天翔の蒼竜戦機(メリュジーヌ)   作:十連狐

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AVWの略称ですが、実は複数あります。
はじまりで出てきたアルビオンのほかに「アヴァロン」と呼ぶ方があるのです。
今は特に関係ないですが、覚えておくと良いかもしれませんね。


-赫い踵の愛娘- 3

――――意識が浮上する。何か夢を見ていたようだ。

おぼろげに物悲しかったことだけは覚えている。

知らない天井。見慣れない部屋。

複数の薬品や機材、学術書とおぼしきものが収まった本棚。

そして――その瞳の端に涙を溜めて自分を歓喜の表情で見る相方の姿。

「よかった・・・ちゃんと目覚めたんだね・・・」

「・・・メリュジーヌ・・・?俺は・・・っ!?」

直後、自身の身に起きた出来事を思い出し片腕を見る。

―――繋がっている。

あの魔弦に斬り飛ばされたはずの右腕は確かな実感と感触と共にそこにあった。

「修復は無事完了したようですね。常人にしては回復がなかなかに早い。」

「半日足らずでほぼ接合まで進んでいるとは・・・」

そう語る一人の女性。

金の髪を二つに分け、学術帽をかぶったどこかこの場に似つかわしくない風貌。

傍らには何やら不可思議な杖のような物が立てかけられている。

「あんたが助けてくれたのか?」

「ええ、そうなりますね。申し遅れました。トネリコと申します。」

 

「あなた方を助けたのはほかでもありません。」

「これならば成るやも知れない。」

「そう思い立って頼みを聞いていただきたく助力いたしました。」

「まずは一息入れましょう。手製ではありますがどうぞお飲みください。」

そうして差し出されるカップ。

中身は黒い香ばしい芳香を漂わせる飲料―――どうやら珈琲のようである。

手に取って口をつける。

香ばしい香りと共に苦み走った液体が、ほど良い熱さと共に喉を通り抜けてい―――――

「ゲホッエホッ!?なんだこれ!?珈琲にしては苦すぎないか!?」

「ウェ・・・これはきついなぁ・・・ミルクがほしい・・・」

「それは仕方ありません。」

「これは珈琲そのものではなく複数の薬草の根を煎じて作った代用珈琲ですので。」

「代用かよ!?確かに嗜好品はこの時代希少品だから代用でもおかしくはないけどさぁ!?せめてちゃんと言ってくれない!?」

「特に聞かれませんでしたので。」

「アンタいい性格してんなぁオイ!?」

「これが言葉足らずっていうことなんだねマスター・・・」

そんなやり取りをかわし、代用珈琲を流し込みながら彼女が切り出した。

「頼みというのはほかでもありません。あなた方が遭遇したAVW-P03「トリスタン」に関してです。」

「あいつを倒してくれっていうのか?言われなくてもそうするつもりだが――――」

 

 

 

 

「いえ、私が頼みたいのは、彼女――――バーヴァンシーを救って頂きたいのです。」

 

 

「私の――――可愛い愛娘を、あの狂気から解放していただけないでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

―――かつて、「私」は英国のとある機関に勤めていました。

そこからこちらに渡ってこの国の組織に身を寄せていたのです。

その組織が開発していたのがA,V,WP-03コードネーム「トリスタン」でした。

しかし「彼女」はあまりにも自我というものに乏しかったのです。

「兵器」というなら問題はなかったかもしれませんが、求められたのは「自律兵器」。

「彼女」は組織で蔑視や冷遇、さらには反抗を一切行わない性格を良い事に暴力を振るわれてさえいました。

「私」が「彼女」の開発を担当することになったのはそんな状況の頃でした。

始めは割り切って接していましたが、次第に彼女の純朴な誠実さや優しさに絆されていったのでしょう・・・

いつしか「私」は「彼女」を実の娘のように想うようになっていきました。

 

――――あの「事変」はそんな頃に起きました。

逼迫する国政に不満を募らせていた国の反抗勢力が一斉蜂起を起こしたのです。

組織は「彼女」に勢力の「鎮圧」を命じました。無論生死を問わずにです。

・・・「彼女」は勢力の元に赴き、帰ってはきませんでした。

「私」は組織に逆らい「彼女」を探しに向かいました。

そうして勢力の拠点に半死半生になりながら潜入し見つけたのです。

 

――――牢の中で無数の傷を負って血だまりに沈む「彼女」の姿を。

 

・・・「彼女」は勢力の元に赴いて説得を試みていたのです。

互いに歩み寄れれば、話し合って解決できれば死人を出さずに済むかもしれない。

そう信じて。

ですが、勢力にしてみればそれは敵の戦力が無抵抗で投降してきたも同然でした。

そうして勢力は「彼女」を捉え捌け口として蹂躙したのです・・・

勢力側に死傷者が居なかったことを見るに

「彼女」はそれでも説得を試み続けていたようでした。

あまりの凄惨さに瀕死であった「私」は、激しい憎悪と狂気に駆られ、ある過ちを犯しました。

 

―――――「彼女」に「憎悪」を焼きこんで暴走させたのです。――――

 

・・・私が「目覚めた」頃にはすべては終わっていました。

国も組織も勢力側も、みな等しく滅び去って亡くなって。

それでもいまだに「敵」を探して彷徨い続ける「彼女」が残されていました・・・

 

・・・今の私はかつての「私」ではありません。

「私」が残した記憶を転写したホムンクルスのような存在です。

それでも解る事がある。「彼女」をこのままにしていてはいけない――――

そのために此処に工房を構え、研究を続けていたのです。

いつか、彼女をあの「憎しみ」から解放できる時が来ると信じて。

 

 

・・・身勝手なことは重々承知しています。その上で改めてお願いします。

 

 

 

      「「私達の大事な娘を、どうか救ってください・・・!」」

 

 

 

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