青道高校野球部前監督榊英二郎の来訪に驚いた太田部長だったが
太田部長「吉川。こちらは片岡監督の前にこの学校の監督を務めていた榊さん。今は、H大の総監督を務めておられるんですよね。」
すぐに冷静になり、吉川に榊を紹介した。
吉川「あ・・・はい、知ってます。」
しかし、吉川は少し興奮していた。
それは
吉川(私が小さな頃、テレビで見てた人・・・)
吉川(この学校を全国常連校に育て上げた名将、榊英二郎。)
吉川(そんな人が、生で見れるなんて・・・!)
青道高校を全国屈指の名門校に育て上げた人が、今実際に目の前にいるという事に。
榊「とにかく試合見ようや。座りねぇ。」
そして、榊の一言で太田部長と吉川は席に座り、試合を見た。
その時、ちょうど惇がマウンドに立っており、三村が打席に立っていた。
その初球
ズバアアンッ!!
外低めに真っ直ぐが決まり2球目
ククッ!
スローカーブが低めに決まった。
そして3球目
ズバアアンッ!!
惇「シャアアアッ!!」
真ん中高めの真っ直ぐで空振り三振に打ち取り、再び雄叫びを上げた。
続く8番の金田は、初球のスライダーを打ったがピッチャーゴロに終わった。
9番の中田の初球
ククッ!
中田「くっ!」
スローカーブにタイミングが合わず空振った。
2球目はスライダーが外れたが3球目
ズバアアンッ!!
中田「っ!」
インサイドに真っ直ぐが決まりあっさり追い込まれた。
そして
ズバアアンッ!!
惇「らああああっ!!」
外低めの真っ直ぐに全く反応できず、見逃し三振に終わり、雄叫びを上げた。
信二「良いぞ、足立!」
足立「ああ!」
倉持「ナイスだぜ、足立!」
これに、周りも惇を賞賛した。
榊「テレビでも見たが、ボールのスピードとノビは1年とは思えねぇな・・・加えてまだまだ発展途上のようだ・・・」
榊「何より、あのマウンド上での闘志と気迫。本当、鉄心にそっくりだ・・・」
榊「テレビで見て思わず鉄心と勘違いしちまった程だったぜ・・・」
榊「まぁ、目つきの悪く、『悪童』と呼ばれたアイツと違ってこちらは二枚目だがな。」
惇のピッチングに、榊はどこか懐かしそうに見ながらそう呟いた。
吉川(『悪童』・・・?)
これに吉川は、榊の言った『悪童』という言葉に反応した。
そんな中で、4回の表の暁のピッチング。
レギュラーチームは、惇から始まるクリーンアップからだった。
しかし、惇はキャッチャーフライ、御幸はセカンドゴロ、前園は空振り三振に打ち取られてしまった。
樋笠「ナイスピッチング、降谷!」
中田「ナイスだな、降谷!」
バックも、そう声をかけた。
工藤「すげっ・・・この回も無失点に抑えたよ。」
渡辺「2回に少し乱れたけど、縦スラが決まってから安定してきたね。」
渡辺「足立も凄いけど、降谷もまだ投げてない沢村も凄いし、本当頼りになる後輩だよ。」
これには、裏方で回っている渡辺達もそう言った。
榊「怪腕と剛腕、そして技巧派左腕・・・タイプの違う投手が3人。その全てがまだ1年で発展途上・・・」
榊「鉄心の奴も育てるのが楽しいだろうな。」
太田部長「彼らに隠れがちですが、サイドスローの川上も良いピッチャーなんですよ。」
榊「ほう・・・それは楽しみだな・・・」
プレハブ小屋では、榊と太田部長がそんな話をしていた。
すると
吉川「あの・・・さっき仰ってた『悪童』って、もしかして片岡監督の事ですか?」
吉川が榊に声をかけ、先程呟いた言葉に対して聞いた。
それを聞いた榊は
榊「ああ、そうだ。目つきは悪い、敬語は使えない。奴が入学してきた時は、手のつけられない悪タレ小僧だったよ。」
そう、遠い目をしながら言った。
・・・15歳とは思えない風貌だな、おい。
榊「そんなだから先輩に目ぇつけられて、揉め事ばっか起こしてたな。」
ただし、片岡が誰より最も人より勝っていた点。それは負けん気の強さだった。
榊「その燃えるような闘志と気迫に惚れ込んだ俺は、アイツを1年の秋からエースナンバーを背負わせた。」
榊「ただ、技術的にも精神的にも未熟だったから、当然上からの反発もあったが、アイツはそれを全て受け止めたよ。」
それら全て受け止め、改善した片岡は、見事開花した。
榊「マウンドにいる彼同様、気迫溢れるピッチングでチーム内の信頼を得ていき、2年の夏に甲子園出場。」
榊「その勢いのまま、チームを決勝まで導いたんだ。」
吉川「・・・。」
太田部長「見てたな、テレビで。」
しかし、チームは惜しくも優勝に届かなかった。
榊「続くセンバツではベスト8。最後の夏は惜しくも甲子園に届かなかったが、最後までエースとしてチームを引っ張ってくれたよ。」
その時、榊は片岡に言われた言葉を未だに覚えていた。
回想
榊「どうした、鉄・・・」
片岡「すいません。力及ばず、監督を日本一にする事が出来ませんでした。」
回想終了
榊「・・・。」
この言葉に、榊は片岡の成長を感じたのだった。
吉川「あの・・・それじゃあ、プロからの誘いを断ったというのは・・・」
榊「ああ・・・今じゃ大分緩くなったが、当時はまだプロアマ規定が厳しくてな。『プロの世界に入れば、指導者としてこの高校へ戻るのが難しくなる。どうしようもない自分を変えてくれた高校野球に恩返しがしたいんです。』」
榊「18になる前の小僧が、ハッキリとそう答えやがったよ。」
榊「大学卒業後、コーチとして8年。俺が身を引こうと考えたのは、コイツなら任せられると思ったからだ。」
そう、吉川の質問に答えた。
その間試合は続き、惇は6回無安打無失点、奪三振は脅威の15個だった。
暁も1失点に留め、縦スラもしっかり投げれるようになった。栄純も独自の握りで会得した動くボールにチェンジアップを駆使し、堂々と小気味良いピッチングをし、青道が誇る3本柱は順調な調整ぶりを見せた。
惇の後に投げた川上も、キレの良いスライダーに加え、今まで封印していたシンカーを解禁して、最初はコースが決まらず甘く行ってしまったが次第に決まり始め、相手を抑えていった。
試合は、7-2でレギュラーチームの勝ちで点差はついたものの、内容以上に締まった試合で投手陣の調整は勿論、チームの士気を高める事が出来た非常に濃い内容でもあったのであった。
投稿出来ました。
最後の最後で纏まらず、変な形で締めました。
大変申し訳ございません・・・。
最近思ったのですが、片岡監督の見た目って、2004~2011まで中日の投手コーチやヘッドを務め、中日黄金期を支え、後に監督にもなった森○和さんにそっくりな気もします。
見た目厳ついですし・・・ね。
そ、それでは、また。