平原でエドガーやディートリヒ達が殲滅戦を行っている中、巨樹庭園に入ったエルネスティ達は戦馬車で暴走族よろしく走り回っていた。
決して遊んでいるわけではなく、巨樹庭園で隠れている女皇を探しつつ、偶に会敵する兵士を豪快に倒しているだけである。そもそも、ツェンドルグ系列の機体は魔力転換炉一つでは魔力をまかないきれないが、二つでは供給が少々過剰なのだ。連続稼働時間はカルディトーレの三倍を超える。でなければ、銀凰騎士団の拠点として建造されたオルヴェシウス砦からここまで荷馬車で全力疾走した後に戦闘へ参加することなど出来ない。
トイボックスと合わせて6基の魔力転換炉が存在するとなれば、余剰魔力が多量に出てくる。なお、トイボックスは通常の幻晶騎士に無理矢理2基搭載したために大気の供給効率が芳しくなく、構造維持の増大もあってそれほど魔力供給量は増えていない。余剰生産量はおおよそ2基分程度である。
閑話休題
それほど膨大な魔力があれば何が出来るか。答えは単純なもので、これまで防衛戦に複数の幻晶騎士で使用されていた大型魔導兵装を通常火器同然に使用できる。それこそが轟炎の槍であり、一撃で兵士を焼き尽くしていた。大型で取り回しが悪いが戦馬車に搭載すればその問題も解決出来た。
他にも戦馬車の側面には斬獣剣と呼ばれる展開式の刃が搭載されており、数少ない近寄ってきた兵士もその大質量でもって引き倒していた。
しばらく巨樹庭園を進むと女皇が見えてくる。となればどうするか...冒頭で記述したように女皇に対してもヒャッハーしていた。具体的に言うと斬獣剣で足を断ち切ろうと突っ込んだのだ。
しかし、大隊であろうと殲滅するほどの群れをもつ女皇である。未熟な身体ではなかったために、斬獣剣は逆にはじかれてしまった。結果として、てこの原理よろしく戦馬車はバランスを崩したのだが、トイボックスが魔導噴流推進器を噴射することでなんとかバランスを取り戻す。
それからもしばらく、轟炎の槍を狙いも付けずに乱射したりとこれまでエルネスティが行った戦闘を思い返せば考えなしに見える攻撃を繰り返していた。一見すると騎士団団長になったことで調子に乗って考えなしに攻撃を仕掛けているように見える。実際、攻撃自体はそれほど考えて行ったものではないがしっかりと考えあってのことだ。
一言で言えば、エルネスティが強化した幻晶騎士がどれほど戦闘能力が増強されているかの確認である。カタログスペックで言えば倍程の差が開いているといえるが、机上の理論は現実におとしたときに何かしら差異が発生するのが常だ。トイボックスは銀凰騎士団団長機(仮)なので外すとして、オルター兄妹のツェンドリンブルや戦馬車によって編成より一つ二つ上に分類される魔獣を討伐できるのか、という話だ。仮に敗北しても砦には駐在している部隊と銀凰騎士団の3中隊が存在しているため、リカバリーが利くという判断をもっっておこなっている。ただ、今回が例外なために女皇が一つ二つに留まらなかったと言うだけで。
結論として出たのは、女皇が例外であったとしても分類が変わるような程の強化ではないというものだ。純粋な膂力などはわかりやすく増えたが、蓄魔力式装甲があるとはいえ従来より稼働時間がいくらか減り、補助腕で戦術の幅がとてつもなく広がった。単純に強くなったと言えばそれまでだが、実際に操縦する側からすれば、戦闘難度が上がったともいえる。選択肢が増えると言うことはそのまま判断能力が必要になると言うことになる。それは騎操士の技量となる話で、基準となる分類を行うのは単純な膂力などの方が適している。故に分類事態は変わらず、強いて言うならば表現が多少柔らかく変化する程度だった。
多少の傷を負わせつつもそれほど戦況が動いていないことから結論を出したエルネスティ達は本格的に討伐する戦闘へ移行する。まずはじめにわかりやすい弱点、孵卵殻と呼ばれる腹部に存在する吊り下げられた巨大な産卵器官に攻撃を始めた。