異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第90話「危険地帯から帰ってまいりましたー」

 

 『領都の西4時間』で、街道を塞ぐバリケードに座っていたハンターは、次第に赤く色付く空を背景に人が来ないはずの街道から多数の人影が見えてきたので、慌てて人を呼んだ。

 来るとすれば薬草採取の為、護衛を連れて入ったパーティーだ。昨日がアイポメアニールの開花予想日だったので、早ければそろそろ戻っててくる頃だった。

 

「どっちだ、ブルーラインか?」

「リトルウィングはもっと先の2日かかる所から帰ってくる。薬草を担いでくることを考えると今日は無理じゃないか?」

「孤児院パーティーも子供の体力を考えると難しいな」

 

 だが見える人影はどんどん増え、大人数になっていった。

 

「30人以上です」

「子供もいるぞ」

「こりゃあもしかして」

「両方か!?」

「「「おーい」」」

 

 歩き通しで疲れているはずと予想された子供達が駆けてきて、真っ先に元気よくバリケードを通過した。

 続いてリトルウィング、レオさん、クーノさん、リエラさん、フィリアさん、そして疲労で足を引きずるわたし。

 続いて、道中疲れてるわたしを労ってくれたブルーライン。後ろからホワイトガーディアン。そして殿はトラの爪。

 ハンターギルドの職員や駐屯している兵士らも出迎えに来てくれた。

 

「よく戻った! 天幕へ案内しろ! 荷物持ってやれ! あ、あれ」

「荷物はどうした。アイポメアニールは? 取れなかったのか!?」

「ご心配なく。ストレージにしまってあります」

 

 ストレージが拡張してから元気になったフィリアさんが返事した。

 

「そうだった。フィリア嬢がおりましたな」

 

 ギルド職員はフィリアさんを見て納得したが、大半は「どういうことだ?」と疑問が募るばかり。

 空間収納法力のストレージは、この辺りではかなり珍しい法力らしいのである。

 

「街道調査のトラの爪はどうして戻ってきたんだ?」

「魔物の出現数が想定以上だったんだ。負傷者が出すぎて、先に行くのは危険と判断したのだ」

「負傷者?」

 

 確かに大怪我してそうなのが1人いるが、他は元気そうである。ギルド職員は疑いの目で睨む。

 

「い、いやこれはだな、昨夜リトルウィングに処置してもらってだな……」

 

 トラの爪のバーガーさんは、色々報告やら説明やらをする為に、ギルド出張所へと連れて行かれた。

 

 

 

 

 わたし達は野営場へ連れて行かれると、そこには駐屯軍が張った大きな天幕があり、中には折り畳みできる簡易ベッドなどが用意されていた。テーブルも置いてあり、お部屋のようだ。

 

「今夜はここを使ってください」

「いいんですか!?」

「宿屋みたい!」

 

 子供達は大はしゃぎだ。

 

「すぐお茶を淹れましょう。腹が減っているなら、すぐ夕食も準備しますよ」

「僕お腹減った!」

「あたしも!」

 

 子供達は一斉に声を上げた。やあ元気だね君たち。わたしは疲れたよ、たいして荷物も持ってないのに。

 暫くして、串焼き肉とシチュー、パンがトレーに載せられて運ばれてきて、天幕の外の簡易テーブルに並べられた。それぞれ道の駅のお店の商品だ。

 

「これ屋台のお店の……」

「お代はギルド持ちだ。遠慮はいらんよ」

「本当!?」

「わあ、いただきまーす」

「待ったーっ! 手を洗ってからだわよ!」

「おお、ニーシャ、ナイスフォロー」

 

 わたしは偉いぞとニーシャの頭を撫でて褒める。ニーシャはえへへと可愛い笑顔を持ち上げた。

 

「そうだった」

「危ない危ない」

「危うくマヤ姉にデストロイされるところだったね」

「は!?」

 

 いつからそういう話になった?

 子供達は手を洗いながら歌を歌い始めた。

 

 ♪手ーを洗いましょ、表も裏もキレイキレイに、洗わないとデーストロイ、デストロイ♪

 

「やめてええ!」

 

 誰だ歌まで作ったの!

