異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第96話「三国の未来Ⅱ ~その2~」

 

「勿論法力は、俗に言われているように、手足を出すように簡単に力を発揮できるから、呪文を唱えたり魔導具を用意したりの手間がないんで、手数で上回るというのはある。だがそれだけじゃ強力な魔法には勝てない。ヘキサリネには記録が残ってないが、ある特定の法力が魔法、魔術を圧倒したのだ。それがおそらく、マヤの法力だ」

 

 皆の目線が一斉にわたしに向けられる。

 わたしの法力は魔術師をデストロイする為のものだと言われちゃいました。

 

「俺は家督を継ぐ前、レオナルド王子のように探検者(エクスプローラー)をやって各国を巡り、200年前の魔族との戦争の痕跡を調べて回った。不思議な事に、直接刃を交えた当事者が書き残したものはほぼ無く、残っているのは又聞きした者が書いたか、口頭伝承されたものばかりだった。

 そうしたものの中で、200年前の戦争にもトロが登場し、戦局の鍵を握っていたらしいという口承に出会った」

「えー? トロ様は30台くらいの歳でしたよ。200年前にいるはずないじゃないですか」

 

 わたしがそう言うと、ヴェルディ様は頷いた。

 

「俺だってそう思ってるさ。普通に考えたら同一人物とは考えられない。だが湖や海岸で火山噴火のごとき爆発を起こして、攻めてきた魔族を一掃させたというくだりは、10年前くらいにミリヤから流れてきた、東方三勇士の活躍物語と共通点が多い。しかもどちらにもトロがいる」

「世襲ではないと思いますけどねえ。わたしには名前を継げなんて一言も言わなかったですし」

「だが法力名は引き継いでいるはずだ」

 

 わたしはビクッとした。

 

 法力名。わたしは誰にも言ったことはない。何だか近い名称を最近孤児院の子達が口にするようになったけど、わたしは一切自分から言ったことはないのだ。だからその名は誰も知られてないはずなんだ。

 唯一、アンフィスバエナ騒動の時、ヘビを操ってた魔術師が何故か叫んでた気がするけど。

 

 だからヴェルディ様からその名が発せられた時は、心臓がどうかなるかと思った。

 

「200年前のトロが操った法力は、『オキシジェン・デストロイヤー』。そして12年前、ミリヤで魔物の大群を吹き飛ばしたトロの法力もまた、『オキシジェン・デストロイヤー』だ」

 

 ヴェルディ様はリエラさんに向いて、「だろう?」と問いかけた。

 

「わ、私は実はトロ様の法力名については聞いておりません」

「ほう、そうなのか。だがミリヤ皇帝は知っていたはずだ。トロが広めるなと言った事を守ったのだな」

「ならなぜヴェルディ様はその法力名を知ってるのです?」

「記録を残すなとの言いつけを破って書き残したのがいたからだ。まあ厳重に保管されてるから、今でも世に広まってないわけだが」

「それをヴェルディ様は見たと? ちなみにそれはミリヤでの事ですよね?」

 

 なぜ第一皇女も知らないミリヤ内での事を知っているのかと、マリエラモードになった目がヴェルディ様を睨んだ。

 

「三国同盟とやらが現実になったら教えよう」

「今教えてくださいよ」

 

 のらりくらり躱すヴェルディ様。そうしてるうちに逃げるようにわたしに質問してきた。

 

「マヤ、お前の法力は、『オキシジェン・デストロイヤー』でいいんだな?」

「そ、それは……」

 

 言い淀むわたし。そして言い換えた。

 

「ち、違います。オキシジェン・ビーナスです」

「オキシジェン・デストロイヤーで間違いなさそうだ」

「何で!? 嫌ですそんな物騒な名前! わたしの代から改名します!」

 

 ヴェルディ様はわたしを無視して続けた。

 

「オキシジェン・デストロイヤーがどんな法力かはずっと謎だった。噴火の如き爆発や、火を大きくしたりは分かっていたが、本質は分からなかった。だが皆が話した採取旅行でマヤが見せたこと、そしてマヤ自らが説明してくれたことで、たいぶ分かった。まさかそれ程に多彩な事が出来る法力とはな」

 

 ヤバイよう。やっぱりわたしは見せびらかし過ぎてたみたいだ。でも何を秘密にして何を公開していいかとか、そういった事を教わる事は出来なかったし、この先ももう出来ない。お師匠様から貰った本や手帳にも、そういった事は書かれてなかったし。引き継いでしまったわたしの判断一つなのだ。

 

「その中でも魔素を取り除けるというのは鍵だと思う。魔物は魔素がないと魔法を使ってこない。きっと魔族の魔法も同じだろう。魔法には魔素が必要なんだ。魔術師の魔法詠唱を聞いた者から伝えられた話によると、精霊に話し掛けてるかのようだという。精霊が魔素と深く関係してるのかもしれん」

