異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第92話「領都に帰ってきましたー。フィリアさんの帰還報告 ~その2~」

 

 ハンターギルドに着くと、ギルドの前には多くの人が待ち構えておりました。私達はやんややんやと声をかけられます。主役は勿論子供達です。

 最もランクの低いハンターが地道にやっている薬草摘み。

 ランクの上がったハンター達にバカにされる薬草摘み。

 それが高ランクハンター・探検者(エクスプローラー)を差し置いて領都の疫病を防いだのです。

 孤児院のパーティーを率いた最年長者のニーシャさんは鼻高々です。

 

「どうイレム。薬草採取の偉大さが分かっただわね?」

「ちっ、分かったけど、どうにも分からねえ」

「どっちなんだわよ」

 

 イレムさんが不満たらたらな渋い顔をしていると、向こうから若いハンターが手を振ってやってきました。

 

「おーい、イレム、ニーシャ」

「あ、テオ兄ちゃん」

 

 テオさんというのは確か、孤児院の出身者でイレムさん達の先輩という15歳のハンターです。ゴルゴノプス討伐に行くはずだったのに、危険地帯になって入れなくなってしまったので、討伐依頼自体がキャンセルされたのではと言われてた人ですね。

 

「よかった、無事帰ってこれたんだな! 心配してたんだぞ!」

 

 出迎えたテオさんはイレムさんの背中をバシバシと叩きます。ニーシャさんは巻き添えを食わないよう少し距離を取りました。

 

「お前達、本当に討伐ランクBの危険地帯を踏破したのか?」

「勿論だわね。CやらBやらの魔物が見飽きるほど出ただわね」

 

 いつもならイレムさんが自慢しそうな事を、今日はニーシャさんが自慢気に話します。

 

「マ、マジか! Bランクの魔物をお前達も見たのか?」

「ラトロ・アトレイタとか、カメレオ・タイガースパイダーとか、目の前に何度も出たよな」

「あたいなんか、ギガント・ウルフに率いられたサンダー・ウルフの群れにまで出くわしただわね」

「ラトロ・アトレイタ? ギガント・ウルフ? サンダー・ウルフの群れ!? そんなのどうやって倒すんだ!?」

「護衛担当の人がサクッとやっつけただわね。特に4階級差違反者でアンリミテッド・パーティーのマヤ姉が、デストロイ法力で瞬殺しただわね」

「やめてええ! デストロイ法力じゃないから! オキシジェン・ビーナスだから! 呼び名変えてええ!」

 

 攻撃を受けた獲物が、超苦しそうな顔して死ぬような法力のどこがビーナスなのでしょう。私もマヤさんはデストロイヤーでいいと思います。

 

「それにイレムに探知法力がある事が分かったのだわね。おかげで随分と楽に移動が出来たのだわよ」

「探知法力だって!?」

「魔物しか探知できねえみたいなんだけどな」

「魔物が探知できるって、それかなり便利じゃないか。それじゃあそんなにランクの高い魔物がうじゃうじゃ出たんなら、俺達が依頼受けたゴルゴノプスも、魔物に食われちゃったのかな」

「あ、ゴルゴノプスか。それならクモに捕まってたんだ」

「そのクモ倒して、あたい達が奪い取って、夕食で2頭食べちゃっただわね」

「な、なにい!?」

「残りの3頭はフィリア姉様が収納法力(ストレージ)で持ってきてあるだわね」

 

 ニーシャさんが私に顔を向けます。

 

「はい。解体してしまってあります。この後、ギルドに買い取ってもらいます」

 

 お、俺達のゴルゴノプスが、とテオさんは悲鳴を上げます。しかししかたありません。この世界は実力主義なのです。力ある者が全てを手にできるのです。

 

「ラトロ・アトレイタの脚も大量にあるんだよな。旨いんだけど、俺もう食い飽きたよ」

「ラトロ・アトレイタの脚!? 超高級品じゃないか! それを食い飽きた!?」

「孤児院に何本か持って帰りたいだわね」

「タイガー・スパイダーなら100本あるんだろ? 言えばきっと売らないで分けてくれるよ」

「ええぇぇ!?」

 

 Fランクペーペーのはずのイレムさんとニーシャさんが、いきなり自分のランクを飛び越えて高ランク者のような話をしだすので、テオさんが目を白黒させてます。

 

「脚1本しか持って帰れなかったけど、ギガント・ウルフも美味しかっただわね~」

「ああ。ゴルゴノプス以上だったな。他のところも食いたかったなあ。あ、皆ギルドに入っていくぞ。じゃあなテオ兄ちゃん」

 

 テオさんは、お前らいったいどんな旅してきたんだと、かっくんと顎が外れたみたいになって立ち尽くしておりました。

 

 

 

 

 ギルド入り口の階段の前では、レオ様のお仲間の一人も待っていました。確か槍使いのケンさんです。

 

