knights & magic ~odic theory~ 作:Drac
やりたいことを追加したらエル君が完璧超人を超えた何かになりそうだったのでお手伝いとして追加しました。(しばらくは出番無いです)
暗闇の中、街の家々の屋根上を一つの影が走り回っていた。
その影は人の形をしているが、その速度は人が出せるものではなく、道を挟んだ先の屋根へ飛び移っていた。加えてフードを目深にかぶっており、手には何か棒状の物を持っているため、怪しさ満点である。
そんな怪しい影の正体は、言わずもがなエルネスティである。訓練用の短杖を持って自主訓練を行っているのだ。
3年に及ぶ魔法訓練によって、彼は大人にも顔負けしない魔力量を手に入れていた。それ故、日中の訓練では
もちろん、人とは思えない身体能力は魔法による恩恵である。
彼は、
部分的な出力調整など長時間発動を続けるための節約機能も追加している。
屋根上の飛び移りには、
なぜ、ここまで魔法を鍛えようとするかというと、
もちろん、魔法の扱いが上手いほうが騎士として評価されやすいということもある。それよりも大事なのが、
とはいえ、もちろんそんな巨大な存在を動かせるだけの力は人間にはない。
10mもある体躯は自重で自壊してもおかしくない。それを防ぎ、
自らの5倍以上もある存在を演算して操作し続けるには人間の
余談だが、ほぼすべての部品は材料や製法が
話がずれてきたので戻そう。
今日もエルネスティはいつも通り体力訓練をかねて、屋根上を走り回り訓練を行っていた。しかし、その日課に最近追加されたことがある。
ふと目の前に二つの人影が現れて、一方がエルネスティに気づいて声をかけてくる。
「ん?よお、エル」
「こんばんは、エル君」
「キッド、アディ明日はうちに来るんですから、今日は待ち伏せしなくてもいいんじゃないですか?」
「まあまあ、会いたかったんだからいいじゃん」
「って言って聞かなくてな。すまん」
彼らは、双子の兄妹で兄はアーキッド・オルター、妹はアデルトルート・オルターという。
彼らの出会いは少し前のことだった。
今はまだエルネスティは知らないが、貴族の父と平民で愛妾の母の所謂妾の子という立場であった彼らは、正妻から嫉妬の感情を向けられ、複雑な状況にあった。
そんななか、ある日気晴らしにと出窓から屋根の上に出ていた。そのとき偶然訓練中のエルネスティと出会った。もちろん、ローブを目深にかぶった人物が突然目の前に現れたのだから警戒していた。しかし、エルネスティが友好的に接してきたこともあり、すぐに打ち解けてエル、キッド、アディと呼び合うようになった。
その日以降、エルネスティに会うため彼らは度々屋根上へ出ていた。仲良くなったということもあるが、魔法を使って飛び回るように進むエルネスティに憧れを抱いたのだ。何度か会ううちに彼らに魔法を教えることになり、日中はよくエルネスティの家に集まっていた。
ちなみに、妹のアデルトルートはかわいい物好きで、背が低く母親に似て男子とは思えないかわいらしい容姿をしているエルネスティを猫かわいがりしていた。
時間は進んで翌日、待ち合わせをした彼らはエルネスティの家ではなく別の場所へ向かった。その場所はテルモネン工房という看板を掲げた建物で、勝手知るように入っていった。
中に入ると同じ年頃の子供が話しかけていた。
「よお、エル。早速来たんだな」
「そりゃあ、僕が頼んだわけですから」
その子供はひときわ小柄でエルネスティといい勝負をしている。しかし、子供かと疑うほど横幅が広く、筋肉質に見えて力強さを感じる。
彼はドワーフ族と呼ばれる人種である。その昔、彼らの祖先は山腹の洞窟をすみかにしていた。人が森や平地で植物を中心に技術を発展させてきたのに対し、彼らは鉱物を中心に技術を発展させてきた。
そんな背景もあり、ドワーフ族は洞窟内で動きやすいよう小柄に、鉱物を簡単に扱えるよう筋肉質に進化した。
遠い過去、人はその生活圏を山間部まで伸ばし、ドワーフ族は生活圏を麓まで伸ばしたことで、二つの種族はであった。エルネスティの前世でいえば生存権をかけて争いが始まるところだが、ここではより強大な敵が存在し、手を取り合うことができた。
その敵とは魔法を扱う獣、魔獣と呼ばれる存在であり、強力な存在ほど巨大化する傾向にある。これに対抗するため、数が多く軽快に動ける人にドワーフ族が金属製の武具を供給していた。そして、強力な対抗手段として
人の生活圏が広がるにつれ、ドワーフ族も山を降りて人の街でともに住む人が増えていった。彼らは、それ以前からも鉱物の取り扱いが上手いことから鍛冶士として名をはせていた。話しかけてきた子供、バトソン・テルモネンもそんな街に住むドワーフ族の一人だった。
エルネスティ達がここに訪れたのは、エルネスティがバトソンにある物の制作を頼んでいたからだ。
エルネスティは以前から杖という武器に不満を持っていた。
前世の記憶から、彼の中では射撃武器といえば銃だった。彼でなくても、遠距離に憧れてモデルガンを持ったりして真似をすることが多いだろうが、杖を持つイメージを持って魔法を撃つ真似をするのは稀な例だろう。そこに違和感を抱いたのだ。