 

 そういえばアンフィスバエナ騒動の時の魔術師も、火の精霊とか水の精霊とか言ってたっけ。

 レオさんが少し、何かもの言いたげな顔をしている。

 

「その魔素をどうにかしてしまえるオキシジェン・デストロイヤーは、魔族にとって天敵もいいところなはずだ。

 いずれにしろ、魔術師共がヘキサリネに喧嘩ふっかけてるというなら、マヤにはいろいろと出張ってもらわにゃならんだろう」

「ええ!? なんでわたしが魔術師との最終決戦兵器みたいな扱いに!? 嫌ですよ、わたし戦いに向いてる人間じゃないです! 経験もないし」

「実績は十分上げてるじゃないか。リトバレーを襲ったマンモス退治、リトバレーの馬車を襲った盗賊の撃退、アンフィスバエナの討伐。薬草採取でも護衛役をやり遂げたしな」

「うー、終わってみればそうなってただけです。作戦や勝つ算段があった訳でもないし」

「いきなり出会っても、応用力で切り抜けたんだろう? 十分な実力だ」

「慌てて思わずやっちゃったってのが大半だったけどなあ……」

 

 その現場を直接見てきたレオさんとリエラさんは、マヤに任せて大丈夫か? という顔をした。

 大丈夫じゃないです。助けてください。

 

「勿論マヤの手を借りるうえでタダでやってもらおうとは思ってない。代わりに俺もお前の望みにはできる限り応えてやろうと思う。どうだ?」

「へ?」

「お前の望む三国同盟だ」

「おいおい、本気かヴェルディ」

 

 レオさんが眉をしかめる。ヴェルディ様はレオさんとリエラさんに向けて続けた。

 

「先に人間同士の国のいざこざをどうにかしなきゃならんのはその通りだが、魔術師共の活動がワリナやミリヤにも目に見えて現れるようになったら、現国王や皇帝がくたばるのを待ってられん。お前さん達はこの事に真剣に向き合わなきゃならない。つまりマヤの力が必要になる。ヘキサリネにマヤがいるとなりゃ、ワリナもミリヤもヘキサリネと付き合うしかないだろ。マヤはリトバレーをこっちの拠点にすると言ってるしな」

「あ、ずるいですヴェルディ様!」

「そうだ! マヤを自分のモノみてえにしやがって、汚えぞ! おいマヤ! お前誰の味方だ!」

「ええー!? まさかのモテモテマヤちゃん? わたしで喧嘩しないで……」

「ふざけてる場合か!」

「ひうっ」

 

 うわあ、どうしよう。

 この異世界に飛ばされたわたしは、助けてくれたサンドラちゃんやリトバレーの人達に大変なご恩がある。だからこの人達を守らないと恩に報いることができない。つまりそれは間接的にヘキサリネを助けることになってるんだ。

 ヴェルディ様はそれを見越して、ヘキサリネが有利に運ぶようにしているんだ。

 

「わ、わたしにとってはリトバレーの人達が大事です。ひう! レオさんそんな鷹のような目で見ないで! 皆平等に見ますから! 三国同盟とか、三国合併とかしましょうよ。そうすればどこが贔屓になんてなくなりますし。やっぱそれが解決の道ですよ!」

 

 リエラさんが、それは分かりますけどね、とため息交じり言う。

 

「今執権を握ってる世代はヘキサリネが弱ってくれることを望んでる。あまりマヤさんのカードを見せびらかして脅すと、かえって同盟話が進まなくなりますよ」

「その通りだ。ヴェルディ、こいつを飼っておくのはいったん許す。が、まだマヤの事は大っぴらにするなよ」

「飼うって、ペットですかわたしは!」

「お前もあまり目立たないよう、大人しくしてろよな!」

「は、はいぃ」

 

 縮こまるわたし。そこにリネールさんが顔を近付けて、小声で囁いた。

 

「よかったねマヤさん。3人は大方、一つに纏まる方へ舵を切った感じじゃないか」

「へ? そ、そうだった?」

「三国の為にマヤさんってカードの使い方を皆が考えてる。リトバレーにもいていいっていうし。サンドラも喜ぶよ」

 

 上目遣いで皆を見ると、リエラさんがマリエラモードの温和な顔で微笑まれた。

 レオさんにはレオナルドモードというのがあるのか分からないけど、変わらぬ仏頂面で「今ワリナに来ても、国内の派閥争いに使われて終わりそうに思ってきただけだ」とツンデレになられる。

 どうやらリネールさんの言ったことは正しいらしい。

 

「ところでヴェルディ様」

 

 リエラさんは話題を変えた。

 

 

 

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