knights & magic ~odic theory~   作:Drac

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47話

「鬼神の秘密がわかったというのは本当なの?」

 

 旧クシェペルカ王都、デルヴァンクールの王城で最高指揮者であるカタリーナがコジャーソへと問いを投げかけていた。数刻前、コジャーソがイカルガが飛翔する仕組みの解析を終え、戦略兵器に搭載するめどが立ったと報告を行った事に起因する。

 

「はい。それはもう完璧に」

「カタリーナ様。わしにも聞かせてもらえませぬか?」

 

 そこにいたドロテオ・マルドネスという男が再び質問の声を上げる。彼はイカルガと遭遇しての初めての帰還者であり、クリストバルにたいし十分な報告を挙げられず、戦死させてしまったことに悔いを感じていた。惜しむらくは飛空船(レビテートシップ)と同様、先鋭的過ぎる話であったために誇張報告と判断する者が多かった。そのために出撃に制限をかけられており、前回の決戦時に参戦できていなかったことも彼の後悔をより深い者へとしていた。因縁ともいえる相手であるイカルガは必ず自身の手で討ち取ってクリストバルへの手向けとするべく決意を固めていた。

 

 そんな中、カタリーナの護衛中にコジャーソの天才的な頭脳が源素浮揚器(エーテリックレビテータ)を使用している様子のないにもかかわらず空を翔る方法がわかったという。となればその弱点も突き止めているかもしれない。少なくとも、あらゆる事柄において無知とは罪になりやすい。方法がわかれば既知へと転じ、己が目標へと一歩近づくという思い出口に出していた。

 

「許可します。あなたには鬼神討伐のために動いてもらう予定ですから」

「なんと。ありがたき幸せ。必ず奴めの首を献上して見せましょう」

「励みなさい。それでは、コジャーソ郷。かの鬼神の秘密とは?」

「そうですねぇ。簡単に言えば超強力な起風装置(ブローエンジン)の力業で機体を押し出しているのです」

 

 コジャーソの答えに対し、二人はいまいち飲み込めなかったのかきょとんとした顔を向ける。

 

「ありゃ。ちょいと省き過ぎましたね。もう少ししっかりと説明させていただきます」

「え、ええ」

「お二方とも、起風装置(ブローエンジン)の仕組みはご存じですよね?」

「当たり前だ。飛空船(レビテートシップ)中程にある騎士像(フィギュアヘッド)から風系統の魔導兵装(シルエットアームズ)を行使し、帆を用いて推力を得るのであろう」

「その通りです。ではここで一つ、仮定をしてみましょう。もし魔法現象に強い反作用が働いた場合、起風装置(ブローエンジン)はどうなりますか?」

「それは...」

 

 ドロテオは困ったように口を閉ざした。騎操士(ナイトランナー)、それも騎士団長ともなれば魔法に精通しており、それ以外の学も十分に理解を持っているため悲惨な結果を想像したためである。

 

「そう。起風装置(ブローエンジン)は魔法現象の反作用が少ない事で成り立っているのです。もし強い反作用があったら帆の受けた風と相殺してしまい、動けないでしょうね」

「それがどうしたのです。いまいち話が見えてきませんが?」

「いえ、ここが大事なところなのです。逆に考えてみましょう。帆で風を受けてしまえば反作用と相殺して大して動くことが出来ない。裏を返せば帆で風を受けなければ反作用の力をそのまま推進力へと転化できるでしょう」

 

 コジャーソの言葉に二人は納得を示す。確かにその仮定であれば態々帆で飛空船(レビテートシップ)を制御する必要もなくなるだろう。しかしだ...

 

「しかし、それほどの反作用を生む魔法など魔力転換炉(エーテルリアクタ)1基で賄えるわけがない」

「そう。そこが盲点でした」

 

 魔法現象の反作用は通常の物理現象に比べとても小さい。戦術級魔法(オーバード・スペル)の中で上位に位置するものを使用しても幻晶騎士(シルエットナイト)を自在に動かせるほどの力は生み出せない。第一、そんな大規模な魔法現象など、話に聞く師団級魔獣であろうとも日に何度も行使出来ないであろう事は容易に想像が付いた。

 そのことを指摘しようとするも、コジャーソは予想していたように言葉を遮る。いや、このような寸劇じみたことをしているのだから実際に予想していたのだろう。そして、そのまま話を進めていく。

 

「今の仮定を魔法現象で再現するのは不可能。ではどうすればいいのか。簡単なことです。魔法現象を用いて相当量の物理現象を起こせばいい!」

「「!!」」

「ヒントは話に聞く光の尾...いえ火の尾といいましょう。それでした。かの鬼神は空を翔る際、吸気音が聞こえてきたそうですが、本当に吸気していたのでしょう。まずは空気を集め、火系統の魔法現象で加熱、膨張させ指向性を持たせて排気することで空を翔るに足る反作用を得る。これが鬼神の秘密です」

 

 コジャーソは正しく天才であった。魔法というものが存在するこの世界において、考えが及ばない事象は等しく魔法現象であるという思考に誘導されがちである。また、幻晶騎士(シルエットナイト)を中心にどの物事でもいえることであるが、技術開発において魔法現象を中心に据えて考える。魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)はエルネスティが前世のジェットエンジンを再現しようと作成したものであり、詰まるところ魔法現象が中心に存在していないのだ。

 そんなエルネスティから見れば偏ったとも見える常識の中で、設計図を見ることもなく、鹵獲品からリバースエンジニアリングすることもなく、実物を見ることもなく、ただ情報を聞いただけで魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)の異質さに気づき、理論を導き出した。

 

魔力転換炉(エーテルリアクタ)のことは...まあいいか。説明してもすぐにはどうにもならなそうだし。当分は11、いや12か?そんだけ積んどけばなんとかなるだろ。はてさて複数積んでるのか、本国へ要望を出したやつみたいな特別製を積んでるのか、どっちなんだろうね?)

 

 時代や場所、人によっては彼のことを怪物と表現する事もあったのだろう。実際、相対している二人には彼が人ならざるもののような印象を受け始めていた。

 

「あ、そうそう。ドロテオ郷。あなたが討伐に向かわれると言うことで対抗兵器を飛竜戦艦(ヴィーヴィル)と一緒にお渡ししましょう。一度使えば対策をとられてしまうでしょうから何度も使えませんがね」

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