天翔の蒼竜戦機(メリュジーヌ)   作:十連狐

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初の戦闘描写です。
昔のビジュアルノベルみたいなのは個人の癖みたいなものです。


-赫い踵の愛娘- 2

―――夢を見ている。

 

彼女は聡く優しかった。

同じ世界の人々を助けようと出来うることを行った。

彼女は疎く愚かであった。

その人々を救うのであれば叶えるだけでは駄目な事に気付けなかった。

貧しさと理不尽に追いやられ。

先の見えない絶望という悪夢に苛まれた人々にとって。

彼女の献身と奉仕は浅はかな、しかし麻薬に溺れるような甘い幻想であった。

人々は彼女に求めた。

自分たちの不足を。快楽を。

何よりもその行き場の無い鬱屈とした憤りの捌け口を。

 

―――その身に醜い欲望を叩きつけられながら。それでも彼女は人々に問う。

「ごめんなさい。ごめんなさい。わたしはどうすればいいですか?」

「どうすればあなたたちをしあわせにできますか?」

「どうかおしえてください。あなたたちのねがいをおしえてください。」

 

 

・・・彼女は賢しく、そして愚かであった。

万人の願いなど、独りの手には余る物であることを知ろうとしなかったのだから。

 

そうして、出来上がったのは少女の形をした血だまりに埋もれた肉のずだ袋。

それを抱えて、語りかける誰かの声。

 

       「――悪逆に生きるがいい。■■■■■■■。」

       「お前を謂い様に使い潰したアレを■すがいい。」

       「お前がそうでなければ生きられぬのであれば。」

   「私は、■■■■は、全ての終わるその時までお前と共に居よう。」

 

         「■■■■■■■、■■■■■■■。」

         「私の大事な可愛い■■■■■■■。」

          「お前の為になら、私は―――――」

 

 

 

 

―――赫が爆ぜるように奔る。見据えた先には蒼と銀。

蒼はその手の鋼に力を通す。一瞬の輝きと共に現出するは聖剣の形代。

円卓最強の誉れを持つ騎士が湖の乙女より賜ったとされる

「無垢なる湖光」の意味を持つ聖剣が一つ。

それを冠した騎士甲冑。それをその身の神秘と共に纏い、蒼が赫に向けて疾走る。

両の手の手甲で赫を打ち据えんとした時。

―――瞬間、その手を左右に突き出す。

鈍く重い音と衝撃。それは赫の手からもたらされたものではなかった。

その背から伸びた巨大な骨の爪からであった。

右に3つ。左に3つ。

花弁の様にその身を開いた六つの殺意が蒼の華奢な身体を喰いちぎらんと襲いかかる。

全てを受けるのは困難。蒼はそう判断し、両の手を正面に突き出した。

その手から蒼銀の閃光が迸る。

蒼の身体が掻き消えるような速さで瞬時に後方へ下がり、爪が空を切って悔しげに互いで甲高い音をかち鳴らす。

一定の間合いを取った互いは改めて向き合うことになった。

――――蒼の記憶には、コレの存在は無い。

少なくとも自分があそこにいた時には無かった存在なのだろう。

しかし、分かることもいくつかある。

相手が「円卓」のナニカを冠した物を持ち合わせている事だ。

自分達AVWはかつてのブリテンに存在した「円卓」を元に製造されている。

であればコレもそれを持ち合わせており。

それをまだ見せておらず隠し持っているという事だ。

外見では判別できない以上、交戦しながら見つけるしかない。

そう考えた矢先――――

 

 

 

 

それの視線が。自分ではなく。後方の彼に向けられたのを認識した。

悪寒が走る。何かとてつもなくマズイ――――!

「マスター!逃げ――――」

 

瞬間、彼の肩口から先が、紅い花弁を散らしながら飛んだ。

彼は何が起こったか解らず、数瞬呆けたような顔をして。

直後襲いかかる激痛に哭いた。

赫の手には知らぬ間に弓が握られている。

一部が鋭くなりその弦は竪琴の様に何本も貼られている。

それを見てその正体に思い至ると同時に、蒼は彼を抱えてその場を離脱した。

とはいえ、あれを撒かなくてはならない。

飛んだ一部は回収している以上回復、接合は可能だろう。

しかしアレの感知から逃れる場所など一体何処に―――――

 

「聞こえますか?聞こえますね。今しがた送った座標に来なさい。入口は開けておきます。」

そんな平坦な声が彼女を突き動かした。

通信に入った座標の地点――――入口を偽装した軍事シェルターに飛び込むように吶喊する。

 

「負傷ですか?接合部分はありますか?ならこちらのポッドに共に入れなさい。1から作り直すよりは確実に早く済むはずです。」

そんないっそ冷酷とも取れるような平静さで語る彼女。見覚えのあるその姿に彼女は何者かという声に応える。

 

 

「私はトネリコ。かつてモルガンと呼ばれていたものです。」

 

 

 

 

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