異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~ 作:RightWorld
結局どういうことだったかというと、どうやらストレージというのは、予備含めて一杯の状態を何度か経験したところで、さらに物を無理やり詰め込むことで限界を突破できる時があるみたいで、それを機会に容量が増えるようだった。フィリアさんのストレージ容量は倍増したようだ。
「マヤさんも止めてください!」
リエラさんが厳しい口調で言った。
「ごめんなさーい。一応止めには入ったんですが……」
「あなた達も何ですか! Bランクにもなってお金に目が眩むなんて。か弱い女の子をこんなにまでして!」
孤児院の子達に介抱してもらっているフィリアさんはぐったりしていた。でも顔を火照らせて表情がトロンとしてて、まんざらでもなさそうに見えるのが、非難していいのかよくわかんなくさせる。
しかしリエラさんは追及を止めない方針のようだ。
「ミリヤとして抗議しますけど、よ~ろ~し~い、ですねー!?」
腰に手を当ててリエラさんが一人ひとりを睨みつけ、超高威圧で迫ってくると、誰もが体を小さくして項垂れた。
「す、すまん。どうかしてた。許してくれ」
トラの爪のリーダー、バーガーさんも縮こまっている。
「リエラ姉様、すげえ迫力だ」
「そりゃあミリヤ皇女様だからだわね」
孤児院の子達の囁きに、バーガーさんが眉を曲げた。
「ミリヤ皇女様?」
「あっ、ちょっとバラさないで! っていうかなんでこの子達知ってるの?」
「もう皆知ってるよお」
「フィリアお姉ちゃん、いつも寝言で言ってるし」
「マリエラ様、ハンターなんておやめくださ~いとか」
「マリエラ様、今日もかっこよかったで~すとか」
「うふふふ、マリエラ様より沢山薬草採っちゃいました~とか。これ最新だよー」
「マリエラ様のお着替えをお手伝いする役は誰にも譲りません、も新しいよ? リエラ姉様、一人で着替えできないの?」
リエラさん、怒りか羞恥心かわかんないけど、子供達が言うたびに顔が真っ赤になっていった。そしてほわ~とした顔で座り込んでるフィリアさんを見下ろす。
「この飯炊き
ポキャッと火照った顔でスライムのように伸びているフィリアさんの頭を叩く。
それより慌てたのはトラの爪とホワイトガーディアンの方だ。
「ミ、ミリヤ皇女だと!?」
「今ヘキサリネに来てるという!?」
「も、もしかしてマリエラ姫の事か?」
「え、リエラさんが!?」
「いや待て。マリエラ姫はとても清楚で大人しく、お淑やかな方だと聞いたぞ」
皆は一斉にリエラさんへ目線を向ける。
身だしなみは整っているが、大人しくお淑やかとはおよそ正反対な人がそこにはいた。かと言って、よくいる粗暴な女性ハンターとは違い、一本芯の入った風格のようなものを感じさせるのも確かだ。
「そ、そうそう。皇女様がエクスプローラーなんて危ないことするわけないでしょ」
引き攣り笑いをしつつ、巷の噂でなんとか誤魔化そうとするリエラさん。
そこにクニャクニャしてたフィリアさんが、急にガバッと起き上がった。
「はっ! 急に身体がスッキリしました!」
立ち上がると手足をグイグイとストレッチさせ、感触を確かめる。
「ご心配かけました。急に調子が戻ったようです。領都までお手を煩わせずに済みそうです」
そう言って綺麗にリエラさんへ向け頭を下げる。
「長らくご心配をおかけし、大変申し訳ありませんでした」
「そ、そう、良かったわ元気になって。でも急になんでかしら」
リエラさんに頭を下げているフィリアさんを見て、皆は状況証拠が揃って、憶測が確信に変った。
「リエラさん、ミリヤから来たって言ってたよな……」
「そうだ、凄い解毒法力を持ってたっけ」
「そういやメイドさんて、確か
「それって、誰かの護衛で来てるってことだよな?」
「誰かっつったら、やっぱり……」
トラの爪とホワイトガーディアンの人達は、真っ青になってブルブル震えだした。後退りして跪くと、平伏して、すみません、お許しください、見逃しての大合唱となった。
顔が引き攣るリエラさんだが、こうなるともうリエラさんも盛大に溜息をついて開き直った。
