knights & magic ~odic theory~   作:Drac

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26話

 以前にも話題に上がったことがあるが、エルネスティ達が新型機や選択装備(オプションワークス)の開発を行っている一方、国立機操開発研究工房(シルエットナイトラボラトリ)では新型量産機の開発が進められていた。これから語るのはその最中にあった一幕である。

 

 

 エルネスティ達が銀凰騎士団を結成してから少し経った頃、国立機操開発研究工房(シルエットナイトラボラトリ)は通常よりも忙しなく喧噪を響かせていた。しかし、そこでは平時と違い幻晶騎士(シルエットナイト)の組み立てではなく解体...いや、解析を行っていた。

 彼らの前に鎮座している機体はカザドシュ砦にて賊に奪われたため破壊されたテレスターレだった。話は事実だけ見ると複雑に見えるかもしれないが、まとめてみると非常に単純なものになる。

 

 国立機操開発研究工房(シルエットナイトラボラトリ)、通称国機研(ラボ)はフレメヴィーラ王国の幻晶騎士(シルエットナイト)開発を担う機関である。本来は様々な技術がここに集められ、長い年月をかけて新型機の開発に移る事になっている。これまで実際に新型機の開発へ進めたのはカルダトアの一度きりではあるが、細やかな改良は重ね続けられていた。

 エルネスティ達はその常識を覆し、技術確立として新型試作機の開発を行ってみせたのだ。新型機開発のインパクトに目を奪われるが、複数の技術をまとめただけともいえる。となれば、一つ一つの技術を国機研(ラボ)に提出したのではなく、一つの機体を形作るのと同等の技術群を提出した形ともいえるだろう。

 

 簡潔に言えば、技術の数や形状がおかしいだけで普段と変わらないということだ。

 

 これまでの製法や品質向上といったありふれた技術ではなく、結晶筋肉(クリスタルティシュー)の新しい使用方法、背面に増設された新しい腕、魔力貯蓄量(マナ・プール)を増槽する新しい装甲といった類を見ない技術にその場にいた騎操鍛冶師(ナイトスミス)たちは非常に興奮しており、それを隠そうとすらしていなかった。

 なお、野心の強い工房長のガイスカ・ヨーハンソンにそんな浮かれようや解析に時間がかかっていることを叱られたりしていた。

 

 

 そして時間は流れ、エルネスティ達がツェンドルグ等を造り始める少し前、国機研(ラボ)にある会議室の一つに技術開発等を主に行う第一工房の面々と国機研(ラボ)の所長や他の工房から若干名が集まっていた。目的はテレスターレを解析し、エルネスティから提出された報告書から行った実験と照らし合わせた検証結果のすりあわせであり、鍛冶長、構文長を中心として報告を行っていた。その場にいるほとんどは学生が考案したとは思えない技術の数々に驚愕し、賞賛している。しかし一部の、特に第一工房長のガイスカはやや冷めた目で見ていた。

 

「信じられない。本当に学生がこれを作ったんですか?」

 

 誰かがそうこぼしていた。何度も書くが、新型機の開発とは100年単位で技術を蓄積し、国家単位で行うものである。それを数ヶ月、たかが一学園において機体としての形まで持って行くなど異常としか言い様がない。誰もが口をつぐんでいるなか工房長、ガイスカが声を上げた。

 

「確かに画期的な技術ばかりじゃな。しかしやはり学生、バランスが悪い」

「おじいちゃん、どういうこと?構造はかなりまとまっているように見えるけど」

 

 誰かがガイスカの言葉に疑問を投げかける。テレスターレはエルネスティ達が数ヶ月苦心したこともあって、可動範囲などのわかりやすい問題は存在していなかった。しかし、数十年騎操鍛冶師(ナイトスミス)として働き続けた故に気づけることがある。

 

「はぁ、じゃからおぬしは半人前だと言うんじゃ。もっと広く見るんじゃよ」

「広く?」

「つまり鍛冶師的な視点、構文師的な視点といった複合的な視点を持つべき、ということですよ」

 

 ガイスカの言葉を所長であるオルヴァー・ブロムダールが補足する。詰まるところ、ガイスカの言う問題とはエルネスティ達が最も苦労していた稼働時間や操作性についてだった。

 

 幻晶騎士(シルエットナイト)は国によって特色が出る。例えば隣国のクシェペルカ王国では軽身で速度に秀でている。フレメヴィーラにおいてそれは高い操縦性だった。

 テレスターレは従来機に比べて非常に高い膂力を持つ代わりに学生達がじゃじゃ馬というほど操作性が悪い。一言で言えば操作感度が高すぎるのだ。

 

 ガイスカとしてはテレスターレは短絡的な構造であると言う認識だった。結晶筋肉(クリスタルティシュー)の出力が上昇しても従来と同じ量を使用したために活動時間に問題が発生した。もっとも、そういった部分に気づけたのは数十年幻晶騎士(シルエットナイト)開発に携わり、些細な調整を行ってきたためである。以前も記したように通常は学習過程になく、大きく形が変わることがないために気にとめることすらしない。現に、彼以外気づいて居るのは所長であるオルヴァー位だった。

 

「例えば、カルダトアが多少魔法が得意なドワーフだとすると、今回のはドワーフ並みに筋肉隆々の人間ということになるね。でも食事や鎧なんかがそのままだからまともな戦闘が出来ない状態ってところなんだ」

 

 オルヴァーがガイスカの言いたいことをまとめる。要は、材質が大きく変化したために量や配置なども大きく変化する必要があると言うことなのだ。上記の通り、エルネスティ達は従来通りの量で建造していた。固定具を変更する必要は出たが、魔力(マナ)以外にはこれと言った問題が見つからなからず、一見普通に動いていたため放置していたのだ。

 

 とはいえ、テレスターレの技術はそれぞれ十分に完成度が高く、そちらの改良は必要が無かった。故に、彼らが行うべきなのはそれぞれのバランス調整であり、経験がものを言う分野だった。

それを理解した彼らは、国機研(ラボ)の一員として働いてきた矜持を示すためにも全力で事に当たろうと改めて心に決めたのだった。

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