もし継国縁壱さんのような人が無職転生の世界に居たら 作:ばしお
イゾルテという少女と手合わせをしたあと、私は手持無沙汰な様子でぼーっと突っ立ている事しかできなかった。
母上には、女性には優しく接しろと教わった手前、試合とはいえ女性に手をだしたことになる。
申し訳ない気持ちが、胸の中でぐるぐると回る。
「……あの」
私に倒されて地面に尻をつけた少女は、私を見上げる形で話しかけてきた。
「どうした?」
「あなたはどこの流派なのですか?動きを見ても、剣神流ではない……もしかして、あなたは北神流ですか?」
先程の手合わせのことだろう。おそらく私がどこかで剣術をならっていたのかどうかを聞いているんだと思った。
「いや、私は剣を持ったことは数回程度で、よく兄上の剣術の稽古をみているだけだった………だから、どこかで習っていたというのはない」
私は正直にそう伝えた。
「なッ……」
相手は驚いたような、怒っているような、畏怖しているような、そんな表情をした。
「なあ坊や」
横から婆さんが片目を閉じて、もう片方の目で私は見ながら、言う。
「あんた、人を殺した事はあるかい?」
ほんの少し、殺気のようなものをこの婆さんから感じた。だがしかし、嘘をつくようなきにはなれず、正直に答えた。
「あります。」
「……そうかい、それで、なにか感想はあるかい?」
「人を打つ感触が酷く不快でした。」
「……そうかい。じゃあ、剣をもう一度握りたいとは?」
「微塵も」
私は婆さんが問う質問のすべてに正直に話すと、婆さんは呆れたようなため息をついて最後に聞いた。
「……はぁ、こりゃとんだ変人もいたもんだね。……あんた、この先に行く当てがないんだろ?うちらと一緒に来るかい?」 「お、お婆ちゃん!?」
婆さんは私に、自分たちと一緒に来るかどうか聞いてきた。
横のイゾルテはまたびっくりしたような表情を見せた。
表情の変化が豊かな人だなと、思った。
「いいのですか?」
私はそのまま、私のようなものが一緒についてきてもいいのかとそのまま聞いた。
「あぁ、わたしゃあ構わないよ」
「お、お婆ちゃん危ないよ、この子引き入れるなんて…」
「大丈夫さね。この坊主、馬鹿みたいな力もってるだけの無害みたいなもんさ」
「で、でも人を殺したことがあるって」
「あぁ……でも、万が一何かあっても私がいるから大丈夫さね」
その、おそらく相当な手練れであろう婆さんはちらと私を見ながらそういった。
「で、坊主。あんた結局どうするんだい?」
少しだけ逡巡したあと、私は答えた。
「行きます。」