「若! 無事ご帰還おめでとうございます」

「おうケン、随分久しぶりな気がするぞ! 留守中ご苦労だった。まあなかなかに面白かったぞ」

「いや~面白かった! 薬草採取と馬鹿にしちゃいけねえな。並の討伐依頼より楽しかったよ!」

「羨ましいぞクーノ。お前本当にこういう運はいい奴だな」

 

 バシバシとかなり痛そうな音を立てて背中を叩き合うクーノさんとケンさん。孤児院の男の子達とやってることが大差ありません。

 

「まあそうふてくされるな。次はクーノと交替だな」

「それはありがたいですが。しかし若、次はありません」

「ん? 何でだ?」

「本国より至急帰国せよとの連絡がありました」

「何? 至急?」

 

 ワリナ王国の3人は、何やら楽し気に、そして真面目な顔になったりしながら階段を上がっていきます。

 建てつけの悪いギルド入口のドアを、ぎっ、ぎっ、ぎごげっと音を立てて開けて中に入ると、サロンのあちこちから拍手をされたり、口笛を拭かれたりと、大歓迎を受けました。

 受付係のレーナさんとケイトさんが、カウンターから出て飛びついてきます。

 

「おかえりなさい! 心配してました、無事帰ってきてよかったですー」

「薬草も沢山採ってきてくれて、助かりましたよ。サンドラさん、採取地の情報公開ありがとう」

 

 本来なら人には教えない群生地の情報をギルドに公開したサンドラさんは、一番の功労者でしょう。そして普段から新しい採取地も探していた地道な努力。まさにバクチの冒険ではなく探検者(エクスプローラー)でした。それが領都を救ったのです。成りたての私もお手本にしないとです。

 そこに、ゴトッ、ゴトッと重々しい音を鳴らして階段を降りてきたのは、ギルドマスターのジオニダスさんです。荒くれハンター達の親玉です。見た目も暴力集団の(ヘッド)にピッタリです。

 

「お前達のおかげで領都の民は救われた。強力な魔物も出た中で、よくやってくれた。皆に感謝する」

 

 そう言って暴力集団の超強面ボスが頭を下げられました。そんな事されると誇らしい前に恐縮してしまいます。

 

「皆依頼達成の報酬を受け取ってくれ。ギルドはこれくらいでしか報いることができん。ケイト頼む」

 

 ケイトさんが紙の束を持って前に立ちました。

 

「ではまず薬草採取パーティーの採取報酬についてです。今回の依頼ではアイポメアニールを通常の1.5倍で買い取り、各パーティーへ平等に分配することになっていました。合計で121袋採れたので、1パーティーあたりの採取報酬は小金貨16枚と大銀貨1枚になります。それに加えて依頼成功報酬がハーフ金貨1枚ですので、合計で小金貨21枚と大銀貨1枚をお受け取り下さい」

 

「わー、すごーい」

「ちょっと待つだわよ。平等に分配しなかったらどうだったのだわよ」

「お、良いところに目をつけたわね。計算してごらん?」

「マヤお姉ちゃんどうやるの?」

「一袋1.5小金貨でしょ? それをパーティーで採った袋の数で掛け算してごらん?」

 

 ニーシャさんより幾つか歳上なだけあって、マヤさんは算術もお手の物のようです。どこの出身か分かりませんが、マヤさんの国はとても教育水準が高く驚かされます。

 マヤさんに教えてもらいながら、孤児院の年長の子達は計算を始めました。

 

「えーと、あたいら16袋集めたから……パーティー平等に割らなければ、24小金貨もらえたのだわね」

「えー? それじゃ損しちゃってるじゃん」

「イレム、分かった?」

「え!? ええと、えーと……」

「ぷぷっ、イレムからお金をちょろまかすのは簡単ね。計算できないから、こっそりおやつ代とか抜き取っとっても気付かれないよ」

「お、今度やってみようぜ」

「ガキババア、変なこと教えんなよ!」

「悔しかったら真面目に算数勉強するのね」

「ちっ、ちくしょ、ちくしょ!」

 

 マヤさんはイレムさんを煽ってます。これがイレムさんのやる気を出させるためならいいんですが、マヤさんはまだ子供ですし、そこまで深くは考えてないでしょう。

 報酬額については、ケイトさんが薬草採取パーティーに謝りました。

 

「領都の非常事態という特別な依頼でしたので、全て依頼を受けてもらう代わりに、収穫がなくても受けたパーティーが不利益にならないようにした結果です。たくさん採ってくれたパーティーには感謝してもしきれません。有難いとともに、申し訳なく思います」

 

 しかしマスターは声を張り上げて鼓舞しました。

 

