異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~ 作:RightWorld
フィリアさんがフィリアちゃんになって孤児院の子達に連れて行かれたので、次また孤児院のレポートをやってもらうまでの間、マヤちゃんがナレーションを繋ぎまーす。
フィリアさんと孤児院の子供達がギルドを出ていくと、サロンにいた大きな男の人がこちらにやって来て、俺達も行くかと外へ促した。
「ん? 誰です?」
「マ、マ、マ、マヤさん、気付いてなかったの?」
リネールさんがあたふたするので、よくよくその人を見ると、げっ!
「通りがかりの一般庶民だ」
「いやいやいや、なんでそんなところに何気なく佇んでいるんですか!」
ヘキサリネ領主のヴェルディ様だった。
「早く旅の土産話を聞きたくてな」
「土産話!? 国の
「マヤが持ってくる話はだいたい頭のネジがぶっ飛んでるものが大半だからな。今回も期待にたがわずなんだろ?」
「う……。そう言われると、いろいろあった気が……」
ヴェルディ様は楽しそうに笑った。
「楽しみだ。おいリネール、お前が見たのと違うようだったら言えよ。包み隠さずだからな」
「う、ういっす。マヤさん、隠そうとしても無駄だよ。結局俺がしゃべらされちゃうんだからね」
リネールさんは元々、領主様から旅行中の出来事を観察し報告するよう言いつけられていたそうなのだ。でもわたしと、さらにレオさんとリエラさんも呼んで直接話を聞くことにしたようなので、嘘言わない限りほぼリネールさんが報告することはない。その分ちょっと気が楽そうだった。
まあ大丈夫だと思う。わたしは別にやましいことはしていない。……してないけど、いろいろやらかしたよなあ。
というわけで領主様に連れられて、レオさんとクーノさん、リエラさん、リネールさん、わたし、そしてギルドマスターのジオニダスさんは、ギルドと同じ区画にあるレストランに移動した。ケンさんは、レオさん達が無事帰ってきたことを報告すると大使館に帰っていった。
向かったレストランはちょっと高そうなお店で、リネールさんによると、低ランク
なおサンドラちゃんは、アイポメアニールの薬加工の為にサンドラちゃんのお母さんが手伝いに来てると教えられたので、そっちへ会いに行った。
◇◇◇
メインの食事が終わり、旅行中の話もあらかた伝えて、食後のデザートの果物とお茶が出されていた。
結局わたしのやらかしたことは洗いざらい暴露された。わたしが言わなくても、レオさんとかリエラさんとかが丁寧詳しく説明してくれて、わたしが言うより正確に伝わったに違いない。ギルドの猛者を束ねているマスターのジオニダスさんも顔を引き攣らせていた。
「なるほどな。面白ぇ話だった。俺も行きたかったなあ」
そう言って紅茶を一気に飲み干したヴェルディ様。手を上げてお替わりを所望する。
「領主様が一週間も領都を不在にして危険地帯に行ってちゃだめでしょ」
わたしの小声はしっかり領主様に届き、ほう俺に説教か、とニヤニヤとわたしに目を向けられる。
し、しまった。死刑かしら?