加えて、この世界での戦闘は都度、剣と杖を持ち替えたり、片手ずつに持つのが主流だ。彼はそこに煩わしさを感じていた。
これを解消しようと考えた結果、彼は銃剣を思い出して再現しようと考えた。
実は銃剣本来の用途は、剣のように扱う純近距離戦ではなく、槍のように扱う中距離戦よりだ。しかし、彼はそのことを知らなかったし、剣のように扱えるという事実で十分だった。問題は性質の大きく違う武器を入れ替えて戦うことにリソースを割きたく無いことなのだから。
そこで、ドワーフ族故に手先が器用で稼業の手伝いとして杖の制作をしているバトソンにイメージを伝えて制作をお願いしていた。
昨日の昼にこの四人とほかの子供達で遊んだ帰り際に今日中にできることを聞いて、こちらへ来たのだ。
「ほら、これ。金属部分は父ちゃんに手伝ってもらったから期待以上だと思うぜ」
「ありがとうございます。それはありがたいですが、良かったのですか?」
「いや、俺が作ってるの見たら興味が出たみたいでさ、逆に手伝わせろっていわれた」
バトソンの父親も不思議な形状の杖ということで気になっていた。コンセプトを聞いてから、今までに無い発想だとノリノリで手伝っていた。
できあがったものはライフル銃のような見た目をしており、銃口部分に触媒結晶が、銃身部分にスリットが存在していた。
「なんかごちゃごちゃしてるように見えるけど大丈夫なのか?」
「確かにそうかも。使い方がイメージできないや」
バトソンから親子のやりとりを聞きながら受け取ると、アーキッドとアデルトルートがそれの使い方について疑問を浮かべていた。
実演ついでに使い勝手を確かめようと工房の裏にある試し切りを行うための庭に許可をもらって出ていく。
庭に出ると、エルネスティはスリット部分に一緒に作ってもらっていた専用の刀身部分を取り付ける。コッキング部分は代わりに刀身の固定部品がつけられており、
エルネスティはいくつか並べられた試し切り用の丸太の一つに斬りかかる。当たる直前に刀身に風をまとわせて切れ味をあげる
その様子を見てアーキッドとバトソンは驚きで声が出てこない。
しばらくして再起し始めるとエルネスティに賞賛の声をかける。
「なんていうか、めちゃくちゃだ。俺じゃあついて行けねえ」
「そうだな。実際に見てわかったけど、本当にすげえ」
想像通り上手くいったが、エルネスティはどこか不満げな様子だった。
そんな様子に今まで会話に入ってこなかったアデルトルートが声をかける。
「どうしたのエル君、私もすごいってしかいえないできだったと思うけど」
「なんか、間違えちまったか?すぐ言ってくれよ」
「いえ、出来は満足いく物なんですが、どこか物足りなくて」
「うお」
「左手に何も持ってないからじゃない?」
エルネスティが頭を悩ませているとドンという音とともに突然、今までの会話になかった声が聞こえてきた。
声の聞こえた方向を見てみると、バトソンの背中に何かがぶら下がっており、肩から顔を出していた。それはバトソンよりもなお低く、長めの純粋な白い髪をまとめて片側の肩に流した少女だった。
彼女はフィーネ・ソシアナという名前で、バトソンと同じドワーフ族の少女だ。彼女の両親はテルモネン工房で働いており、バトソンと同じく手伝いをしている。
実は、肉体的に強固となるよう進化したためか、ドワーフ族は魔法演算を苦手としている。彼女はそんなドワーフ族の中では珍しく人並みの演算能力を持っていた。
バトソンとは幼少の頃からの付き合いであり、二人はバト君、フィーと呼びあっている。エルネスティ達とはバトソン経由で仲良くなった。
今エルネスティが持っている物は、別の仕事の手伝いがあって完成直前まで気づけなかったため、仲間はずれにされたと少々いじけている。
「フィーお前いつから」
「え?最初からついてきてたよ。三人とも気づいてなかったの?」
「うんうん」
実のところフィーネは彼らが庭へ出るとき後ろに着いてきていた。あまりに自然についてきていたためアデルトルートを除いて気づかなかったのだ。
アデルトルートと話していたのだが、三人とも実演という名の実験に集中しており、意識外だったのだ。
「それはともかく、今なんといいましたか?」
「だから、騎士って両手に武器を持ってるんでしょ?それ持ったら左手に杖持つ必要ないから、今までの練習と感覚がずれるんじゃない?」
「...なるほど、左手ですか」
そのときエルネスティは前世のとある偉人を思い浮かべていた。
その偉人は右手に通常の刀、左手に脇差しをもった二刀流で有名になった人物だ。剣道にも二刀流が存在しており、左手に小さい竹刀をもって攻撃をいなし、右手に持った通常の竹刀で攻撃を仕掛ける。銃も二つ持って戦闘を行う場合もあり、遡れば紀元前にはすでに存在していた。武器種を問わなければ二刀流とはかなりメジャーな流派といえる。
「バトソン、もう一本別のやつ作ってもらっていいですか?」
「いいけどさ、ちょっとは遠慮しろよな」
「もう一本って、どうするんだ?」
「それ、今度は僕も混ぜてよ」
こうして