「他のパーティーは2日でだいたい10から多くて14袋といった収量だった。孤児院とリトルウィングの収穫量は飛び抜けていたんだ。ブルーラインも1日しか摘めなかったのに10袋は大したものだぞ。量が足りるかどうかというところを一気に挽回してくれた3パーティーには感謝してもしきれない」

 

 サロンにいたハンター達からも拍手とよくやったぞという声が次々にかかります。

 それを聞いた薬草採取パーティーの面々は、誇らしく胸を張りました。

 

「1回の依頼で金貨2枚以上も報酬貰うなんて、孤児院パーティー始まって以来の収入だわよ」

「そうだよね。院長先生も驚くよね」

 

 ブルーラインの方達は、収穫量以上の報酬を貰えて、孤児院の子やリトルウィングに、すまない、ありがとうとお礼を言っています。

 サンドラさんはパーティー報酬を3等分すると、私に手渡してきました。

 

「はい、フィリアさんの分」

「ありがとうございます。サンドラさんから貰うなんて、何だか変な感じです」

「あ、じゃあご主人様のリエラさんに渡しとくから、リエラさんから貰って?」

「え、えええ!? はい。い、いいえ? あ、ど、どっちから貰ったら!」

 

 私は目をぐるぐるさせて悩みだすと、 リエラさんから後頭部をチョップをされました。

 

「なんで悩むのよ。サンドラさんから受け取っていいわよ」

 

 するとマスターはサンドラさんを再び手招きして呼びました。

 

「サンドラ。これはお前個人の分だ。お前はパーティーの報酬とは別に、個人でも同額を受け取れる」

 

 サンドラさんは驚いて、そうだっけ? とマヤさんを見上げました。そういえばとマヤさんとリネールさんが返します。

 

「そういえばそういう契約だったね。採取地の情報出してくれたから、サンドラちゃんは採りに行かなくても報酬貰えるってしたんだよね」

「でもサンドラ来なかったら、あの量は採れなかったんじゃないかなあ? 領都としては行ってもらってよかったと思うよ」

「ああそうか。サンドラちゃんの超高速採取がなかったら、足りなかったかもしれなかったのね」

 

 再びマスターに感謝の言葉をかけられ、1パーティー分、小金貨16枚と大銀貨1枚の報酬を一人で貰ったサンドラさんは、ちょっと当惑気味です。

 

「うわあ、わたしこんなに貰っていいのかなあ」

「うへえ、サンドラはもう俺以上の金持ちだなあ」

 

 本来のリトルウィングパーティーのマヤさんとリネールさんが、サンドラさんを囲んで褒め称えます。

 そしてサンドラさんへの報酬はまだありました。

 

「それとアイポメアニール群生地の情報提供で、サンドラが被るかもしれない来年以降の採取量減少の補填についてだが、それは領主様が直々にくださるとの事だ」

「「「ええ!?」」」

 

 リトルウィングの3人が同時に驚嘆の声を上げました。

 領主様からとは、ミリヤで言えば皇帝陛下からみたいな感覚でしょうか。一地方領主では格が全然下でしょうが、一般民からしたら物凄いことです。

 

「お屋敷とかかもしれないよ?」

「い、いらないよぅ。こないだだって、断ってたのにメイド服が宿に届けられたのよ? こんどこそ本当にお城でメイドにされちゃうよぅ」

 

 ほう。サンドラさんにメイド服を?

 妙な趣味をお持ちの領主様だなと思っていると、マスターが正しました。

 

「そういう物品ではない。なんでも領都邸の薬師局への出入りを自由にさせようかとか言ってたぞ」

「え!」

「え? それってどういう?」

「もしかして国の薬師様から、直々に色々教わっていいてことですか?」

 

 マスターは頷きました。

 

「そういうことだろう」

 

 サンドラさんとマヤさんは、口を丸く開けてまた見つめ合いました。

 

「すごいじゃない、サンドラちゃん!」

 

 薬師になるには通常、現役や引退した薬師様に弟子入りするなどして教えを請い、知識技術を身に着けねばなりません。なので高名な薬師様に師事する程、信用度も上がっていきます。

 サンドラさんの村の薬師様は優秀だったらしいですが、お弟子さん共々亡くなってしまったので、あまり教わることができなかったのです。サンドラさんのお母様も助手であって、薬師ではありません。

 国のお抱え薬師様から学べるとなったら、それはおそらくこの国では最高でしょう。

 サンドラさんがこの旅で使いこなした薬草や植物の知識は、あの歳としては凄いものでした。ヘキサリネの有望な人材です。

 ミリヤ得意の毒も薬の一種ともいえます。マリエラ様がヘキサリネを併合した暁には、サンドラさんをミリヤの薬学研究所に留学させてあげたらいかがでしょう。後でマリエラ様に進言してみましょう。

 

 興奮冷めやらぬ中に、ケイトさんの声が響きました。

 

「続いて護衛パーティーへの報酬です」

 

 

 

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