ショタドクターシリーズ   作:ハセアキオ

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○○しないと出られない部屋に閉じ込められたショタドクターとテキサス(後編)

「ダメだ。全然わからない!」

 

部屋を一通り物色したが、それ以上のカードは出なかった。テーブルにあるのは先ほど見つけたカード一覧のみで、他に有力な手がかりは一切なかった。

 

「一体何をすればいいんだ! 脱出ゲームのヒントでも見習えや!」

「一旦落ち着こうドクター。サフランのハーブティーでも飲むか?」

 

それはセックスに導かれるやつ……いや、ちょっと待て。

 

さすがに固定概念にとらわれすぎてないか? もしかしたら全く別の意図があって飲ませようとしているのかもしれない。

 

そもそもこの世には、化学的に見て媚薬なんて存在しない。精力を高める食べ物は存在するにしろ、これを食べたからエッチなことをしたいなどと気持ちを誘導するようなものはないのだ。

 

テキサスがいつの間にか用意してくれたハーブティーを飲んでみる。うん、いいハーブの香りだ。あまりハーブティーには明るくないが、好む人は好むような味と匂いがある。

 

チョコレートも食べてみる。うん、おいしい。カカオが強い甘くないやつだ。酒にぴったりのやつ。

 

……別に何もない。変な気分にもならず、ただ甘い味とすっきりした風味に落ち着いただけだ。

しかし落ち着きで頭が冴えたのか、妙案が浮かんだ。

 

「カメラを探してみよう」

「うん?」

「何かをしなければ出られないなら、その何かをしたかどうかを確認するためのカメラがあるはずだ。犯人が仕掛けたであろう機材が見つかれば、コンタクトを取れるかも知れない」

 

あるいは機材を全部壊して、このアホみたいな実験を成り立たせなくすることもできる。そうだ。それが一番いい。

 

「わかった。探してみよう」

 

というわけで、さっそく部屋中を探してみた。棚の中、植物の中、ティッシュ箱といった小物の中、壁に穴が空いてないかどうかも全部調べた。

 

結果、何もなかった。カメラはおろか、音を拾うようなマイクも一切無かった。

何も見つからなかったが、ここでふと疑問が1つ出てきた。

 

そもそもこの部屋はどこだ?

 

壁はベニヤ板を貼りつけたようなものだ。ロドス内でこんな壁を使っているのを見たことがない。

そもそも風呂場につながる扉も木製なのはおかしい。あったかな……いや、宿舎はいろんな国のモチーフとされているからありなのか。

 

それとも、ここはロドスではないのか。窓はなく、外の確認もできない。

 

「ダメだ。バスルームも見つからなかった」

 

木製扉から出てきたテキサスが言った。

 

「なあテキサス」

「うん?」

「ここってロドス内だと思うか?」

「どうだろう。あまり見ない構造だと思うが」

 

動いている感じはしない。停泊している可能性もあるから、それだけでは判断はつかないが。

 

「犯人の企みはわからないが、わざわざロドスの外に連れ出すとは思えないな」

「ううん……難しい問題だ」

「どうだろドクター。お風呂に入ってみないか?」

「え、こんな時にか」

「こんな時だからだ。考えが行き詰まった場合は、動くか、リフレッシュをするかのどちらかだろう」

 

一理あるな。

 

「じゃあ入っていくか――」

「私も入ろう」

「ふえ!」

 

驚きのあまり変な声が出た。

 

「いやいやさっき入っただろ。それに一緒なんてハレンチだ! ハレンチ警察が出動してしまう!」

「お風呂に一緒に入るのが正解なのかもしれないぞ」

 

あ!

 

「別に減るものでもないし、試してはどうだろう。お互い水着を着れば問題ないだろう」

「水着?」

「脱衣所にあった」

 

水着も用意とは変な話だ。だがわざわざ用意してるとなると、ますます一緒にお風呂で洗いっこでもすれば出られるのかもしれない。

 

よし! その可能性があるから仕方ないな!