 

 

 

 

 美味しそうな料理を前にしても、お行儀よく手を洗ってからテーブルに着く子供達。ギルドの職員や、食事を運んできたお店の人は感心した。

 

「へえー。領都の孤児院の教育はしっかりしてるなあ」

「旅行中は粗末な食べ物しか口にしてなかったろうに、よく耐えられるものだ」

「それに引き換え……」

 

 隣のテーブルでは、トラの爪やホワイトガーディアンの人達が、テーブルに置かれるなり「うほほー」とか言いながらガッツいていた。

 

 お茶を淹れてもらって一息ついてると、再びギルド出張所の職員がやってきた。

 

「薬草はここで引き取る。持ってきてくれ」

 

 薬草採取パーティーのリトルウィングとブルーラインの面々は立ち上がった。そしてブルーラインの3人はそれぞれ薬草10kgの入った麻袋を担ぎ、リトルウィングはフィリアさんを呼んでくる。2つのパーティーは道の駅の建物に赴いた。

 出張所の建物の横には荷馬車が停められていた。2頭の引き馬は、御者に餌を食べさせてもらっている。

 

「もしかして、もう薬草運ぶんですか?」

「ええ。明日朝からアイポメアニールを薬にする加工を始めるんです。今夜中に運んでおけば、その加工に間に合いますからね」

「蕾の量は足りたんですか?」

「他のパーティーも頑張ったが、まだ十分じゃない。あとは君達がどれだけ採ってきたかによるね」

「足りなかったらどうなるの?」

「次の開花予想日……季節的にあるか分からんが、そこに賭けるしかない」

 

 わたしはサンドラちゃんに顔を向ける。

 サンドラちゃんは首を横に振った。

 

「わたしの予想だと、次5日後の開花予想日は咲かないの。その次はもう開花時期を過ぎちゃうの」

「ラストチャンスだったってことだね」

 

 わたし達はできる限りのことをやった。それでも届かないなら、他の方法を探すまでだ。

 

「もし足りなかったら、リエラさんがミリヤでやってる方法なら手を貸すって言ってたけど」

「強力な毒薬使うんだよね。でも解毒法力のあるミリヤだからできる方法だと思うの」

「そうだよね。リエラさんがずっと領都にいてくれるならいいけど、危なそう~」

 

 魔石ライトで明るく照らされたカウンターで、別の職員が待っていた。

 

「皆ご苦労だったな。ここに出してくれ」

「俺達のはこれです」

 

 ブルーラインが10袋を次々とカウンターに乗せた。

 

「10袋も!?」

「おおよくやった! さすがはブルーラインだ!」

 

 薬草採取で活躍しているブルーラインは、期待通りの仕事をしたのだ。

 重さを測り、蕾の具合を鑑定すると、ギルド職員は満足気に頷いた。

 

「問題ない。いい品質だ」

「良かったー」

 

 オスカ君に抱き着くメンバーの女の子達。

 ちっ、リア充め。水素爆発しろ。

 

「うちも出すよ」

 

 カウンターが空くと、サンドラちゃんはフィリアさんに、お願いしますと頭を下げた。フィリアさんはかしこまりましたと頷くと、手で空中に丸を書いて、ストレージを開けた。

 

「リトルウィングと孤児院パーティーの分なの」

 

 リネールさんも手伝って、ストレージの中から麻袋を次々と出して積み上げていく。

 15袋くらいまでは職員も嬉しそうに見守っていたが、20袋を出してもまだまだ止まる気配がないので慌てだした。

 

「ちょ、ちょっと待て! 何袋あるんだ?」

「35袋なの」

「35袋だと!?」

「この時期にそんなに!? いやそれより、どれだけ大きな群生地だったんだ!?」

 

 別の職員の方へ振り向く。その人は目方と品質を確かめていた。

 

「品質はどうだ。混じり物もないか?」

「ま、全く問題ありません。蕾はびっくりするほど大きく、非常によい状態です」

「これは……」

「十分だろう」

 

 わたし達はぱあっと表情を明るくした。職員は顔を上げ、わたし達の方、というかサンドラちゃんのリトルウィングと、孤児院の子達へに向き直ると、頭を下げた。

 

「今年必要な量は確保できた。皆、ありがとうな」

 

 わああーと子供達は拍手して喚起し、サンドラちゃんとわたしは両手を打ち付け合った。リネールさんに労われたフィリアさんは、頬を染めてお辞儀を返した。ここまでこの量を苦もなく持ってこれたのは、彼女がいたからだ。

 

 アイポメアニールが入った麻袋を満載した荷馬車は、騎乗の護衛ハンターを従え、魔石ライトで道を照らしながら、一足先に領都へと帰っていった。

 

 

 

 

 馬車を見送れば、食器の後片付けも上げ膳据え膳なのでやる必要なく、天幕に簡易ベッドが用意されているので、野営の支度もない。自分の毛布を敷くだけだ。道の駅では見張りを立てる必要もないので、護衛の人も気を緩められる。

 なので他にやることもないので、「寝ますか」となった。

 

 自然の中に作った小さな野営地と違い、大きな人工の施設の中にいるという安心感。危険地帯を脱したんだなという実感が湧いてくると、やはりどこかに緊張が残っていたのだろう、それがゆっくりとほぐれていくに連れ、急激に眠気が襲ってきた。

 採取旅行最後の夜は、心地よい旅の疲れを感じながら眠りについた。

 

 





危険地帯シリーズもこれでようやく終わりましたー。
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