もし継国縁壱さんのような人が無職転生の世界に居たら   作:ばしお

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幼少期編
はじまり


私の額には生まれつき不気味な痣があったそうだ。

 周りは大層不気味がっており、妾の子という事もあったので処分せよという声も上がったが、それを聞いた普段物静かで体調を崩しがちな母が一心不乱に父に泣きわめき縋り付きながらの嘆願により、表面上いない者として扱われる事になったが生かしておく事にしたそうだった。

 

家は大変裕福で貴族といわれる部類だったが、年の離れた腹違いの兄弟と同じ様に生活する事は許されず、簡素な部屋と簡素な食事が与えられただけだった。

私はそれでも十分満足だったのだが、母はそれでも他の兄弟と平等な生活を送れていないことを気に病んでいる様子だった。

 

普段は誰もいない庭で木に寄りかかり部屋からこっそりと母から借りてきた本を読んだり、ひっそり覚えた初級の魔術を試して水をぷかぷかと浮かべてみたり、あとは兄様達が剣術の指南を受けている様子をぼーっと眺めている事が多かった。

 

母は、私が普段物静かすぎているせいで声を出せないと思っていたらしい。

その事は母が今は滅んでしまった小さな故郷の風習の一環で耳飾りを私の耳に付けてくれたことで分かった。「わたしはしゃべれます」と母に伝えたら驚いた顔をしていた。

 

申し訳ない事をしたと反省した。

 

私はヨリイチという名前らしい。

 

そのことが分かったのは齢四歳の時であった。

 

名前など本当はなかったのだが、母が名付けてくれた。

 

 

 

体調を崩しがちな母によく覚えた治癒魔術を使っていた。

最初に治癒魔術を使った時に母が「普段は詠唱を唱えないのですか?」と少し動揺した様子で聞いてきた。

私は素直に「はい」と答えると、何やら思案顔で「周りにはその事を悟られぬ様にしなさい」と言うので私はその事にも素直に「はい」と答えた。

 

それ以降私は滅多に魔術を使わなくなった。

 

無詠唱魔術というのはこの世界でいえば珍しいらしく、どうやら周りに知られてしまえば利用されかねないと思ったのだろう。と私は幼いながらも推測した。

 

普段外出は滅多に許されなかったが、母が誕生日の日には誰の目もかいくぐり、外にでては綺麗な花を見繕い母にプレゼントを必ず贈った。母は「ありがとうございます」と嬉しそうに、されどもどこか複雑そうな顔をしながら喜んでくれていた。きっと何不自由なく外出できない私の事を気遣っての事だろう。

 

母はよく私の頭をなでてくれていた。

 

少しくすぶったいが母が私の頭をなでてくれる事は大好きだった。

 

しばらくは平穏な日々は続いた。

 

私の父である人は自分の職務が忙しく、ストレスを緩和させるためかよく夜に女性たちの体を求めていたようだった。

 

それには母も例外ではなかった。しかし、夜伽の最中でさえせき込んでしまうので、相手になる数は少なかった。

 

母は美しかった。

 

父は母様の事を大層気に入っていた。

 

私は父に似ず、母様に似た。私が今の今まで生かされてきた理由はそれも関係しているのであろう。

 

「母様は父を愛しているのですか」

 

不躾だと知っていながら聞かずにはいられなかった。

 

母は「はい」と答えた。

 

「ヨリイチは父の事は好きではないのですか?」

 

自分が父の事を好きかどうかはよく分からなかった。

少し時間がたって私は素直に返事に答えるように「分かりません」と答えた。

 

「そうなのですか?」

 

「…はい、ですが心配しております。いつも私が見る父は疲れているようなので」

 

「そう…貴方はやはり優しい子ですね」

そう言い母は私の頭を慈しむように撫でる。

私は優しいのだろうか?

 

分からない、私は普段人と接する機会は無いので人に優しくすると言う事がどう言う事か、客観的に認識できないでいた。

 

分からないから先程も母様の感情を慮る事もせずに父が好きかどうか自分は聞いたのだ。

 

やはり私は自分が優しい人間だとは思えなかった。

 

 

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