 

体の大きさとともに、理性の抑制も小さくなり、すぐに脱衣所で着替えた。

 

すぐに後悔した。

 

テキサスの水着がなかなかきわどかった。黒いビキニで、尻尾のせいでローライズの感じになっている。これは子供にとってなかなか刺激的な光景だった。

 

「背中を洗おう」

 

床に座って、背中を向ける。できるだけ彼女が目に入らないよう、鏡すら見ずに努めるしかなかったが、

 

「今度は私の背中を洗ってくれ」

 

ダメだ! このままでは否応なくおなごの背中を見てしまうことになってしまう。私の理性がまずい!

 

そう思った瞬間、あるものが目に飛び込んだ。

しっぽだ。濡れてしなびたみたいに垂れ下がったものだった。

 

しっぽもふもふ!

 

「ん? しっぽまで洗ってくれるのか」

「いいぞ。むしろそうさせてくれ」

 

そうしてテキサスの黒いしっぽを丹念に洗っていく。もふもふは失われているが、なめらかでつややかな手触りがくせになりそうだ。

 

しっぽもふもふは、やらしくない。だったらこっちに集中すればオペレーターをエッチな目で見ないようにできるかもしれない。付け根はスケベだが、しっぽだけに集中すれば動物を洗ってる感覚になる。

 

わけのわからない理論で何とか済ませ、今度はバスタブにざぶんと入る。向かい合う形で入ったが、水に色が付いているから直視しなくて済む。

 

「入口が開いてたらいいんだが」

「こんな簡単な方法では開かないだろう。私も大して期待せずに提案したからな」

「ん? 期待してないのに提案したのか」

「あ、いや本命はリフレッシュの方だ」

 

だったら二人で入らなくてもいいだろうに、よくわからないな。

 

風呂から上がり、彼女の髪としっぽを乾かす。しっぽがもふもふ! 乾いてもふもふになっていく!

 

「何か思いついたかドクター?」

 

はっとして首を振る。

 

「いや、結局何の考えも思い浮かばなかった」

 

リフレッシュしても一切の答えが思い浮かばない。

 

そもそもどうして私とテキサスなんだろうか。この組み合わせに特別な意味があるとは思えない。

 

しかしどうやって連れてきたんだろう。昨夜はいつもどおり眠っただけで、睡眠薬を飲んだようなまどろみもなかった。本当にただ、眠っただけ。よくもまあ運ばれながらもぐっすり眠っていたものだ。

 

テキサスも私と同じく運ばれたのか。私ならともかく、テキサスが無防備に運ばれる様はどうしても想像できない。そこまで無警戒とは思えないのだが。

 

……ん?

 

テキサスを連れてきたという事実が、ここに来て疑問に思った。

 

そして今、気づいてしまった。とある可能性に、行き着いてしまった。

 

「わかった」

「何がわかった?」

「カメラが一切無いのに、どうやって行為を観察するのかずっと気になってた。だが簡単なことだ。ずっと近くで見ればいいだけの話じゃないか」

「……」

「テキサス。君か。君が私をここに連れてきたのか」

 

そうだ。私より先に起きたと言っていたが、嘘である可能性も大いにある。動機が一切不明だが、カメラやマイクがない以上、行為をやったかどうかの判断ができるのは私以外にテキサスしかいない。

 

「よくわかったな。まさかこれほどすぐに見破られるとは。素晴らしい推理だ」

「いや……推理と呼んでいいのかどうか。単純にどうしたら判断できるかと考えて消去法で」

 

首を振る。

 

「一体どうしてこんなことを?」

「セックスだ」

「はえ!」

「性欲をかき立てる成分をこれでもかと並べて、密室状態で二人きりになればセックスできると思ったんだ」

 

何言ってんだこの子。

 

「さっき私をそんな目で見れないとか言ってたじゃないか」

「あれは嘘だ。めっちゃ性的な目で見ている」

 

彼女はくるりと振り返ると、すぐさま私の肩をつかんで押し倒した。握っていたドライヤーは離れ、音を立てて地面に放り出される。

 

テキサスの顔が真正面にある。腕と腰には彼女の体重が乗せられている。

 

「や、やめろ! こんなことをしてはいけない!」

「我慢ができないんだ」

 

そう言うと体を密着させてきた。彼女の体重が、私の体全体にかかっていく。前面には柔らかな感触があり、とてもじゃないが理性を保てるような状態ではない!