わたしから目を離さず、ヴェルディ様は続ける。
「何が面白ぇって、マヤの話が一番だな。勇士トロの技の再現といい、包囲攻撃してきたボアを寝てる間に
「わ、わたしなんかより、転移魔導具ですよ! ブラウシュテルマーを背中に生やしたギガント・ウルフとか、この辺にいないはずのハイオーク・ボアとか、ラトロ・アトレイタの卵の孵化とか! あれ転移魔導具でどこからか送り込まれたんでしょう? 明らかに何者かがヘキサリネに喧嘩ふっかけてるじゃないですか!」
「それあぁそうだが……それでもマヤに比べりゃ次点だな」
「わたしの方が不明勢力からの攻撃より上!?」
わたしに対する国の脅威度評価に少なからずショックを受ける。
「しかし転移魔導具か。アンフィスバエナ騒動があった北の森で、今も魔物が次々と湧いて出てるのは、同じものが置いてあるのかもしれんな」
「あの大ヘビって、魔術使いが操ってたんですよね? そしたら魔物送り込んでるのも魔術使いで確定じゃないですか。転移魔導具は魔素でできた魔法道具のようでしたし。魔術使いって滅んだって聞きましたけど、ぜんぜんそんなことなさそうじゃないですか」
「完全な根絶やしは難しかったって事だな。魔族と最後の戦いがあったのは200年前だ。200年あれば、人口もある程度復活しただろう」
「魔族の本拠地はどこなんですか?」
「分からん。200年前の戦争では、魔族の国はこの大陸のすぐ隣にあった大きな島にあったが、島ごと沈んでなくなったと言われている。ヘキサリネが真っ先に実力行使されてるなら、隣接する本魔境が一番怪しいな」
「本魔境なら、ミリヤもワリナも隣接してるわ」
「確かに本魔境の魔物に関しては怪しい動きはあるが、ワリナには魔術使いの兆候はまだないな」
「ミリヤもです。公にはしてなないけど、巷の噂通り12年前の魔物の大群襲撃、あれが最後ね。しかもあれは魔物の暴走で、魔族との関係とは取り立たされてないわ」
「おおー。やっぱりこれは三国同盟でしょう。それでこの共通の敵からの危機に共同で対峙しなきゃじゃないですか!」
わたしは三国が手を結ぶべきだと、何度目かの訴えをする。だけどレオさんとリエラさんは、まだ動けないと首を横に振った。
「その前に人間の国同士のいざこざの方をどうにかしないとだ。ワリナは西隣りの大国の驚異の方が国の最優先課題だ」
「ミリヤも周囲の国々との関係維持に苦慮してるわ。隙きを見せたらいつ何をやられてもおかしくない状況よ。魔術使いの直接脅威がない現状、それを理由には動けないわ」
ヘキサリネは被害が出ているにも拘らず、ヴェルディ様はそれらに理解を示した。
「そうなると今、魔族の直接の驚異を受けてるのはヘキサリネだけだ。ワリナやミリヤに被害が及ばない限り、この件で一緒に動こうなんてのはねえだろう」
「ミリヤはヘキサリネとは友好関係にあるから、ヘキサリネが助けを求めてくれば動くかもだけど……求めませんよね?」
「ああ。進駐軍がそのまま占領軍に成りかねないから、簡単には助けを求められねえな」
「ええ!?」
相変わらずの大人の事情だか、国の事情だか、見栄や意地だかで硬直した考えに、わたしはうんざりした。
そんなわたしの顔を見たヴェルディ様は苦笑気味に言った。
「自国の事は自分で解決できねえと、独立を保つなんてできねえってことよ。……その前に、三国同盟より重大な事がある」
皆は発言者のヴェルディ様を見る。
「トロの技をマヤが再現出来ることだ」
うわあ、来ましたその話題! 国家レベルの危険人物ってことですか!? 魔族の攻撃よりわたしの方が危ないと!?
「す、水素爆発の事ですか? あれはたまたま思ってたやり方が正解だったってただけですよ。お師匠様に追いつくのはとてもとても……」
「爆発技だけ言ってるわけじゃない。そもそも魔族との戦いで法力を持つ人間が勝てたのは、すべての法力が魔術や魔法より優れていたからではない」
ヴェルディ様はレオさんとリエラさんを見回した。
「勿論法力は、俗に言われているように、手足を出すように簡単に力を発揮できるから、呪文を唱えたり魔導具を用意したりの手間がないんで、手数で上回るというのはある。だがそれだけじゃ強力な魔法には勝てない。ヘキサリネには記録が残ってないが、ある特定の法力が魔法、魔術を圧倒したのだ」
そしてわたしに目線が戻ってきた。
「それがおそらく、マヤの法力だ」
魔術師をデストロイする法力だって言われちゃいました。