knights & magic ~odic theory~   作:Drac

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49話

 ジャロウデクの用意した竜のような見た目をした巨大な飛空船(レビテートシップ)はその力強さを示した。それまで負けなしだったクシェペルカだったが竜と出会った戦場では一方的に負け続けていた。

 それでも戦争としては一応防衛戦に分類されるであろう今回において、クシェペルカは引くことはできない。ジャロウデクは併合を目的としており、敗北は滅亡へとつながるために安易に選択できない。仮に戦争初期であれば貴族達にその選択肢もあったが、一度くだったのに反旗を翻してクリストバルを打倒した今となってはどういった扱いをされるかは想像するまでもない。

 

 基本的な勝ちと竜による負けを繰り返している中も希望があった。ジャロウデクに鬼神として恐れられるイカルガならばどんな強大な敵であろうと打倒できるだろうと。しかし、それはある意味で裏切られることとなった。エルネスティは竜と二度会敵することになる。

 

 一度目の会敵は「負けなかった」という結果が残った。イカルガ唯一の戦法ともいえるが、近接戦を仕掛けていた。性能の良いロックオン機能などが無ければ船は近接戦を仕掛けられるともろい。エルネスティの前世であった世界を巻き込んだ大戦においても船は航空戦力に撃沈されるのは珍しいことではなかった。

 しかし、件の竜は鉤爪をも装備しており望むところとばかりに応戦してきた。更にはイカルガの法撃も体全体に防壁を張るように雷系統の魔法を放つことでダメージを軽減していた。それだけでなく、竜はその顎からゴルドリーオと同じような仕組みと思われるarmsを用いて強力な炎のブレスを放っていた。幸いなのはイカルガが全力法撃を行えば拮抗出来たことだろう。

 ただ、この戦闘でイカルガはハンデを背負っていた。戦闘開始時に竜は煙を巻いていた。エルネスティは目くらましと思い突っ込んだのだが、それはコジャーソが用意していた秘密兵器、魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)が給気するところに目を付けて小さな金属などを混ぜて内部破壊することを目的とした物だった。そう時間もかからずにイカルガは飛行能力を失って竜との法撃合戦へと移った。先も述べたように法撃能力は拮抗していた。しかし、その状態で長期戦ともなれば不利になるのは竜であった。

 それは戦場の状況に起因する。仮に竜とイカルガの魔力(マナ)供給量・消費量が同程度とするとほとんど同じタイミングで魔力(マナ)不足が発生する。となれば竜がいくら堅牢であろうとクシェペルカに数で押されてしまうため、早めに離脱するしかなかった。

 

 二度目の会敵は「勝てなかった」という結果が残った。もちろん弱点をそのままにするエルネスティではない。魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)は改良を施して粉塵による内部破壊が発生しないようにしていた。

 初めのうちはお互いに近接戦を行って互角の戦いをしていた。竜としてはイカルガを早期に倒さなければ戦略的な敗北を意味する。クシェペルカとしては空を飛べて竜と互角に戦闘をこなせるのがイカルガしかいなかった。故に一騎打ちの形で戦闘は行われていた。

 しかし、次第に竜の方が押され始める。イカルガは魔力(マナ)消費の激しい魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)を取り付けているが、一般的な幻晶騎士(シルエットナイト)程度の大きさで機体動作には問題にならない程度だった。加えて特注品の魔力転換炉(エーテルリアクタ)もそれに耐えるほどの生産力を持っており、そうそう魔力(マナ)不足は起こさない。

 竜の方は違った。外見から10を超える魔力転換炉(エーテルリアクタ)を使用する、ツェンドリンブルと似た方式であると推察されるが、イカルガの特注品と比べるとどの程度の物だろうか。加えて言えば、竜は戦闘時に魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)を使用して高速戦闘を行っている。これだけでもイカルガと同程度の消費なのに、図体は飛空船(レビテートシップ)らしくとても巨大であり、消費量はイカルガとは比べものにならない。

 結果、竜は魔力(マナ)不足を懸念して撤退という選択をとらざるを得なかった。勿論それを見逃すエルネスティではないが、超高高度にさしかかった際に泥酔したかのような錯覚を覚えた。初めての感覚であるが聞いたことはあった。エーテライトの実験をするときに聞こえてきたエーテル酔いに近いと。ただ、それが今発生するのはなぜだろうか。それは実際に体験したエルネスティと飛空船(レビテートシップ)を生み出してエーテルに精通しているコジャーソくらいにしかわからないだろう。

 

 そうやってイカルガでも拮抗する戦力がジャロウデクにあると理解したクシェペルカだったが、先も述べたように引くことは出来ない。加えて、ジャロウデクは竜単機で優位をとっているが、クシェペルカは基本性能に勝るレーヴァンティアを用いて数で優位をとっていた。竜が一都市を殲滅する間にクシェペルカは2、3の都市を開放していたのだ。

 もはや戦争の優位はクシェペルカにあり、この戦争の結末を決めるであろうデルバンクールへ向けて進軍を開始していた。

 

 

 ちなみに、エルネスティは竜のことを若干否定気味であった。

 飛空船(レビテートシップ)を知った際は幻晶騎士(シルエットナイト)の母艦として最適であり、原理がわかれば飛行型幻晶騎士(シルエットナイト)も夢じゃないと思っていた。ロボットものにおいて活動拠点が船であるのはよくあることだった。

 しかし、竜は幻晶騎士(シルエットナイト)を兵装として扱った大艦巨砲主義の権化ともいえる存在であった。勿論、母艦といえど戦艦なのだからある程度の戦力を持つのはわかる。しかし、前世の出身国などは大艦巨砲主義にとらわれて航空戦力に力を入れきることが出来なかった。某宇宙世紀において最初期は戦艦を重視しており、艦載機などサポートで少しという程度だった。

 つまり、大艦巨砲主義を容認すれば幻晶騎士(シルエットナイト)が廃れていく可能性を持つということであり、ロボット命であるエルネスティにはそれが耐えられない。せめて強力な兵器程度に収まってもらわないと危険だと考えていた。

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