 

「テキサスはこんなことをしない!」

「は?」

「こんなわかりやすい愛情表現はしないし、セックスなんてハレンチな言葉も言わない! お前は誰だ! テキサスの偽物だろ!」

「何を言っている。これが本当の私だ」

 

そんなわけはない。普段のテキサスはクールで、かっこよくて、それでいて秘書になるとおはようと優しい声で言ってくれるくっそ素敵な女性だ。基地でも『必要な物資はあるか。助けになろう』とか言ってくる。キャラは冷たそうなのに、その時の声はすごく優しい感じなのだ。そのギャップがたまらないのだ。

 

なのに、今はこんなセックスセックス言い続けるハレンチな女性になっている。やっぱりこいつはテキサスじゃない。誰だ。お前は誰なんだ。

 

「ドクター」

 

吐息が顔に掛かり、体が硬直する。体を覆うように抱かれ、だんだんと顔が近づいて行き……

 

……

 

…………

 

「ええい!もういいややっちゃえ!」

 

そんな声を出したと同時に、見覚えのある天井があった。

 

……あれ?

 

がばっと起きる。これまた見知った家具やら壁がある。間違いなく、私の寝室だった。

 

てことは……夢だったのか。

 

どうせなら最後まで行ってくれよ。

 

ああいやダメだ! そんな下劣な考えは捨ててしまおう。現実のテキサスに失礼すぎる。

 

もうおかしいよ! ショタになってから卑猥な妄想や行動ばっかりしている。

モスティマの足をさすったり、ズィマーやイースチナの足をちょっとやらしい目で見てしまったり、アブサントの胸を触ったり……なんかいろんなことをやっている気がした。

 

このままにしてはまずい。自分の中のハレンチが暴発する前に、恥ずかしいが相談するしかないか。

 

「それでわらわのところにやってきたのか」

 

今いるのは、全ての元凶のワルファリンの研究室である。自分の煩悩を切断するためにここに来た。今朝見た夢についても話した。

 

「ずいぶん願望がつまった夢だな」

「返す言葉もない。やっぱり夢で見るのは、自分の願望なのか?」

 

ペンを走らせるワルファリンは少し首をかしげた。

 

「夢診断に関しては素人だが、何も全てが願望でできているわけではないのは知っている。たとえば人を殺す夢を見たとして、それは人を殺したい願望が出たわけではないらしい。診断的には成長の欲求に分類される」

「な、なるほど」

「だがこと淫夢になるとそのままだな。誰かとセックスする夢はそのままその人と致したいってなるらしい」

「え! なんでそこだけ」

「わらわに聞かれても困る。そういうことになっているんだ」

 

なんてことだ……私はそんなやましい心を持っていたのか。

 

「そんなに悩んでるのなら、心理カウンセラーの紹介でもするか?」

「性的な相談を人にしたくないぞ……」

「いや、大事な話だからな。そういう気持ちを隠そう隠そうとして後で爆発するのはよく聞く話だ。あるのは仕方ないから、それと向き合うのが肝心なんだ」

 

な、なるほど……。

 

恥ずかしいが仕方ない。ここはオペレーターや自分の名誉のためにも従っておこう。

ワルファリンから聞いた部屋はすぐ近くにある。お礼を言って部屋を出て、廊下の突き当たりへと向かう。

 

まさに向かうべき場所の扉がウィンと開いた。そこから出てきたのは、テキサスである。

 

「ん? ドクターか」

「や、やあ……」

 

昨日の刺激的な水着とは違い、いつものペンギン急便の服装だ。なんか気まずくなる。

 

「テキサスもここに用事があったのか」

「そうだ。少し悩みがあってな」

「悩み?」

「夢を見たんだ」

「夢?」

「ドクターと一緒の部屋に閉じ込められる夢だ」

 

あれ?

 

「それだけならまだいいが……その後の顛末がとても言えないような話になってしまってな」

 

テキサスが頬を赤らめて目をそらしてる。ひょっとして……。

 

「すまない。あまり口に出すような話じゃない」

 

そう言って彼女はそのまま左の方へと早足で消えていった。

 

ワルファリンの言葉を思い出す。

 

(だがこと淫夢になるとそのままだな。誰かとセックスする夢はそのままその人と致したいってなるらしい)

 

いやいやまさかね。あのクールなテキサスがそんなことを思うはずもない。

 

テキサスが去った方を見る。彼女のぶんぶんと揺れるしっぽが、なんだか濡れているような気がした。

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