気になるのはお隣さん 作:レイハントン
息抜き小説第2話です。
また一歩踏み出すことが出来るのか……
それではどうぞ
第2話 連絡先交換って初心者には辛い
通学路
白金さんとお友達になれた次の日。
僕は若干寝不足だ。なぜかって? それは昨日念願叶って友達になれたから、それが嬉しくてね。赤司君と通話しながらゲームをしていて少し夜更かししてしまったのもあるけど。
今日の朝はとても清々しい。まぁ赤司君から何を言われるかはちょっとわからないから怖いけども……。
いつも罵ってくるけど、昨日ばかりは褒めてくれた。もちろんこれで調子に乗ってしまうわけにはいかない。新たな問題も発生してしまったわけだし。
そう……連絡先を交換するのってどのくらい仲良くなってからなのだろう。
考えはじめたあたりから目が冴えてきてしまった。意外とすぐ聞いてしまって良いものなのだろうか。でも下心丸出しとか思われたくないしな〜。ないわけでは……ない。あわよくば付き合いたいなんて考えてたから口が滑ってしまったわけだし。
結局答えが出ることはなかった。経験がないとこればっかりはダメなのかな。
しばらく歩いて他の高校の人たちが多くなる道へと出た。周りの視線が僕に向いているだなんて自意識過剰なことは思わず歩いていると、後ろから大きな声が聞こえてくる。
「はやーい!」
「あんまり大きな声出すな。注目されるだろ」
自転車を2人乗りで勢いよくすれ違う瞬間に聞こえてきた言葉に思わず共感してしまう。
たまーに2人乗りでこの通学路を通り抜けていくんだよね。自転車を漕いでいる男の人は、花咲川高校っていう花女、羽丘に次いで偏差値が高い高校の人。後ろに乗っているターコイズ色の短い髪の元気な人が羽丘の人。
ダメなことを堂々とするのは正直すごいと思う。僕だったら周りの目を気にするし、やっぱりダメなものはダメだし。
こうしてひっそりと暮らすのが自分の性分に合っているのかもしれない。
荒滝高校 教室
僕と赤司君が通う荒滝高校は偏差値普通くらいの学校。中学でそこそこな点数取れていて、ちゃんと出席していれば難なく入れる。全てが普通の僕には花咲川なんてハードルの高い学校には入れないんだよね……。本当は荒滝高校よりも近いんだけど。
そんなことよりも。
僕は某人型決戦兵器が出てくる作品で有名なあの司令官のようなポーズをとっている。
「どうした? そんな考えてるような雰囲気だけの姿勢は」
いつも通り前の席に座っている赤司君がそんなことを言った。
「ゔっ……ちゃんと考えてるよ」
「どうせしょうもないことだろ? 友達の次はなんだ。連絡先か? え?」
なんでわかるんだよ……。くっ…! 全部お見通しって言いたいのか?! かくなる上は!
「教えてください。お願いします」
「適当に聞けばいいんじゃね? お話したいので、連絡先交換してくださいって」
「それが出来たら苦労しないよ〜」
ポーズを取るのをやめて頭を抱えた。
そんなことを言えるようになる頃には僕は僕でなくなってしまうよ……。
「変にひねることも、自然に聞くことも出来ないなら普通に聞くしかなくね?」
「それは……そうだけど」
「………よく考えることだ」
そう言うと赤司君は席を離れて行った。
どうやら今の僕には普通に聞く以外の選択肢はないみたい。それはわかってる……わかってるけどさ。その普通がわからないんだ。
「ちゃんと授業聞けるかな……」
そんなことをぼそっと呟いて机に突っ伏した。
教室
放課後。案の定僕はあまり授業に集中できなかった。もちろんノートはちゃんと書いたよ? でも内容がよくわかっていない……。後で先生に聞かないと。
「落ち込んでどうした? 生きるのが辛くなったか?」
「そこまで自分を追い詰めてないよ……」
帰る準備をしていると、赤司君が現れた。すぐに帰らないということは、今日のバイトはないらしい。バイトの日は帰りのホームルームが終わると同時に帰って行っちゃうし。
「この後暇だろ? 寄り道して帰ろうぜ」
「寄り道?」
「おう。早く行くぞ」
「ちょ?! まだ用意してない!」
明らかに用意が終わっていないのに1人教室を出て行く。わかっててやっているのが本当にタチ悪い……。だけど、どこかでは絶対に待ってくれているんだよね。
急いで帰る準備をして僕も教室を後にした。
結局校門で待ってくれていた赤司君。僕たちは今どこに向かっているのだろう。駅の方に向かっているのはわかるんだけど……。なんだか花女と羽丘の生徒さんが多いような気も。
「あ、赤司君。どこに行こうとしてるの?」
「ライブハウス。実はさ、バイト先の先輩に今日出演する……幼なじみが居る? らしくてさ。おすすめされたから観に行く。名前は知らないけど」
そういうおすすめって自分が興味ないとなかなか行かないと思うんだけど……。特にライブを観に行くなんて赤司君からは聞いたことがない。
つまり、完全に折角おすすめしてくれたしみたいな感覚なんだろう。そういう所は本当に赤司君らしい律儀な所だ。いろいろツッコミたいところはあるけどね……。
「名前わからないのに大丈夫なの?」