「はぁあっ! ああもう、頭を上げなさい! とにかく、フィリアのストレージに入ったのは仕方ないとして、残ってるオークは捨てていきます。領都の住民の命の事を考えなさい! なんで隣国の心配を私がしなきゃいけないのよ」
「リエラさん素敵」
「マリエラ様カッコいい」
「あたい好きになっちゃっただわよ」
「俺、ミリヤの役に立ちたいな」
リエラさんは孤児院の子達の心を掴んでしまったようだ。
「マヤさん、魔石取ったら、さっさと燃やしちゃってください」
「はーい。でも美味しいのかぁ。ちょっとだけ惜しいな」
「なんでしたら後で取りに来るまでもつよう、サンソの氷で凍らせてみては?」
「ディオネアの枯れ葉が大量にあれば、それも考えたんですけどねえ」
さすがに凍らせて土に埋めたとしても、そのままでは一週間後とかに無事取り出せるとは思えない。
「凍らせるってなぁにぃ?」
エリンさんがのほほんと聞いてくる。
「わたしの法力でできることの一つですよ、こんなふうに。それ、
カッキーンとオーク一頭を丸々固体酸素で覆って固めた。
「えええ!? 氷法力!?」
「まあそんなもんです。このまましまえたらなあ。酸素回収っと」
と、そんなことを呟きながら、塊のままで固体酸素を回収した。
「……あれ?」
「……マヤちゃぁん、オークはぁ?」
目の前からオークが消えていた。固体酸素の塊ごと。
「え、え~と、さっき回収した固体酸素の塊、出ろ」
ドスン。
「きゃっ!」
再び青い氷の塊が出る。
「……おお、オークが収まったままだ」
……え!? もしかして、酸素で覆った状態だと、しまえるの!?
フィリアさんが前言ってたけど、皆誰でもストレージを持ってるって。わたしの場合も、酸素をしまってるところはストレージかもしれないって。普通はしまえるものが決まってるだけなんだって。
わたしの酸素をしまえるストレージは、酸素で覆ってあれば一緒に入れられるってこと? 酸素と同じ扱いをしてくれるってこと?
「ええと、そちらのオークもひっくるめて、固体酸素コンテナで固めて……」
パキーンと25頭のオークを一塊の固体酸素で固めた。
「……酸素コンテナ収納!」
シュンっと固体酸素が消える。
……
……
えーと、消えました。
25頭いたオークもろとも。
ストレージの容量もバッチリです。なにせ海のように膨大な酸素を入れておけるところです。
「マ、マ、マヤちゃぁん?」
エリンさんがカクカクと首をこちらに向けてくる。
「は、ははは。最強ですわ、オキシジェン・デス……じゃなくて、
これでディオネアの枯れ葉発泡スチロールはわたしに必須になったわ。凍らせたくないものをわたしのストレージにしまうのに、あれ必須だわ。
当然、トラの爪と、ホワイトガーディアンと、ブルーラインの人達には、ハイオーク・ボアあげるからと言って口止めした。
ということで、燃やしたのはゴブリンとホブゴブリンだけとなった。
火を点けてもらって、わたしが酸素をぶっかけて、姿がなくなるまで燃焼させる。この時、
ゴブリンが物凄い勢いで燃え、しかも消えるようになくなっていくのを見たブルーラインの女の子達は、「ゴブリンが、ゴブリンが……」「ひぃいい!」と悲鳴を上げ、目を覆った。
「じ、慈悲深き女神は、ゴブリンであってもこのように完璧に天に召して差し上げるのです」
皆凄い目でわたしを見てくる。
よしよし、皆感激して声も出ないわね。これで女神様の奇跡が伝承されていくことでしょう。
「やべえ、完璧だ」
「完璧なデストロイヤーだ」
「これが
「女神だっつってんでしょうが! いい? 今日見たことは口外禁止ですよ! 本来あげなくてもいいハイオーク・ボアを差し上げるって言ってんですから、文句ないですよね?」
わたしは寝てただけで、勝手に無酸素地帯に入り込んで、勝手に酸欠死したとはいえ、あれはわたしが倒したということになってる。わたしが持って帰れるとなったら、この人達にはまったく権利がなくなるのだ。それをタダでくれるつうんだから、文句なんて言わせない。
「約束守れないっていうようなことがあれば、そんなヒトは後ろからこっそり忍び寄って、わたしのストレージにしまっちゃおうかなあ」
「「「い、言いません! 絶対に!」」」
女神がまた遠のいた気がしないでもない。