knights & magic ~odic theory~ 作:Drac
テレスターレ完成から早数週間、エルネスティはライヒアラから離れていた。といいうのも、国王アンブロシウスの側近であるクヌート・ディスクゴード公爵から直々の呼び出しがあったためである。エルネスティ達が作り上げた新型機を受領するため、他学生達とともにディスクゴード領にある砦の一つカザドシュ砦へと呼び立てたのだ。
しかし、現在この場にいるのはエルネスティのみである。ダーヴィドやエドガー達はすでにライヒアラへの帰路についていた。
余談であるが道中、
このとき、エルネスティはやっぱり自分だけでは思いつかないことが多いな、と思いつつとある事を思いついていた。しかし、ぱっと思いついただけでも問題点がそこかしこにあるため、心の中にしまっておこうと決めていた。
閑話休題
到着した当初はクヌートは剣呑とした様子でエルネスティと対峙していたが、それも今はなりを潜めている。彼はどこか道楽家で粗略な部分がある国王を何十年と隣で支えてきた。ゆえに、国営に対する生涯を取り除くため少々強引な手に出ることがあった。
今回エルネスティを呼び出したのもその一環であり、国家機密である
クヌートは到着した翌日、エルネスティを作戦会議室へと呼び出して新型機の説明をさせた。そこに使われている技術が突拍子なものではなく、しっかりと地に足がついている事に驚きつつも新型機たり得るとの確信をもつにいたった。
しかし、彼の目的は新型機ではなくエルネスティという個人の本心であった。そのため、あえて反感を覚えさせるであろう全権の掌握という手段を執った。にもかかわらず、エルネスティは満面の笑みでそれを快諾した。
当然、真意のわからないクヌートはより疑念を積もらせた。
何度目も説明するが、新型機とは小規模な改良を重ねつつ100年単位で行われるものである。そこには当然何十人という人間の新技術が存在しており、カルダトア開発時にはかなりの報償金と名誉が与えられたという。それをたった一人で行ったとあれば、歴史に名前が残る偉業となりうる。しかし、それを管理する人間がいれば、当然功績の大部分は本人に入ることはない。
とうとう疑念が爆発したのか、そういった事情を理解しているのかと声を荒げエルネスティへ問いかけた。開発者としての欲はないのかと。そんな問いに対してエルネスティは声を荒げるでもなく、困惑するでもなく笑顔を浮かべつつも淡々と返した。
「新技術の開発には責任がつきまといます。特に、
内容は人の揚げ足をとるようなものであり、はっきり言えば話にならないとしてもおかしくないものであった。しかし、クヌートはその様子に既視感を覚え、いつの間にか全身から力が抜けていた。
国王であるアンブロシウスは王位を継ぐ前、ただひたすらに自身の興味が向くところへと全力で突き進んでいた。それは
そして、エルネスティの言葉はただひたすらに遊びたいというもの。
そんなこんなありつつ現在、クヌートはエルネスティに頭を悩ませていた。以前のように不審から来るものではなく、彼のぶっ飛んだ感性からくるものであった。およそ20年もの間、全く感性の異なる世界で生きてきたのだから当然の事ともいえるが。
閑話休題
エルネスティはテレスターレの説明を終え、クヌートの要望により構想段階の技術を話していた。テレスターレが国王に見せる最高の機体ではないと聞き、どんな機体を考えているか気になったのだ。
とはいえ、エルネスティもスペックや機能をある程度考えてはいるものの、未だ形にはなっていなかった。そこで搭載したい技術を話したのだが、これがクヌートの常識を吹き飛ばしてしまった。クヌートとしてはテレスターレを騎士団長機として建造されるウォートシリーズと位置づけ、中でも膂力に優れた改造を施した彼の直属である騎士団、朱兎騎士団の団長機であるハイマウォートのようなものを想像していた。
しかし、彼の口から出るものは膂力を強くしたいだとか、防御に秀でた機体にしたいといったものではなかった。遠近に対応できる全距離兵装、彼の代名詞ともいえる杖と剣を合体させた武器、鳥のように空を自由に飛ぶ装備。一例ではあるがそのどれもが現実に喧嘩を売っており、実現が不可能とは思えない理論で出来ていた。
これをどのように国王へ報告しようかと悩んでいるところへ一報が届いた。近隣の村に魔獣の襲撃が発生したと。危機を伝える狼煙の色は赤色であり、決闘級以上の魔獣を意味しており、一村落に対応できるものではなかった。クヌートは急いで騎士団へ救護へ向かうよう指示を出した。
砦からも村からもいくらか離れた森の中、それなりの人数がたたずんでいた。
「団長、兎の奴らが罠にかかりました」
「流石は魔獣番だ。仕事熱心じゃないか。規模は?」
「想定通り、一個中隊です」
そこにいたのは、酒場の一角で妙な文章が書かれた紙を読んで妙な言葉を交わしていた一団だった。その中で団長と呼ばれた片目に傷のある女は数日前の会話を思い出していた。
『報告通り...いえ、それ以上かもしれませんね』
『で?わざわざ力試しをやったんだ。ここで引き下がれなんていわないだろう?』
『ええ。私は事実確認と陛下からの命を伝えに来ただけですから』
『念のため聞くけど、今後ここで情報は手に入らなくなるけどいいんだね?』
『はい。陛下からはこう伝えられています。“何をしてもかまわない。必ず手に入れろ”』
言葉にしなかったけど場合によっては足切りを指示されてたんだろう。そう心の中で伝言役に悪態をつきながらこれからに思いをはせていると、いつの間にかそこにいなかった人影が増えていた。しかし、彼らは人影を警戒していない。なぜならそれも彼らの仲間だから。
「兎は食事を終えたみてえです。二匹群れから離れましたぜ」
「そうかい。ようし野郎ども、準備は終えてるね。ヴェンドバダーラを起こしな!久方ぶりに私たちの暗い戦争を始めるよ」