「全部観ておけば万事解決だろ? あとは先輩の話に合わせるさ」
「部分的に適当だよね……」
「そういう時もある」
君の場合はそういう時しかないよ……。
そんなことを思いながら歩いていると、前を歩いている人の中に見覚えのある後ろ姿があった。
花咲川高校の制服。首にかけるヘッドホン。赤っぽい黒髪。間違いなく今朝見た人が自転車を押しながら歩いている。でも少し違うのは隣の人が羽丘の生徒さんではなく、花女の生徒さん。ターコイズ色の長い髪。大きな黒いカバンを背負っている。
朝は同じ髪色のショートだったような……。あと制服も羽丘で……。つまりどういうことなんだろう。
「聞いてるのか? 人の話」
「え? な、なんの話……」
「は? キレそう」
「ご、ごめん…! ぼーっとしてた」
「まぁ何も話しかけてないけど」
・・・赤司君は意地悪だ。たまに人がぼーっとしているのをいいことに、こんなことをしてくる。隣から何か話しかけられたような感覚もなかったし、怪しむべきだった……。
「とりあえずさっさと行こうぜ」
「あ、待ってよ赤司君」
早歩きでそそくさと行ってしまう彼の背中を追いかけた。
ライブハウスCiRCLE カフェテリア
僕は今人生最大のピンチを迎えているかもしれない。いや、迎えている。
なぜピンチを迎えてしてしまったのかと言うと。
赤司君と来たのはCiRCLEっていうライブハウス。ライブスタジオと貸し出し用のスタジオ。外にはカフェテラスまである結構大きな施設。ライブを観にきたわけだから場所はあまり気にならない。
外のカフェテラスに来るなり、赤司君はテラスに座る2人組に話かけに行った。正確には2人組の片方に面識があったらしい。知り合いが居たら話かけに行くのは珍しいことじゃ無いから大丈夫。
問題はここから。何気なく着いて行ったのが全ての始まり。赤司君で死角になっていて見えなかったけど……もう1人は。昨日お友達になったばかりの白金さんだった。
いったい何を話せばいいんだー!!
「あこもライブ観に来たのか?」
「うん! 赤司も?」
「バイト先の先輩に勧められてな。とりあえずって感じ」
「なるほど〜」
君はなんでそんなペラペラ話せるの?! 後その人は誰? 観た感じは年下の子っぽいけど……まさか彼女?! お互い名前で呼んでるし、もしかしたら……。
いやいや。今はそんなことよりも白金さんと何か話さないと…! 頑張れ僕! やればできる!
「し、白金さんもライブを……?」
「あ、はい……。あこちゃんに…誘われて……来ました」
あこちゃん? あ、今赤司君が話している子か。とても元気そうな子で、天真爛漫って言葉がよく似合う気もする。見た感じだけど。
それはそうと……白金さんもこういう所に来るんだね。勝手なイメージだけど、てっきり家に居ることが多そうなイメージだった。僕も人のことは言えないけど……。
「おーそうだそうだ。コイツは俺の友達で……まぁ友達だな」
「待ってよ。今の間はなに?」
「いろいろあんだよ」
ないよね? 本当に友達だっけ? とか思ったの?! ねぇ!!
「赤司がよく言ってる…えっと〜。臆病な人!」
ぐさっ。何かが僕の体を貫いた。
「あこちゃん……失礼…だよ」
「いいんです……僕はどうせ……」
「おーい。戻ってこーい」
間違ってはないけど臆病な人って吹き込んだ張本人に言われても。
「悪かったって。ほら、早く自己紹介」
謝る気はないんだね……知っているけど。
「えっと…星野樹です。赤司君と同い年です。よろしくお願いします」
「宇田川あこですっ! よろしくね、樹!」
「おいおい、いきなり呼び捨てか? 俺は構わないけど、せめてあだ名にしてやれ」
「じゃあいっくん」
「それだ」
なにが? 今の一瞬で何が解決したの? 僕の了承は? ……まぁいいや。あんまりあだ名で呼ばれたことはないから、少し歯がやい感じもするけど。
「こっちはりんりん! あこの大大大親友だよっ!」
「あ、あこちゃん……!」
そういう紹介をされると恥ずかしいよね。すごく…ものすごく気持ちはわかる。でも……ごめんなさい、白金さん。
照れてる姿、すごく可愛いです……!
「お、おう。すごく仲がいいことしか伝わってこねぇけど、あれだろ? 樹のお隣さんだろ?」
「えっ? そうなの? りんりん」
「う、うん……家が……隣同士…なんだ」
「そっか〜。あっ! じゃあこの人が───」
「それは……ダメ!」
なんだかすごい状況になってきたような……。結構話しているような気がするけど、ライブの時間大丈夫なのかな? 観れなくて困るのは赤司君だし、そろそろ声をかけよう。
「赤司君、そろそろ行かないとじゃない?」
「そうだな。邪魔して悪かったな」
「ううん! じゃあね〜」
お店の方へと行ってしまう赤司君の後に着いていく。途中振り返って、手を振って見送ってくれる宇田川さんに僕も手を振りかえした。ふと白金さんに視線を向ける。もしかしたらなんて気持ちがあったけれど………やっぱり。
諦めかけた直後───宇田川さんに見えないよう小さく。手を振ってくれた。
僕は叫びたい気持ちをグッと堪えて。
うおぉぉぉー!
