knights & magic ~odic theory~   作:Drac

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38話

 関所での戦闘を終えた銀凰商会は、この後の予定を話し合っていた。しかし、それほど難しい話でもない。エムリスの性格から考えても、元々から参戦が決まっていたようなものだった。

 最初の予定では、商会活動のようなものを行って情報収集を行いつつ...という流れだったが、すでにそんな悠長なことをしている暇はなさそうなのだ。

 そういう理由で、行動方針の話はそこそこに具体的な目的地などを話し合っていた。

 

 一方で戦闘で鹵獲し(仕入れ)た敵国機研(ラボ)、ティラントーと呼ばれたそれを調べると妙な事がわかった。

 

 まず始めに、見た目にわかりやすく背中に見覚えのある簡易腕が魔導兵装(シルエットアームズ)を保持していた。戦闘で破損して見える内部の結晶筋肉(クリスタルティシュー)は見覚えのある縒り合わせがされていた。

 詰まるところ、ティラントーに使用されている技術はエルネスティが提案し、銀凰騎士団になったライヒアラ騎操士学園の生徒達が形にしたものと同一のものだった。同じ結論に至った、と考えるには時期的にも、類似率的にも難しい話であった。

 

国機研(ラボ)の話ですね!でしたら、僕も混ぜてください!」

「うわっ!いつの間に...」

 

 エドガーとヘルヴィが、銀凰騎士団としても因縁がある相手だった、ということを話している所に会議が終わったのかエルネスティが首を突っ込んできた。以前から時々見られる行動(現象)であったが、いざ自身が味わうと驚かない方が難しかった。

 

 

「敵は僕たちの技術、補助腕(サブアーム)綱型結晶筋肉(ストランド・クリスタルティシュー)を利用している。であれば少しおかしな点がありますね」

 

 因縁のある相手にモチベーションが上がった...で終わる話ならば、エルネスティがわざわざ出てくることもない。―エルネスティが出てこなければ気づかなかっただろうが―

 

「確かに...その通りだ。俺たちは魔力貯蓄量(マナ・プール)の不足に相当悩んでいた。カルディトーレは国機研(ラボ)の努力もあってかなり改善されているが、テレスターレはあれで一つの完成形。ギリギリのバランスだった」

「でもこれ、結構な重装備しているわね。バランスをあえて崩しているみたい」

 

 エルネスティの声にエドガーとヘルヴィが応える。

 

 ティラントーの重装備、それはテレスターレ...もといカルディトーレと同じ技術を使っていると考えるととても不思議な事だ。エドガーも言っていたが、テレスターレは調整の知識不足であったエルネスティ達が作った、最大出力を見て作られた国機研(ラボ)である。稼働時間は今は旧式となりつつあるカルダトアに遠く及ばない程だ。

 カルディトーレとなれば国機研(ラボ)の尽力もあって蓄魔力式装甲(キャパシティブレーム)板状結晶筋肉(クリスタルプレート)増量による魔力貯蓄量(マナ・プール)の増加や、綱型(ストランド・タイプ)を減らして膂力の増加と魔力(マナ)消費のバランス調整を行い、余裕を持った作りになっている。しかし、テレスターレはその余裕が無い。ティラントーと同程度の重装備を施せばそれこそツェンドルグの二の舞になるであろう事は簡単に想像が付いた。

 

綱型結晶筋肉(ストランド・クリスタルティシュー)はより膂力のでるより型になっている。超重量を支えるという観点で見れば理解の出来る話だが、魔力(マナ)消費は大きくなる」

「そのとおりです。それに、僕たちがあれほど苦心したあれがそれほど進歩無く使われていますね」

「...蓄魔力式装甲(キャパシティブレーム)のことね。断言できるほどなの?」

「はい。現在、一般的なカルディトーレに使用されている板状結晶筋肉(クリスタルプレート)はテレスターレで作成した物より魔力(マナ)貯蔵量が増加しています。専用機になれば板状結晶筋肉(クリスタルプレート)の特性や蓄魔力式装甲(キャパシティブレーム)の配分なんかもいじっていますが、これはそういった工夫が見られません。むしろ、量産性を上げるために魔力(マナ)貯蔵量を犠牲にしている節も見受けられます」

 

 蓄魔力式装甲(キャパシティブレーム)はエルネスティ達も相当苦労した。錬金術課程をとっている生徒に依頼して、新しい板状結晶筋肉(クリスタルプレート)が出来上がる度に実験を繰り返すほどだ。それは国機研(ラボ)にテレスターレが受け渡されてからも変わりなく、当時よりは緩やかになったがいまだに板状結晶筋肉(クリスタルプレート)の改良は進んでいるのだ。

 そういった進歩がティラントーからはそれほど感じることが出来ない。ジャロウデク王国の気風に合わなかったのであろうか。

 

「要するに魔力(マナ)の生産量、消費量や魔力貯蓄量(マナ・プール)の多さが釣り合ってない。ということか」

「じゃあどうやって動いてるの?ツェンドルグなんて最初の頃はすぐに崩れたじゃない」

 

 エドガーとヘルヴィが各々に思った事を口に出す中、エルネスティは一つの部品を指さす。

 

魔力転換炉(エーテルリアクタ)につながったこれ。おそらく、これが鍵になるでしょうね。ですが...」

 

 そこまで言うとエルネスティは口を濁す。話を聞いていた二人もエルネスティに若干冷ややかな目を向けていた。

 理由は簡単でその部品がかなり派手に破損していたためだ。さて、今回戦闘を行ったのは誰であっただろうか。開戦の狼煙とばかりにエムリスが獣王轟咆(ブラストハウリング)をぶち込み、その後はエルネスティが残った敵の国機研(ラボ)を殲滅した。

 つまり、秘密に迫るための鍵はエルネスティによって壊れたのだ。魔導演算器(マギウスエンジン)魔法術式(スクリプト)から判断しようにも、エルネスティは―銃装剣(ソーデッドカノン)を使って中から両断するように切り裂くなど―派手に暴れたため、そちらも破損して解読不可能になっていた。

 

「つ、次はちゃんと加減しますから...」

 

 慈悲をかけないという意味で決して間違ってはいなかったが、敵を知るのが長引いたために正解ともいえない状態にエルネスティは気まずそうに言葉を漏らした。

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