knights & magic ~odic theory~ 作:Drac
時が流れてカルダトアや新入生の受け入れも終わった頃、銀凰騎士団に国王から指令が下った。曰く、新型量産機を開発中の
「それでは皆さん、準備期間は過ぎました。ここからが本当のスタートです」
エルネスティの号令へ静かにうなずく者、豪快に応と答える者、目に闘志を抱く者、十人十色の反応ではあるものの反対的な反応はなかった。
「今回は“銀凰騎士団の有用性と設立目的を認めさせる”という副題もついていますので、僕主導でいこうと思います」
一見横暴とも思えるエルネスティの言葉に反論を出す人間はいなかった。銀凰騎士団は今のところ、“エルネスティのために作られた”ためだ。彼の護衛、頭に眠る無数のアイディアを形作る場、というのが設立目的であり、そこに不満を持つ者はいなかった。彼がいなかったらテレスターレは何千年経っても開発されなかったであろう事はこの場の全員が理解していた。
加えて言えば、エルネスティに影響されて柔軟な思考になり始めているものの、彼ほどの画期的なアイディアを出すには今しばらく時間が必要になることを理解していることもあった。
エルネスティから出た開発目標は、どういう因果かテレスターレ開発時と同じ三つだった。
一つ目は純粋に新機軸の
『馬?』
「はい。見た目がわかりやすく新機軸で、行軍速度が優秀な機体です」
全長は従来機の1.5倍程度で上半身は人、下半身は馬の御伽話に出てくる架空の魔獣、ケンタウロスの形をしていた。
エルネスティとしては、カザドシュ砦での一見を鑑みて速度に秀でた機体が必要だと感じていた。たとえ機体性能や練度が上回っていても追いつくことが出来なければそれを発揮することは叶わない。砦でも戦闘があったとはいえ、エドガーやディートリヒに援軍がなかったのには到達するのに時間がかかったためでもある。
「とりあえず言いたいことはわかった。これまでのことから“人型”にこだわる必要がねぇってのもわかる。だが...なんで“上半身”をつけやがった!?」
その光景に言葉が出ない面々に変わってダーヴィドがエルネスティに問いかける。これまでエルネスティと付き合ってきた面々は今更人型以外を提示されても―新入生に比べて―驚きはなかった。そして、エルネスティの理屈もわかる。どんな強力な兵器も必要な戦場になければ意味が無い。だが、架空とはいえ魔獣を参考にした形に疑問を覚えていた。
「速い機体だったら軽くしたり、馬だけでも良かったんじゃないの?」
彼女の疑問ももっともなものであった。
移動方法が二本足の歩行という常識を覆して馬というのはまだ理解できた。それは今まで彼らが挑戦してきたことで、足が速くて慣れ親しんだ形が馬であると納得することも出来た。
しかし、そこに上半身をつける意味はわからなかった。どんな意味を持つのか想像できなかったのだ。
「それは...格好良いからです!!」
エルネスティの言葉でその場にいる全員が一様にこけた。まさかいつものお巫山戯の結果なのだろうか。そう考え出したとき、エルネスティがさらに言葉を紡ぐ。
「まぁそれは理由の半分くらいで、もう半分は十分な戦闘能力を持たせるためです」
『半分はそれなのか...』
全員でツッコミを入れながらもエルネスティの理屈を聞く。
軽い機体というのは先のとおり重量、つまり装甲や
馬だけとすればどう戦闘能力を持たせるのか、という話になる。戦闘能力が無い場合、移動手段として
従来のものより大きな体躯であれば、相応の装甲とそれを扱いきる膂力を持つことが出来る。また、馬という形状から地形にとらわれない踏破能力、速度を持つ。
上半身を人型にすることで従来と同じような戦闘能力を持たせることが出来、騎馬のような働きが期待できる。
釈然としないところはあるが、十分納得できる内容であるためとりあえずは全員が新型機については理解を示した。なお、新入生は話の半分もわかっておらずなんかすごいことに携われるんだな~という認識が大半だった。
二つ目はカザドシュ砦の件から、盗難防止の仕組みだった。
「とはいえこれは構想段階の機能ばかりですので、選定や複雑化、量産のための簡略化と根気の必要な作業になると思います。ですから新型機に合わせるのは出来れば、という程度ですかね」
そう言いつつもエルネスティは
そして最後の三つ目は
ただそれだけであれば鍛冶士達も“忙しくなるな”という感想を持つだけに終わったが、話はそう簡単なものではなかった。何を思ったのかエルネスティは
「皆さん、何のために
「え?手を空けつつ
「確かにその通りです。ですが、手を空けるだけならいくらでも方法があります。例えば
『!?』「...?」
エルネスティの言葉にアデルトルートが返す。そんな中エルネスティから出た言葉はその場にいた者に衝撃を与える者だった。
彼の言葉通り、ただ手を空けつつ
なお、アデルトルート他一部はよくわかっていない様子だった。
「確かにその通りだ。少しばかり考えなしになってたかもな。だが、だとしたら何のために腕なんて複雑な形にした?」
ダーヴィドが代表してエルネスティに疑問をぶつける。一見、無駄なことをしたように見えるが、エルネスティのことを考えれば何か意味があるというのは想像に難くない。
「拡張性を持たせるためです。僕、拡張性とか冗長性とか、そういうのがないの嫌いなんですよね」
それに、エルネスティは淡々と考えを語る。良く意味のわからない言葉も混じるが、真剣さは十分に伝わっていた。
「
話を完全に理解したものはいなかったといえるだろう。だが、そこにかける必死さ、そういったものはその場にいた全員に伝わっていた。
「まあそれは一回おいといて、目的はカスタムの有用性を示すことです」
「カスタムだと?」
「はい。例えばエドガーさんのアールカンバーのように防御に秀でた機体に調整することですね。今までは
「なるほど、
「おおよそその通りです。とりあえず思いつくのは、盾を持たせて攻防をどちらも高くしたり、剣を持たせて四刀流、物資を乗せるラックを背負わせた補給部隊なんかですかね。まあ、
結局の話、追加武装の開発は機体に多様性を持たせることで
「それでは皆さん。張り切っていきましょう!」
『おー!』
そんなこんな、多少の衝突ともいえない何かがありつつ、銀凰騎士団は本格的に稼働を始めるのであった。