手を振ってくれたーーー!!!
やったーーー!!!
心の中で叫んだ。
「いつまで手振ってんだよ。行くぞおら」
「う、うん」
カフェテリアを後にした僕たちはCiRCLEの中へと足を踏み入れた。
CiRCLE ロビー
受付には割と人が並んでいた。みんな誰が目当てで観にきているんだろうか。事前に調べておけばもう少し楽しめそうだったのに。白金さんとの連絡先……交換のことで……。
「そういえばさ。お前、連絡先交換の話は?」
「……人には引かなきゃいけない時があるんだよ」
「引くわけにはいかない、じゃねぇのかよ。全くお前は」
「ごめんなさい……」
あーーやっぱり会ったら緊張して話せないんだよー。え、なに? ライブ観に来たんですかって。宇田川さんのお茶しに来ただけかもしれないけど、もう少し違う話題もあったはずだ。例えば………ここのカフェってよく来るん…よしやめておこう。
「だから普通に言えばいいだろ? こんな僕ですが楽しい話題を提供致しますので、何卒連絡先を交換してくださいましって」
「赤司君楽しんでるでしょ?! 人が真剣に悩んでいるのに!」
ニヤニヤしながら言ってるのは確信犯だよね? ね?
「楽しんでねぇよ。真面目だ真面目。謝れよー。人が真剣に考えてるのに」
「えー僕悪くないでしょ今の」
「早く」
「ごめんなさい……」
え? 僕悪くないよね? なんで謝ってるんだろう……。まるで納得がいかない。絶対おかしい。
話し込んでいると、僕たちの順番が近づいてきた。鞄に入れてある財布を取り出すためにチャックを開く。必要以上のものを入れていない僕の鞄から財布を探すのはとても簡単だ。すぐに財布を取り出したけど───同時にポケットティッシュが出てきてしまった。
「あー何してんだよ。鈍臭いやつめ」
「たまたまだよ」
ポケットティッシュを拾おうとした直後。
「お客さま、落ちましたよ」
そう言ってCiRCLEの店員さん? スタッフさん? がポケットティッシュを拾って渡してくれた。その拾ってくれた人は今朝とここに来る前に見た人だ。
「ありがとうございます」
「はい。失礼します」
そう言って受付の方へと歩いて行った。
「愛想悪そうな兄ちゃんだったな」
「そう…かな。怖そうではなかったけど」
なんだか…不思議な人だ。
話しているうちにようやく順番が回ってきた。
川沿いの道
普通のチケットとドリンクチケットの2つを買った僕たちは、会場時間まで外で待つことにした。
なんだか受付でチケットを買っている間、殺気みたいなものを感じたような……。受付のお嬢様みたいな雰囲気の人からではないのは確かなんだけど。それはいいとして。
「で? 連絡先はどうすんの?」
「……頑張って聞きます」
「具体的には?」
「帰り道で聞こうかと」
「へぇ〜一緒に帰る前提か〜」
「だって夜道は危ないだろ?!」
ライブが終わって帰る頃にはきっと暗いはず。流石に夜道を1人だけで帰らせる程僕はバカではない……はず。まぁ一応…ね。一応危ないかもだし。
「暗い夜道は危ないし、いいんじゃね? 俺も帰りはあこと一緒に帰ってやんねぇとか」
「家近いの?」
「お前と同じお隣さんだよ。お隣さん」
「だから仲良いんだね」
「腐れ縁的な? 感じ」
お隣さんだとしても僕とは大違いだ。赤司君はあんなに話せているのに。僕は……毎回緊張して。対して話せていない。兄さんなら───。
「落ち込むなよ。慣れていけばいいだろ。得意不得意は人それぞれだしさ」
「赤司君……」
君はいつもそうだ。僕が兄のことを言おうとすると。励ましてくれる。まるでわかっているかのように。
「仕方ねぇ。帰りとっておきの方法で連絡先ゲット出来るようにしてやっから。元気だせ」
「ほ、本当?!」
「任せとけよ。泥舟に乗ったつもりで居な」
「それ絶対赤司君一緒に乗ってないよね?」
「当たり前だろ?」
なんて笑顔で答える君は……僕にはとても眩しい存在だ。
2人乗りをしていた人物。わかってしまう人にはわかってしまうでしょう……
別の作品とは全く関係ないです。ですが、割と重要なポジションに落ち着くと思いますのでお楽しみを。
赤司君、根はいい子な設定なんですよ。
そしてとっておきの方法とは……。
手を振ってもらえた主人公は次回果たしてどうなるのか!
それではまた次回。