対空装備である魔導飛槍や旧クシェペルカ製幻晶騎士であるレスヴァントの強化装備ウォールローブの開発が順調に進む中、ダーヴィドを筆頭に東方様式の教授を行っている団員は少々苦労していた。
先に挙げた二つは銀凰騎士団主導で開発しているため、エルネスティの考えをある程度くみ取れる。しかし、ライヒアラ騎操士学園においてエルネスティの案を受け入れ、実現へ向かうのにそれなりの時間や切っ掛けが必要だったようにクシェペルカの騎操鍛冶師へ理解させるのは一苦労であった。
ここでダーヴィド達が改めて思うのはエルネスティが思いつくことの異質さと自分たちが十分染められていることだった。
モートリフトに関しては小さな幻晶騎士という概念がいまいち理解されなかった。ダーヴィド達が使用している他にクシェペルカ側が触れることが出来るようにいくらか完品を用意していたためにまだ早かった。しかし、結晶筋肉をより合わせて膂力を倍増させる綱型結晶筋肉や魔導兵装の運用を根底から変える補助腕は理解させるのに時間を要した。
これまで幻晶騎士開発に従事してきた故に理解出来るが、発想の異質さに頭を悩ませていた。その様子に銀凰騎士団の面々は自分たちもそんなときがあったな~と懐かしいむ目で見ていた。とはいえ、そういった経験を積んできた者達に師事を受けているために多少苦労する程度で済んだ。
ウォールローブが出来上がる頃には大凡の技術教授は済んでいた。しかし、それで即座に新型幻晶騎士が完成出来るかと言えばそうではない。というのも銀凰騎士団が特殊でエルネスティが既に草案を作成済みなために設計などの準備段階の作業を大分省略できている。ツェンドルグが全く新しい形状や魔力問題などの様々な問題が発生したが、かなりの完成度を持って競作に挑めたのも国機研がテレスターレの実機やエルネスティ作の技術書から技術解析を行い、カルダトア・ダーシュの開発を始める前に設計・仕様決定といった事前準備段階でそれなりの時間を要したためだ。
加えて言えば、ここはフレメヴィーラではなくクシェペルカであり、要求される機体特性も異なる。フレメヴィーラ王国では素直な操縦感、ジャロウデクでは強大な膂力を基本として機体設計を行われる。ではクシェペルカはというと運動性能が重視される。ジャロウデクからは案山子と揶揄されるように全体的に細い造形をしており、膂力や装甲をそこそこにして手数で押していくのが基本スタイルとなる。エルネスティがフレメヴィーラ式で設計を行うより、東方様式の技術を取り込んだクシェペルカの騎操鍛冶師が設計を行う方が戦力的にも転換訓練が少なく済んで良い。
ただ、エルネスティの助言が全くなかったと言うわけではない。彼が提案したのは旧式の幻晶騎士であるレスヴァントとできるだけ近い構造にすること。そうすることで各地を取り戻した際に東方様式を知らない騎操鍛冶師でもある程度の部品を製造でき、綱型の製造や新型幻晶騎士としての組み立てといった知識が必要な部分を教授された騎操鍛冶師で行う。そうすることで新型の生産力を上げるのに毎回東方様式の教授を行う必要がなくなる。将来的に必要な技術だがそこは終戦してからゆっくりと国内で育んで行けば良い。
また、邪道ともいえる効果だが一見して旧式の幻晶騎士と同じであれば敵が油断してくれるかもしれない。場合によっては負けた部隊を旧式に負けた屑として扱ってくれるかもしれない。とはいえ、こちらはそういう可能性もあるというだけで敵が相当頭の出来が疑わしくないとそういう未来は訪れないだろう。というのが前世の創作物等でそういった場面をよく見たエルネスティの見解であった。
そういった経緯があってクシェペルカ軍は救出した王族を再度狙ってきたジャロウデク軍をウォールローブを装備したレスヴァントで撃退する頃には新型幻晶騎士、レーヴァンティアの設計を終えて建造を始めていた。
その頃には魔導飛槍もそろそろ完成が見えており量産に入ろうかという頃合いに入っていた。そう遠くないうちに決戦が始まるだろうというのが各々の共通見解であった。