」

「サンドラさん達の量って、それってやっぱり開花予想日の前の日に採った量が凄かったの?」

「うん。開花予想日の倍は採れたの」

「やっぱり! あたし達が行った湖の畔も、咲いてた花の量が凄かったもんね」

「街道が封鎖されずに予定通り行けてればなあ」

 

 悔しがるブルーラインの面々。だけど採れすぎても、それはそれで持ち帰れなかったのではないかな。わたし達だってフィリアさんのストレージがあったから持てたわけなので。

 え? もしフィリアさんがいないのなら、1人当たり20kg持てばなんとかなるって?

 無理無理。そんなの持って2日以上も歩くなんて、わたしが無理。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。