knights & magic ~odic theory~   作:Drac

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ふと思いついたので。


30話

 エルネスティ達がツェンドルグなどを開発していたその頃、オービニエ山脈の西側西側諸国(オキシデンツ)の一国で事態が進んでいた。

 

「あー、どうしたもんですかねぇ」

 

(失敗から学ぶことがあるとか言って無理通してこの玩具を作らせてもらってるが、やっぱだめだな。もっと上を目指すには今までのじゃ役者不足だが...これじゃあ、ずっと供給して稼働させても構造維持もままならねえな。今は部位ごとの実験にととどめて、早く西を治めてもらった方がいいか。東にはまだでけえ魔物がいるって言うからそれの...)

 

「コジャーソ郷!少しよろしいですか?」

 

 工房の外で騎操鍛冶師(ナイトスミス)にも見えない人の男が目の前の巨体とその近くに並ぶ船を見つめながら思案を巡らせていると文官と思わしき人間が近づいてきた。コジャーソ郷と呼ばれた男は手を止めることなく、文官の言葉を聞いていた。

 

「何ですか?見ての通り私は改良と実験で忙しいのですが」

「はい。実は銅牙騎士団が帰還しまして」

「ああ、何でしたか。東の方で間諜をやってたんでしたっけ?それが?」

「東の方で幻晶騎士(シルエットナイト)の新型機が完成したから奪取したと」

「はあ。それで?今の...何でしたっけ?まぁ、前回から100年程経つのですから特段おかしな話とも思えませんが?」

「それが、人の形を外れ、力は今までの数倍、魔力貯蓄量(マナ・プール)も増加しているとかで」

 

 文官の話は一聞すると冗談としか思えないものばかりが挙げられていた。幻晶騎士(シルエットナイト)の改良は頭打ち状態で強化は緩やかな物だった。それなのに、常識をひっくり返すような新技術の噂なども聞こえてこず、いきなり数倍の強化が行われたとなれば誰かが流した噂話としか思えないだろう。

 

「それは面白い話ですね。技術解析の場には私も立ち会っても?」

「それを要請しに来ましたので、そう言っていただけると助かります」

 

 しかし、コジャーソと呼ばれた男は馬鹿な話だと一蹴にせず、動かし続けていた手を止めてまで解析の場にいようと話を持って行く。そして彼の前に存在する、まさしく人の形を超えた、幻晶騎士(シルエットナイト)の数十倍は大きい竜が彼らを見下ろしていた。

 

 

「魔獣番にしては素晴らし技術だな」

「奴らには過ぎた物だ。我々の役に立てた事を感謝させてやろう」

「しかし、報告によれば稼働時間に問題があるのだろう?」

「操縦バランスの悪さもな。我らがジアントに近いらしいが、造った者達は未熟と見える」

「そうだな。綱型結晶筋肉(ストランド・クリスタルティシュー)は画期的だが、ただ置き換えるだけで調整した後がない」

 

 コジャーソと文官のやりとりから数週間後、工房長を筆頭に技術職の長が多く集まり、目の前の幻晶騎士(シルエットナイト)にそれぞれの感想をこぼしていた。それはこの国の特色である重厚で力のある幻晶騎士(シルエットナイト)とは違い、山脈を越えた東に唯一存在する国の特色である操作性の良さが見え隠れしていた。しかし、その特徴は施されている改造によって劣悪な物となっており、新技術で補おうとした痕跡は見られるが根本の部分が出来ていなかった。

 話はそういった品評から次第にどう技術を取り込むかに移っていく。

 

「subは完成度が高いようじゃないか。無駄に触るより複製したほうが無難だろう」

「ここを変えたいというのも狂剣くらいだろうしな」

「操縦バランスは各部の結晶筋肉(クリスタルティシュー)の量を減らして調整すればいいだろう」

「だが、そうすれば稼働時間はより短くなるぞ」

「その分蓄魔力式装甲(キャパシティブレーム)を搭載すればどうだ?」

「しかし、注意しなければより稼働時間に制限をかけることになりかねんぞ」

「いっそ増やせばいいんじゃないですか?」

 

 工房長たちが話し合っている中、ここまで一言も発していなかったコジャーソが口を開いた。しかし、それを聞いた人たちの顔に浮かんでいるのは期待ではなく嫌悪だった。彼は数年前に突然現れ、どう王族に取り入ったのか胡散臭い船を作り始めたのだ。国王も、幻晶騎士(シルエットナイト)より彼の作る船に期待しているのが節々に見て取れるため、長く騎操鍛冶師(ナイトスミス)として国に貢献してきた彼らとしては面白い話ではない。

 しかし、彼の作る船が画期的なもので幻晶騎士(シルエットナイト)の運用を大きく飛躍させる可能性があるのは理解している。そのため、彼は幻晶騎士(シルエットナイト)に深く精通していないが話だけでも聞こうと思える程度には許容していた。

 

「どういうことだ?」

「そのままの意味ですよ。今一度聞きますが、この国の幻晶騎士(シルエットナイト)の特徴とはなんでしょう?」

「重厚な鎧とそれを支える膂力だ。力比べならばどの国にも負けることはない」

「でしたら、下手に結晶筋肉(クリスタルティシュー)を減らして素直な忠犬にするより、たとえ暴れ馬になってもそちらのほうが騎士たちも慣れやすいと思いますよ」

「う、むぅ。確かに一理ある」

「だ、だが、稼働時間はどうするのだ!」

 

 コジャーソは敢えての方策を語る。下手に他国の技術に寄せるより、自国の技術へ寄せていくほうが安定して良質なものが出来上がる。そういう、至極当たり前ともいえることを語るが、見たこともない技術に興奮気味な彼らはそういった当たり前も出てきづらくなっていた。

 とはいえ、気に食わない相手の言葉をそのまま飲み込めるはずもない。穴を探そうとした一人が先にも問題に上がった稼働時間について追及する。その場の多くがコジャーソは言葉を詰まらせるだろうと予想したが、彼は淡々と話をつづけた。

 

「僕の作ったあれを使えばいいんじゃないですか」

「あんなもの、どうするというのだ。軽くすれば稼働時間に余裕が生まれるとでも?」

「いえ、そちらではありませんよ。供給するほうです。私が里から持ってきた研究書はご覧になられました?」

「そ、それがどうしたと...!?」

 

 コジャーソの言葉を否定しようとするが、彼の言っていることが次第にわかってくると、逆に言葉を返せなくなった。彼の方法が有力であることは、彼の言った研究書が十分に示していた。彼の技術はその研究書からくるものゆえに疑う余地もない。

 

「だ、だが...」

「ええ。ですが、国をとるのに心臓の一つや二つは軽いものではないですか?事実、私が作ってるのは許容してますよ」

「...だ、だがそれを決めるのは国王だ」

「そうですね。まぁ、畑違いな私めは最終判断をそちらへお任せしますよ」

 

 コジャーソはそういうと、周囲の言葉も聞かずにその場を去った。残った者たちは彼の案だけに頼るのはプライドが許さなかったため、ほかにも案を作り国王へ提出したが、採用されたのは彼の案だった。ちなみに、彼の案を提出しなかったり、無駄に悪く取り扱ったりは騎操鍛冶師(ナイトスミス)としてのプライドからしていなかった。

 

 

 

蓄魔力式装甲(キャパシティブレーム)、あれいいな。つなぎとしては十分そうだ」

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